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異世界学級日誌 ∼ 最弱ジョブの俺だけが知る最強の秘密 ∼  作者: 沼口ちるの
第一章:調停者

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第六話 聖剣使いとの接近

王女ルーメンとの密約を交わした後、歩人は宿を移動し、王国が提供した隠れ家へと移っていた。そこは王城の敷地内にありながら、王族の誰も使わない古い図書室の地下だった。


歩人は、ルーメンから提供された情報と、自身の『異世界日誌』を照らし合わせる。


『異世界日誌』には、次のルールが設定されていた。


『神崎 葵ハ、次ニ、歩人ガ求メル古代ノ文献ガ隠サレテイル場所ノ『鍵』ヲ持ッテイル運命ニアル』


ルーメンからの情報によると、彼女が求めている古代の文献は、王城の最深部、封印された「英知の回廊」に保管されている。そして、その回廊を開く鍵は、召喚された勇者たちに与えられた「ジョブ認定の証」に隠されている可能性があるという。


(つまり、葵の『聖剣使い』の証が鍵の一部、あるいはトリガーになっている、か)


歩人は、彼女に直接接触する必要があった。


翌朝、訓練場の片隅。


葵は一人で、真剣な面持ちで剣の訓練を行っていた。竜崎の暴走事件以来、クラス全体の空気は最悪で、彼女は「聖剣使い」としての責任と、クラスメイトを信じたい気持ちとの間で葛藤していた。


「……歩人くん」


葵は、背後から聞こえた声に驚き、持っていた剣を落としそうになった。


AGI=9999の歩人は、彼女の聴覚が捉えられない速度で接近し、彼女の真後ろに立っていた。彼は、姿を認識されない程度に、僅かにAGIを落としていた。


「驚かせてごめん。君に、伝えたいことがある」


葵は、竜崎に囮にされたはずの歩人が、無事に戻ってきたことに安堵の表情を浮かべた。しかし、その顔はすぐに警戒の色に変わった。


「歩人くん、無事だったのね……よかった。でも、どうしてここに?竜崎くんの件で、王家は今、貴方の捜索を――」


「王家のことは気にしなくていい。僕は今、王女ルーメンと密約を結んで、影で動いている」


歩人は、ルーメンが提供した機密情報の断片を葵に聞かせた。


「王女が……?どういうこと?貴方、何を企んでいるの?」


「企みじゃない。調停だ。君も気づいているだろう?このクラスの勇者システムは、世界を救うどころか、危機を招いている。竜崎の暴走は、その始まりに過ぎない」


葵は唇を噛んだ。竜崎の暴走を止めたのは自分だが、彼を信じきれなくなったのも事実だ。


「貴方は、どうしてそんなに冷静なの……あの時、貴方は見捨てられたのに」


「僕のジョブは『調停者』。僕にとって、僕の命や君の感情は、この世界の法則を構成する一部だ。感情に流されていては、調停はできない」


その冷徹な言葉に、葵は恐ろしさを感じながらも、歩人の背後に隠された真の力を予感した。


「君に協力してほしい。君が持つ『聖剣使いの証』、それが、この異世界召喚の真実を握る鍵だ」


歩人は、葵が身につけているジョブのペンダントを指差した。


葵は身構えた。


「これを渡せと?そんな勝手な……」


「渡さなくていい。だが、この証が鍵として機能する時が来る。その時、君が僕の望む通りに証を使う、というルールを、君の意志に上書きさせてほしい」


歩人は、剣闘で疲弊し、心身ともに弱っている葵に、究極の選択を迫った。彼の言葉は、彼女の正義感と責任感を揺さぶる。


「僕がこの世界の真の法則を知れば、君たちを元の世界に戻す道筋も見つけられるかもしれない。力を貸してくれ、葵。君の力は、僕の『調停』に不可欠だ」


葵は、歩人の冷たい瞳の奥に、元の世界に戻りたいという切実な願いと、彼にしかできない圧倒的な使命感のようなものを感じた。


「……わかったわ、歩人くん。もし、貴方が本当に私たちを救うために動いているのなら……。ただし、約束して。貴方の『調停』で、誰かを傷つけるようなことはしないで」


葵のMPが大きく消費される感覚と共に、歩人の『異世界日誌』に、新たなルールが静かに刻まれた。


『神崎 葵ハ、彼女ノ持つ『聖剣使いノ証』を、五十嵐 歩人ノ指示スル場所デ、歩人ノ望ム通リニ使用スル運命ニ固定サレタ』


歩人は目的を達し、安堵したような微笑みを浮かべた。


「ありがとう、葵。これで、世界は前に進む」


そして、彼は再びAGI=9999を発動させ、彼女の視界から一瞬で消えた。


葵は、その場に一人残り、胸元に手を当てた。


(彼は、悪魔なのか、それとも本当に救世主なのか……)


彼女の心は、歩人の圧倒的な支配力と、彼が見せた一瞬の優しさとの間で激しく揺れ動いていた。

第六話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、歩人が二人目のヒロイン、神崎 葵に接触し、彼女の協力を得る展開となりました。


歩人のやり方は、ルーメン王女へのアプローチとはまた異なります。葵の「正義感」と「元の世界に戻りたいという願い」をルールとして利用し、彼女の意志を尊重しながらも、目的を達しました。これにより、『聖剣使いの証』という重要な鍵が、歩人の支配下に置かれました。


葵は、歩人の支配力に恐れを抱きながらも、彼が示した「世界の真実」という巨大な目標に抗えず、彼に惹かれていくことになります。彼女は今後、歩人の表向きの協力者として、クラスメイトの動向を探る役割も担うでしょう。


物語は次章から、いよいよ王城最深部の「英知の回廊」へと舞台を移します。


王女ルーメンからの情報提供、葵からの鍵の提供、そして歩人のAGI=9999と【ルール介入】。すべてのチートが揃い、物語の核心である「異世界召喚の法則」に触れることになります。


次章も引き続き、ご期待ください。


--- 世界法則調整委員会 ---

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