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女装剤  作者: 嬉々ゆう
67/91

第66話 「ガンバレ!カイセイ!②」

男カイセイ!

決めます! 決めてみせます!

この想い、必ず伝えます!

愛しの愛しの可愛いあの娘に・・・


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。




・⋯━☞12月24日の夜☜━⋯・



••✼••チヒロ宅リビング••✼••



「「「「「メリークリスマース!」」」」」


 パパパパァーン!!


「「「「「いえ~~~い!!」」」」」


 パチパチパチパチパチパチ!



 イブにチヒロ宅で、ユキナとユキナの両親とカイセイを呼んで、クリスマスパーティーを開いた。

 チヒロとユキナは三角帽子を被り、カイセイはヒゲおじさんの仮装マスクを着け、クラッカーを弾くと、久しぶりにクリスマス気分を味わえた。

 3台並べられたテーブルの上には、山盛りになった鳥の唐揚げや、山盛りになったポテトサラダに、各席には骨付きもも肉、特大のオムライスに、ハンバーグに、ミートボールに、特大ピザに、クリスマスケーキに、チヒロとユキナの両親はビールで、チヒロ達はコーラ!


 あれ? シャンパンはと思った?・・・無し!


 なぜならコーラは、チヒロの強い希望によるもの。

 だってチヒロは、シャンパンがあまり好きじゃないから。

 


『だぁって、甘くないし?』



 みんなシャンパンの栓を、ポーン!と飛ばしたかったらしいが、チヒロがコーラを押し通した!

 なんだかんだと、みんなチヒロには甘かった。

 だがチヒロは、子供用のシャンパンは甘いのだとは知らなかった。


 

『とにかく、太りそうなものばかり!

 超~~~カロリ━━━っ!!

 そう! カロリーは美味いのれすぅ!!

 ってか、こんなに食えるのか?』



 ってな疑問は楽しい雰囲気で有耶無耶に。


 去年まではクリスマスなんて祝った事など一度もなかった。

 なにせ、クリスマスケーキなんて、保育園の頃に食べた記憶しかない。

 それに、クローン病の発症が発覚してからと言うもの、甘いものや油っこいものは、ほとんど食べられなかったから。

 だが今回チヒロの両親は、チヒロの病気が完治したのと、チヒロが女の子になった事もあり、クリスマスパーティーを開きたかったとのこと。

 チヒロの両親は、どうやらチヒロが女の子になった事を喜んでいるようだ。

 特に母親叶は、女の子が欲しかったんだとか。

 だが、チヒロの後は子供ができず、女の子を諦めていた時に、チヒロが『難病のクローン病』を治すために『女装役剤』を飲んで女の子に変身したものだから大喜び!

 父親虎雄も、嫁の叶が喜ぶものだから、これで良かったと思っている。

 そのため、来年の夏にはチヒロが男の子へ戻ってしまう事を、両親はとても残念に思っていた。

 なので、来年の夏までには、お金を貯めて、良子から『女装役剤』を買うつもりでいたのだった。


 また、カイセイも同じ気持ちだった。

 

 カイセイは、今の女の子のチヒロに熱烈に恋している。

 女の子になってもカイセイに対して態度も何も変わらないチヒロは、時々油断して半裸でカイセイの前に飛び出してしまう事もあるが、そんなチヒロもカイセイは大好きだった。

 だからカイセイは、チヒロが男に戻る事を酷く残念に思っているのだ。

 だからこそ、チヒロが女の子のうちに、自分の気持ちを伝えたかったのだ。

 もしチヒロがカイセイの気持ちを受け入れたなら、たとえチヒロが男に戻る事になったとしても、また『女装役剤』を飲んで女の子になると考えたのだ。



『今日こそは、チヒロちゃんに告白するぞ!!』



 そう意気込むカイセイだったが・・・




 ガチャン! バシャッ!


「「「「ああああ~~~!!」」」」


「うわっちゃ! ごっめぇ~~~ん(汗)」



 チヒロは、ついついはしゃぎ過ぎて、テーブルの上のコーラがなみなみと入ったコップをひっくり返してしまった!

 なのでチヒロの上着とスカートにまでコーラでベトベトに。



「ああーもー! 何をやってんのよチヒロー!」


「アッポケ!」


「ごめんごめん やってもたぁ~~~(汗)」


「「・・・」」


「ほら! はよぉ着替えて来なぁ!」


「ぅう━━━っす!」


「ここは、私が拭いとくから!」


「すんましぇ~~~ん!」


 パタパタぱパタパタ・・・


「「「「?!・・・」」」」



 チヒロは何を思ったのか、みんなの前で恥じらうこともなく服を脱ぎ始めた。


 手早にパタパタと上着を脱ぎ、ポイ!

 シャツを脱ぎ、ポイ!

 ブラを外し、ポイ!

 スカートと靴下を抜いで、ポイポイ!



「うわっ! パンツまで濡れてもたわぁ!」


「「「「ええっ?!」」」」



 流石にショーツには手をかけなかったが。


 すると・・・



「ち、チヒロちゃん! ちょっ・・・(焦)」

 慌てて手で目を隠し背を向けるカイセイ。


「はぁん? なんなよ?」


「こらっ! チヒロっ!! 何やってんの!?

 なんでこんな所で服脱ぐの!!」


「え?・・・」


「チヒロのアッポケぇ!!」


「はあ?・・・」


「おぃおぃ・・・チヒロお前、女の子って忘れてないか?」


「はあ~~~ん?・・・」


 パタパタパタ・・・



 結局チヒロは、パンイチにまでなってしまっていた。

 小さい頃からユキナやユキナの両親とも付き合いのあるチヒロには、たとえ全裸でも平気だったし、なんちゃ珍しい事ではなかった。

 なにせユキナとは、男の子の頃から一緒に風呂にも入る裸の付き合いと言っても過言では無い。

 チヒロにとっては、この面子(めんつ)の前で全裸で居たとしても、今更な話しである。

 だが、今日はカイセイも居る。

 でもチヒロは、たとえカイセイに裸を見られたって恥ずかしいなんて思わなかった。

 それだけチヒロにとってカイセイは、心許せる相手だと言えるのだ。

 そしてチヒロは、脱いだ服をクルクルと丸めて、洗濯場へ・・・


 

 トットットットット・・・


「「「「・・・・・・・・・(汗)」」」」



 そんな様子のチヒロを目で追う両親とユキナ。

 手の指の間から、チヒロをチラ見するカイセイ。

 

 しばらく経って、突然ドタバタとチヒロの走る足音がしたと思ったら・・・



 ドタドタドタドタ!!


「「「「?!・・・」」」」


「しもたっ!! 着替え持ってくんの忘れてた!!」


「うをわあ━━━!! チヒロちゃん真っ裸?!」


「こらあ━━━っ!! チヒロ━━━っ!!」


「いやあ!! アッポケ━━━っ!!」


「ばっ・・・バッカやなぁ~~~(汗)」


 ドタバタドタバタッ!!



 チヒロは、真っ裸のまんまリビングを走り抜けると、自室に入って着替えを掴み、またリビングを着替えを掴んだ真っ裸のまんまで走り抜けようとする!!



 ドタドタドタドタッ!!


「こっ、こらあ━━━っ!!

 なんで部屋で服着てけーへんのお?!」


「え?」


 ドタタッ!



 リビングのど真ん中で急停止するチヒロ。

 丸裸で着替えを胸の前で丸めて持つので、下まで丸見えである。

 カイセイにとっては、特別出血大サービスである。

 もちろんチヒロには、そんな意図などはない。



「あっ! そっか・・・確かに・・・」


「ちょっ、ちょっ、ちょっとチヒロちゃあん!!」



 チヒロは、持っていた服をバサッと床に落とすと、シャツを拾って裏表を確認している。



「はりゃ? これ・・・男もんのシャツやな?」


「チヒロちゃんってぇ!!」


「はん? なんなカイセイ?」


「は、はやくぅ! はやく服き着てぇ! ってか隠してぇ!」


「あ、うん そーやな?

 ってか、別にお前に裸見られても、俺は恥ずかしくないぞ?」


「ちょっ! ええええっ?!」

 

「「「「・・・・・・・・・?!」」」」


 パタパタパタ・・・



 チヒロは、わざわざ服を自室から持って来たはいいが、恥ずかしげもなく、リビングで服を着始めた。

 チヒロにとっては、『服を着ろ』と言われたので、ただ服を着てるだけである。

 他になんちゃなく、他意はない。

 だがチヒロは、先にショーツを穿かずに、シャツを着る。

 ただそのシャツは、何処から引っ張り出して来たのか、チヒロが男だった頃のシャツだった。

 今の女の子のチヒロには大きすぎるシャツでは、下が見えそうで見えないという、シャツ1の姿がまた、エロく色っぽく見えてしまう。



「チヒロ━━━っ!! アホかアンタわ人前でぇ━━━っ!!」


 パチィ━━━ンッ!!


「きゃん!!」



 堪らず母親叶は、チヒロのお尻に大手振りの平手打ち!!

 バチーン!と乾いた音がリビングに響き渡り、チヒロは着替えをばら蒔いてすっ転び、お尻を抑えてヒンヒン泣いていた。



「いたぁ~~~いん! なんなんよぉ~~~(泣)」


「バカにも程があるわあ━━━っ!!」


「そーよアッポケ━━━っ!!」


「まったく・・・これが本当に年頃の女の子かね?」


「チヒロちゃん・・・(照)」



 ってな具合で、心許す人前では家族以外であっても、丸裸でもまったく恥じらいを見せないのが、それがまた、たまに傷・・・

 ほとんど病気・・・いや、もう病気かも?

 ところが、カイセイに異変が・・・



「カイセイ君、ごめんなぁ?

 アイツ、今でも男の頃の気分のままで・・・」


「うぷっ・・・ぐふっ・・・」


「へっ?! カイセイ君?

 って、うわああああ━━━っ!!

 おかあ━━━ちゃん! 大変やあ━━━っ!!」



 チヒロの父親虎雄は、カイセイの顔を見て尻餅を付くほど驚いた!

 なんとカイセイは、両手で鼻と口を抑えていたのだが、手の指の間から血がダラダラと流れ落ちていたのだった!

 


 ポタポタポタ・・・


「おかぁ━━━ちゃあ━━━ん!!

 はやくはやぁーく! カイセイ君がぁ━━━っ!!」


 バタバタバタバタッ!


「ええっ!! 今度はなに?! あっ!・・・」


「カイセイ君、鼻血ブーやっ!」


「うっ・・・うぷっ・・・ゔゔゔ・・・」

 ポタポタポタ・・・


「いやあああああああ~~~カイセイくぅん!?」



 カイセイの鼻血を見て、両手を挙げて驚くチヒロの母親叶。

 すると他のみんなもカイセイの傍に慌てて駆け寄ってくる!



「きゃあ!! カイセイ!!」

 同じく両手を挙げて驚くユキナ。


「うをわああっ! 特別出血大サービスや!!」

 指を差して変なことを叫ぶユキナの父親達彦、


「ナンタ、何を訳の解らん事 ()ってんのお!!」

 ティッシュ箱を持って旦那に向かって怒るユキナの母親萌。


「あ、いやあ、すまん・・・(汗)」

 シュン太郎になるユキナの父親達彦。


「だいじょぶ? ほら・・・」

 カイセイを介抱するように背中を摩るユキナ。


「ティッシュ! ティッシュ!」

 大量のティッシュを引き出して、カイセイの処置をするチヒロの母親叶。


「ゔゔゔゔゔ・・・」


「だいじょぶかぁ? カイセイ・・・」



 騒ぎを聞きつけ、チヒロもカイセイを気遣って声を掛けるが、チヒロはまだシャツ1の格好のまんまだった。

 チヒロは、カイセイのすぐ横に正座をするように座り、カイセイの背中に手をそっと乗せる。

 シャツ1姿のチヒロの座る姿は、チヒロの艶かしいボディラインがクッキリ見えて、背中から腰にかけてS字に反り、その姿がまた短めの白いワンピースを着た清楚系女子に見えてこの上なく色っぽく、今の女の子のチヒロには大き過ぎるメンズのシャツでは、大きく開いた首元からチラ見するチヒロの乳房とピンク色の乳輪が、更にカイセイを性的に興奮させてしまった!

 そして、『はっ! いかん!いかん!』と思い目を反らすが、チヒロの甘く良い香りがまた、更に更にカイセイを性的に興奮させてしまい、やっと止まりかけた鼻血がまた噴出!

 またそんなチヒロの無防備な姿を間近で見たカイセイは・・・



「ふんごぉ?!」


 ブハッ!!


「え?!・・・」


 パターン!


「「カイセイ━━━っ!!」」


「「「あああああっ! カイセイ君?!」」」



 カイセイは、チヒロに想いを伝えるところではなかった。

 チヒロの丸裸を凝視してしまい、まるで漫画のように鼻血をブー!っと吐き出して、それはもうみんな大慌て!

 ユキナの両親までパニクって、何を言ってるのか自分でも解らなくなるのだった。

 カイセイは、出血のせいか頭がクラクラするなか、女性陣に介抱されている間も、チヒロが裸で動き回る様子がVTRの様に頭の中で『お分かり頂けただろうか?』ばりに何度もリピート再生され、性的興奮度が限界を迎えそうなそんな時に、あろう事かチヒロが無防備な姿でカイセイの横に座ったもんだから、カイセイは裸よりもエロチックなシャツ1姿のチヒロを見て、更に性的興奮度が爆上がりして、とうとうカイセイの性的興奮度はカンストどころか限界突破してしまい、カイセイの思考回路はブラックアウトしてしまい、卒倒してしまったのだった!

 血まみれになって倒れたカイセイの様子は、まるで殺人事件現場のようだった。

 するとチヒロは、その場を和まそうと思って、ふざけた発言をしてしまう。



「まさに! ブラッディーカイセイ? にゃははははっ!」


「アッポケェ!!」


 パカン!


「あだあっ!!」



 すかさずユキナのグーパンがチヒロの頭に炸裂!

 痛い頭を擦りながら、ユキナに抗議するチヒロだが・・・




「いやあーもおー!! 痛いってよもぉ~~~(泣)

 なんで今ので叩かれやなアカンのなよぉ~~~?

 俺がなんかユキナの気に触るようなこと言うたかあ?!」


「はぁ━━━っ?! 本気で()ってんのお?!

 誰のせいで、こんな惨状になってると思ってんのよぉ!!」


「はああ━━━っ?! 俺のせいって言うんかぇ!?」


「「「当たり前やろ━━━っ!!」」」


「きゃあっ・・・(汗)」


「純情なカイセイ君の男心を弄んでこの()わぁ!!」


「弄ぶって、なんなよ!! 変な言い方せんといてくれ!!」


「ホンマにカイセイの男心を弄んでるやんかぁ━━━っ!!」


「俺の何処がカイセイの男心を弄んだっちゅーんなよ!!」


「はあん?! 弄んだやんかぁ━━━っ!!

 裸で走り回るわ! そんな無防備な格好でカイセイの身体に密着するわで!

 ほん━━━まに、嫌らしわあ~~~!! この痴女っ!!

 チヒロはサキュバスか! このアッポケ!!」


「はぁっ?! サキュバスぅ? 男心ぉ? 訳ワカメじゃ!

 痴女とわなんな!! 痴女とわあっ!!

 まったく心外やなぁ! 弄ぶやなんて趣味ないわい!

 だいたい、俺みたいな男女(おとこおんな)の裸なんか、誰得なんじゃよ!」


「アッポケ!! ホンマに少しは女の子って自覚持ちなぁよ!」


「はん? まあ~~~た、それ言うんかえ?

 今の俺の身体は女の子って、ちゃんと理解してるわあ!

 せやけど、ユキナは何かと言うと何時も俺に、女の子~~~女の子~~~って言うけどやなぁ?

 だいたい俺は、あと何ヶ月かで男にもど・・・」


「「「んんっ?!(怒)」」」



 チヒロの母親叶と、ユキナと、ユキナの母親萌は、チヒロの顔に迫るように怒る顔を幅寄せる!



「きゃあ!(焦) な、と、チッ! ああ~~~もぉ~~~!

 はいはい! とぅいまてんでしたぁ~~~

 どうせカイセイがぶっ倒れたのは、こんな可愛い可愛い女の子の私のせいですよぉ~~~っだ!!」


「「「そお━━━よお━━━っ!!」」」


「ひいっ!! な、なんでなよぉ~~~俺ばっかり~~~

 えうう~~~ふん! すん・・・すん・・・(泣)」


「チヒロ?!「チヒロちゃん?!「アッポケ!!」


「ひゃあ?! なんか解らんけど、ごめんなさぁ~~~い(泣)」



 こんな事が起きてもチヒロには、カイセイに性的に興奮させて卒倒させてしまった自覚は、まったく無いのだった。

 結局は今日もカイセイは、チヒロに告白する機会を逃してしまうのだった・・・



「ほらチヒロっ! 何時まで、そんな格好してんの!

 はよお、服着なあ!!

 ほん~~~まに、情けない()やなあ!」


「はぅ・・・すん・・・すん・・・(泣)」


 パタパタ・・・



 チヒロは、なぜ怒られたのか理解できないまま、すんすんと泣きながら服を着るのだった。




・⋯━☞12月29日☜━⋯・



••✼••チヒロ宅大掃除••✼••


••✼••チヒロ宅自室••✼••



 チヒロは、創造魔法で部屋を綺麗にしようと思ったが、なかなか上手くいかない・・・

 そうなのだ。

 魔法で部屋を綺麗に・・・とは言っても、ホコリなどは取り除けても、散らばったゲームやCDに、家具や小物などを整理整頓するには、なかなか細かな指示が必要である。

 結局は、自分の手で片付けることに。




••✼••チヒロ宅リビング••✼••



 母親叶は、キッチンの食器などを、一つ一つ綺麗に拭いている。

 父親虎雄は、新聞紙や広告紙を集めて、紐で縛っている。




「チヒロー! キッチンのタイルを綺麗にしてー!」


「うぃ━━━っす!」



 チヒロは、今度こそは魔法で!

 と、キッチンの壁のタイルを綺麗になるようにと頑張る!

 何でも魔法でやっつけようとするのは、少しでも魔法が上手く使えるようになるためと言う、チヒロの『自己弁護』である。

 それはただ、普通に手を使って掃除をするのが、面倒で疲れるから嫌なだけである。



 キッチンに向かうと、タイルの壁には黄色い油汚れのようなものが、まるで垂れたペンキのようになっている。

 これがまた、こびり付いて固くなり落ちないのだ。

 これまで、『重曹』を使ったり、漂白剤を使ったり、ドライヤーで温めたりしたが、どれもこれも上手くいかなかった。

 テレビなどで紹介それていた掃除方法だが、あれは絶対に嘘だ。

 綺麗になった試しがない。

 なら! 魔法しかないでしょう!(自己弁護)



「油汚れを分解して、一つのボール状にに固めて・・・」


 ポン! コロコロ・・・


「おほほっ! 大成功~~~♪」



 チヒロが魔法を発動させると、タイルの油汚れがビー玉のようなオレンジ色の塊になり転がった。

 なんと! 油汚れでドロドロだったキッチンのタイル壁は、まるで新築のようにピッカピカに!

 チヒロの雑用無詠唱魔法だが、ぶっつけ本番で大成功!


 その調子で、お風呂、トイレ、洗濯場、洗面所、洗濯機、クーラー、などなど。

 本当に綺麗になりますぃたあ~~~♪


 チヒロは、両親に褒められ、5000円のお小遣いをゲット!



「いぇ━━━いっ! 5000円ゲットだずぇい!!」



 と、喜んでいたのも、つかの間・・・。



「チヒロ! お小遣いの前借りしてた5000円返してな!」


「っっっはあ━━━?!」


「ほら! 10月31日に、ユキナちゃんとピヨンモールに行くってゆーから、その時貸したったやろ?」


「んがあああああ━━━━━━ん!!!!」



 チヒロの今の財布の中は、たったの100円玉ひとつ・・・



「いやあああああ~~~ん!

 今日日(きょうび)、100円らで缶コーヒーすら買えやんやぁ~~~ん!!

 ケチぃ━━━っ! 鬼ぃ━━━っ! 鬼ババァ━━━っ!!」


「んきぃ~~~! うっさい!!」


 パチィ━━━ン!!


「ぎゃん!!」



 鬼のような形相の母親叶の攻撃!!  

 

 母親叶は右手を高々と挙げながら腰をクルリとひねり、野模英雄の『トルネード投法』バリの大振り平手打ちが、チヒロのお尻にクリーンヒット!!

 チヒロは、25ポイントのダメージを受けた!



「ひぃえぇえぇえぇ~~~ん! 痛い痛いっ(泣)」


「誰が鬼ババァよお! 元はと言えば、チヒロが・・・あっ」


 ポトトトトトト・・・



 チヒロは、怒った母親叶への恐怖と、強烈なお尻の痛さに、堪らず失禁・・・

 


「あああっ! あらららら・・・(汗)」


「ふぃやあああああ~~~ん!! ふええええ~~~ん!」


「んもぉ! しゃあない()やなぁ~もぉ~~!

 余計な仕事増やしてからにホンマにもぉ~~~(汗)」


 パタパタパタパタ・・・



 母親叶は、バケツと雑巾を持って来て、黙々とチヒロのお漏らしの処理をする。

 それが終わると泣き続けるチヒロの手を引いて、チヒロを風呂場へ誘う。

 チヒロは、悲しくて情けなくて、すんすんと泣きながら、シャワーを浴びるのだった。


 結局、チヒロの財布に入った5000円札は、ほんの数秒で出てい行きましたとさ。

 しかもその5000円札は、確か新札だった。

 嬉しさ余って悲しさ100倍・・・ってか。

 珍しく年末の大掃除を頑張ったのに、5000円はオジャンになるわ、お尻は引っぱたかれるわ、オシッコはチビってしまうわで、散々な目に遭った。


 ・・・なんて日だ!


 この日、カイセイから電話があったが、チヒロが電話に出ることはなかった。


 可哀想なカイセイ・・・。




・⋯━☞12月30日☜━⋯・



••✼••チヒロ宅キッチン••✼••



 チヒロの家族は、あまり御節(おせち)料理たるものに興味がない。

 御節とは、とても品数が多く見た目的には楽しめるが、五月女家にとっては、それほど美味しいと思える品は少なく、しかもかなりの高カロリーときたもんだ。


 でも今回は、テレビ通販の御節を初めて注文。


 チヒロの難病クローン病が完治したお祝いを兼ねて、御節をやっつけてみよう!と、ちと冒険してみたんだと。

 1番安いタイプだったので、それほど期待してはいなかったが、届いた実物を見て予想以上にお粗末過ぎて唖然・・・

 1品ずつ真空パックされていて、それらを重箱に似せられたプラスチック容器に盛り付けるのだが・・・



「・・・おかーちゃん、何これ?」


「・・・おせち・・・なんやろ?」


「・・・・・・これが?」


「・・・・・・・・・たぶん」


「でも、テレビで観たのんと、なんか違えへん?」


「・・・・・・ですよねぇ~~~(汗)」


「これで1万円って、詐欺ってない?」


「・・・ホンマやね」


「これやったら、スーパーオーコワで、5000円の寿司セットを買った方が絶対にもっとマシやったと思うで!」


「それ言わんといてよ・・・泣きたくなるから・・・」


「んんん・・・ごめん(汗)

 せやけど、テレビで紹介するもんは、実際のもんよりも、マシマシってホンマやったんやね?」


「1万円やから、こんな程度・・・なんちゃう?」


「なるほど・・・」


「もっと高いヤツやったら、もちょっとマシやったとか?」


「・・・ですよねぇ~~~」


「でも今年は、チヒロの着物買ったから、お財布事情が厳しくて、あんまりお金かけたくないし・・・」


「・・・世知辛いっすねぇ~~~(悲)」


「「はぁ~~~・・・騙されたぁ~~~(泣)」」



 テレビで観たときは、器の各仕切りからエビやカニなんてはみ出すほどの大きな品々だったのに、いざ盛り付けると、仕切りには余白が余りまくり。

 エビとカニ小っさ!! 他も小っさ!!

 なんですかこれ?

 しかも、チヒロの大好きなつまみ食いした黒豆は、カッチカチで超~~~不味かった!

 んで、冷めてるから不味いんだと思って、電子レンジでチン!してみたが、それでも不味かったわこれが!

 余りの不味さに、黒豆を涙を飲んでゴミ箱にポイ!したった。


 仕方なく、大好きな黒豆だけは、自分達で作ることに。

 もちろん、チヒロが買いに行かされるのだった。

 これなら、調理済みの1キロ数百円の黒豆を、業務用スーパーで買った方が早くね?

 などと母親叶に言ったが却下された。

 母親叶は、『これも花嫁修業!』と、言う。

 あと数ヶ月で男に戻るのに、なにが花嫁修業だ!

 だがチヒロにとっては、母親叶の苦し紛れの口実にしか聞こえなかった。




・⋯━☞約1時間後☜━⋯・



••✼••ガスレンジ前••✼••



 グツグツグツグツグツグツ・・・


「熱ぅ~~~! ねえ・・・まだぁ?」


「はあ? まだまだよ!」


「えええ~~~ん? もう1時間は煮てるでぇ?」


「1時間じゃアカンよ!

 普通黒豆って、4時間くらい煮続けるもんなんやから!」


「ふぁい!! 4時間もお?!」


「そうそう! 今年からはチヒロがやってくれるから、助かるわぁ~~~」


「どぅ~~~~~~~~~」


「ほら! ちゃんと見とかな!」


「4時間も煮るんやろう?

 まだ1時間しか煮てないのに、見ても見やんでも一緒やん!」


 パチィ━━━ン!


「きゃん! いだぁ━━━っ!!」



 チヒロのお尻に、母親叶の痛恨の平手打ちが炸裂!!



「ほらほら! ちゃんとアク取りせんとぉ!!」


「わかってるよぉ~~~ほほほん(泣)」


「これもチヒロの花嫁修業になるんやから!

 こんな簡単な料理でも、キッチリせなアカンの!」


「だ、誰が花嫁修業じゃ!!」


「チヒロの花嫁修業に決まってるやろぉ?」


「あ━━━の━━━なああああ━━━っ!!

 俺は男に戻るんやから、花嫁修業やなんて、ぜんっっっぜん意味無いっちゅーねん!」


 パチィ━━━ン!!


「きゃう!! 痛い痛い~~~すんすん(泣)」



 またまたチヒロのお尻に、母親叶の会心の平手打ちが放たれる!



「その言い方がムカつくっ!!(怒)」


「なんで・・・なんで俺がこんな目に・・・すんすん(泣)」


「ええから、ちゃんとしなさいっ!

 これからも花嫁修業として、いっぱい料理してもらうからね!」


「ぃいいいいっ?! そんなぁ~~~!」


「習い事まではせんでもええけど、私のできる料理くらいは覚えなさい!!」


「へぇ~~~う(泣)」



 今回はただ煮詰めるだけの黒豆だったが、今後も花嫁修業として料理をさせられるのかと思うと、チヒロにとっては苦痛以外の何物でもなかった。

 だが、自分で作った黒豆は、とても美味しかった♪



 この日も、カイセイから電話があったが、チヒロに電話に出る暇などなかった。

 

 またまた可哀想なカイセイ・・・。



ぉぉお・・・カイセイお気の毒ぅ・・・(泣)

カイセイの気持ちは、チヒロに伝わる日は来るのだろうか?


思いのほか、長くなってしまったので、3つに分けました。

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