1話 最終決戦
ここは王都より遥か西に存在する暗黒の大地。その中心地にそびえる巨大な“魔王城”の最深部では、今まさに四人の勇者パーティーと魔王による最後の決戦が行われようとしていた!
「ハーハハハハ! 愚かなる人間共よ! 偉大なる余の野望を叶えるための礎になるがいいわ!!」
禍々しい二本の角を生やした魔王は、漆黒のマントを翻して威圧感たっぷりの口上を吐き出す。
「黙れ魔王! 今日こそ、お前に正義の鉄槌をくれてやるぞ!!」
対して戦う意志を示すのは、白銀の鎧で身を固めた黒髪のオールバックの青年勇者ギルハート。彼は両手で剣を握り締めて勇敢にも前へ飛び出す!
「甘いな勇者よ! そう簡単に余の側に寄れると思うな!!」
魔王はそうはさせまいと、魔力が宿った右掌を開く!
「堕ちろ! ダークネス・アロー!!」
言い終わりと同時、周囲の空間から現れた無数の漆黒の矢が次々にギルハートめがけて撃ち放たれる!
「くっ、なんて激しい攻撃だ……けど、必ずどこかに突破口があるはずだ!!」
圧倒的な手数になす術がないまま耐えるギルハート。だが、そんな逆境の中でも剣を振り回して反撃の機会を窺い……!
「ここだ!」
僅かにできた間隙を抜けて駆け出す!!
「む、無茶よギルハート! すぐに戻って!!」
先走る彼を慌てて止めようとするのは仲間の女戦士アディア。鍛え上げられた肉体を真紅の鎧で固めた赤髪のショートヘアの彼女は、愛用の大槌を片手に彼を追いかけるが!
「きゃあ!」
魔王が放つ流れ弾によって行く手を阻まれてしまう!
「くっ、これじゃ迂闊に近づけない。ならば……」
加勢が無理だと判断する彼女は、後方で杖を片手に魔法による援護と補助を司る灰色のローブを纏った長い金髪のエルフである男へ指示を出す。
「お願いザクノバ! ギルハートを助けて!!」
「わかってる! 今、プロテクスをかけたところだ!!」
素早い対応だが、それでもギルハートが一人で魔王に立ち向かうには無謀なので……
「ザクノバ! 私にもプロテクスを……え?」
アディアが次なる指示を出そうとした時、横から派手な民族衣装を着た小柄な老人が通り過ぎる。
「ロゴス!」
「ギルハートのフォローならワシに任せい! お主は機を見て魔王に会心の一撃を喰らわせるんじゃ!」
「わ、わかったわ!」
アディアは彼の案を了解すると、その場で静かに力を溜め始める。
一方後方に控えるザクノバは、三人を援護するための攻撃魔法を唱える!
「くらえ! アイス・アロー!!」
何もない空間から突如現れた無数の氷の矢。それが凄まじいスピードを以て一斉に魔王へ向かっていく!
「小賢しい真似を……ファイヤー・ウォール!」
だが、その全ては難なく炎の壁によって阻まれてしまった!
「オ、オレの魔法が効かないだと!?」
「バカめ! エルフ如きの粗末な魔法で余を傷つけられると思うな!!」
あからさまに力の差を見せつける魔王。その気が抜けた一瞬、先走るギルハートを追い抜いたロゴスの拳が咆哮をあげる!
「鉄砕拳!!」
技名通り鉄をも砕く一撃が魔王の土手っ腹に深くめり込む!
「ぐはっ!」
完全に「く」の字に身体が曲がったところで、次はギルハートの剣が頭上から追い討ち!!
「とったぞ、魔王ぉぉぉーーーー!!」
「な、舐めるな勇者よ! マジック・シールド」
絶妙な時間差攻撃であったが、魔王は辛くも魔力の盾で防ぐ!
「二人とも、そこを退いて!!」
直後、ギルハートとロゴスを左右に散らせたアディアが、目一杯に溜めた力を開放する!!
「潰れろ……死の一振!!」
樹齢ン千年の大木をへし折るとされる災害級の一撃を、魔王の胸板に叩きつけて大きく吹き飛ばす!!
「やったわ! これで私達の……」
両腕に伝わる手応えで勝利を確信するアディア。しかし、魔王はギリギリのところで持ちこたえる!
「お、おのれ人間共め……余に対してここまでの狼藉を働くとは……絶対に……絶対に許さんぞぉぉぉーーーーーー!!!」
魔王の魔力が一気に膨れる!
「まずい! アディア、早くそこから離れるんだ!」
尋常じゃない雰囲気を察知して離脱を促すギルハートだったが……
「遅いわ! くらえ、インフェルノ・ブレス!!」
不運にも彼女の反応はワンテンポ遅れ、魔王の大きく開かれた口から吐き出される紅蓮の炎をまともに受ける!!
「しまっ……!」
死を覚悟する彼女、その眼前に映るのは!?
「させるかぁぁぁーーーー!!」
勇敢にも自らの身をもって彼女を守ろうとするギルハートの姿だった!
「ギルハート!!」
叫んだその時、彼の持つ剣が目映く光り始める!!
「こ、この光は……ま、まさか!?」
たじろく魔王、ギルハートはその隙を見逃さなかった!
「これで最後だ魔王! ライトニングブレェェェェーーーーーイク!!!」
光り輝く剣が魔王の心臓を確実に貫く!!
「ごああああああああぁぁぁぁーーーーーー!!!」
この世にある全ての悪意と憎悪が入り混じった断末魔は、これまでの苦しい戦いに終止符が打たれたことを告げる!!
「や、やったぞ……ついに魔王を倒した……んだ……」
やっとの勝利に安堵するギルハート。全ての力を使い切った彼は糸の切れた人形のように倒れ……
「危ない!」
寸前、アディアが優しく支える。
「ギルハート、大丈夫?」
「ありがとうアディア……キミの方こそどうなんだい?」
「私は大丈夫……なんだけど……その……」
「ハハハ……不安そうな顔しないでくれよ。約束なら、ちゃんと覚えてるからさ」
「え?約束?」
キョトンとするアディアに、ギルハートは少し照れ臭そうに言う。
「魔王を倒した暁には、結婚する約束だったろ?」
「ギルハート……わ、私……うん!」
感極まって抱擁する二人。彼等の未来は、きっと明るく楽しい未来が訪れる……はずだ!




