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女装剤  作者: 嬉々ゆう
63/91

第62話 「魔王現る?!」

チヒロとユキナは、ムトランティアではレベル450を超えるサファイヤ級冒険者だ。

2人は魔法使いとして自信を持つようになる。


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。



 ・⋯━☞日本の秋☜━⋯・



 ••✼••ムトランティア••✼••

 ••✼••砂漠の国サララン••✼••


 ••✼••ピラミッド・ダンジョン••✼••



 チヒロとユキナは、ムトランティアの砂漠の国サラランに居た。

 サラランには、ピラミッド・ダンジョンが、1号~5号まで存在する。

 もしかしたら、砂漠に埋もれているダンジョンもあるかも知れないとも言われていて、今からでも探せば今の倍以上は見付かるとも言われている。

 謎が多く面白そうなのだが、暑さが半端ないのでこれから見付けるのは難しいだろう。


 砂から姿を現しているのは、1号から5号と南に向かって順にピラミッドが並ぶ。

 また、ピラミッドに隣接するように、大小様々なオアシスがあり、魔物達の集まる場所となっていた。

 そしてそのピラミッドの中には、最深到達30階層を超えるダンジョンが確認されている。

 だが最深到達30階層とは過去の話しで、ここ10数年は誰もダンジョンの最深部に足を踏み入れていないらしく、未だ更新はされていないと言う。

 それほど過去に比べて暑く気候が変わってしまったのか、とにかく暑くてピラミッド群にたどり着く事さえ難しい。

 それだけ到達困難なダンジョンだと言えるそうだ。

 また、砂漠が人を寄せつけない大きな障害とも言える。

 地球の砂漠とは比べ物にならないくらいに暑い!

 冒険者達は、夜に行動するしかないくらいに。

 オアシスを離れると、巨大な魔獣達の骨になった死骸が転がっている。

 暑さにやられたのか、他の魔獣にやられたのかは分からないが・・・

 それでも干上がらないオアシスって、どうなっているんだろう?

 もしかしたら、地下には巨大な地下水脈があるのかも知れない。

 ダンジョンの中にも、湧き水があるらしいので、おそらくは巨大な地下水脈があるのは間違いないだろう。


 チヒロとユキナは、そんなクソ暑いサラランに居たのだ。


 勿論、ダンジョン探索が目的だ。

 この頃のチヒロとユキナには、ダンジョン探索がメインの冒険になっていた。

 今のチヒロとユキナのレベルは・・・



 チヒロのステータス

 ■===========■

 ・⋯━☞STATUS☜━⋯・

 ■===========■

 名前 チヒロ

 性別 女

 年齢 15

 種族 魔法使い

 職業 無属性魔法使い

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 状態

【健康】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 LV 458

 HP 558

 MP 714

 STR 16

 ATK 63

 DEF 52

 INT 496

 SPD 118

 LUK 364

 EXP 6591141

 ■===========■


 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 魔法特性

【全属性魔法】

【創造魔法】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得魔法

【ヒール】【ハイ・ヒール】【ピュリフィケーション】【クリーン】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得スキル

【魔力制御】【魔力操作】【鑑定】【隠匿】【魔力量計測】【索敵】【魔導インターネット】【魔法薬精製】【茨縛り】【御用だ!】【1馬力】【錬金術】【空間拡張キューブ型収納魔法】【空間拡張魔法】【異空間収納魔法】【双眼鏡】【空飛ぶ箒】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 装備によるスキル

 熱耐性マント(熱耐性Lv5)

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 称号(隠匿中)

【魅了】【人たらし】

【女王様予備軍】【無自覚 艷麗(えんれい)美少女】

【無自覚 妖艶(ようえん)美少女】

【立てば芍薬(しゃくやく)座れば牡丹(ぼたん)歩く姿は百合の花】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 資格

【お助け魔法使い終了】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 ■===========■





 ユキナのステータス

 ■===========■

 ・⋯━☞STATUS☜━⋯・

 ■===========■

 名前 ユキナ

 性別 女

 年齢 15

 種族 魔法使い

 職業 無属性魔法使い

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 状態

【健康】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 LV 468

 HP 568

 MP 726

 STR 16

 ATK 63

 DEF 52

 INT 506

 SPD 120

 LUK 369

 EXP 6926844

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 魔法特性

【全属性魔法】

【創造魔法】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得魔法

【ヒール】【ハイ・ヒール】【ピュリフィケーション】【クリーン】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得スキル

【魔力制御】【魔力操作】【鑑定】【隠匿】【魔力量計測】【索敵】【魔導インターネット】【魔法薬精製】【茨縛り】【御用だ!】【1馬力】【錬金術】【空間拡張キューブ型収納魔法】【空間拡張魔法】【異空間収納魔法】【双眼鏡】【空飛ぶ箒】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 装備によるスキル

 熱耐性マント(熱耐性Lv5)

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 称号(隠匿中)

【魅了】【清楚系美魔女】

【お嬢様予備軍】【無自覚 艷麗(えんれい)美少女】

【無自覚 妖艶(ようえん)美少女】

大和撫子(やまとなでしこ)

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 資格


 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 ■===========■





 2人の職業の『無属性魔法使い』とは、『全属性』を意味する。

 だがこの世界の人々にとっての『無属性』とは、『無能』と呼ばれているんだとか。

 なぜなら、この世界の無属性魔法使い達は、四大属性と呼ばれる地、水、火、風の属性魔法を、最低レベルの魔法しか使えないと言うのが定説だった。


 地魔法は、小粒な石を生成できるだけ。

 水魔法は、雀の涙ほどの水が数滴生成できるだけ。

 火魔法は、ライターのような小さな火が生成できるだけ。

 風魔法は、鼻息ていどの風をフッ!と吹かせるだけ。


 

『ショボ! こんなの魔法じゃなあ━━━いっ!!』



 ってなもんで、この世界こ無属性魔法使いは、他の冒険者達からは『無能』としてバカにされていたのだ。


 だが!!

 本当の無属性魔法使いとは、ちゃんと修行すれば、全ての属性魔法を(かたよ)る事なく強化されて全属性の魔法を覚えられるばかりか、ある程度極めれば『創造魔法』が使えるのだ。

 『創造魔法』とは、魔女が使う魔法である。

 それは即ち、『創造魔法』を使える魔法使いは、『魔女』になれる素質があるのだ。

 この世界には魔女は1人しか居ない。

 いや、居たと言うべきか。

 この世界に居るのか、それとも居ないのかも定かではない。

 それは、この世界を創造した創造主キキティである。


 だが、ここ最近になって、2人の魔女が現れた!


 その魔女とは、数百年前に現れた『良子』大魔女リオリオと、ココ最近現れた『晴蘭』大魔女セーラが居ると言われてはいるが、彼女らは日本から来た魔女である。

 この世界の人々には悪いが、この2人の大魔女は、この世界の魔女ではないのだ。

 しかも、チートである。

 特に大魔女セーラは、これ程の短期間でサファイヤ級冒険者になれるなんて有り得ないのだから。


 そして、チヒロとユキナも、チートであった。

 なんと! 10数年ぷりに、チヒロとユキナが第1号ピラミッドの最深部の30階層を踏破したのだ!

 この短期間で、チヒロとユキナはサファイヤ級冒険者にまで上り詰めたのは、この第1号ピラミッド最深部30階層踏破に続き、第2号ピラミッドのある階層の魔物に関係する。

 チヒロとユキナは、ある魔物をリピート討伐する事で、レベルを効率よく上げる方法を見付けたのだった。


 先ずはピラミッド・ダンジョン第1号を踏破する。

 ピラミッド・ダンジョン第1号は、1階層から30階層まで、クリスタル級からオパール級までのレベル299までの魔物が出没する。

 そして最深階層30階層を超えると、ラスボス戦である。

 ラスボス部屋には、オパール級のミスリルゴーレム・コロッサスが待ち構えている。

 奴の身体はミスリルで出来ているので、やたら硬くHPもバカほど高く、攻略には長期戦は必至である。

 そしてラスボスを倒すと、マジック・バッグ(時間経過無し、容量80㎥)モノを獲得できる!

 これは、なかなかの収納量である。

 容量80㎥と言えば、トレーラーに積まれる1番大きいタイプのコンテナー程の収納量だ。

 これをクリアすると、次はピラミッド・ダンジョン第2号への入坑資格が得られるのだ。



 このピラミッド・ダンジョン第2号では、大型の魔物ばかりが出没し、経験値もバカみたいに稼げるのだ。

 出没する魔物は、ラピスラズリ級からアクアマリン級のレベル100~449だ。


 チヒロとユキナの主に倒す魔物は、ピラミッド・ダンジョン第2号18階層に湧く、アクアマリン級の『ミスリルゴーレム・コロッサス』だ。


 その名の通り、『ミスリル』で出来た身体を持ち、やたら硬くて防御力もHPもアホほど高く、簡単には倒せない魔物ではあるが、ピラミッド・ダンジョン第1号のラスボスのミスリルゴーレム・コロッサスとは似ていても、更に倍以上の硬さとHPを持つ。

 たとえ大所帯で倒してもお釣りがくる程に経験値が高い!

 なのでチヒロとユキナは、このミスリルゴーレム・コロッサスばかりを狩りまくっていたのだ。


 倒し方は至って簡単!

 【鋼の鎖の楔縛り】で動けなくして、【防御力低下魔法】をミスリルゴーレム・コロッサスにかけ、後はひたすら攻撃するのだ。

 もちろん倒すには時間がかかるが、獲得できる経験値と稼げる大金を考えれば、それはまさにウハウハである。

 ミスリルゴーレム・コロッサスの身体のミスリルは、純ミスリルではないが、素材としては申し分無し。

 精錬すればミスリルがそこそこ取れるので、冒険者にとっても道具屋や武具屋にとっても、必ず手に入れたいモノの1つだ。

 それに(まれ)にドロップする『コロッサスの指輪』は、めちゃ高く売れる。


 『コロッサスの指輪(ユニーク・ドロップ率4%up)』


 この世界の冒険者にとって、この指輪の存在はまさに夢のユニーク・アイテムである。

 単純計算では、100体の魔物を狩れば、4つのユニークがドロップできる確率である。

 もちろん、ドロップするユニークはピンキリではあるが、稀にダブル・ユニークもドロップする!

 ダブル・ユニークもピンキリだが、付与されているスキルや魔法の組み合わせによっては、億Tiaを超える価値ある物もある。

 また、冒険者のステータス『LUK』に影響するので、LUKの高い冒険者にとってはドロップ率が更に上がるので、まさにヤバい代物だ。

 この世界の冒険者達なら喉から手が出る程の宝物である。

 だが残念なことに、この世界の冒険者達は、この事実をこの狩り法を誰も知らない気付いていない。

 勿体ない話しだ。




 ••✼••ピラミッドダンジョン第2号••✼••



 ••✼••18階層••✼••



 チヒロとユキナは、ピラミッドダンジョン第2号の18階層に居た。

 その階層に湧く、『ミスリルゴーレム・コロッサス』だけを狙って討伐していたのである。

 その姿は、青白く淡く輝くツルスベなボディーで、まるで昭和のモノクロアニメのロボットのような容姿だった。



「グオオオオオオオ━━━ッ!!」

 ドズ━━━ン! バラバラバラ・・・


「ふう・・・お疲れ!」


「お疲れ様! チヒロ!」


「うん! だいぶレベル上がったけど、そろそろ獲得できる経験値も減ってきたかなぁ?」


「そうやね! ええ時はコロッサス1体でレベル2は上がったのに、今はもう7~8体倒してやっとレベル1上がる程度やね!」


「ううむ そろそろ潮時かな?」


「そうかもね!」


「どうするぅ? 正直もうコロッサス飽きてきたわ!」


「うう~む・・・もうそろそろ他に経験値稼げる別の魔物探してもええかもね?」


「ほな、そうしよっか?」


「うん!」




 こうしてチヒロとユキナは、ピラミッド・ダンジョン第2号18階層の転移魔法陣から地上へ転移した!




 ••✼••ピラミッド・ダンジョン第2号前••✼••




「うわっ! 眩しい・・・」


「うわぁ~~~暑うっ!! 日本の夏とは大違いやね!」


「あははっ 今更やけどな」


「冷房!・・・ふぅ~~~涼しい♪」


「冷房! ほえ~~~♪」



 チヒロとユキナは、創造魔法で『冷房』を発動。

 チヒロとユキナの身体の周りには、まるで透明な(まゆ)のように冷えた空気が取り囲む。

 体感温度は、約28℃。

 砂漠では、充分過ぎるほどに涼しい。

 もし、この世界の冒険者達も『冷房』を使えたなら、この砂漠地帯は賑わっていただろう。

 チヒロとユキナにはチート能力だが、ハッキリ言ってズルである。

 いつかこの『冷房魔法』も、『スクロール化』して、適当に店に長そうと考えている。

 それにより、他の冒険者達が『冷房魔法のスクロール』を購入して使用したなら、この世界の冒険者達にも、『冷房魔法』を覚えが使えるようになる。

 それに、チヒロとユキナの開発したスクロール化した魔法やスキルをこの世界に広めて定着させる事ができたなら、いつかはこの世界の魔物を倒した時に、その魔法やスキルのスクロールがドロップすることも増えるだろう。

 チヒロとユキナは、魔法やスキルの独占など考えていない。




「ふふん ほな、一旦サラランに戻ろうか」


「ほいさ!」




 こうしてチヒロとユキナは、空飛ぶ絨毯に乗って、砂漠の国サラランの、王都サラランへと戻った。

 王都サラランは、超巨大で琵琶湖よりも大きな『サララン・オアシス』に隣接し、C型にとり囲むように街がある。

 そして定期船でサララン・オアシスを渡る船もあり、C型の街の何処へ向かうか、時間が決められている。

 この街もいつかは、オアシスを取り囲んでリング型になると言われている。

 それほど発展している大きな街である。

 その代わり、移動には困るが・・・

 なにせこの街では、殆どの冒険者達は空飛ぶ絨毯などの魔導具を使った移動手段を利用する者が多い。

 王都サラランとは、それだけ広いからだ。

 チヒロとユキナも、空飛ぶ絨毯を冒険者ギルドで1日1万Tiaでレンタルしていたので、いくら稼いでいるとは言え、無駄遣いしているようで勿体ない気がする。

 冒険者ギルドで、空飛ぶ絨毯を購入できないかと聞いてみたが、空飛ぶ絨毯は冒険者ギルドで独占権を得ているので、購入でできない物らしい。

 なにそれ? 類似の乗り物でもダメなの?

 でも下手に張り合うように、空飛ぶ絨毯みたいな物を作って使用したら、きっとあれこれ難癖付けて奪取されるに違いない。


 なら、空飛ぶ(ほうき)を使えばいい。


 この世界の魔法使い達には、『箒に乗って空を飛ぶ』という概念がない。

 この世界の常識では、魔女や魔法使いは、『空飛ぶの絨毯で飛ぶもの』なのらしい。

 地面から50cmしか浮かない空飛ぶ絨毯を、『空飛ぶ』と言えるのだろうか?

 それに、『空飛ぶ箒』の方がスピードは速い。

 『空飛ぶ絨毯』は時速70kmだが、『空飛ぶ箒』は最高時速90kmで、最高高度900mだ。


 勝ったな・・・!


 だが、チヒロとユキナは、出し惜しみはしない。

 ここ、サラランのピラミッド・ダンジョンの詳細も、空飛ぶ箒の詳細も、冒険者ギルドに惜しみなく報告し、そして空飛ぶ箒については『魔導具研究ギルド』なるものを新しく設立させて、空飛ぶ箒の3年間の『特許権』を取得した。


 


・⋯━☞金曜日の夜☜━⋯・



••✼••日本チヒロ宅自室••✼••




「私ら、だいぶレベル上がったなあ」


「せやなあ」


「アッチの世界でできた事、コッチの世界でもできるんかなあ?」


「大方、使えるんとちゃうかなあ?

 転移魔法もできたし、回復魔法もできたしね!」


「ええっ!! ホンマに!?」


「うんうん! あの、サラって()が体育で怪我した時に呼び出されて、そん時に俺魔法で怪我を治したよ」


「そうなんやあ!! すごおい!

 私も何か魔法使ってみたいなあ~~~」


「えっ? ユキナ、まだコッチで魔法使った事なかったん?」


「うん! だって、魔法使うような事無かったもん」


「へ・・・へえ~~~」



『あれれ? 魔法を使う事って、いくらでもあるやろ!

 たとえ直接魔法を使わんかっても、魔導具は使ってへんのか?

 そんなはずはないやろ・・・

 良子さんから、何も貰わんかったんかな・・・?』



 などと考えていた。

 と言う事は、良子はチヒロにばかり構っているのかも知れない?



「・・・ユキナ? 良子さんから何も貰わんかったぁん?」


「良子さんから? ううん 別に何も?」


「あれ?・・・そうなんや」



 この時チヒロは、自分だけが『お助け魔法使い』にされたのを知った。



「なんで俺だけ・・・あのオバン(怒)」


「え? なに?」


「ああ、うん なんもないよ?」


「・・・ふうん?」



 チヒロは一瞬、冷や汗をかいた。

 良子がまた、転移魔法でやって来ると思ったからだ。

 幸い今は来なかったが、いつどこでチヒロの言動を見て聞いているか分からない。

 それよりなぜユキナには、『お助け魔法使い』をさせなかったのか?

 ユキナはチヒロよりも魔法使いとしては何も問題ないのだろうか?

 ユキナの方がチヒロよりもレベルが高いからだろうか?

 1ヶ月間『お助け魔法使い』をやっても、レベルは6つしか上がらなかった。

 

 解せぬ・・・


 なんて、思っていたら、突然良子が現れた!



 シュパァン!

「おわっ!!「きゃあ!!」


「よお! 小娘! と、ユキナよ!」


「ちょっ!「こんばんわ~~~」



 相変わらず良子は、チヒロに対しては『小娘』呼ばわりだ。

 チヒロも、良子のチヒロに対しての呼び方には半分諦めていて、もう反発もしなくなっていた。

 

 だが今回の良子は、いつもよりも表情が硬かった。

 そんな良子の雰囲気に、チヒロとユキナは自然と身構えてしまう。



「ムトランティアに魔王が現れたぞ!!」


「「ええっ?!」」



 突然だった!

 良子が、ムトランティアに、ついに魔王が現れたと言う。

 『魔王』と聞くと、特に人族に対して敵対心を持ち、魔王城に君臨し手下の魔族達を使って人族を滅ぼそうとする、魔族の王様であり悪の親玉!

 みたいなイメージがある。

 でも、良子から聞いたのは、まったくの正反対の魔王像だった。



「魔王って、あの魔王?」


「おう! あの、魔王じゃ!」


「魔王城の玉座に座り、ふんぞり返ってるあの魔王?」


「うむ あの、魔王じゃ!」


「ほな! その魔王を俺らが倒す! って訳?」


「違う!」


「「はあ?」」


「お前達には、今代魔王を救ってやってほしいんじゃ!」


「「はあ~~~?!」」


「既に勇者も現れておる!」


「「勇者?!」」


「そうじゃ! その勇者が今力を付け始めておる!

 今はまだ魔王城に辿り着く心配は無いが・・・」


「「ええ?」」


「ちょっと待って! 意味分からへん!!

 良子さんって、魔王と勇者のどっちの味方なん?」


「もちろん、魔王じゃ!!」


「「はえっ?!」」


「お前達には、魔王を、そして魔族を助けてやってほしいんじゃ!」


「「はあ~~~~~~?!」」



 意味わからん!!

 てっきり、勇者が現れたと言うんだから、勇者の手助けでもしろ!とでも言われると思ったのに、魔王を助けてやれと言う。

 何だこれは? 正直、聞き間違えたか?と思った。

 だが良子は、困惑するチヒロとユキナに構わず話し続ける。



「確かに、先々代までの魔王は人族を滅ぼし、ムトランティアを魔族だけのユートピアへと変えようとしておった!

 じゃが、先代魔王の代からは違う!

 今のムトランティアは、メルセンベルグ王国以外は、魔族と共存ているのは知っているな?」


「あ~うん! 確かに・・・」


「うん! そうやったね?」


「なら、私が何を言いたいか解るな?」


「「・・・・・・・・・」」


「解るじゃろ?・・・」


「「・・・・・・・・・(汗)」」



 良子の言わんとする事は何となく解ったが、でも正直なところ半信半疑だった。

 良子からの話しでは、なぜ魔族と人族は敵対していたのか?

 元々は、大昔は人族も魔族も仲良く暮らしていてらしい。

 だがある時から突然、敵対するようになったと言う。


 その原因は、人族が魔族の村を襲ったのが始まりらしい。


 そうなのだ!

 人族が先に魔族を襲ったのだ。

 ムトランティアの『人族至高主義』の者達は、代々魔族から襲って来たと言い伝えているのだが、それは完全な嘘八百である。


 そもそも人族と魔族とでは寿命が違う。

 ムトランティアの人族の平均寿命は60~70歳ほど。

 だが魔族の平均寿命は多種多様ではあるが、200~2000歳である。

 それに人族の方が繁殖力がとても強く数が非常に多い。

 なので、数十年で死んでしまう人族は、圧倒的な力と長い寿命を持つ魔族に対抗し勢力域を広げるには、数で勝負するしかなかった。

 そして人族は魔族の小さな村を襲い、女や子供を奴隷とし、『人族こそ至高なる神の眷属』という風潮を広め、『魔族こそ悪の眷属』としたのが人族と魔族の争いの始まりなのだ。


 それを改めて良子から聞かされたチヒロとユキナは、元人族であった事を恥ずかしくも感じた。

 魔法使いとなった今では、チヒロとユキナは人族至高主義のメルセンベルグでは、魔族として見られても不思議ではないのだ。

 従ってムトランティアの世界では、『魔女や魔法使い』と言えば、ムトランティアの『創造神大魔女キキティ』の眷属とされているが、唯一『人族至高主義』のメルセンベルグでは、『創造神大魔女キキティ』は初代魔王扱いである。

 歴史が湾曲されているのは言うまでもない。

 なので、魔法使いのチヒロとユキナは、人族と魔族の友好の橋渡しの役割りを果たせる立場と言える。



「・・・という訳でじゃな、もしかしたらお前達は、勇者と対峙する可能性があるんじゃ」


「「ええええ~~~っ?!」」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!

 ほんなら俺らに、勇者と戦えってゆーんですか?!」


「そんな事は言うとらん!

 何の罪もない今代魔王を守るために、あくまでも可能性として、そうなるかも知れんと言うとるんじゃ!」 


「「ううむ・・・・・・(汗)」」


「そもそも勇者って、なんなんですか?」


「メルセンベルグ王国が勝手で無責任に日本から召喚した、何の変哲もないごく普通の『日本人』じゃよ」


「「はあいっ?!」」


「なんなんすか!

 その、ラノベでありがちなテンプレな状況?」


「まったくやよね!

 もしかしたら、同郷と対峙する事になるかも知れへんやなんて・・・」


「うむ 幸い、今代の勇者は、まだ力を付けておらん」


「ふうん・・・今どれ位のレベルなんやろ?」


「私がメルセンベルグに潜入して調べた結果・・・」


「「潜入?!」」


「おうよ! 現在の勇者はようやく限界突破したばかりでな、レベルも100をやっと超えた程度のようじゃな」


「良子さん、そんな事もしてたんですか?」


「まあな! イスヤリヤ国王の小僧にチョイと頼まれてな」


「「イスヤリヤ国王の小僧?」」


「それって・・・?」


「イスヤリヤ王国の現国王じゃな」


「「やっぱりぃ(汗)」」



 良子は流石は大魔女と言うべきか、イスヤリヤ王国の現国王を『小僧』呼ばわりだ。

 確か良子は、イスヤリヤ王国の先々代国王が王座に就くために大いに貢献したと言う。

 現王族に変わる前のイスヤリヤ王国の政権は、やはり『人族至高主義』だったそうで、良子が力を施さなければ今でも人族と魔族は敵対していただろうとのこと。

 その時に良子が手を施し、人族と魔族との『和平協定』が結ばれたんだとか。

 メルセンベルグだけを抜きにして・・・

 メルセンベルグだけは、良子の力を持ってしても、和平協定には手を取ることは無かったという。

 人から聖別された魔女や魔法使いさえも『魔族』として敵対する奴らには、何を言っても無駄だったのだ。

 もう120年以上も前の話しだそうだ。

 


「へ、へえ~~~そんな事があったんやね」


「・・・なんか言葉が出ないね」


「まあな! てな訳で今代の魔王も平和主義な訳じゃから、人族と争う気なんぞさらさら無いんじゃ!

 本当に心優しくとても可愛らしい女の子の魔王でな!」


「「女の子?!」」


「うむ じゃから、もしもの時には、お前達も力を貸してやって欲しい」


「「はい!!」」



 なんとまあ、これまた魔王が女の子だなんてテンプレな。

 こうしてチヒロとユキナは、良子と共に魔王を勇者から守る事になった。



「よし! 話しが決まったなら、早速ムトランティアへ行き、魔王城へ行くぞい!」


「「はあい!!」」



 チヒロ達は、ムトランティアへとログインした。



なんと!ムトランティアの今代魔王は女の子?!

チヒロとユキナは、魔王に会えるのが楽しみだった。


魔王が女の子だなんて、これまた、

テンプレ! 鉄板! お約束!

ですなあ~~~

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