16話 銃
「銃……銃か……確か二、三百年程前の人間が考案した飛び道具型の武器で、弾丸と呼ばれる鉛の塊を火薬の爆発力を利用して発射させる……だったか?」
うろ覚えの知識で話す魔王にアディアは付け加える。
「ええ、それから主に戦争や暗殺に多く使用されていたらしいわね。まあ最終的には、魔法の発展に押される形で廃れていったみたいだけど」
「ふむ……それでその廃れた遺物がここにあるというのだな?」
「工房にあるわよ。ついて来て」
ということで二人は廊下に出て工房へ移動する。
「―――暗いな」
「待ってて、今明かりをつけるわ」
アディアが壁にあるスイッチを押して天井の照明に灯されると、部屋の壁に設置された棚にはズラッと並べられた工具や部品、鉱物の塊みたいなものがチラホラと見受けられた。
「一通りのものは揃ってるみたいだな」
「当たり前よ。そうでないと魔王と戦える武器なんて作れるわけがないわ」
「耳が痛いな……っで、肝心の銃はどこに?」
「焦らないで。確かこの辺りに……あった!」
奥から持ってきたのは三〇センチ四方の立方体型の木箱。それが中央の作業台へ置かれる。
「開けていいわよ」
「ああ……」
促されて蓋をとると、中には布で厳重にくるまれたL字形の物体が入っていた。
「これが銃なのか?」
「ええ。“拳銃”という部類に入るみたいよ」
「そうか」
魔王はおもむろに銃を手にすると、巻かれていた布を慎重にほどいていく。
「ふむ、初めて実物を目にしたが……案外重いものだな」
「ほとんどが金属の部品だからね」
「実際に使えるのか?」
魔王は小さな両手で銃を構えて訊ねる。
「もちろん使えるわ。ただし、細かな整備や調整は必要になるけど」
「どれくらいかかる?」
「ちゃんと撃てるようにするなら……明日の朝に取りかかれば、お昼頃には終わるんじゃないかしら?」
「そうか」
アディアの話を聞き終わり銃を返却。
「余に手伝えることはあるか?」
「手伝い? 魔王様は殊勝なことを言うのね」
「茶化すな。余は貴様に滞りなく作業を進めて欲しいから協力するだけだ」
「ハイハイ。その好意はありがたくいただくとして……明日の朝食をお願いしていいかしら?」
「朝飯? 急に何の話だ?」
「今、手伝うって言ったばかりよね?」
「……ハッ! まさか余に飯を作れと言いたいのか!?」
「そうよ。手伝うって自分で言ったじゃない」
「ぐぬっ!」
痛いところを突かれた魔王はグゥの根も出ない。
「決まりね。明日の朝を楽しみにしてるわ♪」
「りょ……了解だ」
話が無事まとまり、銃は再び木箱にしまわれる。
「それじゃあ戻るわね。さすがに時間が遅いから早く寝ましょ」
「そうだな。余も早起きをする理由ができたことだしな」
「フフフ。朝食、期待してるわ♪」
「勝手にしとけ!」
こうして明日の予定が決まった二人は寝室へ向かう……っが、この時の魔王は知らなかった。
これから自分の身に起きるとんでもない災難を!




