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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第三章・執着の恐怖を打ち払いたい。
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第86話 悪因悪果を理解して欲しい。

 (あき)君の機転で現場の状態は良くなった。


「落書きが消え去ったね」

「有るのと無いのとでは職員のやる気に違いが出るからな」

「いや、助かった。あれを消すのは骨が折れそうだったから」

「ペンキでしたもんね。それも大きなハケで」

「あとで保護者達を訴えるから名前と住所を教えてもらえるか?」

「ええ、構いませんよ」


 良くなったとしても破壊された痕跡の残る学食のままだけどね。

 惨状は変わらないが職員のモチベーションを向上させるには十分な効果があった。

 有機溶剤を使わないと消えない代物が綺麗さっぱり消えたから。

 ペンキ汚れは落とすだけで苦労するから。


「それでも厨房は使えませんね」

「厨房は殺菌消毒が必須になるからね」

「そこは夏季休暇の間に復旧させるしかないだろうな」

「こうなるとウチからも業者を出した方がいいよね?」

「いや、そういうのは役所の許可を得てからな」

「そうだったぁ! それがあったぁ!」

(さき)さんって私立の感覚が抜けていませんね」

「悲しいかな。私って令嬢だから」

「令嬢を言い訳に使ってる」


 別にいいじゃん!

 本当の事なんだし。

 すると職員室へと報告に向かった会長達が戻ってきた。


「今回限りだけど調理室を使わせてもらう事になったわ」

「会場も隣の被服室を利用していい事になりました」


 嬉々として(あおい)ちゃんに犬耳メイドのコスプレをさせた人達とは思えないキリッとした良い表情だ。

 これは現実逃避から戻ってきた証拠だろう。


「学食の職員は全員調理室に移動ですね」

「被服室は俺達で掃除して飾り付けだな?」

「テーブルは被服室の物をそのまま流用すればいいね」

「役割分担を若干変更する事になったけど臨機応変でお願いね」

「「「分かりました」」」

「そうそう、(あおい)ちゃんはいい加減、制服に着替えてきてね?」

「え? あれだけ嬉々として、私にこれを着せたのに?」

「何かあったかしら?」

「記憶にありませんね」

「酷っ!」


 酷い先輩方だ。

 忙しい最中に戻ってこなかった(あおい)ちゃんも悪いけど。

 それぞれがそれぞれの持ち場に就くため移動を開始した。

 私は(あおい)ちゃんが困惑気にポツンとしていたので労ってあげた。


(あおい)ちゃん、着替え頑張ってね?」

(さき)さんも手伝ってくださいよぉ!」

「手伝うのはいいけど、私が見てもいいの?」

「うっ」

「恥ずかしいなら、お願いしない方がいいよ」


 (あおい)ちゃんの手伝って。

 これは乱れる時に押さえてという意味だ。

 現場で見た時に引いたブツ。

 今の私だと絶対無理な代物だった。

 会長達があのブツ持っていた理由が謎だよね。


「それなら(あかり)でも呼ぶか?」

「それがいいよ。扱い慣れているし」

「えーっ!? 今はダメですって!」

「すまん。呼んだ」

「そんなぁ!?」


 無情にも(あき)君の手によって尼河(にかわ)君が呼び出された。


(あき)! 呼んだ……な、なんだこれ!?」


 やっぱり驚くよね。

 驚いたのは(あおい)ちゃんの格好ではなく学食の惨状だけど。

 家から直接走ってきた尼河(にかわ)君。

 お父さんの隣に駆け寄って色々聞いていた。


「あとは任せればいいな」

(あおい)ちゃん、着替え頑張ってね?」

「そ、そんなぁ……」


 恥ずかし気に怯える(あおい)ちゃん。

 彼氏を恐がる必要があるのだろうか?


「ところであの尻尾は?」

「今の私では太さ的に入らない」

「今の(さき)では無理?」

「未開通」

「あっ」


 そこまで言えば分かるよね。

 私達は惨状を背にして特別棟に移動した。



 §



 交流会の準備を終えて待機している間、騒動が巻き起こった。


「ほれ。奴等のSNSが大炎上してら」

「うわぁ。顔出し名出ししてる退学者が阿鼻叫喚だぁ!」

「ざまぁないわね」

「いい気味です!」


 それは(あき)君がリークした、取り返しのつかない真実だった。


「というかこれ、何処までの情報を?」

「洗いざらい出したな。俺に擦り付けた全て」

「罪が本来持つべき者達に戻ったのね」

「罪は他人に擦り付けるものではないですよ」


 その最たるものが退学させられた学校への私怨。

 暴徒共を操って、学食の破壊活動を実施した。

 笑顔で指示し、楽しそうに破壊する姿はまさに悪魔。

 テレビのテロップでも〈悪魔〉の文字が躍っていた。

 そこに愚弟のストーカー行為まで取り立たされ、


「あの弁護士情報は何処から?」

「飲兵衛から。問い合わせしたら除名処分を喰らっていたって」

「それっていつ頃の話なの?」

「昨年の夏場ですね」

「「アウト!」」


 関係者達の情報までも露見してしまった。

 こうなると、どうあっても逃れられないよね。


「地方だから誤魔化せると思ったのかしら?」

「おそらく、そうでしょうね」


 だがここで奴の家に突撃訪問した記者がインターホン越しに問うと「留守」と言われたらしい。

 居留守かと思ったけど下請け企業経由で港街に居る事が判明した。

 私は父さんから受け取ったメッセージ内容を(あき)君に示した。


「ここって、ダンスカップルの別荘があるような?」

「マジで? 明日行くところじゃん!」

「本人達に確認しようにも戻ってきていないか?」

「いつまで踊るつもりかな?」

「どうせ市河(いちかわ)さんのブレーカーが落ちるまでだろうな」

「ブレーカー? それってどういう事?」

(あかり)曰く、ブレーカーを上げる直前はいつも怯えるらしい」

「じゃ、じゃあ? あの怯えは、それ?」

「上げたら最後、落ちるまで続くんだと。干からびるまでと言えばいいか」

「「「……」」」


 そう、(あおい)ちゃんはまだ戻ってきていない。

 (あき)君の言う通り更衣室で踊っているらしい。

 ブレーカーで例えたのは驚いたけどね。

 それと何故か会長達も別荘に食いついた。


「「別荘?」」

「泊まりがけのダブルデートですよ」

「あ、そういう事?」

「私は無理ですね。彼は帰りましたし」

「私も無理ね。戻ったし」


 兄さんは父さんの仕事を手伝っているだけね。

 戻ったように見せかけて実家にて監禁中だ。

 監禁理由は宿の一室を駄目にした罰だった。

 頑張るのはいいけど空気読もうね、兄さん?


「旅先にまで現れるとか、やりきれないな」

「本当にそう思うよ。そうなるとまだ校内に?」

「居たんだろうな。隠れ舎弟が」

「舎弟の掃討は相当先になりそうね」

「そうですね。それと会長、寒いです」

「ダジャレのつもりではないのだけど?」


 そこまで逃げたのか、別件でそこに居たのか。

 詳細は不明だが捕まるのは時間の問題だった。


「これで奴等との縁が切れたら最高なんだがな」

(あき)君、それはフラグだよ?」

「ああ、まだ切れないかぁ。残念だ」

「鼬の最後っ屁に注意と」

「まさにそれね」


 それはともかく。

 (あおい)ちゃんのブレーカーが落ち、シャワーを浴びて戻ってきた直後に他校の生徒会役員達が訪れた。

 ニュースで話題の高校になってしまっているから、少々騒がしい事になったけど。


「「「疑ってしまって、ごめんなさい!」」」


 一つは(あき)君への謝罪。

 同じ中学出身の子達が列を作って頭を下げた。


「気にしてませんから、頭を上げてください」


 全国ニュースであの兄弟が主犯と判明したからね。

 謝罪するのは当然だった。

 一つは私への質問攻め。

 女子校の友達が所属していたよ。


「それで婚約者はどちらに?」

「黙秘します」

「そこをなんとか!」

「黙秘します」

「この中にいらっしゃるの?」

「も、黙秘します」

「今の反応、皆様」

「「ええ!」」

「……」


 幸い、李香(りか)ちゃんは花嫁修業のお陰で参加していないので例の件を問われる心配は無かった。

 最後は事後で妙な色香を漂わせた……、


「君、可愛いね」

「僕たちと食事でも」

「いやいや、そこは俺と」

「……」


 (あおい)ちゃんに声をかける男子生徒も居た。

 あんな連中も稀に居るのね。

 私の周りには女子校の友達が居るので声かけが出来ていないけど。

 御嬢様学校の面々なので近寄りがたいのだろう。


「命知らずが今年も湧いたのね」

「我が校だけの問題ではないと」


 会長と副会長だけは妙に達観した様子で見守っていた。

 なお、来年度は女子校の担当なんだよね。


「来年は何処で行うつもりなの?」

「内部は難しいので外庭園ですね」 

「あの庭園と。あれも来るみたいだけど」

「悪さをすれば警備員に放り出されますから安心して下さい」

「中は相変わらずなのね」

「それは仕方ありません」


 昔通っていたので聞いてみたけど全然変化していなかったね。

 すると謝罪行脚から解放された(あき)君が寄ってきた。


「飲み物、足りてるか」

「問題ないよ」

「少ししたら隣からケータリングがくるからそろそろ」

「分かった。席に移動するよう促せばいいね」


 (あき)君は心配しつつ業務連絡してきた。


「あら? 妙に親密な関係ね?」

「それと妙に気品があるような」

「もしかすると、もしかする?」


 男日照りな割に嗅覚だけは鋭いよね。

 この子達は相手が見つかっていないからね、仕方ないよね。

 ここで名前呼びすると騒がしくなるので、


凪倉(なくら)君、そちらもよろしく」

「了解」


 あえて名字呼びした……が!


「あ、あ、あ!」

「あの、あの!」

「えっと、え?」


 友達は何故か驚いた様子で開いた口が塞がっていなかった。


「おーい、扇子、扇子」

「「「失礼」」」


 もしかしてマズった?

 そう思いつつ会長を見ると溜息を吐いていた。

 これはやってしまったかも。

 会長も本日は名前呼びだった。

 何でだろうって思ったのだけど、まさかこういうカラクリがあろうとは。


「知っててなお、ポンコツを発揮するとは。婚約者を危険に晒す真似はよしなさい」

「いや、知らないと思いまして」

「知らないのは(さき)さん達だけよ。割と周知されているからね」

「周知。やってしまいましたね」

「「「凪倉(なくら)の御令息が婚約者!?」」」


 これを聞いた(あき)君は困惑したまま固まっていた。


「ご、御令息? 俺が?」


 自分が周囲からどのように見られているか初めて知ったから。

 私も同じだけど、最近まで一般庶民の認識だったから致し方ないよね?

 自分には縁がない敬称が付いたもんだから困惑度合いは半端ない。


「生徒会で庶民は私だけだったと」

「「「生まれながらに玉の輿が決まった庶民が何か言ってる」」」

「……」


 何はともあれ、そんなひと騒動もあったが交流会は大成功で終わった。


「それで、御令息の(あき)君?」

「まだ言うか」

「そこは呼び慣れようって事で!」

「何故に」




(あき)が知らない実家の秘密か(´・ω・`)

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