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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
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重臣達の模索






「丞相様、これは一体どういう事でしょうか……」


勇気ある重臣の一人が恐る恐る不意機嫌に青筋を立て静かに怒っているルイングゥイに声を掛けるのを他の就寝達が賞賛の目で見守っていた。


重臣達は困惑していた……突然招集を受けこの別荘に呼ばれたのは良いが、最初に驚かされたのはルイングゥイの女装。


誰もが突っ込みたかったが後が恐ろしく口を噤んだ。何故なら後からしかけられる報復を恐れたからだ


だが次に驚かされたのが亀王チョングゥイの女装!!!!


圧倒的な美しさに誰もが息をのみ見惚れ押し倒し我が物にしたい衝動にかられたが、その欲望は本当の亀王の姿を知っているので直ぐに鎮まる。


亀王チョングゥイの本来の姿は恐怖の対象だった。


自分の意に沿わない人間は即座に殺し異を唱えるなど許さない、そんな横暴を許されるのも圧倒的な力にある。この世界の創造神である天帝様に次ぐ神力の持ち主


この世界で亀王チョングゥイに適う者など天帝様しかいないのだ


どんな理不尽な事を命じられても従うしか無く亀王チョングゥイが王位に就いた時は凄まじい粛清の嵐だった。前王は人の良いのんびりした亀王だったので政務は家臣達の言うがままだったので佞臣が蔓延していた。先ず、チョングゥイは何の官位も持たず成人すらしていない幼馴染のルイングゥイを政治の最高職である丞相に任命する無謀ぶりに反発した重臣全ての首を問答無用で斬り捨てたのを皮切りに次々と改革を行って行き逆らう者は死の恐怖で王宮を支配して行ったがルイングゥイは事のほか優秀で才長けた若者で国の全てを把握し治めて行った。国民達は内乱も起きず不当な税の取り立ても無く人間の地位の向上され多くの者が新王を歓迎した。


しかし国を治めているのは実質丞相ルイングゥイであり王は傀儡だと裏で噂されたが二人は気にする事無く国を治めていった。


なにせチョングゥイは怠け者なので殆どを丞相ルイングゥイに押し付けていたので事実傀儡政治と言って過言でなかったからだった。


そして後宮には当初数多くの美姫が送られたがチョングゥイは見向きもせず午前中の政務を済ませて日々寝てばかりで子供が出来そうにも無いのを見かね丞相が後宮の側室を昼寝する王の下に遣わし事に及んでいたが後宮の女達の苛烈な争いと露骨な誘いが繰り広げられ収集がつかなくなり始める。


暴君であるチョングゥイも女には強く出れない弱点があったのだ……育ての親の爺やが幼いころから女性は子供を産んでくれる大事な存在で無暗に虐げたり殺してはいけないと教えられていたからだったので、その辺も後宮の女達をつけあがらせてしまったのだが、周りの重臣達も子供を作れと煩く辟易した亀王はとうとう亀の姿の転神して過ごすようになってしまたのだ。


そして後宮の側室達も徐々に姿を消して行きとうとう三人だけになったのだが誰もが亀王は正妃を選ばず終わると考えていた所に正妃の内示があり、事のほか驚愕したのだった。


亀王の伴侶


それは正に青天の霹靂で一生涯正妃を迎えないと高を括っていた者達は驚き慌てる。


普段なら絶対に異など唱えないが相手が人間


何れ我が娘に御子を産ませ正妃の地位につかせ丞相の地位の取って代わり権力を思うままに操ろうとしていた者達は恐怖を忘れて異を唱えてしまったのだ。


そしてわが身の命を危うくして漸く思い出す……


“亀王には逆らってはいけない”


再び恐怖に身を引き締める重臣の前に現れた王の伴侶を見て驚かされる。


先ず第一にその容姿


黒い髪に黒い瞳! この世界にこんな色彩を持つ者など聞いた事も見た事も無かった上にその容貌は平凡の一言


誰もが亀王が惚れこむ程の容姿には思えず内心疑問ばかりが湧き起こる……


この者が真に王の心を射止めたのかと


第二に伴侶様の陛下に対する態度!


王を恐れず話す言葉も不敬ととしか言いようがなく、自分達であれば即刻首を刎ねられているはず


しかし王は怒るどころか平凡な少女の顔色を伺い機嫌を取っている始末で我が目を疑う


自分達が知る王とはまるで別人


平凡な少女に骨抜き状態なのが直ぐさまに読み取れる。


しかも会話の中には強姦魔や異界、幼女趣味やら呪いなど展開が良く理解できず

茫然と遣り取りを見守っていると亀王は少女を連れ消えてしまい混乱ばかりが残り如何すればいいのか丞相に助けを求めるのだった。





「貴方達には伴侶となるミユキ様を紹介したかったのですが……陛下と共に愛の確認に行かれた様なので今夜は皆さんで陛下とミユキ様の将来を祝し宴を進めて下さい。日を改め正式にミユキ様を伴侶として公式の場でお披露目します」


心の中はミユキ様の口車に乗りまんまと異世界へ行ってしまった陛下に対し怒り心頭だが心沈め応えるが一人の重臣が愚かにも質問を返してしまう。


「陛下は何時お戻りに……」


「私が分かるはずが無いでしょ……」


そんな事を一々私に聞くのでイライラして睨みつけてしまう。


「ヒィ―― 申し訳ありません」


ミユキ様が関わると思ったように事が運ばないので気が立って、残された重臣達に当たってしまいそうだ。


「私も少々疲れましたので失礼ながら下がらせて貰います。他の方々は無礼講でお楽しみ下さい」


とてつもない疲労感を感じこの場にいるのも疎ましいので愛しい妻の元に行く事にするが先程の事があり顔を会わしずらい


しかしあのミユキ様が黙って伴侶を受けいるとは思っていいなかったが、まさか呪いなどと言いだすとは…だがミユキ様のような平凡な顔立ちの少女に陛下が一目惚れするなど信じられないのは確かだ。


これまでどれ程の美女を見ても欲望を抱かなかった陛下がミユキ様を抱いたと知った時は陛下の趣味がこう言う普通な娘なのかと納得したのだが


…呪い……


何故かそう言われた方がしっくりする気がする。


だが呪いが掛かったにしろ陛下がミユキ様を愛しているのは事実


陛下がむざむざとミユキ様を逃すはずがないだろう。


普段は何もせず寝てばかりいるがある意味手段を選ばないお方


幾ら小賢しい娘とはいえ、陛下かから逃れるのは無理だろう


陛下達が戻る前に後宮を一掃して綺麗にしておかないと…


そうだ!


アンチョンに後宮のミユキ様の部屋の調度や衣装の用意をしてくれるよう持ちかければ機嫌が直るだろう


ミユキ様を後宮に入れてしまえばアンチョンが会う事は滅多にない、これで陛下が少しは政務をして貰えれば時間の余裕が出来、子作りに励めれる


アンチョンを娶り既に三百年近くがたとうとしているが今だ子が出来ず心を痛めているのを知っているので私達夫婦の為にもミユキ様に陛下を確り操縦して貰わねば


幼い容貌ながら中身は中々の人物


ミユキ様に付けた侍女に対する態度も分を弁え好ましい


今いる側室達の美しさに遠く及ばないが王の伴侶とは生涯王に安らぎを与える存在


美しさなど二の次、それに陛下の御子様ならそれなりの美貌と神力を持って生まれるだろう


この場合異界のミユキ様の血がどう出るかも楽しみ


だがそれより先に私達夫婦の子供を造らねば


子作りに励む為にも妻の元に急ぐのだった。













宴会の場に取り残された重臣達は己が派閥で固まり酒を酌みあっていた。


重臣A「一体我等は何しに呼ばれたんでしょうか」


重臣B「陛下の伴侶のお披露目でしょ」


重臣C「まさかあの陛下が伴侶をお迎えになるとは何か良くない事の前触れではないかと不安が過ぎるんですが気のせいだろうか」


重臣A「いいえある意味好機かもしれませんよ。見なさいあちらを…娘を側室に送り込んだ大理府長官達の青い顔。今まで娘達の威光をかさに大きな顔をしてましたが陛下が伴侶様を迎えその威光も地に落ちるでしょう」


重臣B「確かに、今度は我々が伴侶様に取り入ればいいわけですね…」


重臣C「フッフッフ…伴侶様は幼げなご様子で取り入りには好都合」


重臣A「しかも陛下はかなり伴侶様にご執心なご様子…伴侶様に気に入られれば丞相をも蹴り落とすいい機会かも」


重臣B「漸く我等の時代が訪れますね」


三人の重臣はお互いの顔を見やりながら低く嗤い合う


そしてそれぞれの重臣達が各々未来を模索し夜が更けて行くのだった。












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