表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2050年、世界崩壊。二人の少年が、地獄と化した世界の運命を変える物語。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
【Second Story of the Babies:《出会いと別れ、それは新たな運命の幕開け》】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/26

Episode 14 :【〝TEAM・CATS〟】

「アタシらは、〝TEAM(チーム)CATS(キャッツ)〟。

 野良猫みたいに気ままに生きる、自由な奴らの集まりさ。

 アタシがリーダーで、アンタにコーヒーを渡したのが、キョウカ。

 で、あっちでポテチ食ってるのがマサルで、部屋のすみっこで大人しくしてるのが、アラタ」

「ああ……ドローンを作った子、だったか」

「そう。『僕なりに、みんなの役に立ちたいから』ってさ。しっかりした子だよ」

「……そうか」


 アラタの方に視線を向けると、そそくさともう一人の少年・マサルの背中に隠れてしまった。


 ……どうやら、まだ警戒されているようだ。


 パッと見の印象では、アラタは7、8歳で、マサルは10歳前後。


 ということは、12歳ぐらいに見えるキョウカは、音葉(おとは)の次にお姉さん……といった感じか。


「アンタが()きたいであろうこと、先に答えといてやるよ。

 まずは、『子供4人だけで、どうやって生活しているのか』、だろ?」

「……ああ」


 5年前に起きた《2050(ニーゼロゴーゼロ・)DD(ディザスター・デイ)》に、〈アフターエリア〉を常に襲う《ヒューマネスト》……。


 保護者となるべき大人がいない理由に関しては、言うまでもない。


 しかし、だとしても、彼女ら4人だけで、どうやって今日まで生きてこられたのか……。


「食料は、デパートとかコンビニとかから、ちょちょいっとお借りしたもの。

 水分も充分にあるけど、一応念のため、煮沸した雨水も保存してる。

 …ま、味は最悪だけど、命には代えられないからね」


 肩をすくめて苦笑いしながら、音葉は続ける。


 「んで、火を使うだけなら、マッチや100円ライターとかで、どうにでもなる。

 寝袋や椅子だって、使えそうなものを集めれば、案外生きられるんだよ。なんてったって、お金が必要ないからな」


 ニシシと誇らしげに笑う音葉。


 成程。どうやら、ただのお遊び半分のキャンプではなく、最低限のサバイバルの知識はあるみたいだ。


 その生活力は、称賛に値するが……それでも、肝心な疑問点が、まだ残っている。


「だとしても、《ヒューマネスト》が現れた時は、どうする?

 まさか、あの催涙(さいるい)スプレーを使うわけじゃないだろう?」

「……いや、あれも一応貰ったやつだけど、そんなんじゃ意味ねーって分かってるよ。

 だから――」


 音葉が取り出したのは、何世代も古い機種の、〝Future-Phone〟だった。


「避難施設にいた頃、念のためにって、支給されたやつ。

 本当に最低限のことしかできねー、ショボいケータイだけど……こいつのおかげで、《ヒューマネスト》が今どこにいるのか、どこに逃げれば安全かくらいは、一発で分かる。

 だから、まあ……あの施設の奴らにも、その点では感謝しないとな」


「――避難施設に、《《いた頃》》?」


 聞き捨てならない言葉だった。


「ちょっと待て。君は以前、避難施設にいたのか? 

 だとすれば、どうして今、こんな生活をする必要がある? そのまま施設にいた方が、ずっと安全だったはずだ」


 その瞬間、さっきまでの快活さが嘘のように、音葉の表情から笑みが消える。


 ……どうやら、迂闊(うかつ)に踏み込んではいけない領域の話だったか。


 しかし、ここで引き下がってしまえば、彼女の真意も過去も、何も分からなくなってしまう。


「どうして君が、避難施設を抜け出した、あるいは追い出されたのかは、分からない。

 だが、こんな生活、いつまでも続くものじゃない。もっと安全に暮らせる方法があるはずだ」

「……んだよ。偉そうにお説教か?」


 音葉の言葉に、棘が混じる。


 「言っとくけどな、もう半年くらいは、この生活を続けられてるんだぜ?

 みんなで知恵を絞って、ちゃんと今日まで生き延びてきたんだ」

「それはたまたま、運が良かっただけだ。

 少しでも体調を崩せば、それが命取りになる。

 君が(こじ)らせているのだって、ただの風邪(かぜ)じゃないかもしれない」


 俺の追及が激しくなるにつれ、音葉の様子には苛立ちが見え始める。


「あーあー、うっさいなぁ……!

 結局アンタは、何が言いたいわけ?」

「成り行き上とはいえ、こうして君達に関与した以上、このまま無視するわけにはいかない。

 手遅れになってしまう前に、〝ネスト速報〟を頼りに、近くの避難施設にまで、移動するべきだ。

 道中が不安なら、俺が同行――」


 ――バンッ!!


 言葉を(さえぎ)ったのは、音葉が両手を机に叩き付ける音だった。


「……いいよ。もう分かった。アンタは、〝TEAM・CATS〟の仲間にはしない」

「音葉……」

「アタシは、何と言われようと、あそこに戻るつもりは、絶対にないから!」


 感情任せに叫んだ音葉は、そのまま荒々しい足取りで、その場を離れていってしまう。


「ま、待って、ネコ姉……!」


 そんな音葉の背中を、アラタは折り畳み傘を手に、(あわ)てて追いかけていった。


 ……しまったな。初対面の分際で、あまりにも深く踏み込みすぎたか。


 だが、俺の言った言葉は、感情よりも合理性を選べば、間違っていないはずだ。


 それに、俺には「〈狭間(はざま)交信局(こうしんきょく)〉に向かう」という、絶対に果たさなければいけない目的がある。


 だから、必要以上に、彼女達に干渉(かんしょう)することはできない。


 とはいえ、ここで出会えたのも、何かの縁だ。


 できることなら、手遅れになってしまう前に、音葉達に出来ることを、精一杯してあげたい。


 ……自分でも、不思議に思う。


 なぜ俺は、出会ったばかりの彼女に、ここまで肩入れしているのだろう。


 酷な言い方になるかもしれないが、こういう面倒事は避けて、サッサと〈狭間交信局〉に向かう選択肢もあったはずだ。


 そうしなかったのは、あいつの言動や雰囲気が、どことなく――。



《――「        」》



 ……誰かと、似ていた気がするから。


 けれど……どうしても、思い出せない。


 俺にとって、大切だったはずの、〝誰か〟。


 なのに、どうしても――。


----------


《次回予告》


「お前、なにネコ姉のこと、いじめてんだよ!

 お前、全然いいやつじゃないじゃん!」

「俺の方こそ、すまない。少し、熱くなりすぎた」

「……わたしたち、ネコ姉と同じ施設にいたんです。

でも、そこは……夏神(なつみ)さんが思っているような、いいところじゃありません……」


次回――Episode 15 :【居場所のカタチ】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ