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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第二章 | 【Second Story of the Babies:《出会いと別れ、それは新たな運命の幕開け》】

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Episode 22 :【それでも少年は、歩み続ける】

 ――音葉(おとは)が突然、黒豹(くろひょう)の《ヒューマネスト》となり……そして俺との戦いの果てに、目の前で消えていった。


 その現実は、幼い子供達の心に深い傷を残すには、あまりに充分(じゅうぶん)すぎるものだった。


 キョウカも、マサルも、アラタも……涙が枯れ果てるまで、泣き続けた。


 そして泣きつかれた彼らは、そのまま静かに眠りに落ちた。


 俺は、3人を抱え、比較的被害の少ない廃ビルの一角に、身を潜める。


 ……正直言って、俺ももう、限界だった。


 戦闘の疲労や傷だけじゃない。心も、身体も、すでに消耗し切っていた。


 だから、今はただ、目の前の子供達が目を覚まし、少しでも心を取り戻すまで……この場所で、しばしの安息を得ることに決めた。


 ――その時だった。


『探したぞ。ずいぶんと災難だったな。夏神(なつみ)』


「……!? 先生!?」


 低く、けれど確かに響く声が、ビルの入り口から届いた。


 そこには、数体の〝フレンド〟がいた。


 その部隊の中央にいる一体には、胸部に液晶画面が埋め込まれており、そこには斎賀(さいが)先生の映像が映し出されていた。


『《ヒューマネスト》の出現反応があったので、念のためこうして増援を送ったわけだが……無事に対処できたようだな。

 流石のお前でも、連戦は厳しいと踏んでいたが……流石に過保護すぎたようだ』


「……無事に対処……俺は、そうは思えません……」


 口角を上げてそう言う斎賀先生。


 それとは対照的に、俺の言葉は、ひどく覇気のないものだった。


「結局、俺は……《ヒューマネスト》になった音葉を、救えなかった。

 この子達にも、深い心の傷を残してしまった。

 最悪の結末は阻止できたけど、とてもハッピーエンドだなんて、言えません……」


『それで充分(じゅうぶん)だろう。

 最悪の結末を阻止した、それの何が不満なのだ』


 斎賀先生は、いつも以上に厳格な口調の言葉を、さらに続ける。


『100点満点のハッピーエンドなど、絵空事にすぎん。

 不必要な高望みは、足枷(あしかせ)にしかならない。

 それが、人の命が関与する事態であるならば、尚更(なおさら)な話だ』


「…………」


『もしもそれで納得できないのなら、お前は修羅(しゅら)の道を歩むには、まだ子供すぎる。

 それならばいっそ、普通の子供らしく、分相応に生きるのも、一つの道だ』


 斎賀先生の言葉が、深く重く圧(の)し掛(か)かる。


 先生の言う通り、結局、根本的な部分の俺は、まだまだ子供なのだろう。


 だから、「それで充分だ」なんて、割り切れない。


 どうしたって、「もっと、できることがあったんじゃないか」……そう考えてしまう。


 ――だけど、その後悔こそが、今の俺を突き動かす、一番の原動力になる。


 母さんを失った、あの日から……俺は、後悔と痛みを燃料に、歩いてきたんだ。


「……それでも、俺は……前に進みます。

 もう同じ過ちは、繰り返したくない。

 自分の無力さも、罪も、全部背負って……その上で、また誰かを救えるように――戦い続けたいんです」


 液晶画面越しに、斎賀先生のワインレッドの瞳を見据える。


 そんな俺に対して、先生は、「やれやれ、やはりお前は、そういう奴だな」と、そう呟いた。


『その子供達のことは、約束通り、私が預かることにしよう。

 お前は、自分が為すべきことのため、このまま歩み続けるといい』


「……ありがとうございます。先生」


『夏神。いずれお前には、今以上に、大きな選択を迫られる時が来るだろう。

 その時には、どんな答えを出すのか……私は、楽しみにしているぞ』


「……? 先生、それはどういう――」


 ――プツン……。


 ディスプレイに表示されるものが、斎賀先生の顔から、反射された俺の顔に変わる。


 質問をし終わる前に、先生が、通話を終了してしまったのだ。


 ……先生は、いったい俺に、何を伝えたかったのだろう。


 いつもは、最低限の内容を、洗練された的確な言葉で伝える、斎賀先生。


 そんな先生が、持って回ったような言い方をしたのも、気になるが……。


 だけど、今はそれより、俺には進むべき場所がある。


 もう、迷ってはいられない。


 俺は、フレンド達に子供達を任せ、再び〈狭間(はざま)交信局(こうしんきょく)〉へと向かうことにしよう。



《――「ったく……アンタと出会っちまったなんて、今日は最高の厄日だぜ!」》



「……すまない、音葉」


 眠る子供達を見つめる静けさの中で、音葉への想いが、込み上げてくる。


 ――俺には、音葉の代わりに、この子達のことを守り続けるという、道もあった。


 だけど、それでも俺は……ここで立ち止まるわけには、いかなかった。


『この地獄のような世界で、同じように苦しむ人たちを、一人でも多く救いたい』。


 それが、どんなに馬鹿げた夢だと、嗤(わら)われたとしても――。


 意を決した俺は、全てを振り切るかのように、走って外へと飛び出した。


 ――その時だった。


 雲の切れ間から差し込んだ光芒(こうぼう)が、俺を照らし出した。


 その光は、まるで――。


(……音葉、見ていてくれ。

 俺は、君の分まで……この地獄を、生きる。

 この世界で、俺は君のように……誰かを守れる、光になってみせる)


 こうして俺は、決意を新たに、再び歩き出した。


〈狭間交信局〉――俺の未来へと、繋がる場所へ。


 -----------


 後悔や未練が ないわけじゃない

 胸を張って笑えるほど 強くもない


 でもね 私は たくさんの愛に包まれていた

 だから 今度は私が 虹の橋の向こうから

 そっと あなた達を照らす 光になる


(猫宮(ねこみや) 音葉(おとは))


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<次章&次回予告>


(――ここが、〈狭間交信局〉……か)


『――警告。警告。それ以上の接近は許可されていません』


「悪いが、俺はここで引くわけにはいかない。押し通らせてもらうぞ」


 次章――【Third Story of the Babies:《超常(ちょうじょう)異能(いのう)現象(げんしょう)防衛(ぼうえい)機関(きかん)・〈A.E.G.I.S(イージス)〉》】


 次回――Episode 23 :【運命の地、〈狭間交信局〉】


 ------------


 第二章、完結!


 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


 物語を最後まで見届けてもらえたこと、心から感謝しています!


 もし少しでも心に残ったものがあれば、

一言だけでもレビューや応援コメントをもらえたら、とても励みになります!


 それでは、また次の章で、お会いしましょう!


 「【T.F.B】の物語が、あなたの人生に、小さな輝きを届けられますように!」


 ----------


 PS. 本作のキャラや世界観を表現するイメージソングやPVなどを、YouTubeでも公開しています。


 物語をもっと楽しみたいな、と思っていただけた方は、もしよければ、そっと覗いてみてくださいね!


 Youtubeにて、

 「トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ」

 ……と、検索してみてくださいね!

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