積極的な妹と消極的な私
「お姉様、そんなに消極的では殿方には好かれませんよ?」
こんなことを言うのは妹のロクサーヌ……
私は大人しい性格なので何も言い返せないのであった……
妹はとにかく積極的であることが大事と言って、何にでも飛び込む性格だ!
そのおかげもあってかよくモテるのである。
私はチキンなので何もできずに、妹がモテているのを眺めているだけなのである……
別にそんなのどうでもいい……!
って思えるのなら楽ですが、正直私もお付き合いをしたいと思うので、悲しい気持ちになるのであった……
そしてある日お父様とお母様に私達姉妹は呼ばれる……
「実はだな、第三王子様の婚約者を決めるにあたり、うちがその相手になることが決まった!これはこの上なく光栄なことでありチャンスでもある!」
「あなたそんなかしこまらないで……まあとにかく2人とも第三王子様との婚約、いけそうかしら?」
妹は即座に言う「もちろんですわお母様、お父様!私がきっと射止めて見せますわ!」
第三王子様のことはよく知らないのですが、遠目から素敵そうだと思った記憶があるので、私も思い切って言う……
「私が選ばれるのでしたら、喜んで結婚したいと思います……」
「あらお姉様、そんな消極的な姿勢ではダメよ、私は第三王子様のお心を掴んで見せますから、お姉様の出番はありませんわ……」
「……私はロクサーヌのことを第三王子様が好きになるのなら仕方ないことだと思うわ……」
妹に言われて憂鬱な気分になってきた……
きっと第三王子様も妹を好きになるんだろうなと……
ああ……私どうしてこんなにも消極的なのだろうか……
そして私達はできるだけのオシャレをして、第三王子様と会う場に向かったのであった……
たどり着くと第三王子様自ら出迎えて下さり、爽やかに挨拶をして下さる……
ああやっぱ印象通り素敵な方……妹もどうやら同じらしく目が輝いている……
「お二人ともよく来てくれた、私が第三王子のリガルドだ。まあ王子と言っても継承権の順位など低い気楽な身に過ぎないがね……」
妹はすぐに言う「そんなことありませんわ!リガルド様こそ王太子様に相応しいくらい素敵な振る舞いですわ!」
私は動揺した……
あのですね、たかが伯爵家である私達が王太子が誰がいいかなんて発言するの危なすぎないかと……
私がハラハラしているとリガルド様は笑って下さる……
「はは、王太子は兄上がなるであろう、兄上は私とは比較にならないくらい凄い方だからね……」
しかし妹はブレない「そんなことありませんわ、リガルド様私から見ても素敵ですもの……こんな方が王様ならいいなって思いますわ……」
こんな調子で妹は積極的なのだが私はリガルド様を褒めることがほとんどできなかった……
ああどうせ妹が選ばれるんだろうなあ……
会話も最後のほうになってリガルド様が私に話題を振ってきた。
「お姉さんのカサンドラ嬢に1つだけ聞きたい、私との婚約は前向きなのかな?」
せめてここだけは言わないと思い、言うことにした。
「もちろんでございます!私がもし選ばれるのでしたら、喜んで応じさせていただきますし、至らないのは理解していますが、できるだけ頑張りたいと思います……」
情けないことに最後自信の無さから小声になってしまった……
はぁ……せっかく話題を振って下さったのに……
妹は勝手に言い出す「私も選ばれたらリガルド様のために必ずお役立って見せますわ!」
「2人ともありがとう、私は色々考えた上で結論を出そうと思う、本当に来てくれてありがとう」
リガルド様はにこやかに最後仰っているが、何と言うか雰囲気は決意が固そうだった……
ああ妹がいいって迷いなく思っているんだろうなあ……
そして翌日どちらを婚約者にするかの挨拶にリガルド様自ら伯爵家に訪れるでは無いか!
「姉であるカサンドラと私は婚約をしたいと思う。カサンドラ嬢、よろしく頼むよ」
私、妹、父、母の前でこういきなり言われてびっくりする……
「なぜですの!どうしてお姉様なんですか?あんなに私頑張ったのに!」
妹は怒りだして抗議する。
「私のほうがモテるし、一生懸命だし、それからもっとリガルド様に貢献できると思いますわ。ほら容姿だってお姉様に勝っているはずよ!」
「私はこれ理由を説明しないと駄目なのか?」
リガルド様が仰るので、
「私には納得いかないですわ!」
妹がごねだす……
正直言うと私も理由が知りたいと思った……
何故なら何で私?って正直思うからだ……
そんな私の様子を見てかリガルド様が言い出す……
「分かったよ、失礼なことを言ってしまうと思うがそれは許して欲しい……」
父も母も冷や冷やした顔をしている……
「はっきりいうとね、ロクサーヌ嬢、君では僕の身がもたないんだ!」
「どういうことかしら?」
「私と王太子になるであろう長男の兄上は母も違う!兄上は王妃の子であり、私は側妃の子だ!幸い兄上と私の関係性は良好だが、あくまで私が立場を弁えているから、兄上の周りに疑われずに済んでいるんだ!兄上本人はともかく、周りのものは目を光らせているのだからな!そんな中、君は何度も何度も、王太子には私のほうがいいだの王様になって欲しいなどと言った!そんなものを妻にしたら、兄上の周りに疑われて困るのは私だ!いや困るだけならいい!最悪身分や命の問題に関わる!それに比べて姉のカサンドラ嬢はそんな妹を見て困っていた、この控えめなカサンドラ嬢なら、私のこの複雑な事情に対応できる、そう思ったから選んだんだ!」
……なるほど……
「そんな、どうしてなの!私は積極的であればいいと思ったのに!」
「……その積極性は私には、いや王家には必要が無かったんだよ……」
こうして私とリガルド様の婚約が決まり、妹は自暴自棄になって荒れた……
私はそんな妹が見ていられずに注意するも妹は激怒した。
「お姉様はリガルド様に選ばれたからっていい気になっているのよ!そういう上から目線はやめてよね!」
妹も今まで私に色々言ってきたことを忘れてなんて言い分と思ったけど、でもそう言われたら何も言えない……
こうして私はリガルド様と結婚をし幸せになったが、
妹はその後も荒れた生活を繰り返し、評判が落ちたせいでどんどん付き合う男の性質も悪いものとなっていき、最終的にはお父様とお母様も手に負えないということで修道院送りになった……
積極的であれって言われていますが、何がいけなかったのだろう妹は……