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19話 試し撃ち

 朝食後。アディアと魔王は銃の試射を行うため、家から少し離れた場所にある森の奥の開けた場所にて準備を進めていた。


「―――何をしてるんだ?」


 七、八メートルくらいの距離にある木の枝にいくつもの空き缶を吊るしていくアディア。魔王はその行為について訊ねた。


「的を用意してるのよ。何もないところを撃つよりは張り合いがあるでしょ?」

「なるほど。それは手間をかけさせるな」

「どういたしまして。他にも聞きたいことある?」

「銃を扱う際に、注意事項はあるのか?」

「あるわよ。危ないから無闇に人へ向けないことね」

「無闇? では、どんな時に向けたらいいのだ?」

「こっちが危ない時と、無茶苦茶に頭にきた時よ」

「……理解した」


 妙な形で納得する魔王は、さっそく一番右端の的へ狙いをつけて銃を構えるが……


「あ、一つ言い忘れたけど、撃つ時は反動があるから気をつけてね」

「心得た」


 アディアのアドバイスを聞き入れ、慎重に引き金を引く。


 パァン!キィン!!


 破裂音とほぼ同時に缶が弾かれた音が聞こえる。


「今のは……当たったのか?」

「普通にかすめただけよ」


 言われた魔王は、狙った的の缶を手に取って確認。


「……確かに貴様の言う通り、横っ腹をかすめただけみたいだな」


 不満気な顔で缶を眺めていると、そこにアディアからのフォローが入る。


「最初の一発を当てるだけでも大したものよ。それに銃は元々、全盛期の時代でも熟練するにはかなりの時間を要したらしわ」

「時間か、ならば気長にやるしか……」

「ダメよ!」


 言い終わりを待たずにアディアは話を遮る。


「悪いけど、私はギルバートへの復讐をいつまでも先延ばしにするつもりはないわ」

「復讐を急ぐ理由があるというのか?」

「……これを見て」

「?」


 魔王は一枚の新聞紙を受け取る。


「何々……来る某日、勇者ギルハートとセシリア姫による結婚パレードが街のメインゲートにて盛大に開催……つまりは、これをされる前に決着をつけたいと?」

「いいえ、それをやっている真っ最中に決着をつけたいの」

「真っ最中だと? 大勢の前でパレードをぶち壊したいってことか?」

「その通りよ。最高に幸せをアピールしてるその瞬間こそが、彼に大恥をかかせるに相応しいわ!!」

「大恥か……それで貴様の復讐が完遂すると?」

「まさか? 前にも言ったことがあるでしょ」

「確か、男の象徴を切り落としてどうのこうの……という下らないヤツか?」

「そっ。そこまでやって、ようやく私の復讐は完遂するのよ!!」


 拳を天に突き上げて己の想い力説するアディア。その瞳には一切の迷いを感じさせなかった。


「復讐の完遂か……それは望むところだが、余の場合はもう少し簡単かもな」

「というと?」

「余が望むのはあくまでも“勇者の死”そのものだ。過程や手段に関係なく、ヤツの命を奪えればそれでいい!」


 自身の想いを淡々と語る魔王。彼の瞳もまた、彼女と同じく一切の迷いを感じさせなかった。


 そう……彼等は揃って勇者への復讐を完全に心で決めている。

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