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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第四章・隠れ〇〇が多すぎると思う。
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第98話 日常に戻るも平穏は程遠い。

 幼馴染の詳しい事情は後ほど聞くことにした。

 夏季講習がある以上、そちらにも出ないといけないからな。


(てか、(あおい)が幼馴染ねぇ。実感、湧かねぇ)


 夏季講習に出ても俺の授業態度は成績の悪かった頃と同じだ。

 ボケッと窓の外を眺めて、物思いに耽る。


(あかり)の幼馴染と聞いていたから違うと思ったが、いつ頃の話なんだか)


 俺の場合、大学受験など記念受験扱いなので真剣に勉強しても仕方ない。

 不真面目が戻ったとか、何故来ているとか、周囲から口々に文句を言われているが気にしたらキリが無いので無視している。

 一応、受け答えだけはキッチリやるが。


「はい、正解です。着席して」

「不真面目な態度なのに要点を聞いているだと?」

「奴は超人か何かか? 結局、化物の旦那という」

「「あん?」」

「「……」」


 教師が見て見ぬ振りで授業を進めているのは随分前に経緯を伝えているからだ。


「静かに。次は隣の白木(しらき)さん」

「はい」


 夏季講習後は荷物と弁当を持って生徒会室に向かう。

 床にシートを敷いて車座になって弁当蓋を開けていく。


「酷いよね。私の事、化物って」

「そこは体力お化けと言い換えた方がいいですね。女子に化物は無いです」

「体力お化けとか(あおい)にだけは言われたくないよ」

「そうだな。(あおい)は言う資格が無いな」


 俺の隣には(さき)が、次に(あおい)(あかり)

 対面に会長と副会長、李香(りか)が座って弁当を拡げて語り合った。


(あかり)君までそういう事を言わないで!」

白木(しらき)は総じて体力お化けでしょう? 何を今更」

「「今更って!?」」


 話題は何故か講習中に聞こえた化物に関してだった。


「会長の言葉は言い得て妙だな」

(あかり)君!?」

「俺が戦慄する体力を頻繁に発揮するから」

「そ、そうなの? 自覚は無いのだけど?」


 (あかり)もある意味で死にかけたからな、経験者は語ると。

 俺も(さき)が何か言いたげだったので当時の裏話を語った。


「そういえば会長も序盤で腰が抜けていたらしいぞ」

「うっ」

「そうだったのぉ!?」

「日付が変わる前から昼間まで支えられていたとか」

「本当ですか、会長?」

「そ、そうよ、悪い?」

「それはなんというか、兄がご迷惑を」

「迷惑とは思っていないけど、限度は考えてほしかったわ」

「これも獣のバカ体力の所為だろうな」


 知らない者が居る場所で語る事ではないが、そう言わないと納得しないから。


「「け、獣と言われると否定出来ない」」

「「「獣?」」」


 知る者だけが分かる名称だよな。

 一人だけ心当たりのある者も居るが。


(あき)? 獣っていうと?」

(あおい)のブレーカーを上げた時」

「あ、あー! あれか!」

「……」


 突然出現するので当の本人は自覚無しだが。


(さき)曰く、ムッツリスケベに多いらしい」

「本当は(あおい)のお母さんから聞いたけど、ムッツリスケベの場合は有無を言わせず本能の獣が顔を出すそうだよ。私の場合は嫉妬した時だけ、なんだけど」

(あおい)、少しずつオープンに変えていこうな」

「う、うん。善処しますとだけ言っておくよ」


 すると会長が戦慄したように頬を引き攣らせた。


「ムッツリスケベ……(しゅん)もそうかも」


 これには俺と(さき)も顔を見合わせたよな。

 妹はオープンスケベなのに兄がムッツリだから。


「会長、今のうちに体力増強をお勧めします」

「居ない時に増強しないと腰が持ちませんよ」

「そ、そうね。私もなにか運動でも始めてみようかしら」


 生徒会の合間に出来る軽めの運動が見つかるといいな。


「皆さんの言う、獣って何なのでしょうか?」

「さぁ? 会話から分かるのはバカ体力の根幹かと」

「なるほど。白木(しらき)に嫁ぐのは命がけなんですね」


 それを言われるとそうなるかもな。

 勿論、相手に依るが。

 すると(さき)が咳払いして話題を変える。


「あ、そうだった。尼河(にかわ)君。お父さんから返事きた?」

「返事? あ、あー家の事か。問題ないぞ。今日中に手続きするって」

「それなら、午後には入居可能だね? 購入した荷物忘れないでね」

「おう。今は親父からの返事待ちだがな」


 昨夜の内に、ウチの電話を使って連絡していた(あかり)

 確認と要望を伝えて可能であれば頼むと言っていた。

 確認はアパートの代わりを探しているかどうかだ。

 リノベーションが忙しくて、まだだったそうだが。

 要望は(あおい)の願いで隣家を求めていた。


「そうなると(なごみ)達はどうなるんだ?」

「可能なら隣に住まわせるつもりで居るらしい」

「親父さんが?」

(なごみ)も……だからな」


 一応、関係者には明かしているが、声を大にして言えないんだよな。


「それもそうか」


 俺は和やかな空気に変化したと思いつつ弁当箱の蓋を閉じた。

 その瞬間、妙な視線を感じ取ってしまった。


「ん?」

(あき)君、どうかした?」


 感じたのは扉付近、(さき)に問われるも無視して扉に近づく。


(あき)君?」

「「?」」

「何があったの?」

「さぁ?」

「何か居たのか?」

「シッ!」


 扉を開ける前に周囲を黙らせ、勢いで扉を開けた。

 開けた瞬間、俺と顔を合わせる前に逃げていった。


「あいつは?」

(あき)君、どうかしたの?」

「いや、不審者が扉の外に居たんだよ」


 俺は逃げていく者の背中を指さした。


「なんでこんな所に?」

「見覚えがあるのか?」

「クラスで一番影の薄い人って言えばいいかな?」

「あいつか」


 何故かA組に所属する影の薄いクラスメイトが外に居た。


「感じた視線は敵意だったな」

「敵意?」

「誰を見ていたか分からないが敵意だって事は分かった」


 妙に殺気立っていたもんな。

 何が目的なんだか?

 扉前から室内に戻った俺と(さき)

 会長が訝しげな表情で問いかけてきた。


「誰か居たの?」

「居たといえば居ましたね」

涌田(わだ)(よう)という名前のクラスメイトですけど」

涌田(わだ)(よう)?」


 そういうフルネームだったのか。

 だが、誰もが名前を聞いても覚えがない状態だった。

 体育祭でも見た事はあるだろうが、気にも留めていない感じだな。


「体育祭の競技だと何に出ていた?」

「あれ? なんだっけ? 覚えがないね」


 (さき)に問うと覚えがない。


「当日はクラスメイトの全員が参加していたから、何かの競技に出場していたはずだが。存在がうるさい山田(やまだ)と一緒に出ていたとかじゃないのか?」

「そうかも……存在がうるさいって」

「本当の事だろ?」

「そうだけど」


 体育祭の資料を取り出せば判明するだろうが気に病んでも仕方ないな。


「その生徒は生徒会室に用事でもあったの?」

「用事は無いでしょうね。扉の外で聞き耳を立てていただけなので」

「聞き耳、ねぇ」


 聞き耳と妙な視線を室内に向けていたのは確かだ。

 扉の窓は小さいが中を覗き見る事は出来るからな。

 昼食後は成功に終わった交流会の反省会を始めた。


「突発的な事故もあったけど、何とか成功したわね」

「そうですね。お義父さんにはご迷惑をおかけしましたが」

「親父は気にしてないぞ。怪我の功名になったも同然だしな」

「老朽化が目立っていたからか」


 大々的に壊されたのに、なかった事に出来るって相当だな。

 一応、訴訟だけは行っているようだが、それはそれと。

 反省会のあとの話題は学食が中心となった。


「この機会にメニューも刷新するってよ」

「夏季休暇明けには新しい料理が頂けると」

「それと学食の食券購入方法も変えるらしい」

「変える? まさか電子決済を導入するのか?」

「食券持ちはともかく、今後はそちらを主流にするそうだ」

「現金を持ち歩く必要がなくなるのは嬉しい話よね」

「そうですね。このままスマホの持ち込みが常時可能になれば幸いですが」

「授業中と試験以外は手元に置いておきたいよね?」

「俺は試験以外では無視して使っていたけどな」

「スマートグラスでね」


 最近は滅多に使っていないが。


「そこは私達の仕事ね。校則を見直して時代に即していかないと」

「古臭い慣習を捨てて新しい慣習を作ると」


 私達の仕事。

 生徒会だから出来る事でもあると。

 ひと息入れたあとは文化祭の下準備を始めた。


「ルールのたたき台はこれでいいとして」

(あおい)から聞いていたが、本当にやるんだな」

「まぁな。景品は何にするか決めていないが、盛り上がればいいなとは思ってる」


 準備には協力者として(あかり)が手伝ってくれた。

 今回は火事の所為でバッシュやらなにやらが燃えてしまったから、練習に参加出来ないだけだが、これが気晴らしになるなら大いに手伝ってもらおうかと思っている。

 (さき)の方は李香(りか)と副会長が手伝っている。


「会場図面はこれでいいでしょうか?」

「うんうん! これでいいと思うよ。どうです、副会長」

「そうね。これの土台は何を用いるの?」

「空き教室の机を中心に用いる予定です」

「そうなると顧問の許可が要るかもね?」


 会長と(あおい)は別件の打ち合わせをしていた。


「こんな山奥にあるんですね。会長達と(さき)さんが通っていた女子校って」

「そうなのよね。冬場はともかく九月初旬は虫が多くてね」

「虫ですか? それってクワガタとか?」

「いいえ、虫なのよ。黒い頭のゴミ虫が門外に沢山湧くの」

「ほ、本当に虫なので?」

「虫よ。虫と思わないと気が滅入るわ」

「そ、そうなんですね」


 一体、なんの打ち合わせなのか疑問に思うが、これは来期の交流会。

 根回しをする必要があるそうで、新学期早々に訪問する日程を話し合っていた。

 (あおい)(さき)と同じ白木(しらき)でも庶民育ち。

 明日の臨時株主総会の後に名字が白木(しらき)に戻る。


(当日に騒ぎが勃発したら先方に迷惑がかかるから根回しは必要と)


 ここで(あおい)だけが相手校に向かうと何らかの騒ぎが起きるので(さき)と会長が橋渡し役で一緒に向かう事になるようだ。

 御嬢様も大変だな、マジで。


「黒い頭の虫って何なんだろうな?」

「会長が嫌がる虫なんて居るのか?」


 俺は疑問に思いつつ元在校生達に問いかけた。


「「「居る!」」」

「「マ?」」


 揃って真顔で答えるって。

 なんだソレ?


「あの学校って通常時は閉鎖されているのだけど、九月初旬は限定的に出入りが可能になる時期があるの。その時に挙って集まった輩が門外に並ぶんだよ」

「それって何かのイベントか?」

「単純に言うと三日間の文化祭だね」

「我が校も二日目は同じ状態になりますが」

「女子校は初日から出入り自由なので」

「生徒目当ての男が大量発生するの」

「女子校は女子校で大変なんだな」




頭の黒い虫(´・ω・`)?

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