5話 パーティータイム4
「わかったよ。オレの負けだ」
アディアはザクノバが降参の意を示したことで彼を解放し、その後は愛する者が立つ同じ舞台へ上がる。そして一呼吸ついて落ち着いた後、極めて感情を抑えた冷口調で訊ねた。
「ねぇギルハート。その女狐について話を聞かせてくれるかしら?」
このバチバチな単刀直入の質問に彼は?
「さすがはアディアだね。あの二人を手玉に取るなんて恐れいったよ」
意味がわからない的外れな答えを返すだけ。なので、彼女はもう一度、今度は感情を隠すことなく訊ねる。
「誤魔化さないで! いいから訊かれたことにさっさと答えなさい!!」
「ハハハ、わかったよ。では改めて……コホン!」
わざとらしい咳払いの後、ギルハートはゆっくり口を開く。
「彼女はセシリア。この国の姫君であり、ボクの正式な結婚相手さ」
「け、結婚相手……ちょっと待ってよ! 正式な結婚相手って、それは私のはずじゃ……!」
「ああ、そのことなら忘れて欲しい」
「なっ!?」
「キミとの関係は、一時の感情によるただの遊びだったってことさ」
「…………!!」
無責任な発言にショックで固まるアディア。それにかまわずにギルハートは淡々と続ける。
「あれは魔王討伐を終えて後、王都に凱旋して三日目の夜だったかな? ボクはとある経緯でこの城で彼女に……セシリアと密会したんだ」
「密会!? 私という女がいながら、隠れて他の女にうつつを抜かしていたの!?」
アディアは鬼のような形相で憤慨。その一方でギルハートは平然と続ける。
「キミの気持ちは察するけど、これは仕方のないことなんだ」
「仕方のない? そこの阿婆擦と浮気したことが!?」
「浮気って……元々キミみたいな年増女に若いボクが本気になるなんてあり得ないだろ?」
「……っな! 二八歳のどこが年増なのよ!?」
「う~ん。すまないが、それについての議論は今は控えるよ。ただ結論だけで言うと、ボクにとってキミは過去の女……それだけさ」
悪びれもしない勝手な別れ話は、アディアの怒りを頂点に達しさせるには十分だった。
「過去の女ですって!? だったら、その過去の女の股ぐらで散々腰を振りまくっていたのは何処の誰なのよ!?」
「なっ?えっ!?」
まさかの反撃を受け、ギルハートはあからさまに焦りの表情を表す!
「それにアナタが童貞を捨てようとしたあの夜。緊張で何度もやり直しをした挙げ句、結局は私が口で処理してやったこと。“一生のお願い”と懇願されて後ろでやらせてあげたのも……」
「だ、黙れ! それ以上の愚弄は許さないぞアディア!!」
自分の恥態と性癖を次々に暴露されて男の名誉と誇りを激しく傷つけられて激昂するギルハート。我を忘れて思わず腰の剣を抜く!
「あらあら……抜くのは剣の方も早めなのね?」
「ぐっ、黙れと言っているだろっ!!」
「フン、全部本当のことでしょうに……ねぇ!」
アディアが嫌味たらしいセリフを吐くと同時、近くのテーブルにあった皿を投げつける!
「ちっ、こんなもので!」
皿はあっさりと剣で叩き落とされたが、彼女はこの隙に窓際まで素早く移動。そして……
「ギルハート……アナタは私を『許さない』と言ったけど、私はそれ以上にアナタの裏切りを許さない! 必ず復讐を果たしに戻って来るから、首を洗って待ってなさい!!」
憎しみを込めたセリフでそう宣言すると、窓から飛び出して夜の闇に消えてしまう。
『に、逃げたぞーーーー!!』
『ここは五階だぞ! 躊躇なく飛び降りるなんて信じられない!」
『あ、あの女……もしや、魔物ではあるまいな!?』
ようやく事態に慌て始める会場の人々。たがそんな騒がしいなかでもギルハートだけは、静かに……且つ、怒りに満ちた表情のままで窓の外を睨み続けるのであった。
「アディア……この受けた屈辱、絶対に晴らしてやるからな!!」




