調査隊 陸上自衛隊 三尉赤星帝
現在執筆中のステアーズの起源というか、前日譚に当たるEpisode0を書き始めました。
この作品が、多くの人の記憶に残るものにまりますように・・・・。
それは“落ちてきた”のではなかった。
空を割り、海を裂き、ただそこに「置かれた」としか思えない形で、巨大な円筒は日本領海内の孤島に直立していた。
全長三十五キロメートル。
直径六・四キロメートル。
質量百億トン以上。
世界中のレーダーと衛星が捉えながら、誰も止められなかった物体。
だが…島は無傷だった。
津波も爆風も、クレーターすらない。
まるで神が、静かに杭を打ち込んだかのように静かに聳え立っていた。
☆☆☆
「第一調査隊、これより内部へ侵入する」
若き三等陸尉、赤星帝はヘルメット越しに深く息を吐いた。
まだ二十四歳。
本来なら災害派遣や離島防衛任務を積むはずの年齢だ。だが今、彼の目の前にあるのは、教科書にも戦史にも存在しない“未知”だった。
塔の外壁は、金属に見えて金属ではない。
陽光を鈍く反射しながら、継ぎ目ひとつない漆黒の曲面が空へと続いている。見上げれば、雲の中へ消えていくほどの高さ。
その根元に、ぽっかりと口を開けた開口部。
扉はなかった。
歓迎するかのように、ただ開いている。
小隊はぞろぞろと開会しながら巨大な入口に入っていく。
「赤星三尉、心拍上昇してますよ」
後方の三雲隊員が軽口を叩く。
「正常範囲だ。問題ない」
「知ったました? この構造体の大きさって、昔流行ったガン◯ムのスペース・コロニーとほぼ同じ大きさなんだすって! そんなのが落っこちきて被害なしってヤバくないですか?」
「三雲三尉、無駄口叩くのは止めとけ、隊長にボコられるぞ」
そう返しながら、帝は前を行く隊員に続いて一歩を踏み出した。
境界を越えた瞬間、音が変わった。
風の音が消える。
波の音も、無線の微細なノイズすら遠くなる。
内部は、広大だった。
想像していた円筒の内壁など見えない。そこに広がっていたのは、人工物とも自然物ともつかない異様な空間。
黒曜石のような床。十メートルを超える高い天井。
そのすべてが淡く青白い光を放ち空間全体を満たしている。
「……なんだ、ここは」
帝の呟きが、やけに小さく響いた。
空気はある。酸素濃度も正常値。
だが匂いがない。
生命の匂いも、鉄の匂いも、湿気すら感じない。
まるで世界から“雑味”だけを削ぎ落としたような空間。
「熱源反応、前方百メートル!」
索敵担当の声が緊張を帯びる。
帝は即座に小銃を構えた。
そのとき――
床が、脈打った。
心臓の鼓動のように。
次の瞬間、黒い床面から“それ”は現れた。
筒型の形状、配膳ロボットに似ている。
だが、筒型の胴体から無数の腕が現れる。
金属質な滑らかな外殻が鈍く光り、センサーと思しき部位が赤く点灯する。
「撃て!」
銃声が轟いた。
5.56ミリ弾が命中する。だが弾丸は弾かれ、火花を散らすだけ。
機械の化け物は跳んだ。
あり得ない加速。
一瞬で隊員との距離を詰める。
「右だ!」
帝は体当たりで部下を突き飛ばした。
次の瞬間、先ほどまで彼が立っていた場所が抉れ、床が刃物のように裂ける。
心臓が喉元まで跳ね上がる。
訓練ではない。
演習でもない。
これは――戦闘だ。
「距離を取れ! 集中射!」
小隊の集中砲火を浴び、機械の化け物は白煙を上げて沈黙した。
だがその時、帝の視界の端に“それ”が見えた。
広間の奥。
上へと続く構造物。
――階段。
無機質な空間の中に、明確な「上層」への導線。
まるで。
攻略しろと言わんばかりに。
「……ふざけるな」
誰に向けた言葉か、自分でも分からない。
だが帝は理解していた。
これは偶然ではない。
意図だ。
この塔は、侵入者を拒絶していない。
試している。
人類を。
機械の化け物が数機前方に出願。跳躍する。
「前方、更に2機確認」
帝は引き金を引き続けながら、叫んだ。
「記録しろ! ここは――構造物内部、第一層と推定!」
その言葉が、人類史に刻まれる最初の報告になるとは、まだ誰も知らない。
赤星帝、二十四歳。
後に“最初のステアーズ”と呼ばれる男の、運命の一歩だった。
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