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玄武国物語 「私と王様」  作者: 瑞佳
第1章 私と王様
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落ちた私

このお話は青龍国物語シリーズと同じ世界のお話ですが読まなくても大丈夫です。

ここは四神国の一つ玄武国


他の三国に比べてのんびりとした平和な国で亀甲族も人間も仲良く暮らしていました。


何故なら王様は呑気で面倒くさがり屋で争い事が大っ嫌い


そんな人間が何故一国を背負う事が出来るか甚だ疑問だ


しかし王様は天帝様に次ぐ巨大な力を持っていた為、自分に逆らう者や争う者達を力でねじ伏せ黙らせてしまい、その内に誰も争うの止め国中の亀族も人間も王様に習いのんびり気楽に暮らすようになる。


歴代の王がそうだった訳でなく今の王は特別


亀甲族は神族の中でもかなりの長寿で普通でも千年以上は生きるのだが王様は既に千五百年以上生きており、まだまだ若く後二千年は寿命がある。


人間の時は金の髪を引きずるように伸ばし海のように深い紺碧色の双眸を持った精悍な青年でお年頃だが、恋をするのは面倒くさいとばかりに丞相や側近が勧める娘に見向きもしなかった。


そして周りがあまりにも伴侶を持てと煩いので、転神した姿、山ほどの大きさの巨大な亀の姿のまま暮らすようになり、政務の殆どは丞相や側近達に任せて、年に数回だけ人間の姿に戻って仕事をするだけ、後は王都の人々の生活を眺めながら暮らすと言うなんとも怠け者


因みに王都の側にそびえ立つ高い山が王様


だけど国の全ての民が王様が大好きだった。


何故ななら王様が見守ってくれているお陰で平和で豊かに暮らせるのを知っていた。


これはそんな王様の恋の話








「キャァァァーーーーーーーーーーーーーーーーァアッ」


玄武国の亀王きゅうおう、チョングゥイは今日ものんびり日光浴をしていると空の上から一人の少女が悲鳴と共に落ちて来た。


かなりの高度から落ちて来たのだろう、凄い速度でチョングゥイの鼻さきにめり込む様に落ちた為にかなりの激痛を感じ鼻先を見ると無残に体の骨が折れて息絶え絶えの人間がいるのが伺える。


このままではこの子は死んでしまい鼻先で腐食して行く事が容易に予想でき、それでは臭くてオチオチ昼寝も出来ない。 それは困ると思い、その子にチョッとばかりの神力を流して体の傷んだ場所を全て治して上げた。


親切心と言うより死体を捨てるのが面倒なだけだった……








私こと橘深雪二十三歳職業OLは絶賛落下中


バンジージャンプもパラシュート降下の経験もないがこれだけはハッキリ言える。


絶対それらより過酷だと!!


今の私の恰好と言えば部屋着のキャミソールとお洒落な花柄ステテコ


こんな薄着の為にもろに外気と風圧を体感してしまい、風圧が半端無く痛くて体が凍るように寒い


それだけで死にそうなのに下を見れば地上が見えて来て落ちれば確実に死ぬだろう


水面に落ちたとしてもこれだけの高さから落ちればコンクリ同様の硬さだと聞いた事があるので何処に落ちようと死亡決定


私死んじゃうの!!!


何がいけなかったんだろう


死ぬ間際に走馬灯のように人生を振り返ると言うが今がその時


平凡な両親と兄と弟の五人家族で何の変哲もない人生を送って来た、平凡レベルの小中高大学と順調に進み、就職難のこの時代により好みせず地方の中小企業に就職し早一年……あまりに何もなさ過ぎて自分でも虚しく感じ始める。その間に大恋愛か大失恋、家族の崩壊一家離散など経験していれば少しは花が添えられたのだろうか……


「自分で言うのなんだけど、なんて何にもない平凡な人生なのーーーーー!」


そう平凡な人生をそれなりに幸せと感じていて不満もなかった。


敢て不満と言えば恋人が一度も出来なかった事


平凡な両親からは平凡な子供しか生まれないのだから容姿は普通で不細工では無いけど告白もされる事もなくした事もない。


私から積極的にアプローチすれば一人は持てたかもしれないが面倒くさかった……会社務めをしていれば婚期に焦った男の一人でも釣れればいいかと楽観視していたのがいけない


処女のまま死ぬのかと思いながら落ちるまでの経緯を思い出す。



親元を離れアパートで独り暮らしで其の日も何時ものように会社帰りにスーパーで消費期限ギリギリ半額のお弁当と500mlのビールを買って帰宅しシャワーを浴びて夕食を済ませたのは確か八時過ぎ、テレビで「タケイの家庭の医学」を見ながら自分の健康チェックをしていたのを覚えているが、自分の座っている場所が突然ポッカリ穴が開き落ちてしまったのだ!


その時入れ違いに金髪に金の目の美少年とすれ違う


「あれれ? ゴメンね~人がいるとは思っていなかったから穴を開け………… 」


最後の方は落ちて行った為聞き取れなかったが美少年は私の部屋に入って行くが見えたが直ぐに小さくなって見えなくなり暗闇の空間をひたすら落ちて今に至る


絶対あの美少年のせいなのは確実だ!!!


責任とって助けろ!


死んで呪ってやる


益々地上が近づき平城京な街並みと大きな山がそびえ立っているのが迫って来ており、もう駄目だと目を閉じ叫ぶしか無かった。


「キャァァァーーーーーーーーーーーーーーーーァアッ」


グチャ! ボッキッボッキ……


自分の体がひしゃげ骨が折れる音と壮絶な激痛が襲う


せめて綺麗に死にたかった……見るに堪えない死体を想像し意識が途絶える。







グゥ~~~~~~~~~~ウ


自分のお腹の音と空腹で目が覚める。


「あれ?? ここどこ? 」


何故か柔らかな地面に横たわっている自分


確か空から落ちて体がグチャグチャになった筈なのに体はどこも異常がなく痛みもない


「もしかして夢落ち??」


アレが夢だとしたらかなりリアル……夢ならアパートの部屋で目覚めるはずだが残念な事に外で目が覚めたのは確実


夢じゃ無ければ現実しかない


私は落ちてしまったのだ、何処か知らない場所だが地球である事を願うしかない。


今流行の異世界トリップなんて冗談じゃない


平凡な私がそんな目に会うはずがないのだ!!


今でも十分非凡な目には会っているが……


辺りを伺うと夜のようで空にはチャンと月が浮かび星が輝いていた。そして下を見ると街の灯りが煌々と輝いており電気の光のようで地球の何処かに落ちたのだろう


だけど私がいる場所はかなり高い位置に居るのが分かるので今無暗に動くのは危険そうで、日が昇るのを待つ事にする。


グゥ~~~~~~~~~~ウ


又してもお腹が盛大に鳴ってしまう。


ハッキリ言ってもの凄い空腹で喉も少し渇いている。この飽食の時代飢えるなんて体験しないと思っていたが正に飢えた飢餓状態、幸い太る体質で無かったのでダイエットの必要のない私にお腹がすく状態が長時間続くなど経験がなかった。


落ちる前に食事を終えた筈だけど、丸一日は何も食べていないんじゃないだろうかと思うくらいお腹がすいている。


お腹が空きすぎて身悶えしてしまい、せめて飴玉一個でも欲しい


辺りに何か食べるものが生えていないかと手探り捜すが草一本生えておらず、やたらブニュブニュした変な地面だ。


「あの糞ガキ! せめて非常持ち出し袋ぐらい持たせろ」


女の一人暮らしなのでもしもの為に用意した持ち出し袋を玄関に置いていたがこれでは役に立たないと気付く


万が一なんて何時起こるか分からないのだ!


寝ている時、お風呂に入る時、テレビを見ている時の油断した時に襲ってくるのならば、家に居る時は常に非常袋を背負っていないと意味がなかったのだと思い知る


もし家に無事戻れたら常に持ち出し袋を携帯する事を心に誓うのだった。


思考が変だと自分でも思うが全ては空腹のせい


お腹を空かせながら眼下の街を見下ろす。


かなり大きな街だから大勢の人が住んでいるのは確実なので助かるだろうけど、問題は言葉だ英語も怪しいがその他の言語など論外


「日本語は無理でもせめて英語圏でありますように」


自分の今の状況が怖くて涙が出て来るが我慢する。


ここで泣いては体から水分が失われひいては体力も損ない街に降りる為の体力が損なわれるのは避けたい


なぜか冷静な自分と変になってしまいそうな自分がいる。


全てはあの糞ガキのせい


私の平凡な日常を利子を付けて返せと叫びたい


今はこの現実から目を逸らす為にも寝る


腹が空きすぎても根性で寝る!!


寝て翌日の朝日を浴びてあの街に降りて無事私のアパート……は止めて実家に戻る。


それが私の目標


目を閉じて体を丸めて眠りにつく


せめてもの救いはこの地面が温かく気温も暖かい


山は気温が低いはずなんだけど、この際いろいろ無視を決め込む事にするのだった。






そして私は根性で寝た。





亀のお話なので亀更新で月に2,3回になります

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