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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第三章・執着の恐怖を打ち払いたい。
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第84話 知名度稼ぐも汚点も蠢くよ。

 職員室の一斉不在。

 私達は状況を知るために事務局へと向かう。


「こちらは全員、居たね」

「だな。居ないのは教職員だけと」


 事務局の扉をノックして職員室の事情を問い合わせてみる。

 すると驚くべき事実を示されてしまった。


「き、緊急職員会議?」

「職員室以外で行う事があるので?」

「本当に稀ですけど、年に数回あるかどうかですね」


 会議に出席しているのは出勤している教師のみ。

 インターハイへと出張中の教師陣は含まれない。

 事務局をあとにした私達は中庭に移動して途方に暮れた。


「何があったんだろう?」

「こればかりは分からないな」

「会長達も生徒会室に入れないよね」

「入れないだろうな」


 鍵を勝手に持ち出す事は出来ないから。

 以前までは生徒会室だけは対象外だった。

 例の侵入以降、全教室の鍵が対象になってしまったのだ。

 勝手に複製されたら堪らないと不在時は持ち出せなくなった。

 教師達も生徒を信じられなくなったのかもね。


「予定が詰まっている時に何があったんだか」

「相当、面倒な事が起きているのは確かだね」


 すると中庭で駄弁っている私達の元に会長達が訪れた。


「おはよう。二人共」

「おはよう、今日も熱々ね」

「おはようございます。会長、副会長」

「おはようございます。会長には負けますけどね」


 私が皮肉を言うと会長は恥ずかしげにそっぽを向いた。


「こら」

「てへっ」

「何があったので?」

「「知らない方がいい事ですよ」」

「はぁ?」


 副会長だけが知らない会長の痴態だから。

 身内だけが知ってさえいればいいのだ。

 それはともかく。


「会長達は緊急職員会議の議題とか知りませんか?」

「緊急職員会議? ああ、今回の留守はそれと」

「その様子だと知らないみたいですね」

「私達も教室を経由して向かったから」


 そうなのね。

 会長達の知らない大人の事情と。

 最近は悪い事が連続して起きているだけに、妙な不安があるんだよね。

 取り越し苦労ならいいけど、気持ち悪いな。

 すると私達の元に顧問が現れた。


「ごめんなさいね。留守にしてしまって」


 顧問は人数の少なさにきょとんだが、思い至ったように頷いていた。

 (あき)君は間髪入れず顧問に問いかける。


「事務局で会議と聞いたのですが、何かあったので?」

「会議? ああ、今回は会議ではないわよ」

「「「「はい?」」」」

「どう言えばいいかしら? 今、インターハイが行われているじゃない?」

「ですね。結構な人数が出場していますけど」


 バスケ部、自転車部、テニス部、バドミントン部等。

 そこそこの人数が出場中だ。

 美紀(みき)も選手として出場中。

 我が校は進学校なのにスポーツにも力を入れている。

 だが、中途半端な分、弱くもないが強くもない部活が大量にある。

 部活の中で最弱は野球部、次が卓球部。

 その顧問は文系の教師達。

 これは顧問達の力の入れ方も原因だったりする。

 兼任で複数の部活顧問を請け負っているから。


「その部活の中で凄い活躍を魅せている選手が居てね。葉山(はやま)先生の中継で観戦していたのよ」


 おいおい。

 教師が仕事そっちのけで観戦って。

 興奮気味な言葉を聞いて不安が一気に払拭されたよ。


「ん? 葉山(はやま)先生?」

「てことはバスケ部か?」

「バスケ部よね。この場合」

「それしかないですね」


 顧問は生徒会室の鍵を会長に手渡しながら、


「活躍が凄まじいから、卒業と同時にプロ入りが決まったそうよ」


 それはもう嬉しそうに語っていた。

 だから中継したうえで観戦したと。

 私は似たような経歴を持つ人物に心当たりがあったので本人に問いかけた。


「ここにもセミプロが居るけど、どうなの?」

「昔の話だろ、それ」

「セミプロ?」

「ここだけの話ですよ」

「そう?」


 (あき)君って隠したがるよね。

 私だけが知っていればそれでいいと。


「この場合、考えられるのは(あかり)だよな。やっぱり」

凪倉(なくら)君、大正解。だけど表沙汰にはしないでね?」

「オフレコって事ですね」

「あくまで卒業後の進路だから」


 進路、ね。

 それなんて学校としても箔が付くよね。

 公立といえど知名度は欲しい。

 学年によっては定員割れを起こしているし。

 生徒数が減ると先生達の給与にも、働き方にも影響が出てしまうから。

 それを避けるためには箝口令が必要と。

 私達だけなら漏らす心配はないけどね。

 だけど気になったから聞くだけ聞いてみた。


「それで何処のチームなんですか?」

「地元チームね。白木(しらき)さんと縁のある」

「先生、それなんて言っている事と同じですって」

「そうだったわね」


 つまり父さんの会社が抱えるバスケチームと。


(あかり)の将来は安泰か」

「何事も無ければ、という条件が付くけどね」

「無理でも実家を継げばいいから気にしないのでは?」

(あおい)ちゃんというお嫁さんも居るし」

「長男ですし、将来的には継ぎますからね」


 副会長の言う通り、所属して体力が落ちたら家を継ぐだろう。

 (あおい)ちゃんも無理はして欲しく無さそうだしね。

 そこで私は忘れていた事を顧問に問うてみた。


「ところで(あおい)ちゃんは何処に?」

「今日は現地に居るはずよ? 一番喜んでいるのは彼女だと思うし」

「「おぅ」」

「書記不在の準備が確定したわね」

「職務より彼氏を優先したのね」


 だから居ないのね。

 満足した顧問は手を振りながら職員室に戻った。


「これは帰ってきたら?」

「盛大に胸を揉みますか」

「そうですね。お尻も一緒に」

「俺は見なかった事にする」


 そこは一緒に揉もうよ。

 あ、尼河(にかわ)君に殺されてしまうか?

 それだけは私も勘弁かな、うん。

 私達は揃って生徒会室に向かう。


「ところで会長? 李香(りか)は?」

「あの子は花嫁修業よ」


 (あき)君はもう一人の役員が気になって問いかけていたが、


「婚約話が流れたのに?」

「流れても必要だからね」


 その理由が花嫁修業とは。

 企業の御令嬢って大変だなぁ……私もか!


「次の候補は見つかったので?」

「父のお眼鏡にかなう相手は早々居ないわね」

「会長は良縁に恵まれましたけどね」


 私の兄というね。

 影は薄いけど、夜は絶倫だ。

 会長との相性はとても良いようだ。


「そうね。それだけは良かったわね」

「それこそ、お楽しみでしたしね」

「そ、そうね」

(さき)も困ったら相談に乗ってもらえよ」


 これって夜の相談だよね。

 今は経験が無いから教えてくれるなら嬉しいかも。

 私は笑顔を意識して会長に問いかける。


「相談に乗ってもらえます?」

「か、可愛い義妹のお願いなら聞くわよ」

「困った時はお願いしますね」

「え、ええ」


 何故か引き気味の声音が聞こえた。

 お楽しみの時と普段は別って感じかな。

 すると会長が思い出したように、


「ところで、いつの間に退去していたの?」


 私達の引っ越しについて質問してきた。

 私と(あき)君は目配せして応じた。


「宿に宿泊した、その日の内、ですね」

「え? あの時?」

「私達の両親が留守中に動いていまして」

「帰ってきたら俺達の家が無かったんですよ」

「そ、それは酷ね」

「まぁ結果的には良かったんですけどね」

「俺を陥れるための痴漢騒動が起きていましたし」

「「あ〜!」」


 会長達も合点がいった的な表情になった。


「お陰で紗江(さえ)さんも撤退する事になりましたしね」

「「え?」」


 今度はきょとんになった。

 これは先ほど決まったからか知らなかったっぽいね。

 私は(あき)君の言葉尻を繋いで知り得た情報を教えた。


「マンションの権利を会長のお父さんに譲ったそうです」

「老朽化も目立っていますし、伯父の判断に依るでしょうけど」

「ああ、父の判断なら解体を選択するわね。無理に維持するより、駐車場として貸し出した方が長期的な利になるもの。今回の騒ぎで誰もが借りたがらないでしょうし」


 やっぱり駐車場なんだね。

 地域で唯一の女性専用マンション。

 男嫌い共の問題行動により閉鎖と。

 その原因が(あき)君に対する捏造の痴漢騒動だ。


「退学者の報復で痴漢騒動ね」

「懲りていませんね。あのクズ」


 会長達も首謀者が誰か分かったみたいだね。


「そもそも、(あき)君個人の名前が出ていなくて、痴漢の捜索だけをしている行動が不可解だよね。何がやりたいのかな?」

「単に俺をあぶり出して困らせてやれ的な考えじゃないか」


 あぶり出しか、やりそうだね。

 すると会長達が作業の手を止めてオウム返しした。


「「あぶり出して?」」

「ええ。俺は元々、家が無かったので」

「そうね。両親は海外住まいだし」

「叔母は再婚しましたよね」

「ええ」

「転がり込んだのが彼女の家。そこへ痴漢騒ぎが近隣で起きて男嫌いが発起した」

「それがどう困る事になるの?」


 発起した理由が痴漢騒動。


「俺を本物に仕立て上げる。男嫌いの嫌悪を利用して名実ともに、ね」


 それが(あき)君を困らせる最大の悪意だ。


「男嫌いの大半は痴漢経験者ですから」

「あ、そうか」

「そういう理屈か。相変わらずの外道ね」

「奴の筋書きを想定するなら上階に痴漢が住んでいる。彼女も含め女が獲物な外道。自分達の安全が常に脅かされている。思考停止な住人を扇動して追い出して可能なら警察を呼んで名実ともに、ですね。愚弟だけが警察に捕まって悪評のある男がのうのうと生きている事が許せないのでしょう」


 その想定を聞くと自分勝手が真っ先に浮かぶよね。


「それは自分達の悪評でしょうに」

「人に擦り付けて恥ずかしくないのかしら?」

「人格破綻者共に羞恥の概念はないのでは?」

「「それもそうね」」


 (あき)君は作業をしつつ話題を終わらせる自身の見解を語る。


「今回の一件は俺が奴等の銃刀法違反で警察を呼んだから、自分達での冤罪を作る事が不可能になったと判断した。そうなると次に採る手は他人を巻き込む方法だけだった。ただ、それだけの事です」


 こちらには奴等の思惑を上回る権力が存在していたから、不穏な動きが発覚した時点で私達の知らないうちに回避行動に入っていた。


(あき)君の場合、何らかの直感で動いていそうだけど)


 騒ぎが起きた頃合いに引っ越ししたのは白木(しらき)の御嬢様。

 この部分だけ切り取ると痴漢騒動を聞いて嫌になって退去した風に見える。

 それは男嫌い共を擁護して痴漢撲滅の火に油を注いだようなものだ。


(奴等も自分達の作戦が上手くいっていると思い込んでいるかもね)


 探し人は居ないけれど。




学校側も悪者が多すぎた弊害で右往左往か(´・ω・`)

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