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十階層 新たな門

この作品を見つけてくれてありがとうございます。

楽しんでもらえたら幸いです。

 十階層。


 玉砂利の上に、乾いた音が響いていた。


 赤星帝たち四人は、警戒しながら朱色の鳥居の列を進んでいた。


 まるで神社の参道だ。

「まるで参拝っすね、稲荷参りみたいな…」

「あぁ、まるで現実味がないな」

 キズの痛みが赤星を現実にかろうじて留まらせていた。


 戦場だった九階層とは、空気そのものが違う。


 静かすぎる。


 そして、鳥居の列の終端にそれはあった。


 巨大な門。


 鳥居の形をした、ひときわ大きな門柱。


 朱色ではない。


 黒い。


 まるで焦げた鉄のような質感だった。

 門扉は開かれたままだ。


 四人は立ち止まる。


 赤星は肩の裂傷を押さえながら門を見上げた。


 「……罠かもしれない…な」


 三雲が周囲を警戒する。


 ガーランド大尉は軽く笑った。


 「ここまで来て、今さら引き返すわけにもいかないだろ」


 米兵のスチュワート軍曹が肩をすくめた。


 「俺が三番目だな」


 結局、順番に門をくぐることになった。


 先頭、赤星。


 異常なし。


 二番目、三雲。


 変化なし。


 三番目。


 スチュワート軍曹。


 その瞬間だった。


 軍曹の身体が、突然硬直した。


 「……?」


 一歩踏み出した直後、軍曹が両手で頭を抱えた。


 「ぐ……」


 膝が折れる。


 玉砂利の上に崩れ落ちた。


 「軍曹?」


 三雲が声をかける。


 軍曹の呼吸が荒い。


 そして、震える声で呟いた。


 「やめろ……」


 掠れた声。


 「やめろっ……!」


 頭を抱えながら叫ぶ。


 「私は……ただ……大尉に……憧れて……!」


 その瞬間。


 筋肉が膨れ上がった。


 ブチッ。


 隊服が裂ける。


 皮膚の下で筋肉が暴れ狂うように隆起していく。


 骨が軋む。


 身体が、膨張する。


 「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」


 絶叫。


 スチュワート軍曹の身体はみるみる巨大化した。


 肩幅は倍以上。


 腕は丸太のように太い。


 肌は褐色に変色し、血管が蛇のように浮き出る。


 その姿は――


 理性を失った怪物だった。


 「軍曹!」


 ガーランド大尉が駆け寄る。


 だが。


 次の瞬間。


 巨大な拳が大尉に振り下ろされた。


 ドゴォン!!


 鈍い音。


 ガーランドの頭部が弾けた。


 熟れた果実を叩き潰したような音だった。


 骨片。


 血。


 脳漿。


 それらが糸引いて玉砂利の上に飛び散る。


 身体は数歩よろめき、そのまま崩れ落ちた。


 「大尉!!」


 三雲が叫ぶ。


 赤星の視界が一瞬白くなる。


 だが次の瞬間、赤い光剣を抜いていた。


 「くそッ!」


 踏み込む。


 斬撃。


 だが巨人は異様に速かった。


 巨体に似合わぬ敏捷さで身をひねる。


 光剣が空を切る。


 狂戦士の拳が横から振り抜かれた。


 赤星は咄嗟に後退する。


 衝撃で空気が爆ぜた。


 床の玉砂利が弾け飛ぶ。


 この門。


 それは単なる通路ではなかった。


 人間の身体に何かを与える装置。


 進化を――強制する装置だった。


 後にそれは《ギフト》と呼ばれる。


 人類を個別に進化させる力。


 だが。


 巨大すぎる力は精神を壊し。


 制御できない者は、こうなる。


 理性を失った怪物へと。


 「赤星三尉!危ないっ!!」


 三雲の声。


 狂戦士が突進する。


 拳が振り下ろされる。


 その瞬間。


 空中に光が現れた。


 透明な盾。


 一枚。


 二枚。


 三枚。


 浮遊する三枚のシールドが赤星の前に展開する。


 ドォォン!!


 拳が叩きつけられる。


 だが盾は割れない。


 衝撃を受け止めた。


 「……三雲?」


 両手を突き出した三雲の周囲に淡い光が揺れていた。


 「これ……俺が出したんす……よね?」


 それが彼の《ギフト》。


 「あはは、盾って…俺、根っから自衛隊員みたいっす」


 防御に特化した力。


 浮遊する三枚の盾。


 だが。


 防御だけでは勝てない。


 狂戦士は止まらない。


 拳。


 蹴り。


 衝撃。


 盾が歪む。


 「三尉っ! 下がって!」


 赤星の傷口から血が流れ続けるている。


 限界だった。


 「逃げろ! 三雲! こいつはお前では倒せない!」


 そして。


 狂戦士の拳が再び振り下ろされる。


 赤星の身体は動かなかった。


 その瞬間。


 三雲が前に出た。


 盾を重ねる。


 「三尉!!」


 衝撃。


 ドォォン!!


 盾ごと砕けた。


 三雲の身体が空中で折れ曲がる。


 血を吐きながら吹き飛んだ。


 玉砂利の上に落ち、動かない。


 「……三雲……?」


 赤星の声が震える。


 狂戦士が歩み寄る。


 拳を振り上げる。


 万事休す。




 その瞬間だった。




 背後で。


 地面が揺れた。


 巨大な影が立ち上がる。


 高さ三メートル。


 黒い毛皮。


 巨大な牙と爪を持った。


 グリズリーだった。


 咆哮。


 空気が震える。


 熊は狂戦士へ突進した。


 一撃、巨大な爪が胸を裂く。


 肉が裂ける音。

 吹き出る鮮血。


 二撃目、胸を突き刺す。

 心臓がえぐり出される。


 狂戦士が崩れ落ちた。


 熊はそれを踏みつける。


 そしてゆっくり赤星へ振り向いた。


 爪が振り上げられる。


 だが。


 赤星は叫んだ。


 「やめろ!!」


 血まみれの身体で立ち上がる。


 「大尉!!」


 熊の動きが止まった。


 赤星の瞳が、赤く光る。


 「正気に戻れ!!」


 その声は命令だった。


 熊の瞳が揺れる。


 巨大な身体が震える。


 そして。


 凶暴なグリズリーはゆっくりと座り込んだ。


 毛皮が縮む。


 骨格が変形する。


 熊の身体が人へ戻る。


 そこに立っていたのは。


 血にまみれた男。


 ノーマン・ガーランド大尉だった。


 彼の胸が上下する。


 「……クソ」


 苦笑する。


 「どうやら……生き返っちまったらしい」


 赤星は膝をついた。


 瞳の赤い光が消えていく。


 それが彼の《ギフト》。


 他者の精神に命令を刻む力。


 後に人々が畏怖の念を込めてこう呼ぶことになる…


《皇帝のエンペラー・アイズ》と…。

 


 進化の塔は、人類を選んでいた。


 戦いを通じて。


 そして門を通して。


 人を――


 異能の存在へと進化させたのだった。


読んでくださってありがとうございます。続きが気になった方はブックマーク、広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、よろしくお願いします。


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