10話 帰路での会話
かつての勇者パーティーの一員であったアディアと、その宿敵でだった小さき魔王。
勇者への復讐という共通の目的のために協力関係を約束した彼等は、夕方の時間帯にさしかかろうしているにも関わらず、未だダラダラと森の奥に留まり続けていた。
「―――そろそろ家に帰らないとまずい時間ね」
「家? そんなものがあるのか?」
「そりゃあるわよ。もっとも、私が長期の修行に入る際に使用している別荘みたいなものだけど」
「家か……雨風が防げる場所があるのは有難いが、ここからは遠いのか?」
「ちょっとだけ遠いわね。だから暗くなる前に早く移動するわよ」
ということで、彼等は揃ってアディアの家へ向かうことに。
「―――なぁ?」
森での帰路をしばらく進んだ道すがら、魔王は唐突に口を開く。
「今更ながらに訊くが、魔王である余が貴様の家にいっても良いものなのか?」
この質問にアディアは不思議そうに聞き返す。
「それ、どういう意味?」
「いや、仮にも余と貴様は数ヶ月前まで互いに命を賭けて戦っていた関係だったはずだ。だからその……問題ないのかと思ってな」
どうやら魔王は、彼女との遺恨を気にして訊いてるようだが?
「う~ん、言いたいことは何となくわかるけど……そもそも私達は同じ相手に復讐を企てる同志なんだから、そんなに遠慮することなんてないと思うわよ?」
「そ、そうなのか?」
意外にも肝心の彼女はどこか達観してるみたいで、かえって気を遣った本人が面を食らってしまう始末。
「ねぇ、私からもいいかしら?」
「今度は貴様からか……い、言ってみろ」
アディアからの質問に魔王は些か身構える。
「では……コホン!」
「勿体つけた咳払いはいいから、さっさと言うべきことを言え」
「ハイハイ……じゃあ、私とアナタはさっきも述べた通りあくまでも同志。だから過去の経緯は取り敢えず捨てて、不本意でも互いに勇者へ復讐することを優先して欲しいの」
「過去を捨ててか……まぁいいだろう。余としても、現時点においては勇者への復讐が最優先事項だからな」
「決まりね。あとアナタは子供なんだから、大人みたいにあまり難しいことを考えなくていいわよ」
「う、うむ、そうか……ってぇ! 余は見た目が子供なだけで、中身はれっきとした大人だからな!!」
「でも、かわいいわよその姿」
「うるさい! 黙れ!!」
「あらあら、せっかく褒めてあげたのにずいぶんとひどい言草するわね」
「褒めるだと? 本気で言ってるなら、とんだ笑い話だな!」
「アーハハハ!!」
「なっ! 突然笑い出して……気でも狂ったか?」
「笑い話だから笑っただけよ♪」
「…………」
魔王は一瞬呆れるが、これ以上の言い争いは不毛と判断。よってここは、大人としての判断を選択。
「と、とにかくだ、今は貴様の家に急ぐだけだ! いいな!?」
「ハイハイ……」
「ああそれとだ。余から注意しておきたいことがある」
「何かしら?」
「確かに貴様と余は同じ目的を持った同志かも知れん。しかし、だからといって必要以上に馴れ合うつもりはないからな!!」
「…………」
「どうした? 急に黙って?」
「いえ、ホントにかわいなと思って……」
「貴様……余が大きくなったら覚えておけよ」
「フフフ、楽しみにしてるわ♪」
そんな奇妙に噛み合う会話を交わしながらも、二人は森のなかを進んでいくのであった……
何とか10話まで来ましたので、毎日更新はここでおしまいです。
ここからは、週二話ペースでやっていく予定です!




