第82話 「ひとみちゃん⑬『仁美と和美とホノカ』」
元彼女と、今の彼女???
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••川北中学校••✼••
••✼••3階3年教室前の廊下••✼••
パタパタパタパタッ!
「「「ひとみちゃん先生~~~!」」」
「おう!」
「これこれ! 見て!」
「あん? なんや?・・・?!」
3年生女子達が、仁美にスマホを見せる。
すると、その画面には・・・
「この人! 今、凄い人気のあるレイヤーさんなんやけどね?
名前は分からへんのやけど~~~
めっさ、ひとみちゃん先生に似てない?」
「!?・・・あははっ・・・そうかなあ?
あははは・・・あははははは・・・(汗)」
「なあ! 似てるわなあ?」
「うんうん! 似てる似てる!」
「・・・(汗)」
「もしかして、ひとみちゃん先生やったりして?」
「んなっ?! な、なんを言うてんの?
お⋯私がそんな格好する訳がないやろお?」
「う~~~ん まあ、そうか~~~そうよなあ~~~」
「・・・(汗)」
「そうよなあ~~~ひとみちゃん先生が、コスプレなんかする訳がないわなあ~~~」
「・・・・・・(汗)」
「そんなイメージちゃうし~~~」
「・・・・・・・・・(汗)」
「する訳がないかあ!」
「あははっ! せーへん! せーへん!(汗)」
「ほなねーひとみちゃん先生~~~!」
「おお~~~!」
パタパタパタパタッ!
「って、おーい! 廊下を走るなよ~~~」
「「「はあ━━━いっ!」」」
「・・・・・・・・・・・・(汗)」
この時仁美は、全身の血が足元から抜けてしまうような感覚に陥った!
仁美は、精一杯平常心を装ってはいたが、内心はドキドキバクバクだった!
『マズイ! ひっじょおぉおぉおぉ~~~にマズイ!!
教育者たる者がコスプレなんかしてるってバレたら、教育委員会や保護者会の人らに何て言われるか?!
ってかそれ以前に、懲戒解雇?!』
仁美は、なんとか動揺を態度に出さないように必死だった。
幸い、生徒達には悟られてはなさそうだった。
生徒達が仁美に見せて来たのは、間違いなく仁美のコスプレ姿だった。
しかも、美魔女アンのベルドーレ第2王女のコスである。
一応、ベルドーレが着けている褐色のレースマスクを着けているが、何時バレてもおかしくない。
でも、生徒達からすると、仁美がコスプレをするなんてイメージが無いため、信じてはもらえたようだが。
仁美は、マジでビビった!
そして、職員室に着いたのだが、何処をどう通って来たのかまったく覚えていなかった。
それくらい仁美は、心ここに在らずだった。
・⋯━☞昼の休憩時間☜━⋯・
••✼••職員室••✼••
「・・・・・・(汗)」
「大川先生、どうかしましたか?」
「!・・・ああ、新谷先生?
えと・・・後で、談話室でお話し、いいですか?」
「え?・・・はい 構いませんよ?」
「では、後ほど・・・」
仁美は、職員室に戻っても顔が青ざめていたので、和美が心配して声を掛けてくれたのだった。
そして、昼食の後、談話室で仁美と和美とで、話し合う事となった。
・⋯━☞昼休憩☜━⋯・
••✼••談話室••✼••
「・・・マジですか?」
「おうよ マジ、ビビったぞ?
俺のコスプレ写真を見せられて、チビりそうになったわ!」
「ううむ・・・コレはマズイですねえ・・・
僕はミサンガを外してましたから、身体が小さくなっていたので、バレる心配は無かったのですが、仁美さんは今の姿のまんまでしたからね・・・」
「うむ いくらマスクを着けていたとは言え、知ってる奴が見たら、そりゃあ俺やと判るわなあ?」
「はい・・・とにかく、しばらくはコスプレは控えましょう」
「え”っ?!・・・控えやなアカンか?」
「はい? 何を言ってるんですか!
もしバレたら、教員辞めなきゃいけなくなりますよ!
教育者がコスプレって、いくらなんでもダメでしょ?
って言うか、それだけではなく、報道関係やメディアが黙っていないでしょう?
仁美さんの今後の人生にだって響きますよ?!」
「!!・・・そうじょなあ・・・やっばいなぁ・・・(汗)」
「では、これからもコスプレをしたいのなら、ミサンガを外した小さな身体でできるキャラを選びましょう?」
「!・・・なるほど! その手があったか!」
ってな具合で、仁美はこれからもコスプレを続けるが、ミサンガを外した小さな身体でできるキャラを選ぶ事になった。
今の肉体年齢20歳の身長178cmの仁美しか知らない生徒達なら、きっとバレないはずだと。
ところが・・・
・⋯━☞帰りのホームルーム後☜━⋯・
••✼••2年チヒロの教室前••✼••
「おう! 仁美~~~!」
「お? チビのチヒロか! どした?」
「チビ言うな! それより、仁美・・・」
「うん?」
帰りのホームルームが終わって、生徒達が帰り支度でバタバタしていた頃、チヒロが仁美に声を掛けて来た。
そして、手をクイクイと手招きして、仁美に耳打ちする。
《仁美、コスプレしてるやろ?》
「?!・・・おまっ・・・(焦)」
《しっ! だいじょぶ! 誰にも言わへんから!》
「お!・・・お、おお・・・で? 何が目的や?
何か無理難題な交換条件とか出すつもりか?
俺のストリップ写真集を見せろとか言うなよ・・・」
「誰が言うか!!」
チヒロは、どうやら仁美がコスプレをしている事に気付いているようだ。
仁美もここで、徹底的に否定すれば良いものを・・・
ってか、バレバレだったが。
まあ、魔法使い仲間達としてなら、バレても仕方ないか。
なにせ、写真とは言え、魔法使いなら魔力のオーラが見えるのだから、今学校内で話題になっていた例のベルドーレ第2王女のコスプレの人物が、チヒロには仁美本人だと言う事は一目瞭然であった。
なぜならチヒロは、仁美にとって先輩魔法使いなのだから。
そこで、交換条件を求めて、仁美に耳打ちするチヒロ。
《俺にもコスプレ衣装作ってくれ!》
「はあ?! あ前っ・・・」
「しっ! 声大きいって!」
「おっ?! おお、すまん・・・(汗)」
《どうせ誰かに作ってもらったんやろ?》
「おお、まあ・・・うん(汗)」
《やっぱりな! せやからな? 俺にもコスプレ衣装を作ってもらえるように頼むわ!》
「!・・・ううむ・・・わ、わかった!
で? どんな服が欲しいんな? 一応聞いてみるよってに」
「ホンマ?! サンキュー!
ほな、学校終わったら、俺に電話くれ!
番号はこれな! ほな!」
「あっ! おい!!」
タッタッタッタッ・・・
「ふう・・・参ったな(汗)」
チヒロは、仁美がコスプレしている事を黙っている代わりに、チヒロのためにコスプレ衣装を作れと言うのだ。
仁美にしてみれば、脅迫されているようで、弱みを掴まれたようで、如何ともし難いのだが、ここは言う事を聞くしかない。
・⋯━☞午後9時過ぎ☜━⋯・
••✼••アパート仁美の部屋••✼••
「なるほど・・・その、僕達の先輩魔法使いとなる生徒・・・早乙女 千聖という娘に、弱みを掴まれた・・・と」
「うん・・・(汗)」
「何をしているんですかあ━━━っ!!」
「ひゃあっ(汗)」
「もう! もうもうもうもう!!
どうして貴女は、こうも後先考えないで・・・」
「ご、ごめん・・・(泣)」
「僕達だって、魔法使いなんですよ!
たとえ何があろうとも、ガンとして否定すれば良いものを・・・」
「ごめん・・・ごめん・・・(泣)」
「まったくもう・・・しょうがないですねえ(汗)」
「すん・・・すん・・・(泣)」
女になってからと言うもの、スッカリ気か弱くなってしまった仁美だった。
仁美からすると和美は歳下なのに、何時しか姉のような存在になっていた。
何とも情けない事だ。
それでも今の方が毎日が楽しく充実しているのは事実。
魔法使いとして、いざとなれば教員を辞する覚悟もある。
無責任な考えではあるが、これも仕方がない事。
ただ、もう少し教員生活も続けたい気持ちもある。
魔法使いとして、人よりも長い長い人生を歩む事になるのだから、コスプレの事で悩むのも些細な事柄に思えてしまう。
と言うか、魔法使いになった時点で、どうとでも出来てしまう気もする。
何時かはリオリオのように、後輩魔法使い達をサポートする立派な魔法使いになりたいとも思う。
だから今は、やりたい事をやって、楽しめるならできる限り楽しみたい。
学校で教員をし、プライベートで魔法使いをし。なんてね。
「じゃあ、先にお風呂に入っちゃってください
洗濯物は、ちゃんと洗濯機の中に入れておいてくださいね!
また、ポイポイと脱ぎ捨てちゃあダメですからね!」
「はう・・・」
「あ、脱いだ服はそのまんま洗濯機に入れないでくださいね!」
「え? なんで?」
「仁美さん、なんでもそのまんま洗濯機に投げ入れちゃうじゃないですか?
上着やシャツや靴下やオーバーパンツは裏返したまんまじゃダメですよ!」
「あ、ん、はう・・・」
「それと、仁美さん今は生理中でしたよね?」
「へあっ?! 知ってたん?」
「それくらい、判りますよ!
パンツは先に手洗いをしてから洗濯機で洗いますから、別のカゴに入れておいてくださいね!」
「はう・・・」
トボトボ・・・
「ふっ・・・まったく、どっちが先輩なのやら(汗)」
今の仁美は、『活力スイッチ』がOFF状態だった・・・
そんな風にガチャガチャと小煩く仁美に言ってしまう和美だったが、肩を落として凹む仁美を見て、仁美が男だった頃は大きく強く頼り甲斐のある人だったのに、今はこんなにも小さくか弱く頼りない存在に見えて、それがまた庇護欲を擽ると言うのか、愛おしくも思うのだった。
「僕が仁美さんを、支えてあげないと!」
そう独り言を言いながら、テキパキと晩御飯の用意をする和美だった。
ところが・・・
「アレ?・・・仁美さん、お風呂に行ってから、もう1時間は過ぎている
烏の行水の仁美さんにしては、随分と長風呂だな?」
そうなのだ。
仁美の風呂は、和美が言うように、『烏の行水』のように早い。
本当にちゃんと身体を洗ってるのか?と思うほどに早風呂である。
なのに仁美が風呂に行ってから、もうすぐ1時間半にはなる。
おかしい・・・
和美は、胸騒ぎを覚えた!
ドタドタドタドタッ!
和美は、風呂場に向かって走った!
そして、風呂で見た光景とは・・・
••✼••風呂場の中••✼••
バァン!
「仁美さん!! はっ?!」
「・・・・・・」
「え? ええっ?! ひと、仁美さあん!!」
バシャバシャ!!
仁美は、湯船に浸かったまんま、鼻が湯に浸かる寸前にまで沈みかけていた!
和美は驚きの衝撃で、全身に電気が走る感覚に陥り、慌てて仁美を抱き抱えて、湯船から仁美を引きずり出した!
そして、洗い場に仁美を横たえる。
バシャバシャバシャ!
「仁美さあん!! シッカリしてくださあい!!」
ビチャビチャ・・・ペタン・・・
仁美は完全に意識を失っていた。
和美は、仁美を起こそうと仁美の頬を叩く!
「仁美さん?・・・仁美さん?・・・」
ピタピタッ!
「仁美さん!・・・仁美さんってばあ!!」
ピタピタ・・・パチン!パチン!
和美は更に、仁美の頬を強く叩く。
すると仁美は、ゆっくりと瞼を開け・・・
「・・・ん・・・あ・・・」
「はあっ! 仁美さあん!!」
「え・・・か・・・和美?・・・なんで?」
「仁美さあ~~~ん!!
わああああ~~~ん! 良かったあ~~~!!」
「?・・・?・・・???」
息を吹き返したように気が付いた仁美を見て、和美はビチョビチョに濡れたまんまの仁美を抱きしめた。
仁美は、今どうして和美に抱きしめられているのか、なぜ和美が号泣しているのか理解できない様子だった。
・⋯━☞しばらく経って☜━⋯・
••✼••アパート仁美の部屋••✼••
和美が、濡れた仁美の身体を拭き、服を着せて部屋に戻った時、なぜかリオリオがそこに居た。
「あれ? リオリオさん!」
「よう! バカ娘達よ どうやら不調のようじゃな?」
「!!・・・あ、はい その通りでして・・・」
和美は、仁美をそっと座らせて、壁にもたれかけてやった。
仁美は、まだ気をシッカリ持てていない様子で、糸の切れたマリオネットの様にグッタリしていた。
「ううむ・・・溜まっていた気疲れが溢れ出してしまったんじゃろうな?」
「え? 仁美さんが、気疲れ?」
「そうじゃ! このバカ娘はな? 男の頃は『鉄の男』なんて呼ばれておったらしいが、それは実は見掛けばかりでな、中身は外見とはそぐわず、鉄の男なんかじゃなくて、ただのメッキじゃったんじゃよ」
「メッキ?・・・」
「うむ このバカ娘は、大学卒業してすぐに両親を事故で亡くしてるのは知ってるな?」
「あ、は・・・はい」
「その日からこのバカ娘は、1人で生きて行かなならん
だから、強くならなアカンと、身体を鍛え始めたんじゃ」
「・・・」
「じゃがなあ、それは外見だけで、中身、つまり心根は何時も一人ぼっちの弱いまんまじゃったんじゃよ」
「・・・・・・」
「今はお前さん達が居るが、それでもこのバカ娘は、1番歳上じゃからと気を張り続けて、もうヘトヘトだったんじゃろう
じゃから、頼りたくても頼れない・・・頼っちゃいけない
そんな風に考えていたから、お前さん・・・甘えられる和美という存在がとても心地よく感じてしまい、それで一気に力が抜けてしまったんじゃろうな」
「そう・・・なんですね 仁美さん・・・
もっと、もっと僕を頼ってくれていいんですよ?」
「うむ バカ娘が起きたら、そう言ってやれ!
このバカ娘は、バカで、単純で、偏見持ちで、思い込みが激しくて、何でも1人で抱えがちで、アッポケのすっとこナンキンカボチャじゃからな!
じゃが、お前さんの優しい言葉で、すぐに立ち直れるじゃろう」
「ひどっ! 言い方っ!!(汗)」
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
「まったく・・・無邪気な顔して・・・ふふふ」
「ま、この様子じゃと、もう心配はなさそうじゃな?」
「え? ああ、はい! ありがとうございました!」
「おう!」
シュパァン!・・・
そう言ってリオリオは、転移魔法で姿を消した。
「ふう・・・仁美さんが、メッキ・・・か
ふふふ 確かに、そうかも知れないな
やっぱり仁美さんは、僕が支えてあげないと!」
そう言って和美は、仁美の頬をそっと撫でた。
・⋯━☞翌朝☜━⋯・
「仁美さん! 朝ですよ~~~」
「ん!・・・はぁい・・・ううん・・・」
仁美は、何時もの様にノソノソと起き上がる。
するとそれを合図かのように、腹の虫が鳴る。
ぐぎゅるるるるるるる~~~ううう~~~
「!・・・あぢゃ」
「ぷあははははははははっ!!」
「なんっ! わう、笑うなあっ!!」
「そう言えば、昨夜は何も食べずに寝ちゃいましたもんね!」
「あれ? そうやったっけ?」
「昨夜、仁美さんは、お風呂で卒倒しちゃって大変だったんですからね!」
「?!・・・そうなん・・・や・・・すまん」
「別に構いませんよ! ほら! シャキっとしてください!」
「お! おお・・・すまん! よっと!」
ドタバタドタバタッ!
仁美は、足を揃えて天井に向けて上げると、ピョン!と跳ね起きで立ち上がり、何時もの仁美に戻って、バタバタと朝の用意を始めた。
そしてその時、和美がこう言う。
「仁美さん!」
「ん!? なんや?」
「僕を頼ってくれて良いんですからね!」
「は? あ、ああ、うん あ、ありが・・・とう?」
「あははっ! うん! ふふふ♪」
「・・・???」
昨夜のお風呂の卒倒事件から、何も知らない仁美は、ただただ『???』だった。
そして、何時もの様に、何時もの時間に仕事へ向かい、何時もの様に仕事をこなし、何時もの様に家に帰って来る。
・⋯━☞午後9時過ぎ☜━⋯・
••✼••アパート仁美の部屋••✼••
「はあ~~~今日も無事に終わったあ~~~」
「はい! 今日もお疲れ様でした!」
「おう! 和美も、お疲れさん!」
「はい! ありがとうございます ふふ」
「・・・ん? どした?」
「いいえ! なんでもないですよ~」
そう言って和美は、何時もの様に仁美の世話を焼く。
するとそこへ、ホノカが勝手に部屋に入って来る。
カチャ!・・・パタン!
「おっ疲れえ~~~」
「おうっ! お疲れっ!」
「ほら! 仁美の好きな『辛子入りマヨネーズ』買って来たよ!」
「おおっ! ちょうどスルメがあるんじゃよお!
ホノカ、気が利くなあ~~~」
「ほやろ? ふっふん!」
「ドヤるな」
「なによお~~~」
「あはははっ! じゃあ、グリルでスルメを焼いてきますね!」
「お! 頼む!」
「ちょっと! 仁美も、なんかしたら?
和美さんにばっかりさせて!」
「え? ああ、そうやな・・・」
「いいんですよ! 僕がやりますから」
「んもお~~~」
「ははは・・・(汗)」
すると、今度はマコとサワサが、仁美の部屋にやって来た。
マコとサワサも、突然の様に勝手に部屋に入って来る。
カチャ!・・・パタン!
「来たよ~~~!」
「おおっ! 入んな入んな~~~」
「お邪魔しま~~~す」
「お邪魔します!」
「ほら仁美さん! 仁美さんの好きな『辛子入りマヨネーズ』を買って来ましたよ!」
「えっ?! あるるぇええ?
それ、さっきホノカも買って来てくれたって!」
「あっちゃあ~~~被っちゃいましたか~~~」
「あはははっ! いいですよ!
別に余計にあって困る物でもないですし?」
「ほら!」
「それは何?」
「私は、イカの一夜干しです!」
「おおおおおっ! ありがとう~~~」
「まぁた仁美は、みんなに色々買わせてぇ~~~
イカの1夜干しって、今すんごく高いんやでえ?」
「え? でも、ホノカも辛マヨ買ってくれたやんか?」
「それわあ~~~・・・」
「いいんですよ!」
「うんうん! 私も構いませんよ?」
「お、ふふん! ほら! マコもサワサも、ああ言ってるし?
それにサワサは、カネモやで!」
仁美の言う、『カネモ』とは、金持ちの事を言う。
確かにサワサは、魔族ではあるが億万長者である。
「そうかも知れへんけど、まったく・・・他力本願バカ娘めえ」
「なんじゃそりゃ!」
何日か前に、仁美が、『辛子入りマヨネーズを付けて焼いたイカを食べたら上手い!』と言っていたので、みんな買ってきてくれたのだった。
みんな仁美には甘く、アレコレと世話を焼いてくれる。
でも、それでは仁美にとって宜しくないと、ホノカは思っていた。
だからホノカは、皮肉っぽく言うのだった。
「せやけど、和美さんって、なんか仁美の奥さんみたいやね?」
「「ええっ?!」」
「奥さんって、そんなんじゃないですよ」
「じゃあ・・・お母さん?」
「なんでじゃ?!」
「あははっ! だから、そんなんじゃないですって」
「でも和美さん? あんまり仁美を甘やしたらアカンよぉ?
この人、人任せになったら、ホンマに何にもせんよーになるからね!」
「うっ・・・ううむ・・・(汗)」
ホノカにそう言われて、仁美は何も言えなくなってしまう。
だが、和美はそんなホノカにこう言う。
「それでも、いいんです!」
「はあ?! 和美さん、ダメですって!
ホントにこの人って・・・」
「ホノカさん?」
「え!? な、なんですか?」
和美は、急にキリッ!とした面持ちでホノカの側まで来て座ると、真剣な眼差しで話し始める。
「仁美さんは、ご両親を亡くしてから、ずっと1人で頑張って来たんですよ?」
「そんな事、私かて知ってますよ?」
「そうですね! ホノカさん、仁美さんの彼女だった・・・ですものね!」
「そ、そうですよ?」
「でも、その頃の仁美さんは、ホノカさんに頼りっきりでしたか?」
「え? ええと・・・まあ、あの頃の仁美は、確かに頼り甲斐のある人やったけど・・・」
「そうでしょう?」
「あっ! でも、私かていっぱい世話を焼いてましたよ?」
「それはそうでしょうね? 恋人だったんですから」
「!・・・ちょっと、何が言いたいんですか」
ホノカは、ちょっとムッとした顔をする。
「それでもですね、仁美さんの身の回りの世話はホノカさんもしてくれていたでしょうけども、仁美さんにはご両親も居ない、兄弟も居ない、頼れる親戚も居ない、そんな天涯孤独な一人ぼっちだったから、もっと強くなろうと身体を鍛え始めたんだそうですよ」
「それは・・・うん、そっか・・・へえ・・・」
「それは勿論! ホノカさんを守るためでもあったんですよ?」
「?!・・・それはまあ・・・そっか・・・そっか・・・(照)」
「ちょっ! 和美? もう、それくらいにして・・・(恥)」
「いいえ! この際ですから、話しておきましょうよ?」
「この際って・・・」
和美は、仁美がこれまで1人でどんなに頑張って来たかを、ホノカにこんこんと話し続けた。
ホノカも、流石に真剣に聞くようになり、何時しか正座をしてうんうんと和美の話しに相槌を打っていた。
なんだか仁美の方が居た堪れなくなってくる。
また、仁美が昨夜とうとう張っていた気が緩んでしまい、お風呂で卒倒してしまった事も話した。
そして、今の仁美は男ではないし、か弱い1人の女であること。
誰かに支えられても構わない存在であること。
その支える人が自分でありたい事を、和美は話した。
「そっか・・・そっか・・・・・・」
「うわぁ・・・死ぬっ! 恥ずかしくて死ぬぅ!!」
「あははっ 死なないでくださいね?
僕の生き甲斐は、仁美のお世話を焼く事なんですから!」
「「「「ええっ?!」」」」
「そ、それ・・・本気?」
「もちろん!!」
「?!・・・そう」
納得するも、少し面白くなさげなホノカ。
本当はホノカも、仁美の世話をしたいのかも知れない。
「ちょっと! 和美? 生き甲斐って・・・
それって、どういう意味かなあ~~~?」
「そのまんまの意味ですっ!」
「へっ・・・へえ・・・そんなに俺って頼りない?」
「頼りないですね!」
「がああああああ~~~~~~ん!!」
「「あはははははははっ!!」」
「ひっどいなあ~~~(汗)」
「・・・・・・・・・」
和美のそんな言葉を聞いたホノカは、羨ましさと寂しさを感じた。
また、もう自分は仁美に必要とされていない事も。
でもそれは、自分が仁美を裏切ったせいであり、そして今の仁美は女である事もあり、もう仁美を支える人は自分の他にちゃんと居ると言う事も。
揺らぎようもない事実を突き付けられてしまった事に、仁美との間に、どうしようもない分厚い壁がある事に気付いてしまった。
でもホノカは、それなら友人として仁美と関わり合いたいと思った。
「そっか・・・・・・
ほんなら、私と仁美は、友達・・・にもなれやんの?」
「は? 友達やろ?」
「!!・・・そ、そうよな! 私ら友達やんな?」
「なんなん? どーしたホノカ・・・???」
「うぅん! ふふふ
ほんじゃあ、私が一夜干し焼いちゃるわ!」
「あれ? 今、スルメ焼いてんのとちゃうかったっけ?」
「カセットコンロあったはずやろ?」
「ああ、そんなんあったっけ?」
「あるよお! まえに、流し台の下に私が直したんやもん!」
「ああ~~~そう言えば?」
「ふふふ・・・♪」
ホノカは、急にニッコニコになって、キッチンの流し台の下の扉を開けた。
本当に入っていた!
ホノカは、カセットコンロを持って、得意げに仁王立ち!
「ジャジャ~~~ン!! ほおら! あったやろ?」
「おお~~~~~!!」
「「「おおおお~~~!」」」
パチパチパチパチパチパチ!!
「流石は仁美さんの彼女ですね!」
「「元、ね!!」」
「ちょっと、なんで和美さんまで言うん?」
「ああ、いえ・・・(汗)」
「和美さん! 他に仁美の分からへん事があったら、私に聞いてな!」
「えっ?・・・・・・ふふふ はい! そうします!」
「うん! 任して!」
「「「~~~♪」」」
こうして仁美達は、和やかに楽しく食事をとる事ができたのだった。
仁美を巡って、いろいろな人間模様が・・・
なんだかんだと、皆に愛されている仁美でした。




