14話 シャワー
「ねぇ魔王。アナタもシャワーを浴びてきたらどうなの?」
「余もか? 別に余は、たいして汚れては……」
「けっこう汗臭いわよ。気づかない?」
「そ、そうなのか?」
指摘を受けて不安になる魔王。試しに自分の体臭を嗅いでみると?
「くんくん……うっ!」
「ね?」
「ぬぐっ~、た、確かに少し臭うかもしれん」
「“かもしれん”じゃなくて実際に臭いのよ! いいからさっさとシャワーを浴びて綺麗になってきなさい。その間に晩ご飯の準備をしておくから」
「わ、わかった。そうするとしよう」
仕方なくシャワーへ向かわされる魔王……っが、それをさせた本人があることに気づく。
「そういえば着替えはあるの? なければ私の服を貸してあげるけど?」
この気遣い対して魔王は?
「男の余が女物の服なんて着れるわけがなかろう。こういった場合の備えくらいは、ちゃんとしてあるからよく見てろ」
そう言ってから面倒臭そうに指をパチンと鳴らした次の瞬間、着ていた服やマントがあっという間に身体のサイズに適したものへと変化した!
「す、すごいわね。何なのそれ!?」
驚くアディアに魔王は少しだけ得意気になって説明。
「余の一族に代々受け継がれてる“闇の衣”というものだ。これ自体に特殊な命令魔法が施されているため、持ち主は己のイメージで自由に形を変化させられるんだ」
「へぇ、魔族の世界にはそんな便利なものがあるのね」
「まあな。ちなみに多少の染みや汚れくらいなら、自動で落とせる機能があるから洗濯の必要はほとんどないぞ」
「ほ、本当に便利なのね……」
「フフフ、魔王の身だしなみを甘く見るなよ?」
こうして服の性能を説明し終えた魔王は、どこか嫌味っぽい表情を浮かべてシャワーへ向かう。
―――場面が変わりシャワー室。魔王は暖かいお湯を頭から浴びつつ、今後についての考えを巡らせていた。
「これからどうしたものか? 成り行きとはいえ、あの女と共に勇者へ復讐するに至ったが……実際にできるのか?」
疑問に思うのは無理もない。今の彼は五、六歳程度の子供の身体。さらにいえば、かつての膨大だった魔力も残りカス以下もない有り様だ。
「フッ、我ながら泣けてくる現状だな」
自らの無力さを嘲笑するが、だからといって彼の辞書に“諦め”の文字はない。
「だがいいだろう……できないなら、できるようにするだけだ。あの憎らしい勇者も、余の圧倒的な力の前に絶望することなく立ち向かって来たのだからな」
かつての宿敵を思い出して自身を奮い立たせる魔王。
「今に見ておれよ勇者。近い将来、必ずや貴様の首を奪ってやるからな!!」
っと、その決意を胸に意気込んでいたら?
『魔王ぉーーー! ご飯できたわよー!』
アディアから準備完了の声がかかった。
「ああ、そういえば晩飯がどうのとか言ってたな」
せっかくの好意を無駄にしては悪い……そう考えた魔王は、急いでシャワーを終えてその場を急ぐ。
「おっと! さすがに服を着ないとまずいな」
もちろん、きちんと例の闇の衣に着替えることも忘れずにだ。




