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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第三章・執着の恐怖を打ち払いたい。
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第90話 本物を見ると呆れかえるね。

 私は頭に血が上った爺の行動に疑問を持った。


「というか、私と(あき)君って行動を共にしているから離れるなんて有り得ないよね? なんで別行動を選択するなんて思うのかな?」

「血が上っていたら冷静な判断なんて出来ないだろ」

「ああ、それで?」


 私の疑問は(あき)君の言葉で納得に変わった。


陽希(ようき)兄の思惑は関係破壊だ。末の孫娘と何人目の孫娘か知らないが浮気して両者を天秤にかけていると思ったなら、爺が怒ったとしても不思議ではない」

「でもさ、調べて分かる事をなんでしないの?」

「だから婚約保留じゃないのか? 調べて問題が無ければ戻すとかな」

「なるほど」


 正気を失っているようで冷静ではあると、なんだそれ?

 すると(あき)君は思案しつつ、


「現状から分かるのは陽希(ようき)兄の魂胆は学食破壊で俺達を落胆させて予定の繰り上げを目論んだのかもしれないな。中止になったら気晴らしに動くと思って」


 嵌めた愚兄の行動を推測していく。


「留守の返答から察するに、奴は交流会が中止する前提で動いていた。俺達が中止日の内に移動を開始して、この街で過ごすと。目撃された時間は昼過ぎだから……」

「到着して別荘で寛いでいる間、(あき)君が浮気したように思わせたかったと?」

「おそらく。尼河(にかわ)家のプライベートビーチ以外で過ごすことはないが」


 それなんて尼河(にかわ)家に問えば一発で判明すると思う。

 交流会と別荘の手配は尼河(にかわ)家が関わっているから。


「それと俺達はこの街に数日居るから、その間に婚約解消と窃盗を行う予定なのだろう。孫娘の品物を守れなかった凪倉(なくら)への不信感を植え付けるつもりで」

「そこまで壮大な計画を立てて潰すと?」

凪倉(なくら)との仲違いは白木(しらき)に破滅を与えるからな」

「元々そういう関係だったね」

「ここに先の優木(ゆうき)の二度目は無いが加わるから確実に潰れる」

「それも折り込み済みで?」

「多分な。優木(ゆうき)にも内部犯が割と居るかもしれない」

「やりきれないね、それ?」

「ただな、調べたのは優木(ゆうき)だから、二度目は無いは確定した」

「!!」


 私、絶句、爺と伯父のバカァ!

 この短期間に何をやってるのぉ!


「退陣要求は突きつけられると思うぞ。大株主でもあるし」

「おぅ」


 ここまでの事になると父さんが継いだ方がいい気がする。

 企業経営に関してはとっても冷徹だしね、敵も多いけど。


「ただな、現実は机上の空論通りにはいかないがな」


 そうだね。

 喪女と(あき)君が御対面したら顔が違うってなると思う。

 そうなったら、もう遅い。

 手遅れ、お詫びの品、ごめんなさいも通じない。

 (あき)君の言う通り、退陣要求は絶対出る。


「空論はともかく。俺の反撃、受け取ってくれたかね?」

「全国に顔が知れ渡ったもんね。悪魔の子、近寄ると犯されるって」


 実際は交流会を成功させて陽希(ようき)兄弟の犯行を全国に知らしめた。

 で、翌日に訪れて父さんの頭越しに保留を突きつけられたのが、今だね。

 爺と伯父の短絡思考にはイラッとする。

 ここで父さんが動いていたらいいけど。

 仮に証言を得るつもりなら令嬢達も当てはまるから、動き次第で退陣は確実だ。

 令嬢達の両親にも(あき)君の存在が伝わったのだもの。

 大体、現地に居ない人間がどうやって遠方で溺れる喪女を救うの?

 幾ら(あき)君でもそれは無理だと思うな。


「何はともあれ、今は誤算を喰らっていると思うが、どうなっていることやら?」

「誤算?」

「自分で言っただろ? 悪魔の子って」

「あっ」

「実行犯の顔出しだ。手配していても危険な悪魔に手を貸す業者が居ると思うか?」

「それは居ないね。業者の信用にかかってくるし」

「今回の目撃もそれが効いているからな。悪魔が突き落としたと証言が出ている」

「か、顔が知れ渡る怖さはそこにあるね?」

「あれは交流会前に放流した情報だ。知らないのは沿岸に居た喪女くらいだな」

「残念美人がより残念に思えてきたよ」

「その父親が一番残念だがな」

「確かに」


 悪化状態を作った張本人だしね。

 身内に甘すぎるのも考えものだよ。

 私はここで知った情報を父さんに流した。

 当然、怒るよね?

 父さんもこの件は知らなかったので、勝手な事をするなと怒鳴り込んだ。

 深夜に寝ている爺と伯父を叩き起こして正座させて説教を喰らわせたらしい。

 これは付いていった母さん談だ。

 胸の大きさを教えた件はこれでチャラだね。


「保留解消! よかったぁ〜」

「これで寝られるな?」

「うん! 寝られるから、私と寝て?」

「はい?」

「お詫び!」

「あ、そういう」


 こうして私は安堵したまま(あき)君を抱いて寝たのだった。


「寝るのはいいが、今日の抱き枕は一段と酷いぞ……苦しい」

(あき)君、すきぃ! ムニャムニャ」



 §



 翌日の午後。

 尼河(にかわ)家の別荘に喪女が訪れた。


「本当にすみませんでした!」


 格好は白衣によれたワイシャツ、ボサボサの髪に荒れた肌。

 顔立ちは綺麗な部類に入るが、クマが出来ていて残念だった。

 胸は無い、血縁者なのに不思議と平面族だった。

 潰している気配もないね。

 ブラを着けているかと思えばノーブラだ。

 そこだけは血筋が出ている。

 私は応接間を借りたうえで(あき)君と共に謝罪に応じた。


「周囲を確認しないで岸壁を歩くからでしょ」

「ごもっともで」


 反省の意思ありと。

 しかし、男性に惚れられそうな見た目なのに残念だ。

 少し整えたらモテると思う。

 胸の有無に拘らない相手が居れば、だけど。

 すると(あき)君が海の匂いをさせている喪女に問いかけた。


「で、専攻は?」


 これには喪女もきょとんだった。


「え? ああ、海洋生物学で石油汚染を研究中です」


 一応、答えはするのね。

 難しい内容だから私には分からないけど。


「ふーん」

「どうかした?」

「いや、既に通り過ぎた分野だから何だって感じで」

「興味はあったけどそんなもんかと?」

「大体合ってる」


 ま、そうだよね。

 例の秘薬を作った張本人だし。

 喪女はきょとんのままだけど。


「はい?」


 (あき)君は胸ポケットから名刺ケースを取りだす。


「えっと……誰がいいか」

「どうかしたの?」

「どうせ研究するならもっといい環境を、と思ってな」

「それで?」


 なるほど。

 可能ならば留学させようって腹ね。

 このまま国内に居たら家の問題に巻き込まれてしまうから。


「ここの大学教授を訪ねてくれ。英語は出来るよな?」

「ええ。ネイティブ英会話は可能ですが……」

「じゃ、問題なし。紹介状は俺が送っておくわ」


 (あき)君はそう言ってスマホを取り出してメールを送信した。

 その様子を見ていた喪女はきょとんとしたまま問いかける。


「あの? 高校生ですよね? なんで?」

(あき)君、海外の大学を飛び級で卒業してるよ」

「はい?」


 ま、普通は通じないよね。

 (あき)君は咳払いしつつ誤魔化した。


「ゴホン。ま、色々あって海外に伝手があるからな。どうせ研究するなら本場がいいだろ? 現状は製品として作り出された薬品の使い方を研究中だけどな」

「薬品?」


 そこだけ聞いても分からないと思う。

 なので補足程度に教えてあげた。


「服を溶かす薬だよ」

「え?」

「そこだけ言うなよ!? 正式名称じゃないんだぞ、それ?」

「違った。合成繊維を溶かす薬だね。有機溶剤を使わないと消せない塗装もバッチリ消える薬品の総称」

「それは開発時の別称だ!」

「合成繊維……石油?」

「植物繊維は対象外だって」

「……」


 まさか研究内容が被っていたなんてないよね?


「ろ、論文は? 何処に?」


 あ、これは被っていたんだ、ごめんね。

 (あき)君は興奮する喪女に引き気味で応じた。


「俺の名前で調べたら、分野違いで出てくるぞ。海洋学ではないが」


 それを聞いた喪女。

 大きく目を見開いてどもりだした。


「も、も、も」

「喪女?」

「違う! 盲点だったぁ!」


 ツッコミを入れる冷静さはあったのね。


「そっち?」

「喪女が出てくるのは(さき)くらいだろ?」

「そうかな? (はな)さん、明らかに喪女だし」

「うっ」

「おいこら、ダメージ喰らってるじゃねーか!」

「まぁまぁ。海外でいい人、見つけてきてね。私に言えるのはそれだけ」

「う、うん」


 こうして私と喪女は和解した。

 本人は数日後に留学申請を出すと言っていた。

 留学する大学には兄さんが居るので、よろしくと言っておいた。

 兄さんにも(はな)さんが行くから面倒見てねと連絡しておいた。

 これには「何故?」の一言だけが返ってきたが既読スルーした私だった。

 応接間から居間に向かうと、


「おーい。あの悪魔が捕まったってよ」

「なんでも、運送会社の社員が不審に思って警察を呼んだみたいですよ」


 報道番組が特番で組まれていて、それをバカップルが教えてくれた。


「このマンションって(あき)の家じゃね?」

「そうなの? (あかり)君?」

「先日遊びに行こうとして雨音(あまね)に見つかって行けなかったからな」


 近くに行ったまではいいが、雨乞(あまご)いに追っかけられたと。


雨音(あまね)さんと?」

「逃げたぞ? 勿論」

「本当に?」

「本当だって」

「本当に? 本当に? 本当に?」

「あ、(あおい)、重い」

「私、重くないもん!」


 もしかしたら尼河(にかわ)君が追跡されただけなのかも。

 これには(あき)君も苦笑いしているので気づいたようだ。


「ま、いい気味って事で」

「ああ。(あおい)ちゃんの嫉妬かぁ」

「重い愛に疑われるのは辛いからな?」

「うっ」


 それを言われると夕べの事が頭に過って反論出来ない。

 (あき)君は遠い目をして他人事のように論じる番組を眺めた。


「俺が唯一信頼しているのは(あかり)だから追跡するのは当然だよな」

「だから行動を常に把握出来たと。目立つから」

「インターハイの間、干渉が無かったのもそれな」

「なるほど。地元には居ないもんね」

「ま、それ以外の時は外道とか外道とか捕まった外道が直接動き回っていたがな」

「手駒が居ない時は親玉の捨て駒が動いていたと」


 そうなると我起(わだち)家共の完全なる没落が関係消滅の鍵と。

 それはともかく。


「ところで、嫉妬のやりとりからさ、あんなになるの?」

「二人だけじゃね? 市河(いちかわ)さんのブレーカーも上がったから」

「私達の目がある中で? というか見えているけどいいの?」

「それよりも俺が見てもいいのかって聞きたいのだが?」


 (あおい)ちゃんが裸身で暴れているもんね。


「これを見て興奮する?」

「呆れが先立つからなんとも」

「それならいいよ」


 これを見て興奮するなら怒るけど。




(あおい)のヤンデレが恐ろしい(´・ω・`)

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