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攻略開始

こつこつ書き溜めていた作品を小出しにしていきます。

誰かの心に残るよう祈りながら。


第二話、始まり始まり~


 第一層を後に、発見した上層階へ続く階段を調査隊は登る。現在負傷者二名。

 幸い命に別状はない。


 だが、弾薬消費は想定以上。通常装備が“通じにくい”という事実が、隊の空気を重くしていた。

 階段は、三メートル幅で黒曜石の床からそのまま削り出されたかのように伸びている。

 手すりはない。

 段差は均一。

 上は、光に溶けて見えない。


「……行くぞ」

 隊長の一言で、負傷者と救護隊2名を残し小隊は再編成された。

 先頭に盾持ちを配置、後方に支援火器と索敵。

 帝は中間に配置され、同期の三雲三尉とともに階段を登る。


 階段を踏み出した瞬間、足裏に微かな振動。

 まるで塔そのものが、侵入者の重量を測っているかのようだった。

 十段。

 二十段。

 三十段――

 不意に、視界が白く反転した。

 重力が消える。

 一瞬、身体が浮いた感覚。

「っ……!」

 次の瞬間、足裏に硬い感触。

 そこは――別の空間だった。


     ☆☆☆


 第二層。

 第一層とは明らかに構造が違う。

 天井は高く、しかし空間は区切られている。

 黒い柱が林立し、迷路のような構造を形成していた。

 床面は淡い灰色。

 第一層のような青白い光ではなく、どこか冷たい白色光が上方から降り注いでいる。

「転移……したのか?」

「階段、消えてます」

 三雲の声が震えた。

 振り返っても、上ってきたはずの階段はない。

 そこにあるのは、均質な壁だけ。

「索敵」

「……反応、多数。固定熱源じゃない、移動してる」

 

 その瞬間だった。

 柱の影が、滑るように動いた。

 音がしない。

 気配が薄い。

 だが確実に“いる”。

「全周警戒!」

 帝が叫ぶ。

 次の瞬間、柱の陰から飛び出したのは、蜘蛛型の機械兵器だった。

 だが第一層の機械とは違う。

 1.5メートルの装甲を纏った多脚の蜘蛛ような姿。 胴体から2門の銃身が伸び、足の先は刃のような光。

「小型の多脚戦車か……!」

「カニ型戦闘マシーンですね!三機確認!」

「バカ言ってんじゃない! 三雲来るぞ!」

 距離、二十メートル。

 発砲。

 今度は弾丸が通る。

 だが浅い。

 装甲の表面が削れるだけで、動きは止まらない。

 一体が跳躍。

 盾持ち隊員へ一直線。

「受けろ!」

 衝突。

 金属と金属がぶつかるような衝撃音。

 盾が歪む。

 隊員が吹き飛ぶ。

「散開! 柱を使え!」

 帝は柱の陰へ滑り込む。


 視界が限定される。


 だが同時に、敵の動線も絞られる。

「三雲、右二時方向!」

「はいはい了解!」

 柱の影から飛び出した敵に、三雲の射撃が命中。

 膝部装甲が砕ける。

 バランスを崩した個体へ、帝が突進。

 銃床で側頭部を殴打。

 硬い。

 だが亀裂が入る。

「……倒れろッ!」

 至近距離で三発。

 蜘蛛の頭部が砕け、白い光を噴き出しながら崩れ落ちる。

 だが。


「まだ来る!」

 柱の上。

 天井近く。

 壁面。

 無音で移動していた敵が、同時に跳躍。

 包囲。

 訓練ではない。

 だが、帝の思考は冷えていた。


(正面突破はさせない。これは――試験だ)

 第一層は火力。

 第二層は連携と空間認識。

 塔は、段階的に“戦い方”を変えている。


「二班、中央突破! 三班、援護射撃固定! 俺が前に出る!」

「三尉!?先走るな!」

 隊長の静止を聞かず、帝は柱を蹴った。

 跳躍。

 迫る敵の刃を紙一重でかわし、至近距離へ。

 撃つ。

 撃つ。

 撃つ。

 被弾。

 左肩に衝撃。

 装甲ベストが軋む。

 痛み。

 だが動ける。

 敵の中心へ踏み込み、視界を確保する。

「今だ! 前進しろ!」

 小隊が一斉に動く。

 集中砲火。

 白い光が弾ける。

 次々と崩れる装甲兵。

 やがて、最後の一体が沈黙した。


  ☆☆☆


 静寂。

 荒い呼吸だけが響く。

 この戦闘で、初めて死傷者がでる。

 死亡七、負傷三。

 弾薬残量、三割。

「はぁ……終わったぁ、隊長ぉここらで一度戻りませんかぁ?」

 三雲が背後に振り返ると、背後の隊員たちの異変に気がつく。

「・・・・・ん?」


 負傷者の一人を俯いて取り巻くように見つめる隊員たちを押しのけ、座り込む。

「あらら…」

 困った表情の三雲三尉。

「えっと…隊長が死んでるんですが…どうします?」

 

 そのとき。

 第二層の奥。

 柱の配置が、ゆっくりと変形した。

 床がせり上がる。

 現れたのは――

 さらに上へと続く、階段。

 今度は、はっきりと中央に。

 まるで。

 “合格”と告げるかのように。

 帝はそれを見上げた。

「さて、隊長を失ってしまった…このまま進軍すべきか?それとも引き返す道を探すか?」

 

 肩の痛みが脈打つ。

 だが胸の奥に、別の熱が灯っていた。

 恐怖ではない。

 高揚。

「……上層部に上がり捜索を継続するぞ!」

 無線に向けて、帝は言う。

「この構造体は明確な階層構造を持つ。敵性存在は層ごとに特性を変化。これは偶発的な防衛機構ではない」

 一瞬、言葉を区切る。

「これは――段階的選抜機構と推定する」

 塔は守っているのではない。

 選んでいる。

 上へ進む資格のある者を。

「ならば!我々は進まなくてはならない!」

 赤星帝は、階段へ足を向けた。

 まだ知らない。

 この瞬間から、彼の身体に微細な“変化”が始まっていることを。

 

 人類の進化は、静かに――

 第二層で、動き出していた。


この作品を見つけてくれてありがとうございます。

そして、読んでくださってありがとうございます。

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