きみの気持ちは偽りだから
ある日突然呼び出され
真面目な顔してあなたは言った
「僕たち婚約破棄しよう」
どうして? 私はこんなにも
あなたのことが、好きなのに
戸惑う私に顔背け
苦々しくも 呟くあなた
「きみの気持ちは偽りだ」
強い口調できっぱりと
あなたは私に言い放つ
心外、意外、予想外
私の気持ちをお疑い?
私はずっとラキアス様
あなたと出会ったその日から
あなただけを一心に
慕ってまいりましたのに
「だからそれが違うんだ」
眉根を寄せて真剣に
ラキアス様はおっしゃいます
「僕は薬を使って、きみを得た」
◇
魅惑的なユリーゼ嬢
初顔合わせでヒトメボレ
政略婚約だとしても
僕に恋してくれたらなぁ
薬学得意の僕だから
調合してみた惚れ薬
いけないことだと思いつつ
2度めの茶会で薬を盛った
恋する瞳のきみを見て
最初は得意で有頂天
けれどもどんどん後悔募り
僕は自分をなじり出す
とんでもないこと仕出かした
きみの気持ちを捻じ曲げて
恋を錯覚させた罪
謝ったとて許されない
どうして僕は堂々と
きみに挑まなかったのか
これはダメだと反省し
惚れ薬を消すために
新たな薬を用意した
だけど効果は表れず
依然きみは僕に甘い
些細な贈り物さえも
きみはとっても喜んで
大切そうに"宝"にしてた
そんな姿のきみを見て
僕はさらなる薬を作る
万能解毒が出来たなら
惚れ薬など消え去るはずだ
悪魔のしっぽに
海馬のウロコ
巨竜の翼に
魔王の涙
あまた素材を集めて煮込み
国王認めた万能薬は
民に蔓延る疫病さえ
難なく霧散させてしまう
それでもきみには効かなくて
残る手段は距離を取ること
婚約自体を失くすこと
それならきみも他を見て
好みの異性を選ぶだろう
◇
ラキアス様はそう言って
止まらぬ涙で机を濡らし
私はそっとハンカチを
彼に差し出し尋いてみた
「もしも私の隣にあなた以外
別の殿方いたとして
あなたはそれでも平気なの?」
これでも私愛されて
いるはずだもの強気に問う
私の前で一段と
彼は声あげ突っ伏した
悪魔も海馬も巨大な竜も
魔王さえも退治して
歴史に類ない万能薬を
完成させた英雄が
顔を真っ赤に泣きじゃくる
私のために泣きじゃくる
つっかえ、つっかえ、言葉を紡ぎ
彼は私に伝え始める
「無理だよ、僕はきみが好き
他の男に笑うきみ
想像だけで胸詰まる
明けない夜に彷徨って
古木に負けじと枯れるだろう
息も出来ずに地上で溺れ
死体と転がる未来が視える」
「あらあら、なんて罪深い
私を"英雄殺しの令嬢"と
呼ばせる気ですか、ラキアス様」
「そんな! それならユリーゼ嬢
僕はどんな償いを
あなたに対してすれば良いのか」
「それなら答えは明白で
今すぐ挙式をいたしましょう」
「しかしきみの気持ちは偽りだ」
「私の気持ちは本心で!」
「そもそも順序が違います」
なんのことだと目を丸く
首を傾げたラキアス様
私は思い出語り出す
「初顔合わせはレストラン
だけどそれより先に私たち
出会ってましてよ、ラキアス様
覚えてませんか? 王宮の
貴族の集いについて来た
幼い私は庭走り
足を挫いて困り果て
座って膝を抱えてた
その時あなたが通りかかり
私を背負って運んでくれた
あの日あの時あの瞬間
私の恋は始まった
相手が子爵の令息と
知った時から絶対に
あなたと再び会いたいと
父に願って約束を
取りつけ、見合いの場を設け
あなたと縁を繋いで貰った
そこまで数年かかってしまった
だからあなたはお忘れね」
「いやいや待って、待ってくれ
僕が昔、助けた相手は
少年だったよ、きみじゃない」
「ふふふふ、間違いございません
私は昔、活発で
少年同様、スボンに短髪
父も呆れるお転婆娘
だけどもあなたに恋をして
あなたの前ならドレスを着る
それ以外は譲らぬと
父を脅して粘り勝ち
説得するまで長かった
我が家は世に言う公爵家
外聞大事な父様は、最後に私に折れました」
えええ? と驚くラキアス様
私は言葉を重ねます
「惚れ薬は元より無効
解毒も効くはず、ないですね?」
だって私はあなたにぞっこん
イチにも二にも私には
ラキアス様しかいないから
唯一心を捧げたお相手
まさか薬を盛るほどに
私を好いてくれたとは
意外、望外、予想外
嬉しく綻ぶ口元を
隠して見せない駆け引きよ
「ですのに私の本心を
誤解されていたなんて
悲しいですわ、ラキアス様」
目を伏せ、声を震わせば
慌てふためくラキアス様
急いで隣に席移し
私をあやす、ラキアス様
ねえご存じ? ラキアス様
どんなに私が幸せか
どうぞこのまま末永く
お傍においてね、恋しいあなた
こうして私は愛しい人の
腕に手をかけ純白の
長いベールに青い空
鐘高らかに鳴る良き日
誓いの指輪を貰ったわ!
嘘偽りのない真心で
お読みいただき有難うございます!
二千文字近くあるのに詩の形式ですみません!
本日、ありま氷炎様の「第十二回月餅企画」開催日でして、急ぎ間に合わせました。毎年、中秋の名月にあるご企画。今年のキーワードは「恋」!
それに汐の音様の「男装祭り」を乗っけて仕上げました♪ 楽しんでいただけましたら幸いです(´艸`*)
なおラキアスは子爵家でしたが、魔王討伐(おい)と万能解毒薬開発(おいおい)の功績で昇爵しています。公爵、娘ユリーゼのおかげで青田買い大成功!✧
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2026.09.25.19:01
うわわ、いまPV見てビックリしました。タイトルが物語っぽかったので、たくさん開いていただいたのに詩なの、ガッカリさせてしまったのではと慌てています。
ささやかですが【オマケ】書きましたヾ(・ω・`;))ノぁゎゎ ↓
◆◇◆ ・*・ ◆◇◆ ・*・ ◆◇◆
「さっさと離婚したらいいのではありませんか?」
「でもねぇ、ユリィ」
おっとりした声音で公爵夫人が頬に手を当てると、そんな彼女を正面に、椅子に座った子どもが頷いた。
「母様は、父様を好きすぎません? めっっっっっっったにお屋敷に戻らないのに」
「お国の重鎮ですもの。お仕事が忙しいのです。仕方ないのですわ」
ほうっと息を吐き、テーブルのスイーツを勧める。
ユリィと呼ばれた子は母に従い、素直に菓子に手を伸ばした。
公爵夫人が話を続ける。
「そしてそれを支えるのが、良き妻というものです」
「……私は嫌です。誕生日にも会えない父親なんて」
「まあ」
横を向いて口を尖らせるユリィに、公爵夫人は目を細めた。
とどのつまり、この子は拗ねているのだ。
とはいえ何度も誕生日会をすっぽかされては、そういう気分にもなろう。
難しいものだ。
「さすがに7人も子がいると、父様は末っ子のことなどお忘れなのです」
「そんなことはありません。末のあなたのことを、とても大切に思ってらっしゃるわ」
「では、試してみましょう! 父様が私のことを覚えているかどうか」
こうして男装した末娘ユリーゼに、「あれ? この子は男の子だったか?」と公爵が間違えたことから反抗期が加速して、公爵令嬢ながらもユリーゼは比較的強気に、そして自由に育つことになった、という裏話……。




