表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
12/70

お嬢様な私






目を覚ますとリュ―リンちゃんの涼やかな声が降ってくる。


「お早うございます。ミユキ様」


えっ!! リュ―リンちゃんが日本語話してる???


寝ぼけた頭で漸く、金のブレスレットのお陰で此方の言葉が理解できるようになったのを思い出す


「おはよ~ リュ―リンちゃん……」


頭をポリポリ掻きながら昨夜はルインさんの胸で泣いてそのまま寝てしまったらしい


だけど服は浴衣のような着物に替えられていた。


どうやら色々迷惑をかけてしまったみたいで申し訳ない


「お顔をお洗い下さい」


洗面器のような物を膝の置かれ水差しを持つリューリンちゃんに促され両手を差し出すと水差しから水を注いでくれるのでその場で顔を洗い、直ぐさま手拭が差し出され顔を拭く。


なに?? この至れり尽くせり!!


庶民の私には馴染めない行為


「ありがとう、だけどこれからは自分で水場で洗うから」


するとリューリンちゃんの顔が青ざめる。


「申し訳ありませんミユキ様、何かいたら無い事があったのでしょうか」


その場に跪くリューリンちゃん


ゲッゲッ! なにこの反応は?? そう言えば私の事を様づけだー!


「そうじゃないのよリューリンちゃん、怒ってるわけじゃないから~」


そう言うと安心したようにリューリンちゃんが立ち上がり、着替えや朝食の世話を甲斐甲斐しくやってくれる。


私の世界の女子高生とは大違いだ、きっと良いお嫁さんになるだろう


どうやらリューリンちゃんは私に付けられたメイド設定なんだろう…… ルインさんはきっとかなり高い身分だと思うし、私はそのお客様扱いなんだと推察する。


弟の嵌っているラノベでよくある設定だと、異世界に落ちた男女は美形平凡分けへだてなくハーレムに状態に陥るらしい。 実家に偶に戻るとシスコン気味の弟が良く異世界トリップの素晴らしさ?に熱弁を奮い、何れ自分も体験したいと痛い事を言う弟を生温い目で見守った。お互い平凡に産まれた為にラノベのような設定で自分がチートな力を得てハーレムを体験したいのだろ……その気持ちは痛いほどよく分かるけど現実を見て欲しいと常々思っていたが


まさか自分が体験してしまうとは……出来るなら弟と代わりたい


そうなると、弟があの金髪美形にレイプされるのーーー


おお~ BLだ!!


それは私より不憫かも…男の身で穴を掘られ…私より色々な意味で痛いかもしれない


あくまでも仮定だけど、あの金髪強姦野郎はこの国の王様で、これまたありがちに見た目平凡な私に一目惚れ


そして将来はこの国の王妃様になって幸せに暮らしましたとさ……おしまい


なんて有りがちな設定


寒すぎるーーー!!!


これはあくまでもラノベの異世界トリップのセオリーであって私に当て嵌まるとは限らないのだ。先ずはこの世界の知識を知るべきだろう


目の前でお茶を入れてくれているリューリンちゃんに質問する事にする。


「リューリンちゃんは私の事をどう聞いているの?」


「遠い異国からいらっしゃった大事なお客様だと伺っております」


無難な回答


「そうなのよ、だから私この国の事何にも知らないんだけど教えてくれない」


「申し訳ありません。ルイングゥイ様に止められているのでご容赦を」


ルインさんが? 何故だろう…不都合な事でもあるのかもしれない


「いいよー いいよー ルインさんに直接聞くから」


一介の使用人でしかないリューリンちゃんが主人には逆らえないだろうから、問い詰めては可哀想だろう


一年しか働いていないけど縦社会の辛さはよく分かる。私の働いていた会社はもろ同族会社で上層部はお貴族様と皮肉られていたくらいで上の命令は絶対だった。あの課長も親族だったらリストラには上がらなかったろ


「お茶をどうぞ」


「ありがとう」


「それでは御用がおありでしたらこの呼び鈴をお鳴らし下さい」


そう言ってハンドベルの小さいのをテーブルに置いて部屋を出って言った。



リューリンちゃんは良い子だけど、私との関係はかなり隔たりがある。


言ってみればお嬢様とメイドのように対等ではない。


どっちがメイドかって?


フン! どうせお嬢様とは言い難い容姿と物腰、私の方がメイド役だろうけど生憎お嬢様役の私


だから、幾ら私がフレンドリーに接してもリューリンちゃんはメイド役に徹する。


プロだ!!


私としてはもっと親しげに付き合いたいけど無理を言っては可哀想だろう


お嬢様役は暇だ、普段なら目覚ましに起され慌てて身だしなみを整え菓子パンとコーヒーで朝食を済まして満員電車にもまれて通勤してデスクでお仕事中のはず


それが優雅に今は暇を持て余している。


これからの事を考えようにもここの世界を知らないのにどうすればいいか判断できない


ルインさんが来ればもう少し状況を掴めるんだけど


そこへリュ―リンちゃんが戻って来て来客を告げる。


「ミユキ様、奥方様が御出でました」


「奥方様??」


どうやら新キャラ登場のようだ


きっとまた美形だろうと想像し、どんどん自分の容姿のレベルが低辺に下がるのを覚悟するのだった。












「ミユキに会いたい! 会いたい! 会いたい~~ 」


広い寝台の上でゴロゴロ転がりながら悶えていると髪が体に巻き付いてしまい身動きが取れなくなってしまう


「くぅ~ なんて鬱陶しい髪だ!」


意味もなく伸ばし続けた髪だが流石にこの長さになると邪魔だ


一体何時から切るのを止めたんだろうと思い起してみる。


そうだった……爺やが死んで以来誰にも切らさなかったのだ


「爺やが居てくれれば… きっとミユキの事に親身に相談してくれたのに」


余の父親は人間だった為に、亀族の姫だった母親と婚姻を結んで命の半分を分け合った為に余が子共の頃に死んでしまってから爺やが育ててくれた。


爺やが死んで全てがどうでもよくなった気がする。


王にだってなりたくなかった


怠け者の余が王になどなってしまったのもあの根性の腐ったいじめっ子の天帝の所為だ!

ああ~~ ミユキが側に居てくれたら頑張って王様をするのに


何時もミユキが横にいて余が亀王印を押す手にミユキが手を添えてくれば幾らでも押すのに~~


金の髪です巻き状態の情けない姿で顔をデレデレさせていると流石の美麗な姿も一歩引いてしまう


「陛下……何をしておられるのですか… 王宮に戻られたなら少しは仕事をして貰わないと困ります」


声の方を向けば丞相が不機嫌そうに突っ立っている。


「おお~ 丞相、ミユキはあの腕輪を喜んでくれたか!」


髪を直ぐさま振り解き、丞相に跳びかかる!


「はい、言葉が話せるようになったミユキ様はそれは嬉しそうに色々話して下さいましたよ」


色々! しかも嬉しそうに!!  許さん!


「おのれ~~ 余を差し置いてミユキの全てを知ったのか!!」


絞め殺そうと手を首にやろうとすると一膳の箸が突き付けられる。


「これはミユキ様がお使いになったお箸ですがどうしましょう? いりませんよね」


ポイ!


あろうことか後ろに向かって放り投げるので、床に落ちる寸前でそれを受け止める。


「なんと情けない姿…」


「お前がさせたんだろう!」


箸を懐に大事に仕舞いながら丞相を睨みつける。


「防衛策ですよ、陛下を訪れる度に嫉妬で殺されてはたまりませんからね」


「煩い! それよりミユキの話をせよ」


「それが、ミユキ様の話を聞くと驚いた事に天帝様がお関わりなっていたようです」


「何故天帝が!?」


丞相の話を聞きミユキは天帝の所為でこの世界に落ちて来たらしい


「余は初めて天帝に感謝したぞ~~」


「そんな事ミユキ様に言わないで下さい。本人はいたく天帝様にご立腹の御様子」


「そうなのか……」


「それと陛下にもかなりご立腹されており、陛下のお話をしようとすると話を逸らされてしまいます」


「うっうう~~~ 丞相何とかしてくれ~~~~」


泣きついて縋り付く


「今、傷ついたミユキ様のお心何とかしようと妻に手伝って貰っておりますので陛下はそれまで決してお会いにならないでください」


「そんな~~~~ 」


「王都の外に陛下とミユキ様の新居を急いで作らせますので、それまで御辛抱を」


「嫌だ!」


呆れたように溜息をつく


「はぁ…… そのように子共のようではミユキ様にも呆れられますよ」


自分でも子供ポイとは思うがミユキ限定だ


「うるさい! ミユキに会わせろ! 何とかミユキと会えるようとり図れ! 」


子供のように駄々をこねると、丞相は案外簡単に了承する。


「わかりました」


「え? 本当か!」


「その代わり今まで溜まった書類に王印を押して貰います」


「仕方あるまい……この部屋に持って来るが良い」


矢張りタダではなかった、きっと余の要求を見越していたに違いないがミユキに会う為ならそれ位なんでもない


「それでは直ぐに持って参りますのでお待ちください。それとそれが終わるまではお会いできませんから」


「分かっておる」





数分後、丞相は山のような書類の束を持ちこみ、余が唖然としている内に風のように去って行った。


「く~~~~ 絶対三日で終わらしてやる~~ 」


書類の山を目にして王印を押し続けるのだった。










補足 四神国の神族が正式な婚姻を結ぶ時お互いの寿命を等しく分けあいます。人間と神族の場合人間はかなり寿命が延びますが神族の場合寿命を半分近く減らす事になります。もう少し詳しくはムーンライトノベルズ投稿の「龍王の伴侶」を読んでみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ