ミイラ取りな丞相と私
「プッハーーー 五臓六腑に滲みるとはこの事ね 」
その晩私は久しぶりのお酒を味わう事が出来て感無量
図々しいと思いながら、思いきってお酒をおねだりしてみると数種類のお酒とおつまみを用意してくれ、しかも両脇には絶世の美女を二人も侍らせて私が男ならウハウハの状態だろう。
一人はモスグリーンの髪をした知的美貌ながら巨乳を持つルインさんともう一人は赤い髪の色っぽい人妻の牡丹の君
まさに花を愛でながら飲むお酒は美味しい!
チョッとオヤジっぽいけどもうどうでもいい、ここは異世界無礼講よ
「さ~あ ミユキ様、此方は麦で造った蒸留酒ですの」
そう言ってルインさんが私の小さなガラスの器に注いでくれるとそれは琥珀色の液体で匂いを嗅いでみるとウイスキーに似ており舐めてみるとやっぱりウイスキー
どうせなら氷を入れてハイボールで飲みたいけど贅沢は言えない
グイッと一気に飲むと食道が少しピリピリ焼ける感覚が堪らないそして胃に到達する
「美味しいです!」
「ま~ ミユキ様はお酒にお強そう。 今度は私のをお飲み下さい」
次に私は牡丹の君が勧めてくれるお酒を新しいグラスで受けると今度は透明な液体で匂いは日本酒に近い、一口飲んでみるとさわやかな香りが広がり非常に飲みやすい。
「なんか日本酒ポイです。これは何のお酒ですか」
「テヤと言う穀物を麹で発酵させたもので玄武国では一般的なお酒です」
まだこの世界に来て間もないけど日本酒に似たお酒を飲み思わず懐かしくって嬉しくなる!
「牡丹の君お代りお願いします」
「はいどうぞ」
「あっ 次は私が注ぎます」
牡丹の君から急須のような物を取り上げ二人のグラスに注ぐ
「さ~ 皆で乾杯しましょ」
「乾杯とは何ですか?」
「そうですね……私の世界でお祝いの時や出会いなどの時にお互いのグラスを触れ合わせてからお酒を飲み干して喜び合うんです」
「ま…… 楽しそう。 貴方三人で乾杯しましょ」
牡丹の君を愛おしそうに見詰めながらルインさんも賛同する。
「それではミユキ様と陛下の出会いに乾杯いたしますか」
陛下……私は不穏な名詞を無視する為に音頭をを取る
「二人ともグラスを上にあげて乾杯と言ったらグラスを合わせて下さいね」
二人は酒の入ったグラスを頷きながら上に掲げてくれる。
「それでは、私とルインさん牡丹の君の出会いを祝して乾杯!!」
「「「 乾杯!!! 」」」
カッキィーーン!
微妙に二人の顔はひきつっていたが同時にお酒を飲み干しそれからは次から次へとグラスを空けて行き宴会気分で楽しむ。
美味しい料理にお酒があれば幸せだ
辛い仕事の後のビールが大好きで、最近では第三のビールだったけど十分美味しく疲れた心を癒してくれた。異界の地であろうが地球の未開発の地でもお酒が存在している限り生きていける様な気がする。
いや、水洗トイレとお酒に訂正しよう。
勧め上手な二人の所為で酒豪な私もほろ酔いき気分で気分は最高
異世界に落ち着てから味わったストレスを一気に解消出来、気もユルユルなそんな時だった。
「ところでミユキ様は陛下の何処お嫌いなのでしょう」
突然ルインさんが強姦魔の話を振ってくる。何時もの状態ならスル―してしまうけど酔った私の口は通常の二倍はたがが外れる。
「あいつは最低です! それにあの顔が許せない!! 男のくせにあんな綺麗な顔なんて女の敵です。あんなのが居たら私なんて女の価値ゼロじゃあないですか、男の半分以上はゲイになっちゃって出生率の低下、敢ては人類衰退の危機です! ルインさんや牡丹の君のような美女ならいいですけど世界の大半は私のような普通の容姿なんですよ、それを化粧をして髪形を工夫し、少ないお給料から自分に似合う服を買い日々努力しているのに、あの男はスッピンでありながらあそこまで美しいなんて女を冒とくしてます。それに何ですあの金の髪は、まるで蜂蜜を溶かした様な艶やかさ!! 私だってロングに憧れてるけど伸ばすとくせ毛が酷いせいで伸ばせないし、毎朝寝癖を伸ばすのに朝を10分も早起きするんです……朝の10分は貴重なんですよ、それなのにあいつはあんなに長いのに絡まりもせずサラサラなんてあり得ない」
「……つまり、陛下の容姿がお嫌いなんですか?」
「別に嫌いじゃありませんよ。美しいものは誰だって好きです……分かってます、これが僻みだって。私がせめてリューリンちゃんぐらいの容姿なら此処まで卑屈にならないんですけど…この世界の人は美形ばっかでレベルが高すぎ」
「ま~ 私はミユキ様はとてもお可愛らしいと思っております」
牡丹の君は私の右手を両手でしっかり握りウルウルとした目で見詰めて来るのでドキドキしてしまい、私も牡丹の君の手を確り握りしめ合う
「ありがとうございます。牡丹の君も大層お美しいです!! 私が今まで会った女性の中で断トツ一位 人妻でなかったら私が求婚したいくらいに」
「まあ~~ /// 」
しかし見詰め合いはルインさんによって邪魔される。
「アンチョングゥイは私の妻なので口説かないで下さい。それより此方の蜂蜜酒はいかがです、美容に良いとされ妻も愛飲しております」
美容にいいと聞き直ぐさまグラスを差し出し注いで貰うと、一気に飲み干す。
「甘いですねー 確かに女性好みのお酒。食前酒にいいかも」
「しかしミユキ様がこのようにお酒の好きな方とは思いませんでした」
「はい! 私の場合はご飯よりお酒の人間。お酒を飲まない人間なんて人生の半分を損してますよ絶対。 何れ結婚するなら私のお酒に付き合ってくれる人がいいと常々考えていたんです。だけど酒乱で泣き上戸とか愚痴るタイプは絶対嫌…そうそう聞いて下さい私の上司に嫌な奴がいたんですけど飲むと更に愚痴りだしてネチネチ言うんですけどアレは絞め殺したくなりますね…だけどそう言う訳にもいかないので私が犠牲になりせっせと課長のグラスに酒をついで酔い潰してから課の皆で逃げて置いてきぼりにしちゃいました。後日寄り一層目を付けられちゃいましたけど」
「あら~どういたしましょ…陛下は下戸でいらっしゃったはず」
「これ、いらぬ事を言うでない」
「プップップップーー あいつ下戸なんですか!!! こんな美味しいものが飲めないなんて御子様ですね。 否、御子様の割にはやる事はやってくれたわ~~ 最初私は女神様だと思ってたのに突然野獣に変わるからビックリですよ!! そりゃあアレだけの美形迫られれば即OKだけど私は二十三歳ながら処女だったんです。初めてだから色々手順を踏んで欲しかったと我儘言う訳ではありませんが、せめて私はヤル前にお風呂が入りたかったんです!!」
「おっお風呂ですか!?」
「そうお風呂です! この世界に落ちてから数日着の身着のままで風呂も入らず汗や埃まみれで垢だらけの体を舐めまわすんですよ! それだけでも信じられないのにあろうか、あんな所まで、女としてどれだけ恥ずかしかったか分かりますか? 幾ら私が其の辺の石だとしても綺麗に洗って欲しかったんです!」
「分かりますミユキ様!」
「えっ!?」
まさか同意されるとは思わなかったので驚いていると、牡丹の君が溜めこんだ物を吐き出すように言う。
「聞いて下さい、ルイングゥイもそうなんです。私が湯浴みをしてからと言っても聞き入れてはくれず、私のそのままの匂いを味わいたいとか恥ずかしい事を言って事に及ぶんですの! 嫌だと言っているのに殿方には繊細な女心を全然分かってくれません」
殿方? ルインさんは女性なのに何故殿方になるんだろう?
……まあいいか?
「これアンチョングゥイまで何を言いだすのです! 酔っているようだからもう下がりなさい」
すかさずルインさんが牡丹の君を席を外させようとするのでそうはいかない、こんな面白い展開は逃せない
「待って下さいルインさん、牡丹の君を愛しているのならそう言う独りよがりな行為は嫌われます。セックスとは愛する二人がお互いを尊重し合い愛を確かめる行為なんです。嫌がる姿がそそるとか腐った思考は今直ぐ捨てるべきです」
「だがアンチョングゥイはその方がより感じて気持ち良さそうだが……」
「酷い…貴方」
「今の牡丹の君を見て喜んでいるとは酷い言い草です。確かに体は喜んでいるのかもしれませんが心では自分の意志を尊重してくれないルインさんに悲しんでいるんですよ! それに今の言い方では牡丹の君を淫乱だと言いたいんですか、直ぐ謝罪を求めます」
牡丹の君は悲しげに俯いているのを見て不味いと思ったらしくまさに妻の機嫌をとる夫の姿のルインさん
「すまない。アンチョングゥイがそのように嫌がっていたとは気付かなかった…許しておくれ」
「それではこれからは湯浴みの後にして下さいますか?」
「わっわかった。愛する妻の意志を尊重しよう」
残念そうに言う姿に少し哀愁が漂っており男に見えてくる???
気のせいだろう
「それでは二人の仲直りを祝して乾杯しましょ!!」
今日はトコトン飲む心算でお酒をなみなみと注いだグラスを注いで差し出す。
「はい、ミユキ様!」
「……」
牡丹の君は嬉しそうグラスを掲げるのに反しルインさん苦虫を潰した様な顔だがどうでもいい。かなり酔った私の思考は飲んで喋れれば何でもいいのだ。
「二人の正常な夜の営みに乾杯!」
「乾杯!」
「……」
それからも美味しいお酒とおしゃべりを堪能して夜は更けて行った。
何故か陛下の話が我々の夜の営みに話が及んでしまった??
なんだあの女は……見かけにかなり騙されてしまった。
自分を平凡だというが、異界の女は全員ミユキ様のような感じなら、向こうの男達の苦労が忍ばれる。
一を言えば十は返ってくる言葉
我が愛しい妻までミユキ様に意気投合までしてしまったのは誤算だ
そのせいで嗅ぐわいい妻の体臭と可愛らしく恥じらう姿を当分堪能できなくなってしまった。
お酒を飲まして色々聞き出したり、心の緩んだ所に陛下の事を吹き込もうとしたのに、とんだ藪蛇だ
酔い潰れたミユキ様を寝室に運び後をリュ―リンに任してきた。
妻も珍しく酔い潰れ甘い酒の香りを漂わせながら私に横抱きにされている姿を眺めていると男の性が疼いてくる。
しかし先刻約束したばかりでは事に及ぶ訳にもいかず溜息が出る。
「はぁ…… ミイラ取りがミイラになる気分とはこの事ですか?」
そして美しく美味しそうな妻を横に寝かせながら一人悶々とするのだった。