15話 不安な魔王
シャワーを終えてリビングへ戻る魔王。テーブルには既に暖かいシチューと野草のサラダ。それと見るからに噛む手応えがありそうなパンが用意されてあった。
「シチューか。肉まで入れて豪勢だな」
料理を眺めていると、髪を後ろに纏めた寝間着姿のアディアが話しかける。
「どう? 少しはさっぱりしたかしら?」
「おかげ様でな」
言葉を交わして魔王が椅子に座ると、アディアも彼の対面の席へ座る。
「さぁ、冷めない内に食べましょうか」
「そうだな」
魔王はスプーンを掴み、シチューをゆっくりと口へ運ぶ。
「ほぅ、肉の旨味が良く出てるな。何の肉を使ってるんだ?」
「野ウサギよ。森で会った時に見たでしょ」
「あの時のか。死して尚、魔王の地肉となればウサギもさぞかし光栄に違いないな」
「ハイハイ。そういった痛い発言はいいから、残さずにちゃんと食べてね」
「……了解だ」
言われて大人しくシチューを食べ進める魔王。やがて皿が空になると……
「もう一杯もらえるか?」
躊躇することなく、おかわりを要求する。
「へぇ、いい食べっぷりじゃない」
「まぁな。貴様の味が余の口に合うみたいだ」
「ふ~ん、それって私の料理が美味しいってこと?」
「……そうかもな」
「フフフ、ありがとう。私の料理を気に入ってくれて」
「い、いいから早く持ってこい!」
「ハイハイ、今すぐに♪」
何かを誤魔化そうとする魔王だが、アディアは特に気にする素振りを見せずに機嫌な様子でキッチンの焜炉に置いてある鍋から新しいシチューを皿へ注いで持ってくる。
「どうぞ。熱いから気をつけてね」
「うむ」
慎重に皿を受け取る魔王は再び食事に集中。その後、もう一度おかわりをする。
「ふぅ満腹満腹、余は満足だ」
「お粗末様でした……っで、食べ終わったばかりで悪いんだけど魔王。ちょっと聞いてもいいかしら?」
「言ってみろ。今は腹が膨れて気分がいいから大抵のことには答えてやるぞ」
「じゃあ、アナタの力なんだけど……今はどれくらいあるの?」
腹をさすっていた魔王は、顔つきを少しだけ険しく変えて答える。
「そうだな……隠さずに言えび、森で貴様と戦り合ったのが全てといったところだ」
「え? 自分の弱味なのにずいぶんとあっさりとバラすのね?」
「見栄を張ったところで現状が回復するわけでもあるまい」
「そ、それもそうね……」
アディアが潔い返答に感心してると、今度は魔王が逆に訊ねる。
「余からもいいか?」
「どうぞ」
「貴様と共に勇者へ復讐するのはかまわん。だが率直な話、今の余には加勢が務まるのか?」
「それは……」
「別に臆してるわけではない。ただ、それをやるためには“力”が必要だ」
足手まといになりたくないと想いから問題を提起する魔王。その解決策は意外とすぐ示される。
「力なら用意するわ」
「何?」
「武器を使えばいいのよ」
「武器? 剣や槍……もしくは弓矢みたいな飛び道具か?」
「飛び道具ってところだけは正解よ」
「というと?」
アディアは一旦間を置いて答える。
「……銃よ」
「銃だと? あの旧時代の“遺物”のことを言ってるのか?」
「ええそうよ。魔法が発展していく影でひっそりとその存在を歴史から消していったあの遺物をアナタの武器として提供するわ!」




