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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第三章・執着の恐怖を打ち払いたい。
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第64話 思い出は愛する人と作るよ。

 企画提案は生徒会室に移動して昼食を食べたあとに行われた。


「では始めようか」

「最初は凪倉(なくら)君からでいいですね」


 (あき)君はパソコンをプロジェクターに繋いで準備を終える。

 だが、会長達の会話を聞いて待ったをかける。


「いえ、会長」

「どうしたんだい?」

「発表は俺達二人でお願いします」

「「二人で?」」


 元々は個別に発表する予定だった。

 だがそれだと、採用されない側が辛い目に遭うと判断して私が提案したのだ。

 当初の案だと私より(あき)君の案が不採用になると思ったから。


(バスケ部顧問の苦言によって訂正するに至ったけど、これが正解だと思うよ)


 最初の(あき)君の発案はかつての伝手にお願いする練習試合だった。

 本場のチームを呼ぶなんてあまりにも非現実的過ぎたので私も無理だと思った。

 同じ答えはバスケ部顧問からも出て『選手の自信喪失に繋がる』と言われ、渋々と内容の訂正を行った。

 バスケ部顧問も(あき)君と対戦して自信喪失になりかけた経験がある。

 それを選手達に味わってもらいたくない気持ちから苦言を呈したとしか思えない。

 高校バスケは冬場にも大きな大会があるらしいから。

 その分、練習試合に乗り気だった尼河(にかわ)君一人が意気消沈したそうだ。


(バスケはチームプレイ。一人が乗り気でも他がついてこないよね)


 結局、決まったのは、


「ふむ。来場者参加型のストリートバスケと」


 参加費を頂く事にはなるが、希望者のみが戦う試合を行う事になった。

 当然、(あき)君は審判として関わるので試合には一切出ない。

 これなら瑠璃(るり)の彼氏が訪れても楽しめるので私もアリだと思った。

 勿論、特上の景品も提供するので参加費に見合う品が得られる事にもなるだろう。

 ただね、会長はストリートバスケが何か知っていたが副会長は知らなかった。


「あの、ストリートバスケとはなんですか?」


 きょとんとしたまま手をあげたから。

 すると(あおい)ちゃんが(あき)君の代わりに答えてくれた。


「その説明は私が」

「ここにも経験者が居たの忘れていたよ」

「ですね。胸にバスケットボールを二個」

「同性でもセクハラになりますが?」

「「ごめんなさい」」


 最近の会長達って時々、同性へのセクハラをするようになったよね?

 もしかすると結構前から(あおい)ちゃんへのセクハラをしていたのかも。

 以前は女が三人しかいない生徒会だったから。

 但し、捕まった前会計は除く。

 (あおい)ちゃんの簡潔な説明のあと、


「ほほう。比較的緩いルールで行う競技と」


 会長達は検討の余地ありと言いたげな雰囲気だった。


「それで顧問の先生からはなんて?」

「最初の案よりはマシだと言われました」

「「最初の案?」」

「実は本場のチームを寄越すつもりでした」

「「は?」」


 これには会長達もきょとんだよね。

 だって、伝手があるとしても一回のギャラが幾らになるんだって話だから。

 (あおい)ちゃんは事前に聞いていたから苦笑しているけど。


「練習試合ですから両者にとっても軽い調整になるとは思ったのですが、我が校のバスケ部はそこまで強くないようで、自信喪失になると言われました」

「ま、まぁ、ね。一人を除いて中堅程度だし」

「我が校は女子部の方が強いですし」

「それは知りませんでした」


 尼河(にかわ)君だけが飛び抜けているだけで他は平凡な選手しか居ないと。


(女子部の助っ人が滅多に無かった理由はそれが要因なんだね。選手層が厚いから)


 これには部活に参加していない(あき)君が知らなくても仕方ないよね。


「そうなると、(あおい)ちゃんが(なごみ)ちゃんくらいのおっぱいだったなら、即戦力だったので?」

「即戦力だね。我が校では選手層の薄いスモールフォワードらしいから」

「おぅ。スタミナの理由はそこにあったか」

(あき)君、どういう意味?」

市河(いちかわ)さんは(さき)と同程度に走り回れるんだよ」

「そ、それはそれで凄いね? (なごみ)ちゃんを超えるおっぱいだから、これほど惜しいと思った事はないよ」

「それを(なごみ)の前では言わないで下さいね?」

「言わないよぉ。童顔の幼児体型なんて」

「私が言っているのは童顔の幼児体型の事ですよ!? 言っておきますが、あの子は女バスのレギュラーですからね!」

「「は?」」


 あんな厚化粧なのに?

 なら、試合や練習時はすっぴんになるのかな?

 それはそれで見てみたいかも。

 (あおい)ちゃん並の童顔が見えるかもだし。


「ポ、ポジションは?」

「一番です」

「おぅ」


 なんか、(あき)君だけが理解しているっぽいね。

 表情から察するに、かなり重要なポジションのようだ。


「一年でいきなりそこかぁ。女バスって実力主義か?」

「そうなりますね」

「そうなのか。玉入れで出ていなかった理由も?」

「怪我を恐れてでしょうね。インターハイがありますから」

「なるほど。(ひかり)がムキになる理由も分かるな」

「どういう事?」

「片思いの相手がレギュラーだから、レギュラー入りしてからではないと、本気の告白が出来ないのだろう。その気持ちは痛いほど分かる」


 そういえば(あき)君も、私と肩を並べる事が出来たとか言っていたね。

 男子特有の矜恃が、あのいたずらっ子の雰囲気に出ていると。


(男子の矜持は本当に面倒臭いね?)


 それはともかく。


「ストリートバスケの件は生徒会主催のイベントとしてアリだろう。選手達、個人の調整にもなりそうだしね。人によっては自信にも繋がるだろうし」


 (ひかり)君もその中に含まれるかもね。

 試合では応援席かつ赤点で参加が出来ないから。

 一方、私の発案は会長はともかく副会長から微妙な視線をいただいた。


「じょ、女装はわかりますが、男装とは?」

小鳥遊(たかなし)にとっては判断に迷うか」

「そ、それはそうですよ」


 副会長は男装レイヤーだもんね。

 趣味を周知されるのは好ましくないと。

 でもね、そんなリスクは最初から選択しないよ。


「私は別に副会長に出て欲しいとは一言も言っていませんが?」

「えっ?」

「あくまで副会長は審査員の一人です。特別審査員として(まき)先生と家庭科の先生にも入ってもらう予定です。それなら趣味がどうとか、分からないでしょう」

「他にも手芸部部長にも関わってもらう予定です」

「ここまでお膳立てされたらするしかないわね?」

「か、会長?」

「副会長が興奮して自ら曝け出さない限り、大丈夫だと思いますが?」

「……」


 (あき)君の一言で逡巡する副会長。

 衣装の出来によっては興奮するのかな?


「そうなったら手芸オタクだと周知すればいいだろう」

「しゅ、手芸オタク……?」

「それなら、バレませんね」

「仮にキャラ名が出ても誤魔化しは利くでしょう」

「い、いや、流石にそれは」

「決定でいいね。(ゆう)もいいね」

「うっ。は、はい」


 あら? 珍しく本名で呼びかけたよ。

 これは雇用主としての命令かな?

 命令以外は渾名、命令では本名かな?

 ともあれ、テーマを含めた提案は全て通った。

 あとは全体会議でどのような流れを作るかだね。


「しかしまぁ、前年のミスコン優勝者が主催者として男性版を考えるとは」

「それも、生地の提供やら何やらを生徒会で準備するとか」

「予算面で不安でしたが、なんとかなりそうですね」


 いや、本当にね。

 前年は自前を着る事になったから懐が辛い事になった。

 あれだけは正直言って辛かったよ、お財布が。

 (あき)君に見てもらうつもりが欠席だし。

 私の気合いが一瞬で空回りしたと思ったよね。


「それと会場も従来の舞台ではなく」

「ファッションショーのような舞台を用意するとか想定外ですね」

「そうですかね? 会場の人達に見てもらうならそれがいいと思ったのですが」

「今回は観客も審査員にするから」

「決定するまで時間はかかるが全員が参加するイベントとしてはアリだろうね」


 私達のテーマは〈偕楽(かいらく)〉だ。

 皆で楽しむを基本としている。


「ところで(あおい)ちゃん的には快楽の方かしら?」

「快楽でしょうね。おっぱいもお尻も感じ易いですし」

「……」


 生理痛もあるからジト目が出ているんだけど?

 私は弁当箱を片付けつつ会長に苦言を呈す。


「会長、地雷原を進むのはちょっと」

「ああ、そういえばそうだった。爆散は不味いね」

「この時期の(あおい)ちゃんは爆散率が高いですもんね」

「分かっているならそれを言わないで下さい!」

「というかそれなら奴は爆散していてもおかしくなかったのか」


 ちょ、(あき)君。

 そのネタで地雷原を誘爆させなくても。


「一度、がっつり股を蹴りしましたよ。それでも止めませんでした」

「「「あらら」」」


 それを聞いた(あき)君は盛大に頬が引き攣った。


「おぅ。奴は真性のドMだったのか」



 §



 昼食後、教室に戻ると何やら騒動が起きていた。


「ど、どうか、お願いします! 許して下さい!」


 それは体育祭の準備で退出した男子だった。


「あれってどういう状況?」

「さぁ? 中心に居るのは」

瑠璃(るり)だね」


 その男子が瑠璃(るり)を相手に土下座中。


「許せるわけがないでしょ! 教室に入ったまではいい。他のクラスの生徒も居るからね。でも!」


 でも……で、止まったけど何があったの?


(さき)の留守中に(さき)の椅子に座って何をしていたのよ?」

「そ、それは、彼女の見ている景色を見て去りたかったからで」

「言ってる意味が分からない」


 うん、私も瑠璃(るり)に同意かな。

 (あき)君だけは気づいたっぽいけども。


「去りたかった、か。そうなると今学期で転校するのか」

「どういうこと?」

「単なる思い出作りだろ。惚れた女の席で最後の時間を過ごしたかった的な。俺や(さき)にとってはいい迷惑だが」

「……」


 うん、いい迷惑だね。


(午後の授業、マジでどうしよう?)


 (あき)君に座ってもらうなら許せるけど、大嫌いな男子に座られたとあってはお尻が気持ち悪くなるよ。

 空き教室から椅子を持ってくるとか出来ないかな?

 すると(あき)君が、


「俺のハンカチでも使うか?」


 私に自分のハンカチを手渡してきた。


「えっと、いいの?」

「椅子に直は嫌なんだろ?」

「う、うん」

「それなら使っておけ。スカートだとクリーニングが必要だが、ハンカチなら洗うか捨てるかすればいいし」

「捨てるなんて出来ないよ!」

「安物だから気にするな」

「そう? ありがとう」


 私は(あき)君からハンカチを受け取り、男子が去るまで待った。

 (あき)君のハンカチ。

 使い捨てにするのは申し訳ないよね?


(なんで座るかなぁ)




キモい男子がオチに来た(´・ω・`)

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