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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
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お屋敷と私






強姦魔は私に言われた事がショックだったのか追ってこない


きっと産まれて初めて女にすげなくされて落ち込んでいるのかもしれない。しかも私のような普通な女に振られるなんて相当なダメージだろう


平凡な人間は挫折だらけだけど、あいつは今までそう言う事味わった事のない人種だ


フッフッフッフッーざまあみろ! 少しだけ優越感に浸れる。


どうせ私は卑屈よ


でも人間なんてそんなもんよと開き直る


○糞を経験した私は一皮むけた




通された部屋は太い柱は黒い漆塗りのように黒光りし壁は白い漆喰のような土壁、床は畳みではなく板張りだがこちらも黒い漆が塗られていて美しく磨かれ渋い光沢を放っている。


中央には巨大な切り株の輪切りを使用したテーブルに木製の背もたれのない椅子が置かれていてそこに座るよう促される。そして用意されていたお茶のセットでルインさんは楽しそうに私に急須でお茶を入れてくれている。


『 ドウゾ オ飲ミクダサイ ミユキ様 』


「ありがとうございます」


相変わらず言葉は分からない


アレ? そう言えば強姦魔は言葉が通じて会話もしたような???


どういう事?


訳が分からない


取敢えずルインさんが淹れてくれたお茶を味わうと、それは正に煎茶の味と香り


煎茶はやっぱり日本のお茶、心が落ち着く


目の前ではニコニコ美しく微笑んでいるルインさん


考えてみればこの人も得体の知れない謎の人物


さっきも助けてくれるのかと思えば私を盾にした様な気がしたのは気のせいなな


所詮は美形、油断していると足下を掬われるかもしれないけどこの世界で頼れるのはルインさんしかいない


日本人必殺技、曖昧スマイルで対応して乗り切ろう


『 ミユキ様 コチラデ少々オ待チクダサイ オ世話ヲスル者ヲ連レテマイリマス 』


「?」


ルインさんが何か話すのを取敢えスマイルで対応すると立ち上がり部屋を出て行く


他人の家なので勝手に動き回る訳にもいかずお茶を飲みながら待つしかない


本当に此処は異世界らしいけど、どうすれば元の世界に帰れるんだろう


あの金髪美少年なら私を確実に元に戻せるけど、今一当てに出来ない気がする。


そもそも私の世界に何の用があるんだろう?


しかも私の部屋を使うってどういう事??


このまま私が会社に出勤しなければ、会社から実家、実家の母がアパートに確認に来るだろうからその時私の失踪を知り大騒ぎになるはず。その前に戻りたいけど既に無理だろう

アパートを訪れた母が金髪美少年と出くわし私の事を問い詰め、反省した少年が迎えに来るのを待つしかないのかもしれない


まさに人生の落とし穴に落ちた気分


平凡だった人生が如何に幸せだったか思い知るのだった。







あれやこれやと考える内に一時間程過ぎた頃だろうか、ルインさんが戻って来てその後ろには高校生ぐらいの綺麗な女の子が背後にいた。


女の子の髪は今時の茶髪に目の色は緑、普通レベルの美人さん


もしかしてこの世界の顔のレベルはかなりのハイスペックなのだろうか


これじゃ私は普通以下のレベルじゃないか


私の卑屈さが増しそうで嫌になる。


『 お待たせしましたミユキ様 この者はミユキ様のお世話をさせていただくリューリンです 』


『リューリンです。ミユキ様 不束者デスガ精一杯オ世話サセテ頂キマス 』


少女の最初の言葉がリューリンと名前っぽい


「リューリン?」


『 はい、ミユキ様 』


呼んでみると返事をしてくれるので正解のようだ


よく状況は飲み込めないけど笑ってこの場を流すしかないのだった。


こうなったらなる様になれと、この状況に流さを身を任す










久しぶり戻った王宮の余の寝室に戻った途端、誰かが扉を叩いて開けろと煩いので結界を張って誰も入れないようにする。


勿論、雑音も入ってこない


ミユキに嫌われ生きる気力すら湧かず、寝台にミユキが着ていた服を綺麗に伸ばして並べその上で横になり少しでもミユキを感じたかった。


どうすればミユキを手に入るんだろう


一度はこの手に抱いたのに


爺や言う通り手順を踏まなかったのいけなかった


余の名前すら告げず


愛しているとすら一言も言わなかった事を今さらながらに思い出す。


だけどあんなに気持ち良さそう何度も絶頂を迎えていたからミユキも余と同じ気持ちだと勘違いした。


ミユキに叩かれた頬がまだ痛むようだ


産まれて初めて他人に叩かれたがミユキが許してくれるなら何度でも打たれたい


毎日打たれたっていい


こうなったら最初っからやり直さないと


先ずミユキに謝り、自己紹介をしてから愛の告白をしよう


余を受け入れてくれるまで何度でも愛していると囁こう


その為にも丞相が来るのを待ち、ミユキを宥めて貰って会わせて貰うのだ


丞相に借りを作ると扱き使われそうだが致し方ない


全てはミユキを得るため


ひとまずは丞相が戻ってくるまでミユキの服の匂いを満喫しながら眠りにつく事にするのだった。












ミユキ様を侍女に任せ陛下の下に急ぐ


しかしミユキ様は面白いお方、あの陛下のご尊顔を何の躊躇いもせずお打ちになるとは中々剛毅なお方


クックックックックック


今でも陛下の間抜けな顔が笑える!


今頃落ち込んでいらっしゃるだろう……これを機に積年の鬱憤を晴らさねば


その為にもミユキ様をとりいらないとならないが、ミユキ様との言葉の遣り取りが出来ないのは問題だ


陛下は既にミユキ様が操る言語を解しているご様子なので、言葉を訳す為の神具を作って戴こう


瞑道を陛下の寝室に繋げて行くと案の定寝台で寝ている。


全く惚れた少女にすげなくされて泣いているかと思えば寝ているとは……陛下らしいと言えば陛下らしい


よく見れば何か小汚い布を抱きしめているが見え、興味に惹かれその布を取ろうとした瞬間、陛下の手が私の手を掴み取るので驚く


ガシッ!


「!! 陛下! 起きておいでだったんですか! 驚かさないで下さい」


陛下はガバリと起き上がり、布を大事に抱きしめ怒りだす。


「おのれ~ ミユキのみならず、ミユキの服まで奪うつもりか! 許さんぞ」


ミユキ様の服??? どちらかというと下着に見えるが


「恐れいりますが陛下…何故ミユキ様の服を抱きしめていらっしゃるのですか」


「ミユキの代わりだ… 本人に拒否された以上、余にはこれしか残されていない」


怒りから一転、肩を落とし項垂れさめざめと言う


一見一途に見えるが実情は少し変態臭を放っているのは気のせいか?


しかし陛下の趣味がミユキ様のような普通の少女だったとは盲点


道理で国から集めた美女に見向きもしなかったのかと納得する。


「ところで陛下、ミユキ様とはどうやってお知り合いになったのですか?」


「空から落ち着てのだ……」


「人間が空から降ってくるなど面妖な… 誠ですか」


「異界から落ちて来たようだ」


「異界人! それなら言葉が通じない訳なのですね」


あの黒髪も黒い瞳も異界人ならば納得する。


しかしどうやってこの世界に落ちて来たのだ? 神力もない普通の人間が


不思議な少女としか言いようがない


「ところでミユキは如何して居る? 余の事を何か言っていなかったか?!」


「言葉が通じないので分かるはずがありません。そこで提案なのですが陛下はミユキ様の言葉を解されるなら、ミユキ様の為に此方の言葉を話せるようになる為の神具を贈られたどうでしょう。 きっとミユキ様もお喜びになりますよ」


「ミユキが…… いや、駄目だ 造らん!」


「何故ですか!?」


「そんな事したら大勢の者とミユキが会話してしまうではないか! ミユキと会話出来るのは余だけで十分!」


「陛下…… そんな風ですと益々嫌われますよ」


「うっ そうなのか!?」


「そのように束縛されると女性は男性を鬱陶しく感じるもの、逆もしかり、陛下がミユキ様以外の女性にほかの女性と口を聞くなの言われたらどう思われますか?」


普通の女性なら陛下にそんな事言われれば腰砕けものだろうがミユキ様には逆効果な気がする。


「そんな女は御免だ……!! ミユキもそうなのか~~ 」


情けない声を出す陛下。 此処で畳みこんで神具を造らせねば


「そうです! ミユキ様も言葉が分からず難儀しているご様子。そこで陛下がお造りになった神具をお贈りになればミユキ様も陛下を見直すはずです」


「成程…」


「言葉が通じればミユキ様に如何に陛下が素晴らしいお方か私共がお教えいたします。いかがですか?」


「分かった! 余はミユキの為に神具を造るぞ!」


陛下は叫ぶと両手を合わして神力を練り始め徐々に掌を離していくとその空間に金色の光が凝縮していき、一つのリングを形成して行き再び両手を合わせて閉じ込めて口から呪語を呟く


「 ᆧΞφΕΨθ§ ο∑§Θ§Θ∀  ο∑§ΘΞφΕΨθ§ Θ∀  †§ΞφΕΨθλΧ  」


私にも聞き取れない


再び掌を開くとそこには金色に輝く一つの腕環


陛下はそれを私に差し出す。


「ミユキに渡すがよい」


「必ずミユキ様に」


「必ず余からだと伝えるのだ」


「分かっております」


「それとミユキの前では男の姿に戻るな! 赤子であろうと男を近づけてはならん! 」


「はいはい」


あまり長居しない方が良いようだ


「近日中にミユキ様を陛下の下にお連れしますので暫しの御辛抱を」


「頼んだぞ丞相」


「それでは陛下失礼致します」


預かった金の腕輪を大事に懐に仕舞い、瞑道を開けミユキ様の待つ屋敷に帰るのだった。

瞑道の暗闇の中、金の腕輪を懐に陛下のミユキ様に対する執着は驚かされるばかり


少し甚振ろうかとか思ったがあまりにも陛下がお労しいので止めておいた。


あの少女の何処にそんな魅力があるのやら??


兎に角陛下がその気になったのは喜ばしい


何とかミユキ様に陛下を受け入れて貰わねば


しかし陛下のあのご尊顔を目にしてなびかないとはある意味驚嘆する。


顔しか取り柄のない陛下


どうミユキ様にお勧めしようか悩むところ


矢張り顔か?













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