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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
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自虐と私






宴が開かれるその日は朝からお風呂に入れられたり隅々までリューリンちゃんに磨かれる。


これまでは何とか断って来たのに今回は上からの命令らしく譲らない


「自分で洗うから大丈夫! お願いだから一人で入らせて」


しかしリューリンちゃんは夫の操縦法心得た妻のように私を攻めてくる。


「やはり私のような者がミユキ様にお仕えするのは相応しく無いのでしょうか……御主人様に他の侍女に… 「 洗って下さい…… 」 はい! 」


綺麗な瞳に涙を溜めて言うものだから拒否できない。


ハッキリ言って嫌だ


二十三歳の貧相な体を十四歳のナイスバディーな少女に晒すなんて、どんだけ羞恥プレイなのよ~


洗髪なんて美容院だと思えばいいし、体を洗って貰うのもエステだと思えば許容できるかもしれないが…大人な自分よりも大人な体の少女にして貰うとなると変なプライドが疼いてしまう…


自分の発育不良な体が恨めしい~~


結構大食漢な私は友人「痩せの大食い、なんて羨ましい体質」と羨ましがれたけど寸胴な体はコンプレックスだった。


母と父は標準体型なのに一体誰に似てしまったんだろ……


リューリンちゃんに優しく体を洗われて心はすっかりブルーだ。


なにせブラのサイズはAA65㎝でAカップに僅かに足りない、決してAAAを無理してAAカップにしていません絶対に


そんなの変わらないだろうって! 私のは大いに違います!


ああ~ 世間の目は無情だ……


シク シク シク シク


リューリンちゃんはそんな私の心の葛藤も知らず頭から足のつま先まで嬉々として懇切丁寧に洗ってくれる……まさか私の事を年下なんて思って無いよね。


否……この際年下と思われた方がいいのか?


今から年齢の話題は出さないよう気お付けよう。


そして精神的ダメージを深めながら漸く解放されたかと思えば次は着付けをされられる。

此方には基本地球のようなブラやショーツが無く、浴衣のような白い肌着を着せられるだけなので異和感が拭えない、ブラはいらないからせめてショーツが欲しい。生理が来た時如何するのかは近づいてから聞くしかないけど、絶対ナプキンなんて有ろう筈が無い……不便すぎ、如何に現代日本が恵まれているか実感。


しかし、リューリンちゃんに生理があるのを驚かれたらどうしよう……立ち直れないかも


うっう……早く帰りたい!


その為にも今夜が勝負


あの強姦魔を説得しなければならない。


如何に自分が勘違いしているかを分からせないと。ルインさんや牡丹の君を私の両脇に並べれば数段も下に色落ちるであろう、それで駄目なら実年齢をばらせばロリコン趣味の人間は高確率で引くはず!


我ながら自分を貶めるなんて自虐的な作戦


それでも駄目なら自棄酒飲んで暴れてやる!!


その姿を見て引く可能性もある。


「ミユキ様 何処か痛いでしょうか」


私が浮かない顔をしているせいか髪に着け毛を付けているリューリンちゃんが自分の不手際の所為だと思ったらしい。


「チョッと疲れただけ、それよりこの着け毛はどうしたの? 確か私のような黒い髪は殆どいないんでしょ」


「はい、そうなんです。でも御主人様が特別に茶色の髪の着け毛を黒の染料で染めさせたようです。その所為か少々ミユキ様の地毛のように艶やかさがいまいちですがとてもお似合いです」


今まで一度もロング―ヘヤ―にした事が無いので新鮮だ。平安時代のお姫様のように美しく真直ぐ垂らされ、絹の美しい水色に白い花の意匠に金糸が施された着物を着せられ女としては嬉しい。鏡の自分が五割増しに綺麗に見えるから不思議。


これで化粧をすればそれなりに見えるのではないかと自分でも錯覚してしまうが、鏡に映る自分とリューリンちゃんを比較すると溜息が出そうになるのを我慢する。


早く帰れないと卑屈な人間になってしまいそうだった。










「ま~ ミユキ様なんて愛らしいお姿!」


私を迎えに来てくれた牡丹の君は私を見るなり誉めてくれる……こんな美女に綺麗と言われればうがった見方をしてしまいそうだが、子供っぽいが愛らしいという表現は素直に受けいられそうだ。


「牡丹の君も今日は益々お綺麗ですよ。 やっぱりこう言う渋い色合いの衣装の方が華やか髪とお顔をひきたてさせ色っぽいです!」


「ま~ ミユキ様ったら /// 」


はにかみ頬を染める牡丹の君は益々色めく


まさに眼福


牡丹の君の衣装は深緑色に萌黄色の蝶の意匠に金糸銀糸が施された見事なもの


本当は黒い地に真っ赤な牡丹をあしらったのを着て欲しいかったけどチョッと婀娜っぽくなりすぎるような気がしたので此方の色を勧めてみたが正解のよう。 否、これだけの美女ならな何を着ても似合うのかもしれない


私と牡丹の君、二人並べば男がどちらを選ぶかは一目瞭然


だが相手はロリコンの変態


こんなに色っぽいと逆効果?


変態の気持ちは分からないのでいまいち読めない……保険として小さい女の子が居ればいいのだがお酒の席では望めないだろう


「今日は一体何人ぐらいいらっしゃるんですか」


「それが主人が場所も人数も全てが秘密だと教えてくれないのです」


「えっ? それじゃあどうやって行くんですか」


迎えに来てくれた牡丹の君が知らないなんて変な話


私が不思議がっていると牡丹の君が懐から黒いビー玉のようなものを取り出し見せてくれる。


「これは瞑道を開ける神力を練った黒玉です。これを壁にぶつけると瞑道が開かれ特定の場所に繋げてくれますの」


どうやら魔法の玉らしく私がこの世界に落ちる前に通った狭間の世界を開くらしい……もしかしてこれを使えば帰れる!!


思わずその玉を凝視してしまったせいで牡丹の君も察したようで申し訳なさそうに言う。

「狭間の世界は暗闇で迷えば永久に彷徨う恐ろしい場所。私にも危険な場所ですので決して自分の世界に戻ろうとは思ってはいけません」


「はい……そうですね……これ以上私も迷子にはなりたくないです」


悔しいが何の力も無い人間の取るに足りない女でしかない私


誰かの力を頼らないと帰るなんて出来ないのだ。


早く強姦魔に諦めて貰って私を元の世界に返してくれるよう説得するしかないのだ


平凡な日々が懐かしい


異世界トリップをするならトリップに憧れる弟にして欲しい。それかせめて魂の入れ替わりと言うパターンもあるらしいからこの際私と弟が入れ替わるそれでも良いよ~


項垂れる私に慰めるように手を取り言う牡丹の君


「さあ、宴には珍しいお酒や料理が用意してありますので楽しみましょ」


「そうですね。 思いっきり楽しみましょ」


私が笑顔で応えると安心したように微笑む牡丹の君は、黒玉を壁に投げつけるとそこに暗いトンネルの入り口が開き、牡丹の君に手を引かれてそのまま瞑道に入る。


そこは本当に真っ暗な闇が広がっており何も無く恐怖が湧いてくるが牡丹の君の姿だけがポッカリ浮かび上がって手を引かれていなければ上下左右の感覚も分からず慌てたかもしれない。


「本当に真っ暗ですね……牡丹の君は道が分かるんですか?」


「いいえ、でも迷わずま直ぐ進めば出口が見えるのです」


その言葉通りに出口らしき光が見えて来て安心し、そして確かに私では自分の世界に戻れないのを納得してしまう。


「さあ着きましたよ」


手を引かれたまま闇を抜けると眩しさで一瞬目の前が真っ白になるが直ぐに目が慣れるとそこは着飾ったルインさんが立っていた。


「貴方、ミユキ様をお連れ致しました」


「有難うアンチョン――ようこそ御出でくださいましたミユキ様」


にこやかに歓迎してくれ、無難に返す。


「今晩はルインさん。ご招待有難うございます」


「今宵のミユキ様はとてもお美しいですよ」


腹黒そうな微笑んで一㎜も思って無い言葉を空々しく言う


「有難うございます。ルイン様もとてもお綺麗ですわ」


大人な私は微笑んで返す。


この場合ルインさんも牡丹の君に負けず劣らず麗しいので嫌みにならないのが悲しい……


「それでは皆様がお待ちかねですので此方にお出で下さい」


私はわざと大袈裟に喜び牡丹の腕を取って組み急かすように言う


「さあ牡丹の君急ぎましょ。皆様を待たせては悪いですわ」


「そうですわね、一緒に参りましょ」


それに楽しそうに応えて来る牡丹の君は可愛い


ルインさんの背中は嫉妬で燃え盛ってるのが伺え楽しいけど程々にしないと後が怖い。なにせお世話になっている人なのでまだ路頭に迷いたくはない


そして案内された場所は広い部屋で総板張りの床に赤い毛氈が敷かれておりコの字型に並べられたテーブルには左右には着飾った物々しそうな人々が十人程座っていたが、私達が現れると一斉に立ち上がり恭しく頭を下げる。


思わず背筋に冷たいものが流れたように緊張する。


絶対に変、これはただのお酒を楽しむ宴ではないのを直感する。


これはヤバい! 直ぐさま逃げ出したい衝動にかられて踵を返そうとするが何時の間にか後ろに回っていたルインさんが前に立ちはだかる。


何時の間に!!??


立ちはだかるルインさんの顔を見上げれば、その顔には黒い笑みを浮かべて本性を現し始めた。


「主役のミユキ様がどちらに? 主賓席をご用意させて頂きましたのでどうぞ此方へ」


グイと右手を掴まれて問答無用で引きずられる。


やっぱり腹黒だった!!


「貴方! ミユキ様をどうするのです!?」


牡丹の君は青い顔をしてルインさんを信じられない顔で見ていたので牡丹の君がグルでないのがせめてもの救い


「これは国家の大事、陛下の伴侶のお披露目でもあるのですからアンチョンの口出しは控えなさい」


牡丹の君は悲しそうに顔を歪めるが何処ともなく現れた簡易な鎧のようなものを着た女性兵士二人によって退出を促される。


「申し訳ありませんミユキ様」


「牡丹の君……」


すれ違いざま涙を流し謝りながらその場を退出させられて行ったのを見ているしかなかった。


矢張り陛下の伴侶って私か??


一体何時私が了承したんだろう……ルインさんの後姿を睨みつつも此処で喚いても仕方ないので元凶と対峙するしかないよう。


多分この場にいる人々はこの国の大臣クラスの重鎮達が私を見定めに来たのかもしれないが今一ルインさんの考えが分からない


私が強姦魔を嫌っているのを理解しているはずだからこの場で私を引き出すのは強姦魔とくっつけたがっているルインさんには不味いような気がするのだけど


確実に私がこの場をぶち壊すのは目に見えているのだから


そして中央の席に立っている人物の目の前に突き出される。


「陛下、ミユキ様をお連れ致しました。


私は強姦魔を睨みつけるべく前を見て目が点になってしまい思わず叫んでしまう。


「なんじゃそりゃーーーーーーーー」


そして部屋は静寂に包まれるのだった。










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