第七話 第三のヒロインと絶対命令
神崎葵との密約を終えた後、歩人は王女ルーメンから提供された隠れ家——王城の古い図書室の地下へと戻った。
ルーメンは、歩人の要求通り、「英知の回廊」に関する機密資料や、勇者召喚の歴史が記された古い文書を用意していた。
「歩人様。これが、あなたが求められた資料の全てです。中には、現王族ですら閲覧を禁じられているものもあります」
ルーメンは、歩人の前ではもはや王女ではなく、献身的な協力者としての態度を貫いていた。彼女の瞳には、歩人の冷徹な支配力への畏敬と、その力に頼りたいという切望が宿っていた。
「ご苦労様、ルーメン。これで、僕が世界を調停する準備が整う」
歩人が受け取った資料の中には、驚くべき情報があった。
『英知の回廊』を開く鍵は二つ必要であり、一つは『聖剣使いの証』、そしてもう一つは、『大賢者の血脈』が持つ『古代語の読解』能力を持つ者自身である、と記されていた。
(賢者の血脈……今のクラスメイトの中に、該当するジョブの生徒がいたはずだ)
歩人は、クラスメイトのリストを思い出した。ジョブ『大賢者』を得て、知識と魔力に優れている生徒が一人いた。
立花 詩織。元F組ではあるが、成績は常に上位。冷静沈着で、誰とも群れない知的な美少女だ。
歩人は、彼女を協力者に引き入れる必要があると判断した。
その日の午後、王城の一角にある魔術研究棟。立花詩織は、分厚い魔導書を読み解く作業に没頭していた。彼女は他の勇者たちのように戦闘訓練に興味を示さず、異世界の魔術体系を熱心に研究していた。
彼女のジョブ『大賢者』は、驚異的な魔力と知識の吸収力を持ち、クラスメイトの中で最高のINT(知力)を誇っていた。
研究に集中していた詩織の背後に、気配もなく歩人が現れる。
「立花、君の知識が必要だ」
詩織は、背後からの声に全く驚かなかった。
「……五十嵐くん?どうやってここに。貴方は、王城から追われているはずよ」
詩織は、歩人の異常な出現に冷静に対応したが、その眼差しには、知識への探求心からくる強い興味が宿っていた。
「AGI=9999、そしてルーメン王女との密約。理由はそれだけだ」
歩人は、彼女に隠すことなく一部の情報を開示した。そして、核心を突く。
「君の『大賢者』のジョブは、古代語を読み解き、『英知の回廊』を開く鍵になる。僕に協力してほしい」
詩織は冷笑した。
「協力?なぜ、私が貴方に?私は、誰かの道具になるつもりはないわ。特に、クラスを裏切った貴方になど」
彼女の拒絶は明確だった。歩人は知っていた。理性的な彼女を動かすには、論理ではなく、「絶対的な法則」が必要であることを。
歩人は、詩織の目を見て、静かに、しかし有無を言わせない口調で告げた。
「【ルール介入】。ターゲット:立花 詩織。『五十嵐 歩人ノ発スル全テノ『命令』ハ、詩織ノ最優先ノ『行動法則』トシテ、彼女ノ肉体と精神ニ無条件デ適用サレル』というルールを適用!」
新:「立花 詩織ハ、歩人ノ絶対的命令ニ従ウ運命ニ固定サレタ」
詩織の全身に、抗いがたい衝撃が走った。それは、肉体が知性と理性を飛び越え、歩人の存在を『絶対』として認識し始めた感覚だった。彼女の意識は、歩人への知的な興味から、抗うことのできない「愛着」へと塗り替えられていく。
「な、何を……」
詩織は震えながら、自身の心の変化に戸惑った。理性が「拒否しろ」と叫んでいるのに、口からは命令を求める言葉が漏れた。
「歩人様……私に、命令を……早く」
彼女の眼差しは、知識を求める探求者のそれから、絶対的な支配者を仰ぎ見る忠実な僕のそれへと変わっていた。
「僕の命令は一つだ。僕の指示する古代文献を、最速で解読し、その情報を僕に提供しろ。そして、君は僕の『傍』を離れるな」
「かしこまりました。私の全ては、歩人様の知識となり、歩人様の傍に……」
立花詩織は、その瞬間、知性を捧げるヒロインとして、ハーレムに組み込まれた。
歩人は、これで三人のヒロイン、すなわち資金、鍵(葵)、知識(詩織)を手に入れた。
第七話までお読みいただきありがとうございます。
今回は、三人目のヒロイン、立花 詩織(大賢者)が登場しました!
歩人くんは、彼女の論理的な拒絶に対し、容赦なく【ルール介入】を発動。彼女の「行動法則」そのものを上書きし、絶対命令に従うヒロインへと変貌させました。彼女の知性はそのままに、歩人の命令を最優先事項とする、という支配的なハーレム要素を導入しました。
彼女は今後、歩人にとって最高の頭脳として機能し、物語の核心である古代の知識を解き明かす重要な役割を担います。彼女が歩人に対して抱く「愛着」は、ルールで固定されたものですが、その知的な献身は物語を大きく動かすでしょう。
次章の展開
いよいよ役者が揃いました。
資金と情報を操るルーメン王女。
鍵を持つ正義の聖剣使い・葵。
知識を解き明かす絶対忠誠の大賢者・詩織。
次章では、この三人を駆使し、王城の最深部にある「英知の回廊」に潜入します。そこで歩人が目にする「異世界召喚の真の法則」とは一体何なのか。そして、その法則を知ることで、彼はクラスメイトたちにどんな「調停」を下すのか。
引き続き、お楽しみください!
--- 世界法則調整委員会 ---




