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再編成

この作品に出会ってくださりありがとうございます。

英語の会話部分は翻訳アプリ頼みですので、間違ってたらごめんなさい。


 白い転移の感覚が消えたとき、帝は膝をついていた。


 肺が焼けるように痛い。


 喉が乾ききっている。


 それでも顔を上げる。


 第三層と違い、ここは構造物らしい空間だった。


 直線。


 通路。


 壁面には幾何学的な溝が走り、淡い青光が脈動している。


 幅は二十メートルほど。


 天井は高いが、閉塞感がある。


「……生きてるか」


 帝の声に、六つの返事。


 七名。


 それだけしか残っていない。


 三雲が乾いた笑いを漏らす。


「もう小隊じゃないですね……分隊ですよ、これ」


 返す言葉はなかった。

 二階層に上がった時点で地上本部との連絡は途切れていた。二階層で死者が出た時点で本来なら撤退すべきだったと頭では理解できるが…。

 身体の芯から湧き上がる上層に上がりたいという欲求を抑えられない。

 弾薬が尽きかけているのに、誰一人歩みを止めようとしない。

「赤星さん、キズ大丈夫っすか?」

 三雲が心配そうに顔を覗き込む。

「あぁ、不思議と痛みはない」

 多量に分泌されたアドレナリンのせいか、又は塔がもたらす効果なのか…。


 そのとき。


 前方の闇に、光。


 白い光源。


 規則的に揺れる。


「――止まれ!」


 帝は手を上げる。


 全員が銃を構える。


 残弾はほとんどない。


 だが構えるしかない。


 やがて、光の正体が現れる。


 戦術ライト。


 銃に装着されたものだ。


 そして――人影。


「Hold your fire! Identify yourselves!(撃つな! 所属を明らかにしろ!)」


「英語…? 米兵か?」


 帝は英語で答える。


「Japan Ground Self-Defense Force! Survey team from south entrance!(陸上自衛隊だ! 南入口からの調査隊だ!)」


 数秒の沈黙。


 やがて銃口がわずかに下がる。


 現れたのは、重武装の兵士たちだった。


 プレートキャリアに追加装甲。


 暗視対応ヘルメット。


 短銃身カービン。


 肩のパッチには、星条旗。


 先頭の大男がヘルメット越しに言う。


「U.S. Army. Special Forces.(アメリカ陸軍特殊部隊だ)」


 男は帝たちを見回した。


 血に濡れた装備。


 疲弊した表情。


「You came from the south entrance?(南入口から来たのか?)」


「ああ」


「Yes. We lost most of our unit on the third level.(ああ。第三層で部隊の大半を失った)」


 男はゆっくり頷く。


「…Same here. Many casualties. Spider machines everywhere.(……こちらも同じだ。損害多数。蜘蛛型兵器が至る所にいた)」


 その背後。


 十四名。


 合計十五名。


 彼らもまた、生還者だった。


     ☆☆☆


 統合陣形。

 幸いにも米軍が追従させていた四足歩行のドローンには弾薬に銃器が十分に積まれていた。

 米兵が弾薬箱を開く。


「5.56 NATO. Compatible with your rifles.(5.56NATO弾だ。君たちの小銃にも使える)」


 マガジンが差し出される。


「Thank you. We were almost empty.(感謝する。ほとんど空だった)」


 帝は装填する。


 金属音が、わずかな安心をもたらす。


 三雲が小声で言う。


「生き返った気分ですね……って、赤星三尉って英語話せたんですね?」

「話せる程じゃないさ、意味はなんとなく理解できる程度さ」




「Enjoy it while it lasts. This place never stops.(味わっておけ。この場所は止まらない)」


 米兵の一人が苦く笑う。

 

 そのとき。


 床が、震えた。


 壁面の青光が、赤へ変わる。


「Movement! Walls!(動きあり! 壁だ!)」


 裂け目。


 そこから這い出す影。


 蜘蛛型戦闘車両。


「CONTACT! MULTIPLE HOSTILES!(接敵! 敵多数!)」


「総員、射撃開始!」


「OPEN FIRE! OPEN FIRE!(撃て! 撃ち続けろ!)」


 銃声が通路を満たす。


 日米の弾幕が蜘蛛の装甲を叩く。


 火花。


 脚が砕ける。


 一体が転倒。


 だが後続が続く。


 蜘蛛の砲塔が旋回。


 発砲。


 米兵の肩が吹き飛ぶ。


「Man down! Medic!(負傷者! 衛生兵!)」


「Keep firing! Don’t let them close!(撃ち続けろ! 近づけるな!)」


 帝は照準を脚関節へ固定する。


「Aim for the legs! Disable mobility!(脚を狙え! 機動力を奪え!)」


「Copy that!(了解!)」


 米兵たちが即座に脚へ集中射撃。


 一体、沈黙。


 だが新たな個体が壁から這い出す。


「They keep coming!(まだ来るぞ!)」


 米兵が叫ぶ。


「冗談だろ……」


 蜘蛛が跳躍。


 三雲の眼の前で、蜘蛛の光刃が米兵の胸部装甲を切り裂く。


 血が噴く。


「Grenade out!(手榴弾投げる!)」


 爆発。


 衝撃波。


 蜘蛛が横転。


 だがさらに三体。


 終わらない。


 帝は撃つ。


 呼吸が静かになる。


 敵の動きが見える。


 線のように。


「Left corridor! Secure fallback route!(左通路! 後退路を確保しろ!)」


 米軍の大男の隊長が帝を見る。


 一瞬の理解。


 頷き。


「Fall back by teams! Move! Move!(チームごとに後退! 動け! 急げ!)」


 統制された後退戦。


 撃ちながら下がる。


 蜘蛛の脚が砕ける。


 爆発。


 煙。


 最後の一体が、白光を噴いて沈黙した。


     ☆☆☆


 静寂。


 硝煙の匂い。


 生き残り。


 自衛隊、五名。


 米軍、十二名。


 計十七名。


 米軍の隊長が帝の前に立つ。


「You gave solid commands back there.(さっきの指示、的確だった)」


 帝は首を振る。


「生き残るためだ」


「We’ll follow your lead. For now.(当面は君の指揮に従おう)」


 そのとき。


 通路の奥の壁が開く。


 せり上がる構造。


 階段。


 第五層への入口。


 青い光が、脈打つ。


 米軍兵士の一人が低く呟く。


「This tower… it’s testing us.(この塔は……俺たちを試している)」


 帝は答えなかった。


 ただ階段を見つめる。


 胸の奥の鼓動が、わずかに強くなっていた。


 塔は選んでいる。


 上へ進む者を。


     ☆☆☆


「We move together. No more splitting up.(一緒に行動する。これ以上の分断はなしだ)」


 低く、よく通る声だった。


 振り向いた帝の視界に入ったのは、ひときわ大きな男だった。


 身長は二メートル近い。


 肩幅は帝の倍近くあり、重装備を着込んでなお余裕があるように見える。


 分厚い腕。


 無精髭。


 鋭い目つきだが、その奥には奇妙な落ち着きがあった。


「Captain Norman Garland. U.S. Army Special Forces.(ノーマン・ガーランド大尉、アメリカ陸軍特殊部隊だ)」


 帝は敬礼する代わりに、軽く頷いた。


「陸上自衛隊赤星帝三尉です」


 ガーランドは帝の目を見つめ、短く笑った。


「You handled yourself well down there.(さっきは見事だったな)」


「必死だっただけです」


「That’s the only way to survive here.(ここで生き残る方法はそれしかない)」


 クマのような大柄な体躯に似合わず、その笑みは穏やかだった。


 だが歴戦の兵士の目だと、帝は直感した。


「第五層へ進む」


 帝が言うと、ガーランドは即座に頷いた。


「We go together.(共に行こう)」



読んでくださってありがとうございます。続きが気になった方はブックマーク、広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、よろしくお願いします。


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