第79話 「ひとみちゃん⑩『再会』」
仁美のかつての・・・と再会。
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••スーパー松減駐車場••✼••
「さ! ほな、帰ろか?」
「はい ひぃちゃんのベルトOKですか?」
「あいよ~! オーケー!」
「おーけー! しゅっぱぁ~~~つ!」
「あはは! ひぃちゃん可愛い!! 出発進行~~~!」
「はあ~~~い!」
ブルルル・・・
仁美達は、買った物を後部の荷室に積み込むと、帰路へと就く・・・はずだったが、駐車場から道路へ出る所で、前方の車が駐車場出口で停車したまま動かない。
その車は、真っ黒に全塗装され、窓ガラスにもスモークフィルムが貼られ中が全く見えない、古いワンボックスカーだった。
あからさまに怪しさカンストである。
「・・・あれ?」
「うん? どうしたん?」
「前の車、さっきから動かないんですよ」
「そうなんですよ 変ですよねえ?
今は赤信号で車が来ないから出られるはずなのに・・・」
「ううん・・・天ぷらナンバー?」
確かに変だ。
ボディーも窓ガラスも真っ黒だし、ナンバープレートも『天ぷらナンバー』だった。
『天ぷらナンバー』とは、廃車や他所の車のナンバープレートを強引に取り替えた物を言う。
ナンバープレートが、変にボコボコだし錆びてるから解る。
しかも、『和ナンバー』である。
今現在の和歌山陸運発行のナンバーは、『和歌山』となっており、『和』となっているナンバーは、昭和時代の車にしか無いので、かなり古い車のナンバーを取り付けている事を物語る。
確かに車も古いが、ナンバーの古さとは、あまりにも不釣り合いだ。
見るからに怪しい・・・
もう、10分近くは動かない。
マコの車の後ろにも、ゾロゾロと他の車が並び始めている。
赤信号で通行車両はまったく来ないのに、駐車場の出口前で止まったまんまだった。
すると、結局信号が青に変わり、車がビュンビュン走り出し駐車場から出られなくなってしまう。
これを、もう3回も繰り返している。
何をやってるのか? 居眠りか?
カチャッ!
「「?!・・・」」
「ちょっと俺、見てくるわ!」
「え?! 仁美さん?」
「まあ、待ってて! もしかして、居眠りかも知れへんから」
「「・・・・・・」」
仁美は、そう言って車から降りてしまう。
そして、前方で止まったまんまの車の運転席側に立つ。
すると、仁美は声を荒らげ始める。
どうやら運転手と何やら揉めている様子に見える。
仁美は、道路を指差したり、運転手を指差したり、マコの車を指差したりしている。
だが、マコの車は窓を開けてはいるが、車内からでは仁美の会話の内容までは聞き取れずで微かにしか聞こえない。
この時、和美とマコは嫌な予感がしていた。
和美も降りてみようかと思った。
ところが突然!
ひぃちゃんが叫んだのだ!
「仁美ちゃん! 危険!!」
「「ええっ?!」」
ひぃちゃんが、そう叫んだかと思ったら、前方の車の後部座席から2人の男が降りてきて、仁美をその車に無理やり乗せようとしている!
今の仁美は、身長165センチのJKにしか見えないほどに身体が小さい。
だが相手は、身長170センチ以上の野郎ばかり。
女の子1人で、野郎2人相手では、どうやっても抗えない。
和美は慌てて車から降りて、必死に叫ぶしかなかった!
「きゃああああ~~~!! 人攫いよお~~~!!
誰か、助けてええええ~~~!!」
「「「「??!!・・・」」」」
流石に和美の悲鳴にも似た叫び声には多くの人が気付き、何事かと人が集まって来る!
「クソっ!「チッ!」
ドン!
「きゃっ!」
ドテッ!
仁美は、奴らの1人に突き飛ばされ、尻もちをついていた。
バン!バン! キキッ! ブオオオオオオ~~~!!
奴らは、慌てて逃げ去って行った。
仁美は、駐車場の出口の歩道にへたり込んだまま呆けていた。
「仁美さん! 大丈夫ですか!!」
「え? ああ、うん でもアイツ・・・とっかで見たような」
「なんなですかアイツら?」
「ああ、ナンパやろ?
俺を、JKやと思ってたみたいやな・・・
なんか、『どこの高校?』とか聞かれたから
思わず母校の『和歌山機械工高等学校』って言いそうになったわ」
「クスッ!」
「ん?」
「JK・・・ですか ぷっ!」
「な? おい! なんで笑う?」
「あの、全身ムキムキ日サロ黒光りアラサー独身野郎が、今ではJK扱いですか」
「しゃあーないやろう! 女の子になってしもおたんやから!!」
「ほら、さっさと立ってください!
後ろに沢山の車が並んでるんですから、はやく車を動かさないと!」
「ああ、そうやな・・・(汗)」
「みなさん! すみません!
ご迷惑をおかけしましたー!」
「おおー!「いやいやー!「怪我ないかー?」
「いえ、平気です」
皆んな、ずいぶん待たされたはずなのに怒りもせず、仁美を気遣ってくれる。
有り難いことだ。
「大丈夫?「なんなんアイツら?「怪我してない?」
「あははっ なんとか・・・お気遣いありがとうございます!
ほら、行こ!」
「はい!」
バタン!
なんとか、へんなナンパ野郎に拉致されずに済んだ。
他の車の待たされていた人達も、仁美を気遣ってくれた。
だが仁美は、少しは落ち着いたものの、流石に怖かったのかカタカタと震えていた。
••✼••車内••✼••
ブウウウウウウ~~~ン・・・
「仁美さん・・・」
「・・・」
「・・・仁美さん!」
「お!? なんな和美」
「大丈夫ですか?」
「んあ? ああ、うん だいじょぶやよ?」
「でも、震えてましたでしょ?」
「ふるっ・・・そ、そらあ、お前、なあ?
自分より背ぇ高い奴らに捕まえられたらビビるわよそら!」
「仁美さんにでも、怖い人って居るんですね?」
「あのなあ? 誰かて、自分より背ぇ高い奴らに囲まれたら怖いに決まってるやろ!
コッチは、か弱い女の子やで?」
「「へえ~~~」」
「な、なんなよ?(汗)」
「こういう時は、女の子って自覚してるんですね?」
「ふっ・・・ま、まあな(照)」
「だったら、なんで何時も考え無しに突っ走るんですか?」
「あうっ・・・(汗)」
「もう仁美さんには、毎回毎回ハラハラさせられて堪らりませんよ!」
「すんまそん・・・(汗)」
「今の仁美さんは、実年齢は28歳でも、身体は女の子なんですよ?」
「ああ、うん、まあ・・・そうじょな? 身体は女の子やもんな
でも男ん時は、上から見下ろすだけで、みんな逃げてったから、今でもそんな感覚と言うか、その癖が残ってんのかな・・・」
「仁美さん、男の時は背が高かったですもんね」
「おうよ! 不良とか8の字 (ヤクザ)とかの揉め事あっても、ちょいと近寄って見下ろすだけで、みんな逃げよったのに」
「長身の8の字顔のムキムキ筋肉お化けでしたもんね?」
「失礼なっ!! 筋肉お化け言うな!!」
「へえ~~~どんな風だったのか、見てみたかったなあ?」
「マコよ、余計なことを言わんでもええ」
「あ、僕、写真持ってますよ?」
「げっ! マシが?!」
「うそ! ホント?! 見せて! 見せて!」
「アパートに戻ったら、見せてあげますよ」
「やった!」
「おいおい・・・あっ! そう言えばアイツは確か・・・」
「「・・・?」」
仁美達は、こんな話しをしていた。
だが、仁美は笑っていなかった。
なぜなら、さきほど仁美を拉致しようとした奴らの1人に見覚えがあったからだ。
最初は、気付かなかった。
でも、事なきを得て、マコの車に乗り込んだ時に思い出した。
奴は、元カノと連れていた男だった。
もちろん、名前などは知らない。
元カノの浮気相手であり、仁美から彼女を奪った奴でもある。
仁美は、複雑な心境だった。
もう今となっては、元カノの事も、奴の事も、どうでも良い事ではあるが、こうして奴に出会ってしまうと、あの頃の事を思い出してしまうものだ。
仁美が、元カノに『結婚について考えたい』と言われた時、一応は元カノには考え直すようにも説得した。
『結婚について考えたい』という事は、『結婚したくない』と言っているのと同じようなものだからだ。
だが当時、仁美は彼女の決心を覆すことはできなかった。
女々しいとは思うが、仁美は彼女の行動をバイクで追った。
案の定、他に男が居たのだが、その相手こそが奴だった。
元カノを乗せた奴の車は、仁美のアパートから2キロも離れていない山道沿いにあるホテルへと入って行った。
愕然とした。
頭の中が真っ白になった。
バイクから滑り落ちるように、その場に座り込んでしまった。
悲しみや怒りなどではなく、『なんで?』という言葉しか出てこなかった。
だがその頃は、彼女と距離を置いて数ヶ月経っていたので、立ち直りは早かった。
既に、諦めもあったのだろう。
そしてそのまた数ヵ月後に、浮気報告と別れるという電話を受けたのだが、アッサリしたものだった。
仁美は、『そうか 分かった』と、その二言で、彼女との別れを承諾したのだ。
元カノも、仁美があまりにもアッサリと別れを受け入れたものだから、元カノからは少し不服そうな感じも受けたが、仁美はそのまま電話を切ったのだった。
でも当時も、後悔なんてしていなかったし、彼女への想いもスッカリ消えてしまっていたし、今更、元の鞘に収まるなんて事も考えられない。
そんな元カノが、なんとアパートの前で立っていたのだ。
••✼••アパート前••✼••
ブルルルルル・・・
「はい! 到着ぅ~~~あれ?」
「うん? 誰か居る!」
「ん? どした?・・・はあ?! 穂果!」
「「ほのか?!」」
「そ、それ誰です?! ねえ、仁美さん! 誰なんですか!」
「俺の元カノやよ・・・」
「「元カノ?!」」
驚いた!
まさか、仁美のアパートの前で立っていたのは、仁美の元カノの大谷 穂果だったのだ。
マコは、1号室の前に車を止める。
その時仁美は、ホノカについて話した。
和美とマコに、仁美の元カノだという事、そして浮気されて別れた事を簡単に話した。
ホノカは、チラッと仁美達の乗る車に目をやるが、すぐに道路に視線を向ける。
きっと、男の仁美の姿を探しているのだろう。
今の仁美が、まるでJKのような女の子になっているなんて、ホノカが知る由もないはず。
なので、まさかすぐ近くに仁美が居るなんて思いもしない。
仁美は、車から降りると、ホノカをまるで無視するかのように、ひぃちゃんを抱いて2階の仁美の部屋へと向かう。
その様子を見ていたホノカは、唖然・・・
それは仕方ない事である。
仁美の部屋に、見知らぬ少女と幼女が入ったのだから、ホノカにしてみれは、『元カレの部屋に勝手に入って行くなんて何事か』と驚くのは無理もない話し。
ホノカは、慌てて仁美を追いかけるように階段を駆け上がる!
トントントントントンッ・・・
「ちょっ、ちょっと! アンタ、誰?!
ここは、ひと・・・大川さんの部屋のはずやけど?」
「ああ、そうやけど?」
「はあ? ちょっとアンタ、仁美のなんなんよ!!」
「お前こそ、今更何しにココへ来たんや?」
「な、何を訳の解らへんこと言ってんの!!
だから、この部屋は・・・」
「まあ、待てホノカ
先に、この娘を部屋の中に入れるから」
「はあっ?! なん、なんでアンタが私の名前知ってんの?!」
「ええから、ちょっと待てって!
詳しい事は、後で話しちゃるから」
「!・・・???(汗)」
ホノカは、訳が解らない。
怪訝な表情で仁美を見るホノカ。
見知らぬ少女が、元カレの部屋に当たり前かのように入って行くのだから。
そしてその後から次々と、知らない少女達が荷物を待って仁美の部屋に入って行く。
ホノカは、ただただポカーンとするだけだった。
・⋯━☞しばらく経って☜━⋯・
「ほら! 入って来いよ?」
「え?・・・で、でも」
「俺に話しがあるんやろ?」
「ちがっ・・・アンタに話しなんか・・・」
「俺が大川 仁美や!」
「!・・・・・・・・・はあ?」
「ふっ・・・まあ、そんな反応になるんわ当然やな
とにかく入れよ? 話しは、それからや」
「???・・・わかった」
ホノカは、首を傾げながらも、仁美に急かされて部屋に入るのだった。
••✼••アパート仁美の部屋••✼••
パタパタ・・・カタカタ・・・
「それ、ソッチに持ってって!」
「はあい! あと、ホットプレートは?
それと、他にテーブルは無いの?」
「あ、ホットプレートとテーブルは僕の部屋から持って来ますから!」
「はいは~~~い
じゃあ、私の部屋からもテーブルを持って来なきゃね!」
「ひぃちゃんも、お手伝いするう!」
「うーん! んじゃ、キッチンで一緒にしようね~~~」
「わ~~~い!」
「・・・・・・・・・(汗)」
ホノカは、場違いな感じがして、居心地が悪そうだった。
それも仕方ない事。
元カレの仁美の部屋のはずなのに、知らない少女が3人と、幼女がセクセクと何やら用意を忙しげにしている。
そんな中、仁美はホノカを、ちゃぶ台の前に座らせ、仁美はホノカの向かいに座る。
「よっこいしょ! で、何の用なんや?
わざわざ俺の帰りを待ってたんやから、それなりに大事な用事なんやろな?」
「!・・・ねえ、アンタいったい・・・」
「だから、さっきも言うたやろ? 俺が、大川 仁美や!」
「ふざけてんの?
大川 仁美っていう男はねえ、背が高くて筋肉モリモリで・・・」
「だから、俺がそうなんやって!
俺はな、お前と別れた後、昔の仲間らと一緒に飲みに行った時に、『女装役剤』を飲まされて、女になってしもたんや」
「・・・は? え? ちょっと待って?
女装役剤って、今流行りの女に変身する魔法薬?」
「そう! その女装役剤の中でも、1週間女に変身するのんと、3週間女に変身するのんとを2本飲まされてな?
男に戻る前に初潮がきてしもて、身体が女として安定してしもたらしく、結局男には戻れんようになってしもたんや」
「!・・・・・・・・・っはあ~~~?! なにそれ?!
アンタ、アホちゃう?! ホンマに後先何も考えやんと行動するから、そんな事になってしまうんやろ!」
「うっさいなあ! 和美と同じ事を言うな・・・」
「かずみ? かずみって誰よ!」
「ほら! 薄黄色のワンピース着てる娘よ」
「!?・・・」
ホノカは、和美をジロリの睨む。
和美は、冷や汗をかくが、気にしない振りをしてパタパタと作業を続ける。
「あ、言うとっけどな、あの娘も前は男やったんやぞ?」
「ええっ?! うそお!! 男お?!」
「それと、もう1人の背の小っちゃいメガネの三つ編みの娘も、前は男やったんやよ」
「っはあ~~~?! 仁美? アンタ、そんな趣味あったん?!」
「アホ言えっ!! 落ち着け!
皆んな、それぞれ訳あって、女に変身してしもたんや
あ、いや、1人は何か違うか・・・まあ、訳は今はええか」
「ちょっと仁美さん! 僕の事を話すんなら、ちゃんと説明してください!!」
「あははっ すまんすまん!(汗)」
「・・・(汗)」
仁美は、仁美、和美、マコが男から女になった経緯を事細かくホノカに話した。
ホノカは、信じられないといった様子だったが、仁美の生い立ちや、生年月日や、これまでの経緯を聞かされて、その他にも仁美とホノカしか知らない事柄も話すのだから、信じざるを得なかった。
かなり、複雑であり、驚く事ばかりだったが、今度はホノカが仁美に逢いに来た訳を話し始めた。
「私・・・騙されてたんよ」
「はっ・・・まあ、そんな事やろうとは思ってたけど?」
「え? なんで? なんで解ってたような事を言うん?」
「だって、お前が結婚するって言うてた奴と、今日会ったばっかりやもん!」
「えええっ?! アキラと会ったん?!」
「ふうん・・・アイツ、アキラって名前か
まあ、今更アイツの事なんて、っっっどお━━━でもええけどな!」
「ちょっと待って! 何があったん?!」
「おう! まあ、とんでもなくワルやなアイツ!!
救いよう無いアホボケカスのゴミやわ!!
アイツ、今日俺が買い物から帰る時に、俺を拉致しようとしたんやぞ」
「はあい?! 何それ!!」
「「・・・(汗)」」
仁美は、今日の買い物の帰りに遭った事を話した。
そして、奴を以前にもホノカと会っていたのを見た話しも。
その後のホノカの話しでは、アキラには結婚詐欺に遭ったそうだ。
ホノカは、俯いてバツの悪そうな様子だった。
そりゃそうだ。
浮気相手が遊び人で、しかも結婚詐欺だなんて。
笑い話しにして、笑って捨てる事すら難しい話しだ。
しかし、どんな理由にせよ、ホノカは仁美を裏切ったのは、どう転んでも訂正も修正も後戻りもできない事実である。
ただ仁美には、金銭的な被害などが無かったのは幸いか。
ホノカはアキラから、200万円の被害に遭ったらしいが。
そんな話しを聞かされても、仁美にはどうする事もできないし、助けてやれる話しでもない。
「そうか・・・それは辛かったな」
「う、うん・・・」
「でも、俺には、どうする事もできへんぞ?
だいたい裏切ったのはお前なんやし、金の話しも俺には筋違いってもんや
それに今更、よりを戻そうとか・・・」
「そんな事は考えてへん!
ただ、仁美に謝りたかった・・・から・・・すんすん(泣)」
「・・・・・・(汗)」
「「・・・・・・・・・(汗)」」
仁美は、それ以上は何も言えなかった。
もちろん、結婚詐欺に遭ったと、警察に被害届などは提出したらしいが、奴を捕まえるのは難しいらしい。
まず、偽名である事。潜りである事。極めつけが、『お金は返さなくても良い』とホノカが言ってしまった事だ。
馬鹿な話しだが、どうせ結婚するのだから、お金は返さなくても良いと念書を書いてしまったらしい。
また、今思い出してみると、その念書には、『結婚』の文字はひと言も書いていなかったらしい。
それに、『結婚したい』と言っていたのはホノカの方で、自称アキラは『うん』と言っていただけで、『結婚』の『け』の字も言ってはいなかったとか。
お金も、『200万円ちょうだい!』と言われただけで、ホノカは自称アキラと結婚するものだと思い込んでいたので、二つ返事で、ホイホイと出してしまったらしい。
後々考えて、あれ?とは思ったホノカだったが、惚れた方が負けである。
念書にも法的な拘束力は無いらしいが、ひと言でも『結婚』の文字が書かれていたなら、すこしは光が見えたのに。
後先考えない馬鹿とは、仁美には言えないホノカだった。
「すん・・・すん・・・私・・・ホンマにアホやな・・・」
「はあ━━━~~~・・・(沈)」
裏切られたとは言え、元カノのこんな顔を見てしまうと、つい何とかしてあげたくなる。
でも、今の女になってしまった仁美には、何もしてあげられる事なんて無かった。
よりを戻す事すら無理だ。たとえ男だったとしても、そんなつもりは、さらさら無いが。
「すまんな・・・今の俺には、ホノカに何もしてあげられやん」
「うぅん そんなつもりで来たんじゃないから
ホンマに謝りたかっただけやから・・・」
「・・・そっか」
「・・・うん」
あうう・・・辛い!
何もしてあげられらないのがマジ辛い。
でも、ホノカを騙したあのアホ野郎の顔は覚えた!
とは言え、何処の誰かも知らないし、ホノカの話しからして、遊び人の奴とまた接触できるかと言えば可能性はかなり低い。
なにせ、何時も何処に居るのかも分からないし、誰と連んでるかも分からないし、連絡手段も無し。
姿形は分かっていても、何時何処に行けば捕まえられるか分からないなんて、まったく、ツチノコみたいな奴だな。
でも、仁美達は魔法使いだ。
何かしら方法があるはずだ。
なんて考えたいた時だった!
シュパァン!
「うわっ!!「きゃあっ!」
「「?!・・・リオリオさん!!」」
「よお! バカ娘達! 悩み事かえ?」
またまた突然、リオリオが現れた!!
まったく神出鬼没ではあるが、頼りになる人だ。
こうして仁美が困ってる時には、必ず来てくれる。
「え?⋯あ⋯あっ! はいっ!!」
「え? え? なになに?! いきなり現れた?!」
「話しは聞かせてもらったわえ」
「ええっ?!」
「聞いてたんかえ!!」
「当たり前じゃバカ娘! お前は私が魔法使いにしてやったんじゃ!
それはつまり、お前は私の眷属なんじゃ!
お前の魔力が不安定になると、私までソワソワしてしまうんじゃぞ?
聞きたくなくても、聞いてしまうわえ!!」
「?!・・・」
・・・怖っ!!
まさか仁美達が、リオリオの眷属だったとは!
しかし、こうやって助けてくれるのだから、頼らよない事もない。
今では仁美にとってのリオリオとは、ピンチの時には助けてくれる『母親』のような存在でもあった。
「そ・・・そうなんか? それは、どうも・・・(汗)」
「まあ、私に任せておけ! 悪いようにはせんから」
「「はあい?」」
「でも、金は戻って来るとは、思うなよ?
騙された、お前さんも悪いんじゃからな?」
「それは・・・はい 解ってます」
「ほな、行ってくる!」
フッ!・・・
「「えっ?・・・」」
そう言って、リオリオは姿を消した!
いったい、なんだったのか?
でも、『私に任せておけ』と言っていたから、きっとホノカを騙したアッポケ野郎を懲らしめてくれるのだろうと思う。
・⋯━☞約数分後☜━⋯・
••✼••顔王石鹸工場前築港直線道路••✼••
リオリオが転移したのは、和歌山顔王石鹸工場前築港直線道路だった。
ブォオオオオオオオオオ~~~!!
「いええええ━━━いっ!」
「ひょおおお~~~!!」
「いけええええ~~~!!」
ホノカを騙して200万円を奪ったと言う自称アキラというクソバカアホ野郎は、築港の直線道路で、あの真っ黒のワンボックスカーで、時速100キロを超えるスピードで走っていた。
そして、そろそろカーブに差し掛かり、スピードを落とさなければならない時!
目の前に、突然何かが現れた!
それは、リオリオだった!
だが、自称アキラ達は、自分達が何を見ているのか理解できない!
リオリオは、自称アキラ達の思考と車を急停車させて、エンジンを止めて、魔法で自称アキラ達を眠らせた。
そして、自称アキラに、『女装役剤1year』を飲ませたのだ。
自称アキラの身体は女へと変身!
しばらくして、自称アキラ達は目を覚ますが・・・
血の気が多く、女に飢えた野郎達の前で女になった自称アキラが、これからどんな目に遭うかは火を見るより明らか。
後のことは、リオリオには知った事ではない。
リオリオは、『仲良くやれよ!』と言って去ったのだった。
・⋯━☞夕方☜━⋯・
••✼••アパート仁美の部屋••✼••
シュパァン!
「「「「おおっ!!」」」」
「リオリオさん! お帰りなさい!」
「うむ なんじゃ、お好み焼きか?」
「「「はい!」」」
「私も、頂くことになって・・・」
「そうかそうか! あ、奴は今頃仲間達に泣かされてる頃じゃろうな?
それとも、泣いて喜んでるのか・・・
まあ、私の知った事じゃないがな!」
「「「うわぁ~~~(引)」」」
リオリオは、晴蘭達やチヒロ達すら見た事のないような、いや、見せられないような、悪い顔をして笑った。
大人の世界のリオリオと言う事なのだろうか・・・
「り、リオリオさん? アイツに何をしたんですか?」
「ふふん 聞きたいか?」
リオリオは、不敵な笑みを浮かべた。
仁美と和美とマコは、リオリオの笑顔にゾッとした。
「い、いや、別に知りなくないっす」
「うむ それが良いじゃろう
では、私もご相伴にあずかろうかな?」
「えええっ?! ホノカだけでなく、リオリオさんも?
俺の分がまた減るやないですかあ!」
「まあ、ええじゃろがえ?
バカ娘の代わりに、動いてやったんじゃから!」
「ぐぬぬぬ・・・しゃあないなぁもお・・・(汗)」
じゅうじゅう~~~
「あれ? 豚足は?」
「買ってませんよ、そんなもの!」
「ええっ?! 豚足買わんかったぁん?! なんでぇ!!」
「なんでって、その代わり唐揚げを買ってあげたじゃないですかあ~~~」
「ええええ~~~ん?! 豚足ぅ~~~(泣)」
「ほな、牛脂は?」
「だから、買ってませんってばあ!
そもそも牛脂って、焼肉の油の代わりに使うものですからね!
焼肉の味が良くなるとかなんとか・・・」
「ほらあ! お好み焼きも美味しくなるかも知れへんやーん!
なんで買わへんのお!! 俺、欲しい言うたよねえ?」
「いい加減にしてくださあい!
そんな油っこいものばかり食べていると、太りますよ?」
「あ、和美、お前知らんのやろ?」
「何をですか?」
「魔法使いと言うものはなあ、どんなに食べても太らへんのじゃよ!」
「「「ええっ!! 本当に?!」」」
「そっ! 摂りすぎたカロリーは、魔力に変換されるのでーす!」
「ええっ?! リオリオさん! それ、本当ですか?!」
「そうじゃな! あむあむ・・・美味い!」
「えええ~~~!! 私も魔法使いになりたあい!!」
「何ゆってんのホノカ!? 正気かお前!!」
「なんよお! 私が魔法使いになったら、アカンってゆうん?」
「それわあ・・・なんやその・・・(汗)」
「リオリオさん! 魔法使いは、摂りすぎたカロリーが魔力に変換されるって本当ですか?!」
「そうじゃよ? なんやバカ娘の妹分(和美)、知らんかったんかえ?」
「誰がバカ娘の妹分ですか!!
ってか、なんでそれを先に言わないんですかあ仁美さあん!!」
「お前が悪ぃ~~~んじゃ! んべぇ~~~だっ!」
「仁美、また油っこいもん食べてんの?」
「ああっ! ホノカは知らんのやろ?
豚足とか牛脂にはなあ、美味! 健康! 美容! と、三拍子揃っててとてもええもんなんじゃよ!
特に牛脂はな、食べた次の日には、お肌がペッカペカのプニップニになるんやぞお?」
「和美さん! なんで牛脂買って来んかったん?!」
「ホノカさんまで、それ言いますう?!」
「「「「あはははははははっ!!」」」」
「ひぃちゃんも、ぎうし食べるぅ~~~」
「「「「やめておきなさい!」」」」
「えええ~~~なんでえ~~~?」
「あるるえぇえええ~~~?
自分は食べたいって言ってるくせに、ひぃちゃんには食べさせないんですかあ?」
「そりゃあまあ、なあ? お前・・・
こ、子供には牛脂はよろしくないやろ?」
「「大人でもダメですよお!!」」
「ぅええええええ~~~?!(泣)」
「あはははははははっ!!」
「ホノカ、笑いすぎ・・・(怒)」
楽しい、お好み焼きパーティーだった。
仁美とホノカ。
結局この2人は、どうなるんでしょうね?