第63話 「チヒロの推しは魔王ちゃん♡」
魔王と勇者現る!
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••ムトランティア・トスター街••✼••
「ええかい? 基本、魔族は襲って来たりせんから、魔族を見て驚いたからと言って魔法をぶっ放したりするんじゃないぞ?」
「分かってますよ!」
「はい!」
「よし! んじゃ、魔族の国『イノセント王国』へ転移するぞえ!」
「「はい!!」」
ブウゥウゥウゥウゥ~~~ん・・・ヒュン!
チヒロ達は、良子の転移魔法で魔族の国イノセント王国へ転移した!
••✼••魔族の国イノセント王国••✼••
••✼••マクチア村付近の森の中••✼••
シュパァン!
「おっ!「きゃ!「ふん!」
「ここは・・・・・・・・・森?」
転移したのは、鬱蒼と木々が立ち並ぶ森の中だった。
「そうじゃな マクチアという名の村付近にある森の中じゃな」
「「なんで?」」
「そりゃあお前、突然目の前に何者かが現れたら、誰だだって驚くじゃろう?」
「え? 俺は大丈夫って言ったのに!」
「うんうん!」
「バカを言え! お前達じゃなくて、魔族達が驚くじゃろがえ!」
「!・・・そりゃそうか」
「なるほど・・・」
「ここは、魔族の国とは言え、人族も少しは居る
今では互いに仲良く共存しておると言うのに、まったくメルセンベルグのバカなガキ共め!
魔族と共にする者は、魔族に魂を売った悪魔だとかほざきよってからに!
貿易自由化交渉に来た人族の役人を奴隷にしおった!」
「「ええっ?!」」
「それって、外交問題では?!」
「うんうん!」
「うむ 仕方なく私が助けて連れ戻したがな
あヤツらときたら、この私でさえ取り付く島もないわい!」
「へえ・・・一応は交渉には行ったんや?」
「まあな! でもアイツらは・・・
特にメルセンベルグの王侯貴族らは、もう誰が何を言っても無駄じゃろうな
たとえ、相手が『聖魔女』だとしてもな」
「「聖魔女って?」」
「私達、『大魔女』のさらい上をいく、異世界をも創り出す力を持つのが、『聖魔女』じゃよ」
「「へえ・・・」」
『聖魔女』とは、魔女の最高クラスとなる、『異世界を創る力を持つ』ほどの、『魔女の神様』みたいな魔女である。
なので、異世界を創れるのだから、その異世界の『創造主』な訳で、創り出した異世界の神様である訳だ。
そんな訳で、この世界ムトランティアを創った聖魔女のキキティは、この世界の創造主であり、神様な訳である。
「聖魔女って、この世界の創造主のキキティでも?」
「・・・おそらくな
それどころか、創造主を初代魔王扱いじゃわえ!」
「なにそれ?! 救いようのないアホですね!」
「ホンマにアホやな!ボケやな!カスやな!ゴミやな!」
「うむ・・・まったくな」
なんとまあ、やっぱりバカでアホなのは、この世界でも人間だった。
仲良くできるんなら、どんな相手でもいいじゃん!
たとえ角が生えていても、羽が生えていても、尻尾が生えていてもいいじゃん!
人を見た目だけで判断して排除しようとするなんて本当に愚かだと思う。
愚かすぎて情けなくて涙が出そうだ。
勿論、メルセンベルグの全ての人々が、『人族至高主義』ではないらしいが、そんな人達は亡命したいだろうし、生まれた国を恨むだろうな。
だが、今の良子の力を持ってしても、メルセンベルグ王国の人々の『人族至高主義』を撤回する事は難しいらしい。
なにせ、物心付いた頃から刷り込まれた『人族至高主義』を書き換えるのは、創造主くらいにしかできないらしい。
でも創造主とはいえ、基本は余程の事でなければ手出しはできないんだとか。
あまりに酷い場合は、天変地異を起こして、人族も魔族も動物も植物も何もかも全ての生き物をフォーマットしてしまうしかないのだろうとのこと。
なるほと・・・これも異世界のテンプレの1つだな。
地球で有名な話しでは、『アトランテイスト大陸の沈没』が、誰もが1度は聞いたことのある有名な伝説だろう。
そんな異世界の伝説など持ち出しても意味がない。
ここは、地球ではないし、たとえ地球人でも『アトランテイスト大陸の沈没の伝説』を信じていない人が多いのは事実。
そうなれば、アプローチする方向性を変えるしかない。
なので、メルセンベルグ国王や国の人々を説得できないなら、勇者を説得するしかない。
『魔族=悪』であり魔族を倒せと代々刷り込まれたメルセンベルグの王侯貴族に、今更何を言っても無駄なら、召喚した勇者に、直接会って説得するしかないとのこと。
だから今は先に魔王に会って、その旨を伝えるのだと。
しかし、魔族領のイノセント王国とは、とにかく魔物が多く、まためちゃくちゃ強い!!
良子によると、人族よりも魔力の多い魔族が沢山居る地域では、魔族の魔力の影響もあって、魔力の多い魔物が生まれるのでは?とのこと。
とは言っても、今のチヒロ達なら余裕で魔物を倒せるので、全然平気だった。
「すんげぇ! なんーじゃこれ?!
おもろいくらい経験値がバンバン稼げる!!」
「ホンマやね! お金もバンバン稼げるね!!」
「こらこら、お前達っ!
ここには金や経験値を稼ぎに来たわけじゃないぞ!」
「分かってますよ すんません つい・・・(汗)」
「ごめんなさい・・・(汗)」
「うむ お前達の良いところは素直なところじゃな」
「「えへへ・・・(照)」」
「ユキナは素直で聞き分けがいいし、物事に対してひと呼吸おいて慎重に対処するから失敗も少ない」
「あはは・・・そんな(照)」
「それと小娘わぁ~~~・・・」
「・・・・・・・・・(汗)」
「・・・・・・・・・・・・」
「ちょっ!! なんか言ってくださいよ!!」
「まあ、小娘もこの頃は素直になった方?・・・かのお?」
「なんで疑問形っ?!」
「いつも『女の子として自覚しろ』と、口が酸っぱくなるほど言ってるが、小娘はまぁー変わらんな!
時々、女の子らしいところを見せる場合もあるが、そんな時は決まって、小娘が困った時じゃな!
それじゃあ、いかんぞ! 少しは女の子として自覚せにゃ、何時かまた痛い目に遭うぞえ!
少しはユキナを見習って、見栄えばかりじゃのうて、中身も女の子らしくせいっ!って事じゃわえ!」
「!!・・・んぐぐぐ・・・
そんな事言うたかて、いずれ男に戻るに・・・ブツブツ」
「あん? なんやてぇ?」
「なんもないし!」
「ふむ まあ、ええわえ」
いつもながら、何かと良子から小言を言われるチヒロだった。
チヒロとユキナは、次々と襲いかかって来る魔物を、ボコスカ倒していく。
すると、気になる物が魔物からドロップした。
「あれ? コレ、何やろう?」
「どうしたんチヒロ?」
「なんじゃ? どれどれ?
これは・・・そうか! そういう事か!」
「「えっ?! なになに??」」
チヒロが魔物からドロップした物を拾った物は、1粒の小さな豆だった。
良子が鑑定した結果・・・
「これは、『セルフヒールを覚える豆』じゃな!」
「「セルフヒールを覚える豆ぇ?!」」
「なんすかソレ?!」
「その名の通り、食べると『セルフヒール』を覚える豆じゃよ!」
「「ええっ?!」」
「そんな豆があるんですか?!」
「いやいやいや、ちょっと待って!! 意味分からへん!
回復魔法って本来、教会で習って習得するもんじゃなかったんすか?」
「うんうん!」
「うむ そうじゃな 本来はな!」
「それじゃぁ・・・」
「コレは、とある旅の商人が何処ぞから手に入れたという物を、高値で取り引きされていたもんじゃったが・・・
そうか そうなったんか・・・そうか・・・」
「「ふぅん・・・???」」
良子は、『セルフヒールを覚える豆』を見つめながら、そう呟いた。
そして良子から聞いた話しでは、元々はこの様な豆など、この世界には存在しなかった物だったらしい。
だが、良子はこの豆について結構前から調べていたらしく、どうやら『勇者召喚』で日本から無理やり召喚された者が、チート能力で作ったもので、今ではこの世界の物として定着し、魔物からもドロップするようになったらしいとのこと。
元々この世界に無かった物を、この世界に定着させる?!
なんだそれ? それじゃあまるで、創造神みたいじゃないか?
やはり、日本から来た者がこの世界で何かを落とせば、それがこの世界の物として何時しか定着するようにと、この世界の常識となっているのかも知れない。
と言う事は、この世界を作ったとされる『創造主キキティ』とは、やはり日本と関係する者なのかも知れない。
だとするならば、この世界を作った者が日本から来た『神』するならば、勇者召喚でこの世界へ来た日本人も、同じことができる『神』と成りうるのでは?
なら、日本から召喚された勇者も、日本から来たチヒロ達も、創造主と同じ事ができないはずはない!
なんとなく、そう思ったチヒロ達だった。
「すごいね! この豆を食べるだけで魔法を覚えられるやなんて!」
「そうじゃな! 私達にはあまり興味を引く物ではないが、この世界の者にとっては、戦い奪い合ったとしても欲しい物じゃろうな!」
「「なるほど・・・」」
それは、とても素晴らしい事でもあるが、とても恐ろしい事でもあると理解したチヒロとユキナだった。
まさに、その豆には、『世界を変える力』があるのである。
「ほ、ほな! 他にも違う魔法とかスキルとかを覚える豆なんかもあるんかな?」
「うむ きっとあるじゃろうな!」
「「おおおおっ!!」」
「他にどんな豆があるんか、狩りを続けてみーへん?」
「面白そーやね!」
「おいおい! お前達!
ここへは何をしに来たのか忘れたんかえ?」
「「!!・・・そうでした(汗)」」
チヒロとユキナは、しゅんとなる。
もっと魔物を倒しまくって、他にどんな効果のある豆があるのか知りたかったが、ここへ来た目的を問われてガッカリするのだった。
チヒロ達は、気を改めて魔王の居る王城へと向かった。
魔王城は、なかり遠くからも、その存在は確認できるほどにデカイ!
空飛ぶ箒に乗って魔王城へ向かうが、近付くにつれて、その大きさに圧倒された!
ギザのピラミッドや、東京ドームなんてレベルじゃない!
宇宙戦艦マヤトに出てくる、『浮遊大陸』ほどはあるのでは?と思うほどだった。(大袈裟)
••✼••王城の門前••✼••
「これはリオリオ殿! お待ちしておりました!」
「「えっ?!」」
「うむ ベレンガリア殿は?」
「はい 応接の間ににてお待ちしております」
「そうか では、急ぐとしよう」
「はっ!」
「「ええええ~~~(汗)」」
チヒロとユキナは、王城に着いて早々、魔族達のリオリオに対対するの頭の低さに驚いた。
大魔女リオリオって、いったい何者?!
チヒロ達は、魔王側近の宰相によって、魔王の待つ応接の間へ案内されだ。
しかし! この魔王城の中ってば、めちゃくちゃ広い!!
しかも! 天井もめちゃくちゃ高いっ!
地球の現代の建築技術で、こんなくっそデカイ建造物なんか造れないのでは?
と、思うほどだ。
高いビルなら造れても、こんな城なんて絶対に創れないと思う。
10数メートルもの高い位置に、何十トンもおりそうな巨大な石の魔物の様な幾つものオブジェが、リボンの様な薄いレールの様な物で繋がれ、まるで空中に固定せれている。
こんなの、強度概念や物理的法則などを完全に無視してるし、魔法が無ければ創る事など絶対に不可能だ。
まるで、『不思議の国』の城のようだった。
また、通路ひとつ歩くだけでも、せめて自転車が欲しいくらいに広く長い距離だ。
その通路の両サイドには、何処へ繋がっているのか分からないが、沢山の分かれ道がある。
信号機がや案内標識が無いのが不思議なくらいだ。
たぶん方向音痴のチヒロとユキナだけだったなら、絶対に迷子になっちゃうだろうな・・・
しかし、どれくらいの時間を歩いただろうか?
いい加減疲れを見せるチヒロとユキナ。
相手は魔王と言うので、謁見の間とか、玉座の間とかに連れて行かれるのかと思ってビクビクしていたチヒロとユキナだった。
そして・・・
••✼••魔王城応接の間前••✼••
コンコン!
「魔王様 大魔女リオリオ様と、お連れ様2名をお連れしました」
「うむ 入れ」
ガチャ・・・
「「?!・・・」」
チヒロとユキナは、魔王を見て驚いた!
女の子とは聞いていたが、いやいや小さすぎるやろ!
名前は、ベレンガリアという。
そして種族は、『サキュバス』だった。
うむうむ! 納得!!
しかし、本当に小っちゃくて、めちゃくちゃ可愛いな!
そもそも魔王は世襲制と聞いたが、本当にこんな小さな女の子に魔王が務まるのか?
と、心配になるほどだった。
だが、HP、MP、INTの高さは半端なかった!
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 ベレンガリア
性別 女
年齢 125
種族 魔族
職業 夢魔
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 350
HP 23525
MP 34064
STR 31
ATK 241
DEF 581
INT 13095
SPD 325
LUK 301
EXP 3550802
・⋯━━☆★☆━━⋯・
魔法特性
【無属性魔法/全属性魔法】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【ヒール】【ハイ・ヒール】
【エナジー・アブソープション】
【エナジードレイン】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【魔力制御】【魔力操作】【鑑定】【魅了】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
装備によるスキル
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号(隠匿中)
【魔性】【人たらし】
【女王様】【艷麗美幼女】
【妖艶美幼女】【コスプレイヤー】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【第35代魔王】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
■===========■
「よく来てくれたね 大魔女リオリオ殿!」
「うむ 新しき魔王が就任したと聞いたが、やはりお前さんじゃったか」
「「ひぃいぃっ(汗)」」
チヒロとユキナは、良子が今代魔王に向かって、『お前』呼ばわりだったので、不敬にならないかとヒヤヒヤした。
だが魔王は、良子をまるで親戚の叔母さんを相手にするかのように普通に話す。
「てへへ まあ、仕方ないよ
もう魔王は圧倒的な力で・・・なんて時代は終わったのよ」
「ふむ そうじゃといいがな・・・
相変わらずメルセンベルグ国王は、また勇者達を召喚したぞえ
しかも、魔王が勇者達を元の世界へ戻す方法を知っているなどとアホな事をほざいとるが、本当にお前にはそんな力が受け継がれておるんかえ?」
「うぅん! ないないない!
前魔王のお父様にだって、そんな力なんて無かったわよ!」
「ふん! じゃろうな!
勇者召喚魔法なんて膨大な魔力が必要なうえに一方通行なはずのに、何を間抜けな事を言っとるんじゃろうな?」
「「え? え?・・・」」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
なんと、勇者を召喚したメルセンベルグ国王は、召喚者が元の世界へ戻る方法を魔王が知っていると言っているらしい。
良子の話しによると、『勇者召喚魔法』とは、代々メルセンベルグ王家が引き継ぐ門外不出の秘匿魔法なんだとか。
堂々と隠しもせずに、今まで何度も異世界から勇者を召喚しているくせに何が秘匿魔法だ。
それに、そもそも元の異世界へまた送り返す事など不可能なんだとか。
魔力も方向も時間軸も空間軸も、召喚した時とまったく同じにしなきゃいけないとか?
無理やり異世界へ手を伸ばし、適当に手探り状態で捕まえた人達を、また同じ異世界へ手探り状態で戻すなんて、どう考えたって無理だ。
仮にできたとしても同じ異世界へ送り返す事なんてできるはずもなく、どの異世界へ飛ばしてしまうか分からないのだとか。
そんな魔法があったとしても、是非とも使って欲しくない。
どの世界の、どの時代の、何処へ飛ばされるのか分からないのなら、下手に期待などしない方がいい。
もし、できるとしたなら、『勇者本人』が、異世界間転移魔法の発動源にならなければならないと言う。
そうなると、精神も肉体も異世界間転移魔法を発動できるほどの膨大な魔力が必要だし、もし成功したとしても、前例が無いのだから、無事に生きて転移できるのかどうかも怪しいとか。
なにそれ、怖っ!
勇者召喚魔法とは、異世界から『異世界人』を呼びよこす魔法であり、召喚時にどんな理屈か解らないが、類稀なる特殊能力が召喚者に付与されるらしい。
大魔法使いクラスの何人もの魔術師の魔力と、魔石や魔晶石の魔力をも合わせて行うので、その膨大な魔力の影響なのか、召喚者に勇者となりうるチート能力を付与される事で、この世界に持つ者の居ない類稀なる特殊な能力を持つ者として『勇者』とされるのであって、けっして魔王を倒せるほどの力を持っている訳では無い。
どんなに大きな技や魔法やスキルを持っていても、ハッキリ言って、『宝の持ち腐れ』だ。
自動車免許を取得したばかりの初心者に、自動車レースでレースチューンされた化け物みたいなGTRを運転して、プロのレーサー相手に優勝しろと言われても無理なのと同じだ。
また、メルセンベルグ国王の言う、『元の世界へ戻る方法は魔王が知る』といのは、真っ赤な嘘なんだそうだ。
だいたい、魔王と話した事も会った事も無い奴らが、そんな情報を知るはずもない。
なんとまあ~~~無責任な・・・
ではなぜメルセンベルグ国王は、魔王を倒すために勇者召喚などするのか?
それは、魔王を倒し魔族領のイノセント大陸を、そして魔族達もひっくるめてメルセンベルグ領地として支配したいからだとか。
これまでもメルセンベルグでは、魔族から魔法や魔導具などの知識や技術を吸収して、『魔導大国』として大きくしてきた。
『魔導大国』などと呼ばれるほどの大国となったのに、これ以上何を吸収しようと言うのか?
イスヤリヤ王国のように魔族と共存し、魔族から教わった精霊の聖別の儀式によって、普通の人間でも本物の魔法使いになれるのが羨ましいのだろうと良子は言う。
精霊の聖別なんてものを知らないメルセンベルグでは、本物の魔法使いは1人も居ないんだとか。
そもそも精霊の存在を知らないと言うか、信じていないらしい。
精霊は目に見えないし触れられない、『物質的な肉体を持たない自我的な存在』なので、信じられないのも仕方ないと言えば仕方ない。
なので、魔女や魔法使いでは考えられないほどの多大な魔力による力任せな魔法の発動方法しか知らない。
適当な詠唱を唱えて、魔石から魔力を引き出し魔法を発動させるというもの。
それはつまり、本物の魔法使いではなく、『魔術師』と言えるだろう。
なので、メルセンベルグでの魔法使い=魔術師は、ソフトボールほどの大きな魔石や魔晶石を使って魔法を発動させるので、魔石や魔晶石を多く持つ者ほど強い魔術師と言われているとか。
そのため、魔晶石なら自然に魔力は回復するが、魔石は魔力を使い切ると、また魔力を補充しなければならなくなり、魔力補充用に奴隷として捕まえた魔族から、魔力を吸い取るのだとか。
なんとも酷い事をするものだ・・・
魔石の魔力を補充する別の方法として、『月光に当てる』という方法も知らないとか?
なので、メルセンベルグでは、大量魔力の空っぽになった魔石が廃棄されているのだとか。
勿体ない・・・
まったく、『無知とは罪』とはよく言ったもので、できることなら良子もメルセンベルグの『人族至高主』を解体してやりたいと思っている。
だが良子にしても、それは難しい事らしい。
今の良子にできる事は、こっそりとメルセンベルグに潜入し、捕らえられた魔族達を、少しずつ解放するのがやっとの事だとか。
ところが、メルセンベルグ国王は勇者を召喚してしまった。
そして今、勇者はイスヤリヤ王国に入って来ており、力をつけ始めている。
このまま放っておけば、魔族にとって危険な存在になるのは必至。
『魔族こそ人族にとって害悪的な存在』として刷り込まれている勇者とは、魔族にとってはただの『殺人鬼』以外の何物でもない。
だが幸いな事に、今代の勇者達は、襲って来る魔族以外とは戦わない勇者達らしい。
魔族と言えど、エルフやドワーフや獣人までも魔族としての認識が無く、問答無用で襲って来る魔物が魔族だと認識している様子だとのとこ。
今代の勇者達は、今までとは何かが違うとは良子も考えているんだとか。
先ずは、その旨も伝えるために、魔王に会いに来たんだとか。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「なるほど、今までとは違う勇者ですか・・・」
「うむ なんでも、魔物に襲われる魔族を庇い、問答無用で襲って来る魔物を倒したときに、魔族達に感謝されたのが幸いしたんじゃろうな」
「ううむ・・・分かりました!
ではもし、勇者達がこの魔王城に来た時には、快く歓迎するとしましょう!」
「うん! そうしてやってくれ!」
「「・・・・・・(汗)」」
なんだか、チヒロとユキナにはよく分からない内に話しがまとまったらしい。
••✼••魔王城門前••✼••
「はあ~~~緊張したあ!」
「ホンマやねえ! でも、女の子とは言っても、やっぱり魔王やね!
すんごい魔力を感じた!」
「うんうん! もしかしたらホンマに日本へ戻せる力があるんとちゃう?って思うほどやったねえ!」
「でも、あの魔王でも前魔王でも、それはできへんかったんやってね?」
「うん・・・」
「当たり前じゃわえ!
召喚やの、送還やのって、そうそう簡単に出来てたまるかえ!
勇者召喚でも、何十人もの魔術師達と、大量の魔石や魔晶石の魔力を合わせた膨大な魔力が必要じゃのに!
しかも、魔術師達は命懸けじゃぞ!?
それに、どんな奴が召喚されるか、何人召喚されるかも分からないんじゃ!
何十年もかけて準備して、運試しみたいなものじゃ!!
しかも送還先や時刻を指定して異世界へ送り返すやなんて、創造主でもない限りできるもんじゃないわえ!」
「「!!・・・・・・」」
やはり、1度召喚した人を元の世界へ送還するのは難しいらしい。
召喚するのだって、地球までは指定できても、何処の誰かとまでは指定できるはずもなく、ハッキリ言って召喚してみなきゃ、どんな奴が来るかも分からない運試しのようなものらしい。
なんとまあ、膨大な魔力に魔術師達の命を懸けて行う召喚なのに、運試しとは・・・
まるで、お国最大のガチャみたいなものだな。
「そうやろねぇ・・・」
「メルセンベルグ王国の身勝手で召喚された勇者って、ホント可哀想・・・」
「まったくじゃわえ・・・本当に無責任なアホな国王やわ!」
「「ううむ・・・」」
「しかもじゃ! 今回の召喚では召喚場所などの指定に失敗したらしくてな、こっそり調べてみたら、どうやら召喚魔法陣に不備があったようじゃ!
とんでもなく離れた場所に勇者達は召喚されてしまったようじゃな!」
「「ええっ?!」」
「万が一、召喚先が海のど真ん中じゃったら、召喚された勇者達は、召喚と同時に溺死じゃ!」
「「ひぃえぇえぇえぇ~~~(汗)」」
なんじゃソレ~~~!!??
メルセンベルグ国王! 何してくれてんの?!
アホにも、程があるやろ!!
「それにどうやら、1人巻き添い食った召喚者が居たようじゃわえ
しかも! メルセンベルグ国王は、ソイツに気付いておらんらしい」
「バカなん? そのメルセンベルグ国王って?」
「ホンマやね? 国王のくせに・・・」
「ま、国王じゃからこそ、認めたくないんじゃろな?
真性の大迷惑な大馬鹿者じゃわえ!」
「「・・・・・・」」
「じゃから、巻き込まれ召喚された者の捜索も行っておらんらしいわえ
今は私がその巻き込まれ召喚された者を探しておるんじゃが・・・
どうやら、どんでもない食わせ者でな、この世界を変えてしまう程の力を持つようじゃな!」
「ええっ?! マジっすか!!」
「ヤバいじゃん! その人、今どうしてんの?!」
「それがな・・・なんとも恐ろしい魔獣を何体も従えて、強力な仲間も増やして、好き勝手に暴れ回ってるようじゃな」
「「ひぃえぇえぇえぇえぇ~~~!!」」
「しかも、姿をコロコロ変える事ができるらしくてな!
小さな幼女に変身したり、美人な女に変身したり・・・
じゃが本当の奴の姿は、中年の男だったようじゃ
この私でさえ、奴の正体を知った時は、度肝を抜かれたもんじゃわえ!」
「「へ・・・へえ~~~・・・(汗)」」
「まったく・・・そんな者を野放しにするやなんて、本当にメルセンベルグ国王は、底なしの大馬鹿者じゃわな!」
「「・・・・・・・・・」」
まったく、その通りだと思う。大馬鹿者だ。
それより異世界人とは言え、他人様の命や人生をなんだと思ってやがる。
『俺は王様だあ! 俺は偉いんだ! 俺に従え!』
とでも言うのか?
今すぐにでも、メルセンベルグ国王の頭をぶん殴ってやりたいと思った。
まだ会った事もないのに。
って、会いたくもないけど・・・
しかしチヒロには、勇者になんて興味など、コレっぽっちも無かった。
今チヒロの頭の中には、可愛い魔王ちゃんの事でいっぱいだった。
「せやけど、可愛かったなぁ~~~魔王ちゃん♡」
「はあっ?! なに言ってのよチヒロ?」
「正気か小娘っ?!」
「ええ? 可愛かったやぁん!
ガングロ風な小麦色の肌! パッチリした大っきな赤い瞳!
長く多いまつげ! ツルスベで真っ黒な柔らかそうな髪!
ぷにぷになほっぺ! 大きめのクロワッサンみたいな角!
あのデカイ椅子にチョコんと座ってもお~~~♡」
「「・・・・・・・・・(汗)」」
もう、言わずとも解るだろう。
そう! ハッキリ言おう!
チヒロは、美幼女好きである!
そして、デカイ美女好きでもある!
もし付き合うのなら、自分よりも小さな女の子か、ずっと背の高い女の子のどちらかだと思う。
だから、晴蘭を虐めていたのは言うまでもなく、可愛さ余って虐めてしまったのだ。
「ムフフフ・・・ムフフフエヘヘヘヘヘヘヘ♡」
「ちょ、ちょっと・・・(汗)」
「・・・(汗)」
チヒロは、頬に手を当て腰をクネクネさせていた。
「チヒロ・・・引くわぁ~~~(汗)」
「うわあ・・・まさか小娘に、こんな一面があったとは(汗)」
「ええ? 変かな?
やっぱり男としては、小さな可愛い女の子をギュッ!って抱きしめながら頭ナデナデしてあげたいし、大っきい別嬪さんには、ギュッ!って抱きしめられて頭ナデナデして欲しいやん?」
「「・・・・・・・・・(汗)」」
流石に引いたユキナと良子だった・・・
「魔王ちゃんって、俺らよりも小っちゃいわな?」
「え? う、うん 確かに小っちゃかったけど?」
「ようし! 決めた!!」
「はあ?「なんじゃ?」
「俺は! 魔王ちゃん推しになる!!」
「「?!・・・・・・・・・はあ~~~?!」」
その後チヒロは日本へ帰ると、『創造魔法』で『念写魔導カメラ』を創造し、『魔王のポスター』を何枚も作った!
しかも、かなり美化された魔王のポスターだった。
それは、セーラー服を着た魔王だったり、白いワンピースを着た清楚系魔王だったり、スク水を着た魔王だったりと・・・
••✼••日本チヒロ宅自室••✼••
「ムフフフ・・・ムフフフフフ・・・♡
かっわいい~~~なあ~~~魔王ちゃん♡」
「「はあ~~~・・・(汗)」」
チヒロは、今まで自室に貼っていたゲームキャラのポスターを全て剥がし、チヒロの部屋の壁には魔王の美化されたポスターで埋め尽くされた。
「良子さん・・・」
「なんじゃ?」
「私・・・なんかチヒロが心配になってきた」
「安心せい! 私もチヒロが心配じゃよ・・・」
「「はあ~~~・・・(汗)」」
「ムフフフフフ・・・♡」
新しい楽しみができたチヒロだった。
チヒロの推しは魔王ちゃん♡
ムトランティアに行くと、魔王にちょくちょく会いに行くようになったチヒロ。
そんなチヒロを心配するユキナと良子は、ため息を吐きながらも、悪意や害悪は無いからと諦めムードだった。