第十三話 祭壇への道と肉体の献上
王城地下、聖痕の祭壇へ続く第十三区画。ここは王城の魔力障壁が最も集中する場所であり、反転者が待ち伏せていることは確実だった。
激痛のルールを適用されたルーメンと詩織は、歩人の左右に立っていた。二人の肌は汗と涙で濡れ、時折体が大きく痙攣する。
「うっ……歩人、様……この激痛は、私の……愛の深さ、なのですね……」ルーメンは喘ぎながら、それでも歩人のために周囲の魔力障壁の脆弱な点を報告し続けた。
「魔力障壁の、コアは……あと、十メートル先に、あります。反転者の、魔力反応が……非常に強いです」詩織は知識を吐き出すたびに、激痛で呼吸が乱れる。
歩人は、二人の苦痛を一切無視し、その正確な報告を利用して、AGI=9999で障壁の隙間をすり抜けていく。彼にとって、彼女たちの苦痛は、忠誠が揺るぎないことの**「音響的証拠」**でしかなかった。
「舞。反転者の次の行動を予測しろ。奴は必ず、僕の『絶対法則』構築を阻止しようとする」
「わ、わかったわ!」舞は極度の緊張と、ルールで縛られた好奇心から、全身の感覚を研ぎ澄ます。「奴は、『葵ちゃんの死のルール』を使って、貴方の肉体に干渉してくる!間違いないわ!」
舞の言葉が真実であれば、葵の命を対価とするAGI=9999のルール自体が、反転者によって破壊される可能性がある。
「ふむ。僕の肉体が弱る、か」歩人は冷酷に微笑んだ。
彼は立ち止まり、激痛に苛まれる詩織とルーメンを見つめた。
「詩織、ルーメン。君たちの愛と忠誠を、さらに証明してもらう」
歩人は、彼女たちの苦痛を増幅させるような、ぞっとするような命令を下した。
「反転者は、僕の肉体を弱体化させる。それを防ぐために、君たちの**『肉体』を、僕の『魔力供給源』**として、一時的にルール上書きする」
ルーメンは目を見開き、詩織は顔を真っ赤にしたが、激痛のルールによって抗うことはできない。
「【ルール介入】。ターゲット:詩織とルーメン。『彼女ラノ全テノMP、HP、ソシテ肉体的活力が、五十嵐 歩人ノ魔力(MP)回復ノ為ノ『献上回路』トシテ機能スル。この献上ハ、彼女ラニ最大ノ興奮と愛着**ヲ与エル』**というルールを適用!」
新:「肉体ノ活力が歩人ノMPトナリ、ヒロインニ最大ノ興奮ヲ与エル」
歩人は、その場で二人に、自らの魔力供給源となる行為を強制した。
「はっ……ああ……歩人様……この、力が抜けていく、感覚が……たまりません……」ルーメンは、激痛と同時に襲う抗いがたい快感に、体をよじらせた。
「知性、と、活力が……歩人様に、吸収される……最高の、法則です……」詩織は、理性を失いかけた瞳で歩人を見つめ、彼に肉体のすべてを捧げた。
歩人は、二人の肉体を通じて、彼女たちのMPと活力を吸い上げ、瞬時に失われた自身のMPを全快させた。彼の顔には、支配者としての歪んだ満足感が浮かんでいた。
「チッ、相変わらず、汚い手を」
通路の突き当たりから、反転者が姿を現した。彼の手に握られているのは、**神崎葵の『聖剣使いの証』**だった。
反転者は、歩人の肉体が強靭になったことを確認し、警戒を強める。
「調停者。お前の支配は、もはや世界の癌だ。この証を使って、俺は最後にして最大のルールを反転させる」
反転者は、葵の証を、第十三区画の魔力障壁のコアに突き立てた。
「【法則反転】、緊急発動!ターゲット:神崎葵の献上ルール。『調停者のAGI=9999を維持スル『献上法則』を反転させ、神崎葵の『魂』**を、**召喚システムノ『守護者』として、敵対的に再構築スル』」
新:「神崎 葵ノ魂ハ、召喚システムノ**『守護者』**トシテ覚醒し、調停者ニ敵対スル運命ニ固定サレル」
葵の証が、青白く、そして赤黒い光を放ち始めた。その光の中から、半透明な鎧を纏った神崎葵の魂が、憎悪に満ちた表情で現れた。
「……歩人、くん……なぜ、私を裏切ったの……?私は、あなたを、討伐する……!」
歩人は、完全に支配したはずの葵の魂が、最も恐ろしい形で敵として目の前に現れたことに、初めて顔色を変えた。彼の目の前に立ちはだかったのは、かつてのヒロインであり、自らの手で絶望の淵に追いやった**「守護者」**となった葵の姿だった。
第十三話までお読みいただきありがとうございます。
歩人くんは、反転者の妨害ルールを逆手に取り、「支配が揺らぐなら、苦痛を与えればいい」という、非常に冷酷な手段に出ました。さらに、自身のMP回復のために、ルーメンと詩織の肉体的な活力を搾取し、それを快感として上書きするという、支配の極致を体現しました。これにより、ヒロインたちの愛は、苦痛と快楽によって永遠に歩人に固定されました。
そして、物語は最大のクライマックスへと突入します。反転者が、葵の『献上ルール』を反転させ、彼女の魂を**「調停者抹殺」を使命とする召喚システム『守護者』**として復活させました。
歩人が最も恐れるべき事態、それは**「支配したヒロインとの敵対」**です。
次章では、愛と支配の対極にある、歩人 VS 守護者・葵の悲劇的な戦闘が始まります。この究極の愛憎対決を、歩人はどう「調停」するのか?そして、反転者をどう打ち破り、『絶対法則』を構築できるのか?
引き続き、ご期待ください。
--- 世界法則調整委員会 ---




