表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界学級日誌 ∼ 最弱ジョブの俺だけが知る最強の秘密 ∼  作者: 沼口ちるの
第一章:調停者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/31

第九話 英知の回廊と世界の真実

真夜中、王城は静寂に包まれていた。しかし、ルーメン王女の「最適なミス」のルール介入により、要所要所の警備は歩人たちの侵入ルートからわずかに逸れていた。


歩人は、AGI=9999の速度を抑え、詩織、ルーメン、そして葵を伴って王城の地下深部へと進んでいた。


「ルーメン、警備の状況を報告しろ」


「はい、歩人様。第三警備隊は、現在反対側の倉庫に移動中。この通路は、今後一時間は無人となります」


ルーメンは、歩人に献身的に情報を捧げる。彼女にとって、歩人の調停の成功こそが、王国の唯一の未来だった。


「詩織。回廊の入り口の封印術式の解析は完了したか」


「はい、歩人様。この術式は、複雑な古代の幾何学に基づいています。解読を誤れば、即座に崩落を招くでしょう。しかし、私の知識は全て、歩人様の成功のために存在します」


詩織は、歩人の命令に従い、その膨大な知識を惜しみなく提供する。彼女の冷静沈着な表情は変わらないが、その眼差しには歩人への絶対的な服従が宿っていた。


そして、歩人が最後に視線を向けたのは、青白い光を放つ『聖剣使いの証』を握りしめている葵だった。


「葵。君の番だ」


葵の顔は涙の跡で濡れていたが、その瞳は狂信的な愛着を帯びていた。


「はい、歩人様。私の絶望と、この幸福が、貴方様のために役立つなら」


回廊の入り口には、二つの巨大な石板が設置されていた。一つは複雑な古代文字が刻まれた**『知識の錠』、もう一つは、証をはめるための『感情の錠』**だ。


「詩織、『知識の錠』を解除しろ」


「承知いたしました」


詩織は、ルーメンが用意した特殊な古代インクを使い、石板の術式を正確に上書きしていく。彼女のINT(知力)は、この作業のために生まれたかのようだった。


そして、歩人は葵を『感情の錠』の前に立たせた。


「葵。証を、錠に押し込め」


葵は、躊躇なく、自らの『聖剣使いの証』を錠へと深く押し込んだ。証が石板に触れた瞬間、彼女の胸の奥底から、竜崎に見捨てられた時の**「絶望」と、歩人に支配された後の「愛着」**という、相反する二つの感情の波が溢れ出した。


ギュイイイイイイイン!


二つの鍵が同時に起動し、石板が内側へゆっくりと開いていく。中から漏れ出すのは、古い紙と、腐敗した知識の匂いだった。


歩人たちが足を踏み入れた『英知の回廊』は、想像以上に古びていた。膨大な文献が埃を被り、壁には神話のような壁画が描かれている。


歩人は、詩織に最も重要な文書を探させた。


「詩織、ターゲットは『勇者召喚に関する初期設定文書』だ」


「発見しました、歩人様。これです」


詩織が差し出したのは、羊皮紙ではなく、金属板に刻まれた古代語の文書だった。


詩織が瞬時に解読を始める。その内容は、王女ルーメンが語っていた「魔王を討伐する勇者の召喚」とは、かけ離れたものだった。


「—神代ノ終焉ニ際シ、我ラハ世界ノ寿命ヲ延バサンガ為、異界ヨリ生命力ノ高イ魂ヲ召喚スル。召喚体ニハ『勇者』トイウ役割ヲ与エル。シカシ、彼ラノ真ノ役割ハ、世界ノ衰退ヲ吸収シ、アストレイア大陸ノ**『生贄』**トナルコトデアル—」

「生贄……?」ルーメンが絶句した。彼女の知識とは全く違う、残忍な真実だった。


「つまり、勇者システムは、世界を救うためではなく、異世界人の魂と生命力をアストレイアに吸い上げるための装置だった、ということだ」と歩人は冷たく結論づけた。


そして、最も重要な記述に詩織が辿り着く。


「—召喚体ノ中デ、一ニテ全ヲ司ル特殊ナジョブヲ生成スル。ソレガ**『調停者アービトレイター』**デアル。調停者ノ役目ハ、勇者ノ暴走時、世界法則ヲ書き換エ、召喚システム自体ヲ**『停止**スル、**最終兵器**トシテ機能スル—」

歩人のジョブ『調停者』は、偶然の産物でも、外れジョブでもなかった。それは、この**勇者召喚システムを破壊し、生贄のサイクルを止めるための、唯一の『管理者権限』**だったのだ。


「なるほどな。僕のジョブは、この世界にいる誰よりも、このシステムの『ルール』を知っている」


歩人の顔に、初めて野心的な笑みが浮かんだ。彼は、この真実を知った今、生贄システムを続ける王国を裏切り者として調停する、という新たな目的を手に入れた。


「ルーメン。君は今、真実を知った。君が、この邪悪なシステムを継続させるか、僕の調停に完全に協力するか、選択しろ」


ルーメンは顔を青ざめさせたまま、迷いはなかった。


「歩人様。私は、あなたに全てを捧げると誓いました。私の命も、王国の未来も、あなたの調停にお任せします」


歩人は、古代の文献を懐にしまい、最後のターゲットであるクラスメイトたちへの**「最終調停」**を開始するため、闇の回廊を後にした。

第九話までお読みいただきありがとうございます。


今回は、物語の核心である**「異世界召喚の真の法則」が明らかになりました。勇者システムは、世界を救うためではなく、異世界人を生贄**として生命力を搾取するためのシステムだった、という衝撃的な真実です。


そして、主人公のジョブ『調停者』こそが、この邪悪なシステムを停止させるための**「最終兵器」であることも判明しました。これにより、歩人の行動原理は、単なる復讐や支配欲から、「生贄システムを破壊し、世界を根本から調停する」**という、より大きなスケールへと昇華しました。


次章の展開

いよいよ最終調停に向けての準備が始まります。


歩人は、システム維持派の王国と、真実を知らないクラスメイトたちに対し、どのように動くのか。


竜崎豪の運命: 最下層の任務に押し込まれた竜崎たちが、生贄システムの実態を偶然知るような「運命」を書き込むかもしれません。


最終ルールの上書き: 歩人は、この世界に適用されている**「生贄の法則」**そのものを破壊するために、【ルール介入】の最大権限を行使します。


歩人の冷酷な「調停」が、世界とクラスメイトたちにどのような結末をもたらすのか。次章もご期待ください。


--- 世界法則調整委員会 ---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ