鏡合わせの死闘
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どうぞ<楽しんでいってくださいませ。
迷路の終端。
十階層へ続く階段の前に――それは立っていた。
赤い光剣を二本。
二刀流。
無表情の顔。
そして、その顔は。
赤星帝三尉、そのものだった。
「……赤星三尉って双子じゃないっす…よね」
三雲のジョークも寒々しい。
米兵の軍曹が低く呟く。
「ジーザス…」
ガーランド大尉だけが鼻を鳴らした。
「なるほどな」
赤星の横顔を見る。
「お前のボス戦らしい」
クローンが口を開いた。
「滅せよ」
同じ声。
同じ高さ。
同じ呼吸。
「滅せよ」
赤い光剣が交差する。
構えも同じ。
二刀流。
赤星はゆっくり前へ出た。
「三雲三尉」
「……はい」
「手を出すな」
短い沈黙。
そして三雲は頷いた。
「了解、隊長」
ガーランドが肩をすくめる。
「ショータイムだ」
赤星は赤い光剣を二本構えた。
床に転がる死体。
壁にこびりつく血。
迷路の奥で、冷たい空気が流れる。
そして。
クローンが動いた。
爆発的な踏み込み。
速い。
赤星と、全く同じ速度。
赤い刃が十字に走る。
ギャァン!!
光剣同士が衝突する。
火花。
衝撃。
赤星の腕が軋む。
クローンは一歩も下がらない。
反撃。
逆袈裟。
だが赤星の刃がそれを受ける。
連撃。
斬撃。
斬撃。
斬撃。
完全に同じ剣筋。
同じ呼吸。
同じ間合い。
まるで鏡と戦っているようだった。
「……っ!」
赤星の肩が切れる。
血と肉が焼ける臭い。
クローンの刃が浅く食い込んだ。
だが赤星は止まらない。
回転。
後ろ回し蹴り。
クローンが同じ動きを返す。
蹴り同士がぶつかる。
鈍い衝撃。
互いに数歩下がる。
三雲が息を呑む。
「……完全に同じだ」
ガーランドが低く言った。
「いや」
目を細める。
「違うな」
再び激突。
赤い光が迷路を照らす。
斬撃の嵐。
金属音。
呼吸。
血。
赤星の脇腹が裂けた。
深い。
焼かれた傷口から血が流れる。
だが。
クローンは一切揺れない。
痛みも。
恐怖も。
怒りも。
ない。
ただ、完璧な剣。
完璧な合理性。
赤星は息を荒げながら笑った。
「くっ……なるほどな」
小さく呟く。
クローンが踏み込む。
赤星が斬る。
クローンが完璧なカウンター。
その瞬間。
赤星は確信した。
(やっぱりだ)
この敵は。
完璧すぎる。
合理的すぎる。
痛点がない。
恐怖がない。
だから。
攻撃はすべて――
最適解のカウンターだけ。
「だったら……」
赤星が踏み込む。
大振り。
明らかな隙。
クローンが反応する。
完璧なカウンター。
だが。
その瞬間。
赤星の口元が歪んだ。
「引っかかったな」
フェイント。
剣が途中で止まる。
クローンの反応が一瞬遅れる。
その刹那。
赤星が回転した。
下段斬り。
膝関節。
ザシュッ!!
肉と骨が断たれる。
クローンの足が崩れる。
それでもクローンは反撃する。
合理的なカウンター。
だが。
赤星はそれを読んでいた。
「二手先だ」
カウンターに。
カウンター。
赤い光が閃く。
横薙ぎ。
シュン。
クローンの首が宙を舞った。
数秒。
身体は立ったまま。
そして崩れ落ちた。
沈黙。
赤星の膝が崩れる。
ドサッ。
血が床に落ちる。
全身が焼き裂けていた。
三雲が駆け寄る。
「隊長!」
赤星は息を吐いた。
「……勝ったな」
ガーランドが笑う。
「いい戦いだった」
しばらくして。
四人は階段を登った。
十階層。
そこは。
まるで別世界だった。
迷路ではない。
戦場でもない。
玉砂利が敷き詰められた道。
静かな風。
そして。
朱色の鳥居。
無数の鳥居。
奥へ奥へと続く。
まるで
稲荷大社の千本鳥居のようだった。
誰も言葉を発さない。
戦場から切り離されたような静寂。
四人はゆっくり歩いた。
砂利の音だけが響く。
やがて。
鳥居の列が途切れた。
開けた空間。
中央に、舞台のような石の広場。
そして。
そこに立っていた。
ひときわ巨大な門。
鳥居の形をした、巨大な門。
静かに。
まるで四人を待っていたかのように。
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