29話 それぞれの状況
「ところでアディアの始末についてじゃが、アヤツの居場所はわかるのか? さすがにワシと戦った場所に、そのまま居続けてはいまい?」
ロゴスの疑問に、ザクノバは自信を持って答える。
「心配ないぜジイさん。これを見てみなよ」
「なんじゃい? 杖の頭がチカチカと点滅してるようじゃが?」
「ディテクトって魔法だ。アンタをアディアから助けた際、こっそりとアイツに仕掛けておいた」
「ほぅ、相変わらず抜け目がないのぉ」
「だろ? まぁ本来は、複雑なダンジョンなんかではぐれた仲間を探索する魔法なんだけどな」
「仲間の探索か……だったらお主の使い方は些か皮肉が効いとるのぉ」
「ハハハ! 違いねぇや♪」
ロゴスの小粋な冗談につき合って笑うザクノバ。どうやら彼等の息はピッタリ合っているようだ。
「っで、その魔法でどうやってアディアを探すんじゃ?」
「杖の点滅が探知機代わりになってるのさ。つまり、点滅が強まる方向へ進めばいずれ彼女に出会える寸法だ」
「ほぉ、便利じゃな」
「そうでもないぜ。この魔法自体の効力はそこまで長くない。それに有効範囲もあるから、遠くへ移動された場合はお手上げになる」
「むぅ……のんびりとはしておられんということじゃな」
「その通りだ」
―――ロゴスとザクノバが行動を起こそとしていたその頃、アディアは大急ぎで自分の家に帰宅していた。
「ハァ、ハァ……」
余程に急いでいたのか激しく息を切らすアディア。しかし、彼女はそれを整える間もなく大声で叫ぶ!
「ま、魔王ぉぉぉぉーーーー!!」
「おお貴様か。ちょうど余が仕留めた熊のステーキが焼けたところだぞ!」
呼ばれた魔王は両手に熱々のステーキが乗った皿を持って登場するが、彼女はそんな呑気な彼の様子を気にすることなく強い口調で言い放つ!
「すぐにここを離れる準備をして!!」
「ここを離れるだと? なら、これを食べてからでも……」
「そんな暇はないわ! とにかく、早くこの場から離れる準備をして!!」
「わ、わかった。わかったが……その前にまずはわけを教えてくれないか?」
あまりの剣幕に従うしかないと判断する魔王。だが、それでも理由だけは知りたいと訊ねる。
「ギルハートからの追手を取り逃がしたのよ!」
「ゆ、勇者からの追手をだと!? まずくないか!?」
「まずいに決まってるわよ! だからこの場所を突き止められる前に移動しなきゃいけないの!!」
「な、なるほど。それなら早くこの場を離れるべきだな」
「理解してもらえて助かるわ。じゃあ私は自分の準備があるから、アナタはアナタで勝手にやってちょうだい。ああそれから予備の弾丸も忘れないでね!」
「了解だ」
危機的な状況だと知り、急いで準備を始める魔王。一方の指示を出したアディアはというと?
「私がロゴスを仕留めてればこんなことには……」
己の甘さで招いてしまった事態を悔やみつつ、猛烈に後悔するのであった。




