12話 アディアの家
ついに日が沈みはじめて徐々に暗くなり始めた森にて、アディアは疲れた果てた小さな魔王を肩車に抱える。
「それじゃあ、私の家まではあっという間だから、しっかり掴まっててね」
「あっという間? さっきまで『もうすぐ』と何回も繰り返して……」
「喋ると舌を噛むわよ」
「舌……どわっ!!」
有無も言わせない稲妻のスピードの如きスピードで走り出したアディア。肩に乗ってる魔王は、振り落とされまいと必死に彼女の頭にしがみつく!
「ゆ、揺れる……も、もう少しスピードを落とせないのか!?」
「何を言ってるの! これでも本来の三分の一以下にまで落としているわよ!!」
「さ、三分の一って……わああぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
「ちょ、頭の上で騒がないで! うるさくて集中できないじゃない!」
「だ、誰のせいで……うっぷ……騒いでると思って……いや、そもそも……」
「そもそも、アナタがぐずぐずしてたのがこうなったのが原因でしょうが!?」
「ぐぬっ!」
図星を突かれて押し黙る魔王。もはや諦めの極地で目まぐるしく上下に揺れて通り過ぎていく景色を眺めつつ、目的地への到着をひたすらに願う。
―――数分後、ついにアディアの家へ到着!
「さぁ、着いたわよ魔王」
「…………」
「魔王?」
「…………」
様子がおかしい。そう思った次の瞬間!
「うげぇぇぇぇぇろろろろーーーー!!」
「きゃ、ちょ、やめてぇぇぇぇぇぇーーーー!!」
肩車の乗り心地が余程に悪かったか、魔王はアディアの頭上で盛大なリバースをしでかす!
「うう……勘弁してよもう……」
「す、すまん。あまりにも激しく揺れたので……ついな」
吐瀉物まみれになった彼女の姿を気の毒に思い、さすがに反省の弁を述べる。
「ったく、もういいわよ。それよりも早くシャワーを浴びたいから、早く中に入るわよ」
「あ、ああ……」
っで、改めて魔王の視界には、周囲の木々に隠れるよにひっそりと建てられた古めかしい三角屋根のログハウス風の家が映っていた。
「ほら、ぐずぐずしてない入って入って!」
「ま、待て、そんなに押すなって!」
背中を強く押されて玄関をくぐると、目の前にはキッチンと一体化した開放的なワンフロア型のリビングが広がる。部屋の特長としては二十畳くらいの仕切りがない板張りの床の中央にテーブルと椅子が二脚。それとキッチン側には上部に戸棚が付いた食器棚と食料品を保存するための保存箱が置かれてある。
また右手の壁には小窓が二つ、左手には別の部屋へ繋がると思われる扉が確認できる。
「ふ~む、まあまあな感じだな。部屋は奥にもあるのか?」
「ええ。そこの扉から廊下に出て左はトイレとシャワー。右にいけば寝室と突き当たりには工房があるわ」
「工房?」
魔王が訊くとアディアは得意そうに答える。
「武器や色々な日用品を自作する部屋よ。ちなみにこれも私が作ったものね」
彼女はそう話すと、狩りに使っていた槍を自慢気に見せびらかす。
「なるほど、自分で武器を自作か……待てよ? もしかして余と戦った時に使っていた武器も?」
「正解♪」
「……胸糞が悪くなる話だな」
魔王は己を追い詰めた武器の製造元を知らされ、不愉快そうに顔を歪めた。
「それじゃあ私はシャワーを浴びてくるから、アナタは……そうね、適当に家の中でも見学して時間を潰しててよ」
「ああ、そうさせてもらおう」
こうして彼女と別行動をとることになった魔王は、さっそく家捜しを始める。
「さぁて……家主の許可をせっかくもらったんだ。好きに見学させてもらうとするかな」




