王様と私と呪い
私は我が目を疑う……目の前には絢爛豪華なド派手に女装をした強姦魔
一体この男は何を考えてこんな金ぴかな衣装を着てるの????
悪趣味だし女装の意味が分からん!!
思わず叫んでしまったが二の句が告げれない。
唖然としていると強姦魔は金ぴかの衣装に負けないくらい眩い笑顔を私に向けるので目がチカチカする。
「ミユキ! 会いたかった――― 今日は一段と可愛いぞ~~~~」
目が眩んだせいでつい抱擁を許してしまい抱きしめられ、ハッとする。
「ちょっと離しなさい! このロリコン強姦魔」
怒鳴りながら手が自由にならないので足を思いっきり踏みつけてやるが、あまり効果が無いようで離そうとしない
「ロリコン??? 余の名はチョングゥイだ。どうかそう呼んでおくれ」
「何がチョンほにゃららよ! あんたなんかチョン……そうチョンマゲで十分」
あんたなんかバカ殿のチョンマゲだ!!
プッ 笑えるかも
「チョンマゲ?? それは余に付けてくれた愛称!!!」
何故か感激し一層きつく抱きしめてくるので苦しくて堪らない
ぎゅうっ―――――――ーう ギシッ ギシギシ……
「ウッ…… くっ苦し… い……」
此のまま絞め殺されるのかと思ったらルインさんがたしなめてくれる。
「陛下、ミユキ様は人間ですから力加減を間違っては直ぐに死んでしまいます」
「そうであった!」
パッ!
それで漸く私が死にそうになっているのに気付き慌てて両手を離し解放されたお陰で新鮮な空気を肺に取り込んで呼吸をする。
「一瞬あの世を見かけたは……」
「すまぬ……つい嬉しくて…」
見れば肩を落としシュンとしている。
こんな悪趣味な衣装でも美形だと様になるから不思議よね…全く美形はずるい
しかし何時までも怒っていてもしょうがない。今日はスッパリ私を諦めて元の世界に戻して貰うよう交渉をしに来たのだ。
強姦魔は此方の顔色を伺うように見ておりイニシアティブは私にあると見た。
思いっきり営業スマイルで話しかける。
「王様今日は私にどの様な御用でしょうか。確か歓迎の宴のはずですがなんだか物々しいですね」
ルインさんは陛下と呼んでいるけど私はこの国の人間でも家臣でも無いので王様と呼ぶ事にした…本当はチョンマゲと呼びたいが呼ぶ度に笑ってしまいそう
「 /// 実はその~ ミユキに… 余の… だな… 」
もじもじ頬を染めながら一向に話しが途切れ途切れで進まずイライラして来る。
見かねたルインさんが話の説明し始めた。
「僭越ながら私からご説明します。今夜この宴にお出で頂いたのはミユキ様を陛下の伴侶として国の重臣を集めお披露目する事にしたのです」
伴侶??? 何ですかそれ??
「伴侶とは王様の花嫁と言う事ですか?!」
「そうです。ミユキ様はこの国の王妃様になって戴きます」
「一体何時そんな事を私が了承したんですか」
「この際ミユキ様の意志は関係ありません。陛下が望めれたその事実が全てです」
駄目だ、ルインさんは聞く耳持たない状態
どうやらすっかりルインさんを敵に回したみたい…やはり牡丹の君にひっつき過ぎたのが良くなかったの~~ 私は必要以上に煽った行動はしていなかったはずだけど失敗したとしたら酔った時に何かやったのかも知れない
まさに酒は飲んでも飲まれてはいけない。
牡丹の君はいないし味方はいない
最初からこの王様に掛け合うしかないんだけど、顔を赤らめモジモジする本人に向き直し問いただす。
あくまでも冷静に
「私は初耳ですが王様は何時結婚を申し込んだんですか」
「そっそれは…まだだが /// 今する! どうか余と婚姻を結んでくれないか……」
目の前で顔を真っ赤にさせプロポーズして来る金髪碧眼の神々しいばかりの女装男
産まれて初めてされたプロポーズはかなり微妙だ
これ程の美形なら女装癖があろうとロリコンであろうが殆どの人間が一つ返事でEYSと返事しただろうけど、例え玉の輿だとしても乗る気にはなれない
「お断りします」
「ミユキ~~ うっううう…ううぇ…うう…」
キッパリ断った途端に目に一杯の涙を溜め此方をみつめるが如何せん上からの目線では萌えない、これが下から見上げながら目をウルウルさせられたら堪らなかったかも
「そもそも王様は私の何処が好きなんです。会ったのも私が岩山から落ちて助けて下さった短時間で」
まさか一目ぼれされる容姿だとは思っていない。
「それは、ミユキが落ちて来て余の上で目覚めた時にあまりの可愛さに目が外せなくなったのだ」
王様の上に??? 岩山から落ちた時の事だろうか
しかし私が可愛いとは矢張りロリコンだからか
「つまり一目惚れ!! この私に!」
「 /// そうだ… 余はミユキに一目惚れした。絶対幸せにするからお願いだ」
私に一目惚れなど信じられない……矢張りこれは呪いだ
これを真に受けて王子様が呪いが覚めた時バカを見るのは私
それに私は元の世界に戻りたい
「そんなの私は信じられないわ、そもそも王様は幼い少女が好きなんでしょうが生憎私は成人した女性で二十三歳です」
「???…ミユキが大人なのは良く知っておるし、余に幼女趣味はない」
「えっ… そうなの??!! でも王様が私が好きなんて可笑しい、やっぱりこれは呪いのせいです」
ロリコンで無いのなら呪いで話を持って行くしかない
「呪い???」
そうよ、呪いの所為にして巧い事王様を丸めこむ作戦に変更!
何事も臨機応変に対応するのが社会人
でないと理不尽な上司の要求には応えられない……ま…その場しのぎの誤魔化しとも言う。
「そうです! これは私が異世界トリップをしたせいで起こった呪い、私の世界では古くからの言い伝えで異世界を渡りし者は初めて会った者に庇護を得るため呪いを無意識のうちに発動してしまうんです。それは恋と言う呪いが…」
「それでは余の恋は呪いだと」
「はい、だから今直ぐ目を覚ます為にも私を元の世界に戻すんです。そうすれば恋の呪いが解かれ、私のような平凡な娘なと見向きもしなくなるはず」
王様信じるんだ! そして私を元の世界に戻すのよ。そうすれは平凡で私に相応しい人生が取り戻せる。
「余に呪いを掛けるなどあり得ん、ミユキは人間でしかなくそんな力など無いのだから」
「異世界の人間を嘗めないで下さい王様、私達全ての生命が生まれた星地球の慈悲深く大いなるアースの力で護られているんです」
うっ…… 我ながら苦しい言い訳、こんな事なら弟のお勧めを沢山読んでおくべきだったのが悔やまれる。
「ミユキが言うように呪いだとしても余はミユキを愛してる信じてくれ!」
「/// うっ!!」
熱い眼差しで愛していると言われ心ときめかない女がいるだろうか…だけど此処で負けては面倒な生活の日々が待っており私なんか直ぐ飽きられ後宮の片隅で惨めな生活を送るに違い無い
一時の華やかな生活より地道ながら小さな幸せな家庭を夢見たい
美形に負けてはいけない! 平凡の意地を見せるののよ
そして演劇サークルで培った演技力を見せる時(裏方だったけど練習様子を良く見ていただけ)
「私には王様のその言葉を素直に信じられず呪いによって愛されてもそんな偽の愛なんて私は受け入れられません。だから私に対する想いが本物だと証明して欲しいのです」
「信じてくれるなら何でもする」
ふっふっふふ 罠に掛かったな
「では私と共に元の世界に戻ってもう一度私と向かい合い愛しているかどうか考えて欲しいのですが、 王様は私の世界に行く事が出来ますか」
「余の愛を受け入れてくれるならミユキの世界に行こう。 天帝の気を探ればそんなに難しくは無い」
やった!!
思わず万歳三唱をしたいのをぐっとこらえるがルインさんが横やりを出して来る。
「陛下騙されてはいけません! ミユキ様は地味な顔ながら中々のお方。それはご自身が元の世界戻る為の策略です」
糞… ルインさんめ~ 地味な顔ながらってなによ!
しかし此処でくじけてはいけない。私は今女の必殺技が使えるのだ。
他の男には無理でも王様には効くはず――その名も泣き落とし
今こそこの技を使い長年のトラウマを払拭する時だった。
私は大袈裟に両手で顔を覆い泣きだす (さすがに演劇サークルの裏方では涙は出せない)
「うっうう……酷いわ……私はただ王様の真実の愛か知りたいだけなのです……ヒック……こんなずるい私を許して…シクシクシクシク」
サークルの看板女優の演技を思い出しながら真似をするが、こんなので騙されるか少し不安を感じる。
「おお~ ミユキ 丞相の事など気にする事は無いぞ~ それではパッパッと行って余と愛を確かめ合おうぞ!!」
しかし見事騙される王様
ぬっおおおおーーーー感動!!!
屈折二十三年初めて女の武器を使いこなしたあまり本気で涙が出て来てしまう
「有難うございます王様! 」
私は涙流しながら女神様を拝む様に手を組んで見上げると締まりのないデレデレとした王様の顔はやっぱり美形だ
「なりません陛下! こんな下手な芝居引っかからないで下さい」
しかしルインさんがしぶとく邪魔をして来るので私は王様に抱きつき急かす
「私の世界では思い立ったが吉日と言います。早く行って確かめましょう」
そうすると更にデレデレする王様はルインさんを無視して私の言うがまま
「分かった。では早速行こうぞ」
しめしめ…我ながらこんなに上手く行くとは思わなかった!!思わず心の中で細笑む
もしかして王様ってバカ? ころりと騙され思わずこの国の行く末が心配になる。
王様は壁に手をかざすと牡丹の君と通って来たのと同じ穴がポッカリと空くとかさばる衣装を着た私を軽々と抱え上げる。
「狭間の世界は迷いやすいので余が抱いて行こう /// 」
おおーー お姫様抱っこ ///
例え女装をしていてもこれだけの美形にお姫様抱っこなんて私でもぼーっとしてしまいドキドキと心臓が波打つ
そしてボーッとしている内に王様はトンネルに入って行き目の前が一気に真っ暗闇
突然の暗闇に驚きその胸に顔を寄せると何故か弾力を感じる。
「ん???」
手でその感触を確かめるべく胸を押してみるとムニュ~っとした柔らかさなので揉んでみる。
モミモミ ぷにゅぷにゅ
「/// ミユキ積極的なのは嬉しいが向こうに着くまで大人しくしてくれるぬか…後でなら…」
不穏な発言は無視して驚く
「何で胸があるの??!! この間は無かったはず!」
なによこれはルインさんには及ばないがCカップは絶対にある。この間までは洗濯板のようにまっ平らだったのに!!! 何か入れているにしては自然な感触
「ミユキの好みに合わせて女の姿に変化させてみた」
つまり女体化!!!
流石神様、性別も変えられるとはさすがファンタジー! うん…??? 私の好み?????
「何故私の好みが女?」
首を傾げ聞いてみる。
「違うのか? 丞相がミユキがアンチョングゥイを口説いていたと妬いておったぞ……男が良いなら直ぐにでも戻るが!」
口説く?? どうやらその所為でルインさんを敵に回してい待ったのだ知るが、一体何時そんな事をしたか思い浮かばない???
それより男の姿に戻られるのは危険なので速攻断る
「女の姿のままで結構です 」
「そうか……」
シュン…………
男に戻った途端襲われては堪らないので断るとションボリとする姿に可愛いと思ってしまう―――やばいかなり絆されてきたような気がする
早くお別れしないと
こいつは私をレイプした最低野郎なんだと心に言いきかせるのだった。
幸せだ~~~~~~
ミユキが余に抱かれて大人しく身を任せてくれている!!!!
なんて愛おしい存在
ミユキは余の気持ちを呪いから来るものだと言っているが呪いでも何でも良かった。
こんなに幸せな気分になれるなら呪いなら何度でも掛かりたい!
ミユキの世界にいったら余の気持ちは本気だと理解してくれるだろう。
余とて神! ミユキの世界の神に劣るはずが無い
絶対ミユキと愛を確かめ合い余の伴侶にするのだ。
しかし向こうの世界には天帝が居るのが引っかかる……人に嫌がらせするのが生きがいのような最悪な生き物
いない事を心から願うのだった。
このまま最後まで玄武を更新して龍王は暫く休みます。多分後数話で終わらす予定ですが続編も考案中。
龍王が終わったら続編を書きたいと思います。
もうしばらくお付き合いください。