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四方向侵攻

この作品を見つけてくれてありがとう。

どうぞ楽しんでいってください。


赤星帝が入院してから、二週間が経過していた。


塔――日本近海に突如出現した直径六キロ、高さ三十五キロの未知構造体は、未だ沈黙を保っている。だが、その沈黙の裏側で、人類は確実に次の一手を打っていた。


 


在日アメリカ軍主導による――第二調査隊。


 


第一調査隊の壊滅的被害を教訓に、作戦思想は根本から見直されていた。


目標は上層攻略ではない。


第一階層の完全掌握。


 


塔の外周、東西南北に開かれた四つの巨大入口。

高さ十五メートル、幅三十メートルの黒い裂け目のような開口部から、それぞれ独立した四部隊が同時侵入を開始した。


 


各入口周辺には前線補給基地が設営されている。


装甲車両、弾薬コンテナ、医療ユニット。

さらには無人搬送ドローンによる物資のピストン輸送。


 


「補給を止めるな。ここは“戦場”じゃない、“占領地”だ」


 


通信回線の向こうでそう言い切ったのは、今回の作戦指揮官――


ノーマン・ガーランド少佐。


 


第一調査隊の生存者であり、あの地獄の十階層を突破した数少ない人間の一人。


そして――


人間をやめかけた男でもある。


 


「全隊、進行速度を維持。無駄撃ちはするな、だが止まるな」


 


低く、重い声が部隊に流れる。


 


塔内部――第一階層。


そこは相変わらず、黒曜石の様な床の空間だった。天井は見えず、光源も不明。だが一定の明度が保たれている。幹線道路ほどの広さの中心に続く通路に左右にいくつも伸びる路地で構成された内部。


 


そして、敵。


 


「前方、出たぞ!」


 


視界の奥、地面からせり上がるようにして現れる円筒形の機械群。


全長一メートルほどの滑らかな筒状のボディ。関節も脚もないにも関わらず、地面を滑るように高速移動し、機体側面から自動火器を展開する。


 


セキュリティ・ロボット。


 


第一調査隊が《ガード》と呼称した防衛機構。


 


「撃て!!」


 


命令と同時に、四方から重火器の咆哮が炸裂する。


 


M2重機関銃、対物ライフル、携行型ロケット。

圧倒的火力が、容赦なくロボット群を粉砕していく。


 


金属片が宙を舞い、火花が散る。


 


だが――


 


「……まだ来るぞ」


 


誰かが呟いた。


 


破壊した残骸の向こう、さらにその奥。

まるで無限に湧き出るかのように、同型機が次々と出現してくる。


 


「陸自の記録通りだな……数で止めに来るタイプだ」


 


ガーランドは淡々と呟いた。


 


自衛隊の第一調査隊の報告は正しかった。


敵は強くはない。だが、尽きない。


 


だからこそ今回の作戦は“制圧”だ。


 


「押し切るぞ。止まれば飲まれる」


 


部隊は前進する。


 


撃って、壊し、進む。


撃って、壊し、進む。


 


単純だが、確実な戦術。


 


そしてその背後では、補給ドローンが絶え間なく弾薬を運び込み、負傷者を後送し、前線を維持し続けていた。


 


第一調査隊のような“孤立”は、もう起きない。


 


――人類は学習していた。


 


 


侵攻開始から、六時間後。


 


四方向から進軍していた部隊は、それぞれ異変を観測する。


 


「……おい、見ろ」


 


東部隊の先頭兵が足を止めた。


 


視界の先。


通路が交差している中心部に、それは“立っていた”。


 


巨大構造物。


 


二本の階段が、互いに支え合うように交差しながら天へと伸びている。


 


それは――階段だった。


 



まるで、


上へ導くものと、


選別するものが、


絡み合っているかのように。


 


「……中心部、到達確認」


 


通信が各部隊に共有される。


 


西、南、北。


すべての部隊が、同じ構造物を視認していた。


 


「合流地点だな」


 


ガーランドは短く言った。


 


だが、その目はわずかに細められていた。


 


「……いや」


 


違う。


 


これは――


 


「“入口”じゃない。“選別の続き”だ」


 


その瞬間。


 


ギィィィィ――――……


 


 


塔全体が、わずかに軋んだ。


 


次の試験が始まる音のように。


 


 


読んでくださってありがとうございます。続きが気になった方はブックマーク、広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、よろしくお願いします。


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