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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
18/70

ごり押しと王様







「陛下…… その恰好は一体…… 」


「丞相、どうだ似合うであろう」


何故か丞相は魂が抜けたような表情で余を見詰めているので、あまりの美しさに言葉が出ないのであろう。これならミユキも余を好きになってくれるであろうか?


「ではミユキのもとへ参ろうか」


喜び勇んで丞相を促す。


ドッカ!


「ぬっわぁーー!」


背中に衝撃を覚えて前のめりになるが何とか耐える。なにしろこの日の為に設えた衣装が汚れてはミユキの印象が悪くなるではないか。


「おのれ丞相何をする! 折角の衣装が汚れるではないか!!」


「何を考えているんですか!! 王とあろうものが女装など前代未聞」


「女装ではない、ちゃんと体も女に変えておるので丞相と一緒であろう」


全く煩い奴、余の方が美しいから嫉妬しているに違いない。


この日の為に選んだのは金箔を貼った煌びやかな地に百花繚乱の花をあしらった華やかなもので丞相より数段上だ


「そう言う問題ではありません、そのお姿で本気でミユキ様とお会いする心算ですか」


「ミユキは女の方が良いと丞相が言ったのではないか……余はアンチョングゥイより美しいからきっと余の方を好きになる」


ボッカ!!


「ウッグ!」


突然頭を思いっきり拳骨を食らう


「酷いぞ! 何故殴る」


「よくも抜け抜けとアンチョンより美しいなどとふざけた事を言うのはこの口ですか!」

あろうことか余の口に左右の人差し指を入れ思いっきり横に引っ張られ引き伸ばされる。

「いひゃ…にゃーにぃ……しゅ…る…」


丞相の顔は悪鬼のように目を吊り上げて怒り心頭――アンチョングゥイの事となると見境をなくすのを忘れていた。


「そんな変な顔で二度とアンチョンより美しいなど仰らないでください!」


変な顔にしたのはそなただろうと言いたかったが丞相の機嫌を損ねてミユキに会えなくなっては困るので謝るしかない


「わるかった……アンチョングゥイの方が余より美しい」


「全くその通りです」


何が全くだ、元々アンチョングゥイは余の後宮に入る予定の娘を横取りしたのではないか…もし余が欲しいと一言言えば妻になど向かい入れなかったのだから少しは感謝してもいいはず。


亀王として敬う気持ちが全く無い困った奴だが、余の代わりに国を動かすには無くてはならない存在


何気に余の方が立場が下???。


まっ…そんな事はどうでもいい


「それよりミユキを待たせてはならん早く行こう」


「…… 本当に着替えなくて宜しんですね」


「しつこいぞ」


余も散々悩んだ末に女の姿になったのだ(丞相に相談したかったが機嫌が悪く出来なかった)


それに女どうしの方がミユキも気を許してくれるかも知れない


そう思うとワクワクと胸がはずむのだった。








瞑道を開けて案内された場所は何処かの屋敷のようだ。


「何処だ此処は?」


「私が所有している領地の別荘の一つです。主だった家臣は既に来ております」


「余とミユキの他に??? 」


「はい、王宮でも良かったのですが後宮の女達に嗅ぎつけられては厄介なので王都から離れた場所に致しました」


「何を企んでおる……」


「此のままミユキ様が陛下に心を傾けるのを待っていては埒が明きません。重職にある亀族達の前でミユキ様を伴侶として向かいれる事を明言され、即刻後宮の側室達を追い出して正妃として入内していただくのです」


「そんなに巧く行くのか!?」


そもそもミユキが了承してくれるだろうか


「三人の側室の親もこの場にいますので一人ぐらい犠牲にすれば喜んで娘達を引き取るでしょう。 なにしろ何の役にも立たず国庫の予算を食いつぶすごく潰しもいいところ……反対にこれまでの経費を請求したいところです!」


真っ黒な笑いを浮かべる丞相が怖い!!


確かにあの者どもの浪費は目に余るものがあり、偶に人間の姿に戻ると後宮の経費が膨大で早く一人に決めろと丞相に追い立てられていた。


どうしてかと言うと、王が正妃を迎えた時は後宮を一旦解散させ正妃だけ残し側室は宿下がりさせ、正妃が子を産むか十年間子が出来ない場合は側室を入れる習わしだったからだ。


勿論、余はミユキ以外側に置くつもりは無い


子供など出来ずとも別段問題ではなく、王など言うのは一番神力の強い者が天帝に認められ王位に就くのだから血など関係無いのだ


「それでは陛下、ミユキ様が来る前に重臣共に優しく説得でも致しましょうか」


「そうだな、久しぶりの余の尊顔を見せてやるとしよう」


考えてみれば百年以上は顔を見せていなかったかもしれない……ソロソロ奴等の悪い虫が芽生えぬうちに余の力を見せつけておかねばならない


「それと もう一つ助言ですが、ミユキ様は情に脆い方の様ですからその辺りを攻めて行くと宜しいですよ」


「うむ、分かった」


そして余に忠実な臣下の下に赴くのだった。










通された部屋には確かに十名の各府の府官長が首を揃えて待っていた。


余の気配を察して全ての者は既に立っており頭を下げ静かに待っておるが腹の底は真っ黒な爺どもだ、余の隙を狙っては悪巧みをして利益を得ようとする佞臣ねいしんばかりだが優秀なのには変わりなく余が楽をするために必要な人材なのだ。


余が絶大な力を示す限りは大人しく従っているので多少の悪事には目を瞑っているのが現状


中央の席に行き椅子に座り声をかける。


「皆のもの久しいの、面を上げ着席せよ」


「「「「「「「  御意に 亀王様  」」」」」」」


むさ苦しい男共が一斉に着席し余の顔を見ると皆が呆気にとられた表情で、中には見惚れて欲望を含んだ目で見る者さえいる。


これ程の美貌の女を目にして当然の反応


男の姿でも余に懸想する男共が多いのだから女の姿ならば尚更の事――当然の反応だが


どうでもいい相手の気を引いても意味がなく、ミユキにはこの美貌になびきもしない


何故だろう????


「此の度、そなた達を呼び付けたのは余の伴侶を正式に決めた事を報告するためだ」


途端にどよめきが起こり、そして特に三人の側室の親が色めき立つ


「それは真ですか!!」


「一体誰でしょうか!?」


「三人の側室様の内の一人」


やはりと言おうか勘違いをしておる…誰がそなた達の性悪娘達を選ぶものか。


「そなた達に悪いが余の選んだ伴侶は人間だ」


そう言った途端に予想通り反対意見が飛び交う


「人間! たかが人間をこの国の正妃にしようと言うのですか!」


「そのような話は我等が納得致しません!」


「伴侶はしかるべき亀族の姫をお迎えください」


「人間など伴侶にすれば陛下が侮られてしまいます」


一斉に臣下達は意義の言葉を次々と喚きだして鬱陶しい事この上ない


「そなた達誰に意見しておるか! 余は既に決定した事を言ったまで。異を唱える者は前に出るがよい」


一括し、艶然と微笑んでやると皆一様に顔を青褪めさせるが娘を側室にしている大理府長官が声を振り絞り言う


「でっですが…それではこれまで長きにわたりお仕えしていた側室様達があまりにも憐れでなりません。 どうかご再考を……」


何が憐れだ、後宮で贅沢三昧をし好き放題に居座っていただけの存在……体の関係があったが全て此方が襲われた被害者だ


昼寝をしていたら何度上に乗られた事か―――――恐ろしい女達だった。


「長年仕えたとは面白い事を仰いますね大理府長官。どの側室様も陛下の寵愛を既に受けなくなり二百年以上たっており御子様の一人産んだ訳でも無いのに後宮に居座るなど厚かましい限り。此処は潔く身を引く事をお勧めいたします」


丞相が冷たい声で提案するが往生際が悪く尚言い募る。


「我が娘は陛下の正妃になるのを夢見ておりました。どうかご慈悲を」


「何を勝手な事を それなら我が娘も同じ事!」


「私の娘の方が美しく正妃にふさわしい!」


終いには三人の親が争い始めるので呆れるしかないが何時まで見守る程気は長くない


煩い者は消してしまえばいいのだと思い三人の真下に瞑道の穴を開けてやるとズボリと穴に落とさせ首まで落ちたところを穴をすぼめさせると、床に首が三つ突き出た形になりまるで切られた生首状態


「丞相、その目障りな者達の首を刎ねよ」


「御意」


丞相は余の命を受け一人の頭に剣を突き立てる。


「残念ですよ貴方のよな優秀な人材を失うのは、でも安心して下さい後には優秀な者が大勢控えていますから」


ニッコリと微笑み他の家臣たちにも何時までも自分の地位が安泰でない事を知らしめる。

「「「 ひぇ~~~ お許しを―――  娘達は直ぐ引き取ります! 」」」


三人の府長官はその後直ぐに引きずり上げて改めて側室達の引き取りを確約させた。


他の者達も顔を青褪めさせ部屋は静まり返っており、当分は余に逆らおうなどと考えないだろう。


「それではこれから余の伴侶を紹介したいが今だ到着せぬ。暫し待つがよいが、一つだけ忠告しよう…余の伴侶に不快を感じさせたら即刻瞑道の闇に落すと覚悟せよ」


「「「「「「「「「  御意に……  」」」」」」」」


重臣どもを睨みつけ釘をさしておく


もしこ奴等の態度が悪くミユキに悲しい思いをさせたら八つ裂きにしてくれよう


ミユキを泣かしていいのは余だけ……否、泣かしたい訳ではなく笑って欲しい


そう言えば笑顔を見たのも一度っきり


ああ~~ もう一度見れるだろうか……


無理やり伴侶にすればより嫌われるのは分かっているが…止められない。


丞相がミユキを伴侶にごり押しするお膳立てに便乗してしまた今、突き進むしかないのだった。











王様は神力に物をいわせた暴君です。そうでなければ亀の姿で寝てばかりの王様なんて家臣がついて行くわけがありません。それも丞相のサポートがあっての事なので頭が上がらないという設定

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