21話 魔王vsアディア
六発の内の一発でも模擬弾を当てれば魔王の勝ち……逆に六発の内の一発も当てられなかったらアディアの勝ち。そして、負けた方が勝った方からデコピンを喰らわされるという約束のゲームが今まさに始まろうとしていた!
「―――さぁ、遠慮なく撃ってきなさい! どんな攻撃でも全て躱し切って見せるわ!!」
「フン、勇ましいな! では、さっそくいかせてもらうぞ!!」
アディアからのありふれた挑発に対し、血気盛んに言い返す魔王。まずは牽制と威嚇の意味を込めた一発を彼女の足元へ撃ち込むが?
パァン!
「…………」
彼女は微動だにしない。いや、それどころか……
「……何の真似? 一応言っておくけど弾道なんて、相手の手元と撃つタイミングさえわかれば簡単に見切れるからね!」
まるで魔王の魂胆を見透かしていたかのように一喝。
「さすがは勇者パーティーの元一員ってわけか。ならば……!」
間合いを詰めるために前へ走り出す魔王。彼女の眼前にまで迫ると、身につけていたマントを脱ぎ捨て自分の姿を覆い隠す!
「これなら、手元もタイミングもわかるまい!!」
視界を封じ、すかさず三発の弾丸を発射するが!?
「あまい!」
彼女は既に上空高くへ跳んで避難している!
「バカめ! 空中では自由が効くまい!!」
罠にかかったな言わんばかりに狙いを定める魔王。しかし、窮地であるはずの彼女は余裕の笑みを浮かべる。
「やっぱりあまいわね」
空中にいるままで身を翻すと、その背後からは鋭い光が射し込む!
「し、しまった! 太陽が!!」
逆光に目を眩ませて怯む魔王。急いで態勢を立て直そうとするも、そうする前にあっさりと銃を奪われてしまう!
「なっ、返せ!」
取り返すそうと手を伸ばすも届かず、さらにはその隙を突かれた足払いを受けて地面に転がされる始末だ。
「お、おのれ……!」
すぐに起き上って反撃を試みる魔王。だがそれをやろうとした時、奪われた銃が額へ突きつけられる!
「これでおしまいね♪」
銃を突きつけたアディアが余裕のウインクをしてみせた次の瞬間!
パァン! パァン!
上空へ向けて全ての弾丸が撃ち尽くされる!
「これで六発全部を撃ち尽くしたから私の勝ちね」
「はぁ! 貴様の勝ちだと!? バカなことを言うな! 余はまだ……!」
唐突の勝負ありに憤る魔王だが、アディアは彼の反論に一切かまうことなく続ける。
「ルールは私に一発でも弾を当てられたらアナタの勝ち。逆に一発も当てられずに弾を撃ち尽くせばアナタの負け…….だったはずよね?」
「な、なっ!」
淡々と述べられる説明に、魔王は「それは違う」と尚も食い下がる。
「何を言ってる! 今のは貴様が勝手にやっただけで、余はまだ……!」
「今のは? 勝手に? 言っておきますけど、これが実戦ならアナタはそんな下らないセリフを吐く前に死んでるわよ!」
「ぐぬっ!」
正論で言い返されて言葉に詰まる魔王。もはやこれ以上の抵抗は、ただのみっともないあがきにしかならないと判断する彼は、屈辱でありつつも敗北を受け入れる。
「……余の負けだ」
「じゃあ、約束のデコピンをやらせてもらうね♪」
「好きしろ」
潔く額を晒す魔王。そして……
「いくわよ……えい!」
ピシッ!
「っつ……今度は絶対に余が勝つからな!」
たいして痛くもない額をさすりながら、内なる悔しさを隠すことがないままに見せつけるのであった。




