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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第三章・執着の恐怖を打ち払いたい。
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第73話 解決に至るもその傷は深し。

 存在感の薄い兄が会長の婚約者と知った。

 それを知った時、(あき)君にお尻を見られた事とか、午後にあった出来事など記憶が吹っ飛んだ。

 これはあくまで例え、なんだけどね。

 それくらい驚いたから。

 驚きと共に会長の喘ぐ姿を想像して吐き気を催した。


「キモっ」


 知っている人でそういう姿を思い浮かべるのはどうなのって思うけど。

 実は李香(りか)ちゃんが合流した日。

 (あき)君が尼河(にかわ)君に呼び出された後、会長達と似たような会話をしたので、この想像は容易かった。

 会長も男子が居る前では恥じらいながら言葉を濁すが、女子しか居ない時は曝け出してくるのだ。

 (あおい)ちゃん弄りの時は居ようが居まいが気にしないけどね。

 すると沈黙していた(あき)君が、


「例の件で危機感があるのは会長も同じと」

「あっ」


 私が気になる言葉を呟いた。

 それは李香(りか)ちゃんの婚約問題。

 会長は優木(ゆうき)家の長女。

 婚約者は白木(しらき)家の長男。

 凪倉(なくら)家に嫁いでいく私と違って当事者でもある。


「関係が拗れると一番不味いのは会長?」

「関係がリセットされたら真っ先に婚約解消されるのは会長だ」

「ど、どうして? 会長は関係ないんじゃ? 私の実家だよ?」

「いや、そんな問題児を抱えた白木(しらき)家に娘達を嫁がせる父親が居ると思うか? 個々の家ではなく総体として見た場合、俺が父親なら有り得ない」

「そ、総体?」

「全体の経営状況だな。一つでもおかしい所があると、どのように是正するか見ているはずだ。ここで該当者を勘当するなり無関係にするならともかく絶賛放置中だ。本気でどうにかするつもりなら、状態を把握して更迭するなりして孫会社の経営状態を良くするよう動くはず。それをせず任せきりとなると、後は分かるよな?」

「あっ!」


 先は無いと認識してしまう?

 お爺さまが居なくなったあとは崩壊すると?

 今の当主は一番上の伯父。

 腕は良いが冷徹になれない人だ。

 私の見立てでは弟相手に安易に切れない甘い一面を持っている。

 私の父は冷徹になれるので、上と下での違いが明確だよね。


優木(ゆうき)家は金の流れの嗅覚が鋭い。会長も片鱗こそみせているが経験不足の所為か、かなりの頻度でミスをする」


 なんか、隣でクシャミしていそうだよ?

 それも二回ほど。


「それは生徒会費の話だよね?」

「学食の件でも担当を甘く見て契約書を用意していなかった」

「な、なるほど」

「そんな優木(ゆうき)家を甘く見ているようでは後はない。いくら凪倉(なくら)が相談役でも甘えっぱなしではな? 自浄能力の無い企業と思われたら詰むぞ」


 それを聞くと、ウチの家ってかなり不味い?

 現当主を更迭出来たらどれだけいいのだろう。

 そんな事をしたら一族が割れそうだけど。


李香(りか)の件はまさに白木(しらき)家にとってのパンドラの箱だよな」

「き、希望はないの?」

「希望は毒親と外道の息子を追放する事だろう」

「やっぱりそれしか無いんだ」

李香(りか)の意思が介在しない婚約……あ、複数の思惑が読めたかも」

「はい? 複数って?」


 急に何を言っているのかな?

 思惑とは一体どういう事なの?

 (あき)君は真剣に思案しつつ呟く。


「長女が白木(しらき)に嫁ぐ。しかも末弟の家だ」

「う、うん。ウチはそういう家だもんね」

「だが、経営しているのはガチの関連企業」

「そう、だね」


 お爺さまから信頼を得ているのは確かだし。

 兄弟の中で一番の売上を出しているしね。


「では、毒親の旦那はどうだ?」

「私の伯父で孫会社だよね」

「実力的にはお義父さんが上であってもな。親族的にはどうだ?」

「伯父……あ、兄だね」

「関係は少々複雑だが、毒親から見たら自分が上と思うよな?」

「お、伯母だから?」


 私は(あき)君が何を言いたいのか分からなかった。


「親族一同が揃う時、姉妹がどういう立場で遭遇する?」

「会長が父の……李香(りか)ちゃんが伯父の?」

「姉が末弟。妹が兄だよな。それでマウントを取るよな」

「あ……やりそう」


 本人達を無視して好き放題言いそうだ。

 李香(りか)ちゃんに対して義姉さんと呼べとか。

 毒親は学が無いから、おかしな事ばかり言うけれど。


「もう一つ。俺の伯父は末娘を可愛がっていて姉には厳しいよな」

「う、うん」


 関係は冷え切っていて妹に甘い父親を怒鳴りつける始末だ。


「仮にだ。姉が外道に嫁いだとして、伯父は資金を出すか?」

「仮に……出さないね。自分で何とかしろとか言いそう」

「会長はそれなりに個人資産を有するから言われるはずだ」


 会長自身も個人的な会社を経営しているもんね。


「話を元に戻すが嫁いできた妹は末娘で、父親は末娘に甘い」


 甘いかもね。

 転校でも任せなさい的な動きだったらしいし。

 李香(りか)ちゃんがお願いすると直ぐに動いたそうだし。


「その話が関係者の間で周知の事実なら利用しようと動くよな?」

「あっ!」


 外道の母親なだけあって、あの伯母なら動く。


「この婚約が李香(りか)を懐柔して金を吸い出す目的だとしたら?」

「ま、まさか?」

「その可能性が高いだろう。孫会社を調査すると毒親と息子の浪費が原因だった」


 お爺さまもそれを知って動いていると。

 現当主が役立たずだから。


(あき)君でも調査が可能って事は優木(ゆうき)も気づいているはず)


 これは相当、不味い気がするよ。


「ここで優木(ゆうき)を逆鱗が何処にあるか分からない竜だと仮定する」

「逆鱗?」

「触れると激怒する場所だよ。(さき)なら俺に関する事が逆鱗だよな」

「確かに」

「可能性としてだが、李香(りか)個人が伯父の逆鱗だと思う」


 というか父親は概ね、娘が逆鱗では?

 お爺さまも父さんも似たようなものだ。


李香(りか)を懐柔して利用しようとした事まで把握するとどうなると思う?」

「どうなるの?」

「徹底的に潰す」

「あっ」

「俺の母さんは比較的温厚だが、伯父は飲兵衛と同じ性格を持っていると思えよ?」


 そ、それは不味い。

 紗江(さえ)さんと同じ性格だなんて。

 お酒を飲んで嬉々として語ったが、やっている事は法律の範囲内での潰しだった。


「お、お爺さまに報告するべきかな?」

「動き始めてまだ数日だしな。孫会社の株価に変化がないから」

「焦りは禁物?」

「俺達だけが把握していて、会長達に話が降りていないところを見るに」

「まだ安全と」


 こういう時、見ているだけしか出来ないの、すっごい困るね。

 するとテレビの字幕で速報が入る。


「「あ、動いた」」


 声が揃ったし。

 字幕では孫会社の売却話が決まったと出ていた。


「あらら。買ったのは優木(ゆうき)と」

「現代表は引き継ぎの間は専務に降格、嫁は横領で逮捕」


 引き継ぎ後は本社勤務に戻される。

 一から経営を学び直せって事なのかも。

 息子の事は何も言っていないが、未成年だから保護されていると。

 あれも何処かに飛ばされそうな気がするけどね。


「まさか潰しってこれ?」

「おそらくだが、爺さまも荷担したな」

「荷担?」

「婚約解消だけでなく、経営権を売る話を頭越しにしたのだろう。健全化さえすれば利益を出す企業でもあるから」

「それを聞くと企業経営って面倒くさいね」

「ああ。サラリーマンがいいって思うよな」

「私は専業主婦でいいや。経済学部行くのやーめた!」


 そう思いたくなる顛末だったよ。

 それと後に知った事だが、かなり不味い状態だったらしい。

 お爺さまが手土産を持って詫びに行ったそうだから。

 婚約解消はどうにかなったが弱味を握られた。

 二度目は無いとも言われたらしい。


(二度目は会長かな?)


 なんて思ったら(あき)君の事だった。

 会長のお父さんは(あき)君のお母さんに弱いそうだ。

 比較的温厚だと聞いたけど、家族間では苛烈、との事。

 怒らせたくないから、絶対に守ってくれと言ったらしい。

 それは私も含めてね。

 お義母さんが気に入っているから。

 お爺さまはそれに同意を示し、意気投合したそうだ。


(弱味を握られはしたが、それはそれと)


 お陰で男親がよく分かんないになった。



 §



 後日、李香(りか)ちゃんの婚約解消が女子会の話題で出てきた。

 女子会の場所は会長の家。

 副会長もブラインドを下げると問題なかった。

 参加者は市河(いちかわ)姉妹、私と副会長、副会長の妹。

 引っ越しした市河(いちかわ)姉妹以外は同じマンションの住人だ。

 副会長の妹、(めい)ちゃんは母親譲りで巨乳だった。

 顔立ちは美少女ではないが、割と綺麗な部類に入るかも。

 普通顔……地味顔の副会長は父親譲りなのかもしれない。

 それはともかく。


「婚約解消!?」

「そ、それって……お相手がいなくなった?」

「残念ながら、お亡くなりになりました」

「こらこら、勝手に殺さない!」


 会長はそう言うが事実上の死亡だしね。

 主に社会的な死、だけど。


「ですが、同じ事ですよ?」

「何かあったの? この数日中に?」

「一応、ありましたね。大変でしたけど」


 今回の一件のあと私の実家に訪れていて私の自転車欲しさに無理難題を言った。

 それに怒った(あき)君が奴と自転車で勝負して打ち負かした。


「どう、大変だったのよ?」

「本日は居ない(あき)君が、ですけど」

凪倉(なくら)君が、大変だった?」


 近隣の峠道で突っ伏して同じ学校のギャラリーの居る場所で醜態をさらした。

 意気揚々と勝負を仕掛けて一方的に負けた。

 学校の部活でも信用は失墜した。

 そこへ伯父と離婚して捕まった毒親の話が漏れて以下略。


(本日は後始末で他校の練習に参加中っと。転校しないでね、(あき)君?)


 奴も白木(しらき)とは無縁となった、無縁も無縁。

 検査してみたら伯父とは血の繋がりすら無かったからね。

 他人の子を伯父の子と言い、デキ婚(托卵)を進めたクズだった。


「本当にこの数日の間に色々あったんですよ」

「何が言いたいのよ?」

「元婚約者の母親の実家が……我起(わだち)家だったんです」

「「「は?」」」


 やっぱりきょとんとするよね。

 私は判明した詳細を全員に語った。


「で、言祝(ことほぎ)の再婚相手は類友のようですね」

「えっと……利用されたの?」

「利用されかけた、が正しいですね」

「そうか、父はこの子には甘いから」


 その一件を知った私は気づかぬうちにクズ共が浸透している可能性があるので、お爺さまに報告して一族の内部調査をお願いした。

 他にも怪しい伯母が居たから。


(現状は言祝(ことほぎ)我起(わだち)の類縁が数名だったね)


 その二つの類縁の子供はウチと血縁が無い托卵だった。

 今回と同じような手口で複数介入している事も判明した。

 これを知るとやりきれないね。




托卵って(´・ω・`)

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