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女装剤  作者: 嬉々ゆう
62/91

第61話 「嫉妬とお助け魔法使い終了」

お助け魔法使いがやっと終わります。


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。



・⋯━☞3週間後☜━⋯・



••✼••ムトランティア••✼••


••✼••トスター街••✼••


••✼••冒険者ギルド広場••✼••



 チヒロは、ムトランティアのトスター冒険者ギルド横の広場で、怪我をした冒険者達に回復魔法を施していた。

 それは無詠唱の回復魔法の練習のためだった。



「おお! 本当に無詠唱で回復した! ありがとう!」


「いえいえ」


「ふん なかなか筋が良いな!」


「ホンマですか?! やった!」



 チヒロは、回復魔法を良子から教わっていた。

 良子の教えてくれた回復魔法とは、普通の魔法使いが使う回復魔法とは少し違い、魔女が使う回復魔法に近いんだそうだ。

 まあ、教えてくれるのが魔女の良子だからな。

 でも、精霊の力を借りない方法なので、魔力がバンバン減る!

 なので、『MP回復(1/1秒)の指輪』を着けていた。

 それは、日本でも使えるように設定され、『認識阻害』も付与されていた。

 学校では、指輪などのアクセサリーは着けられないからな。


 魔法の施す順序としては・・・


【イメージ】→【魔力操作】→【魔法発動】


 である。

 魔法使いが回復魔法を発動する方法とは、【施したい魔法を思い浮かべる】→【魔法起動呪文を唱える】→【魔法で魔法陣を描く】→【精霊が魔法陣に魔力を貸してくれる】→【ヒールを唱える】と、後は精霊自身の記憶の中から最も近い魔法を選び魔法が発動される。

 つまりは、【施したい魔法を思い浮かべる】のと、【回復魔法の呪文】が合っていなければ、精霊にはどんな魔法を術者が発動したいのか認識できないので、注意しなければならない。

 なので、魔法使いは精霊頼りで、魔女は自分のイメージ力と魔力次第である。

 従って、魔女の魔法は術者(自分)の明確なイメージ力が魔法効果を左右するのだ。


 例えば魔女が裂傷を回復したい場合では・・・


【回復部位の確定】→【出血部の血管接続】→【異物除去】→【消毒と浄化】→【脂肪組織の修復】→【表皮の修復】

 

 と、回復魔法を発動させるプロセス的にはこうなる。

 ただ回復を施すのではなく、傷の中に遺物は混入していないか? 毒やバイ菌は無いか? などもイメージしなければ、異物や毒やバイ菌がの残っていたなら、魔法で回復処理を行った後で後遺症などが出るかも知れない事も考慮しなければならにい。

 また、この工程でイメージする時間が長ければ長くなるほど消費MPも増えるので、成功率を上げるためには、ひたすら練習して熟練度を上げて慣れるしかない。

 だが、慣れて魔法を発動させるプロセスが早くできるようになれば、魔法使いよりも早く魔法を発動させる事ができるのだ。

 そのためには実践する事が1番効果的だ。

 怪我をした相手が必要なため、ムトランティアの冒険者ギルド横の広場で怪我をした冒険者達に回復魔法を施すのだ。


 そして、ずいぶんと回復魔法に慣れた頃、チヒロと良子は宿屋でしこたま寝た後、日本へ戻った。




・⋯━☞朝6時頃☜━⋯・



••✼••日本チヒロ宅自室••✼••




「お疲れ様! よう頑張ったな!」


「はい! ありがとうございました!」


「うむ でわ私は帰るぞい

 何かあればまた呼ぶと良いぞ?」


「はーい!」


 シュパァン!


「ふう・・・」



 良子は、転移魔法で帰った。

 チヒロは、学校へ行く用意をする。



「ああ~~~(汗)

 今日からまた学校かぁ~~~嫌やなぁ~~~

 魔法で夏休み前に戻れやんかなあ?」



 などとブツブツ言いながら、歯を磨き顔を洗い、制服に着替える。

 久しぶりのセーラー服にスカート。

 もう何度か着ていたので少しは慣れたとは言え、やっぱりまだコスプレ気分が抜けない・・・

 かと言って、学ランを着るのも何か違う気がする。

 まったく妙な気分だ。

 蝉の鳴く声も聞こえない。

 夏と夏休みの終わりを嫌でも実感して寂しさを感じる。

 深くため息をつき、気持ちの切り替えのため、むりやり気持ちのスイッチを切り替えるチヒロだった。





••✼••通学途中のコンビニ前••✼••




「よっ! ユキナおはよ!」


「おはようチヒロ!」


「あれ? なんかまた髪伸ばした?」


「うん! お母さんが、『もちょっと髪伸ばしたら?』って言うから

 んで、魔法でチョチョイとね♪

 そう言うチヒロも、だいぶ髪伸ばしてるやん!」


「あ、う、うん・・・どうかな?」


「うんうん! すんごい似合ってて可愛いで!」


「えへへ そうかな?

 ユキナも、めちゃ長くなって可愛いぞ?」


「うふ ありがとう!」


「・・・」



 ユキナの髪は、背中の肩甲骨より下になるくらいに長く伸びていた。

 清楚系な可愛い女の子をしている。

 チヒロもユキナほどではないが、ポニーテールにしていつものリボンで結び、調度良いくらいに伸ばしていて、活発な女の子をしていた。

 この時チヒロは・・・


『うわぁ~~~! 俺、なんか女子っぽい会話してる?

 いかんいかん! 来年の夏には男に戻るのに、今から女子に馴染んでたらアカンやろ!!』


 と、そう思った。

 でもユキナは、ますます女の子らしくなってきたように見える。

 まるで夏休み前まで男だったのが嘘のように。




••✼••和歌山市川北中学校教室••✼••



「「おはよー!」」


「「「「おはよおー!」」」」


「わあ! 五月女さんも、姫野さんも、髪伸びたねぇ!」


「ホンマあ! 髪伸びんの早っ!!」


「「あはは・・・」」



 まさか魔法で伸ばしたとは言えない・・・



「それより2人とも、全然焼けてへんなあ?」


「ああ~~~ほんーまっ! 真っ白!!」


「ほんな! なんで? ねえなんで?」


「日焼け対策しても、ここまで白くならへんよねえ?」


「「・・・(汗)」」



 これも仕方ない事。

 魔法使いは、日焼けしないのだ。

 魔法で日焼けしたように小麦色の肌にはできるのだが、チヒロとユキナはしなかった。

 と言うか、まったく頭に無かった。忘れていたのだ。

 他の女子達はみんな小麦色に日焼けしているので、チヒロとユキナは目立ってしまう。



「「「「可愛い~~~!」」」」

 「「「「綺麗ぇ~~~!」」」」


「いいなぁ~~~ホンマに真っ白やなあ?」


「「あはは・・・(汗)」」


「もしかして病気?」


「「ちゃうちゃうっ(汗)」」


「海とかには行かへんかったぁん?」


「いや、今年も親の仕事の手伝いで海の家で仕事してたよ?」


「私も・・・」


「ふぅ~~~ん 海の家に行ってたのに?

 なんで焼けやんかったんやろ?」


「「あははは・・・(焦)」」


「でも、可愛いわなあ?」


「うんうん! 2人とも可愛くなったわなあ!」


「そ、そうかな・・・(照)」


「ふふふ・・・(照)」



 いかん! 可愛いと言われて嬉しくなってしまった!

 来年には男に戻るのに喜んでる場合ちゃうやろ!!

 めちゃくちゃ恥ずかしい!! くっ!殺せっ!

 夏休み明けの登校初日から、いきなり女子達に囲まれてしまった。

 ユキナは馴染んでいたが、チヒロは場違いな感じがしてソワソワして居心地が悪かった。


 男子達も、チヒロとユキナをチラチラと見ていた。

 チヒロとユキナを意識しているのは明らかだった。

 ユキナは、男子達の視線に少々照れ気味ではいるが平常心を装っていた。

 だが、チヒロはまったくもって無関心で気付いていない。

 そもそも、男になんか興味は無い。

 そりゃあ、身体は女の子でも心は男なのだから、女の子の方に興味を持つのは当たり前。

 話しかけてくるのは女子が多いが、かと言って、自分から絡む相手は男子ばかり。

 だがその言動が、他クラスの女子達から、チョイと顰蹙(ひんしゅく)を買う事になる。


 


・⋯━☞数日後の昼休憩☜━⋯・



••✼••1階売店前••✼••



 

 俺は、売店前にいた。

 今日は弁当を持ってくるのを忘れてしまって・・・

 と言うのは嘘で、本当は昨日まで連日で空の弁当箱を出すのを忘れたのが原因で母親を激怒させてしまって、母親の嫌がらせにより弁当を作ってもらえなかったのだ。

 どうやらまだ夏休み気分が抜けないらしい。

 なので仕方なく、パンと豆乳でも買おうと思って売店へ行った。

 すると売店前で、疎遠になっていた奴らとバッタリと再会したのだ。

 ソイツらは中1からの仲だった男子の疑義(ギギ) 慎吾(シンゴ)って奴と、(ノノ)(ミノル)って奴だ。

 中2になってからはクラスが変わって会う機会も減ってしまったけど、たまに目が合ったりした事があっても声をかける事もなく、互いに手を挙げて合図を送る程度だった。

 中1の頃は、ユキナ(コウキ)ともつるんで、いつも4人で行動していたものだ。

 今回はバッタリ出逢ってしまったので、なんとなく合図するだけなのもあれなので、昔のように声をかけてみた。

 なので、この2人とは2年ぶりに話す事になる。



「おっ! シンゴ! ミノ! 久しぶり!」


「「えっ?」」


「ん?・・・ああ、オレオレ!!

 元、五月女(ソウトメ) 博信(ヒロノブ)! 今はチヒロって名前やけどな!」


「「ええっ?!・・・」」


「・・・んん?」



『おいおい・・・なんやこのリアクションは?

 もう、俺の事を忘れてしもたんか?

 この学校で俺が女の子になったんは有名なはずやけどな?

 まさか、知らんって事はないわよなあ?

 なんなんよ! 水臭い奴らやなぁ?・・・』


 なんて思ったので、突っ込み気味に絡んでみた。



「なんなよ! もう俺を忘れてしもたんかえ?!」


「あ、いやいや! 忘れてへんけどよ(汗)」


「おお、うん! 忘れてへん忘れてへん!」


「ほな、よそよそしくすんなよ?」


「「おお・・・・・・(汗)」」


「・・・ん?」



 この時、シンゴとミノは、互いに顔を見合せて戸惑っていた。

 なんじゃ? さっきからこのよそよそしいリアクションは???

 正直話しかけた手前、このままスルーするのもあれなので、食い気味に2人に絡むようにしたが迷惑だったのか?

 この時のチヒロの男子に対しての馴れ馴れしく接する言動が、後に他クラスの女子達の顰蹙(ひんしゅく)を買う事になるとは思いもしなかった。



「お前らは、何を買うつもりなんなや?」


「俺は~~~・・・カレーパンと豆乳かな?」


「え?」


「俺も、カレーパンと豆乳やな」


「ええ? あははっ!

 お前ら相変わらずやなあ?

 ってか、俺もカレーパンと豆乳買うつもりやったんやけどな」


「そ、そうか・・・」


「ほお・・・」


「・・・?」



 チヒロは女の子になってからと言うもの、益々シンゴとミノとは絡む事が無くなっていた。

 ましてや、生徒が入れ代わり立ち代わりチヒロを見に来るくらいに有名になっていて、そして意外にもチヒロが可愛い女の子になったとかなり人気があった。

 だが、チヒロ本人はそんな事など知る由もなかった。

 ただ、女の子になって数日で夏休みに入ったからか、チヒロの事情を良く知らない生徒達も居る訳で。

 なので、男子達に隔たり無く接するチヒロを良く思わない女子達も居る訳だ。

 そうなると、女子達に人気のある男子に気安く接すると、他クラスの女子達から妬まれるのは必然である訳で・・・



・⋯━☞数日後☜━⋯・



••✼••川北中学校玄関••✼••



 朝、ユキナと2人で何時ものように登校したのだが、玄関で上靴に履き替えようとしていると、2人の女子達に話しかけられた。

 おそらく、3年の他クラスの女子達だと思う。

 するとユキナは、なんだかオドオドしだして、連れて行かれるチヒロや女子達に何も言えずに、ただ立ちすくんでいた。

 ユキナにとって、苦手な女子達なのだろうか?

 なんだが、嫌な予感がする・・・



「ねえ、五月女さん!」


「ん!?・・・なに?」


「?!・・・」


「ちょっと、私らと一緒に来てくれる?」


「すぐ済むから!」


「んん? お、おお・・・」


「チヒロ!・・・あ・・・」



 なんだか、不穏な雰囲気を醸し出した2人の女子だった。

 チヒロは男より女が好きとは言え、グイグイくる女子は苦手でもある。

 ここで下手に拒絶すると、後々何かと響きそうなので仕方なく付いて行く事にした。

 すると、学校のイジメなどでよくありがちな、トイレの個室に押し込まれてしまった。

 ・・・これは?! まさか・・・イジメ???(焦)




••✼••1階女子トイレ••✼••



「わっ! ちょちょっ! なんななんな?!」


「ええから入んなあ!」


 キィ・・・バタン! パチン!


「?!・・・お前ら」



 いきなり個室に追い込まれて鍵までかけられた!

 もしかして学校のイジメでよくあるトイレでボコるやつ?



「アンタ、この頃調子に乗ってるやろ!」


「はあ? 調子に乗ってるぅ? はっ、何のこっちゃ?」


「トボケんといてよ!」


「だから、俺が何時、何処で、何に大して調子に乗ってるってゆーんなよ?」


疑義(ギギ)君と、(ノノ)々君のことよ!」


「ん?!・・・・・・・・・はあ?」



 チヒロは、目を丸くして、そう答えるしかなかった。

 疑義と野々ってことは、シンゴとミノのことか!

 奴らがなんだと言うのか?

 チヒロには、まったく意味が分からなかった。



「はあ?って何よ!!

 アンタ、ちょっと可愛いからって、疑義君と、野々君の2人に手ぇ出しとして何をシラ切ってんのよ!」


「それって()()けやん! しかも二股っ!」


「手を出す? シラを切る? 抜け駆け? 二股ぁ?

 何を訳の解らん事言うてんのや? お前らアホか?」


「「なによお!!」」

 ドン!



 女子達2人同時に、チヒロを壁に強く押し付ける!

 チヒロは、背中と後頭部をトイレの壁に強く打ち付けられた!



「あだっ! おいおいやめろよ!!

 あのなあ? 俺とアイツらとは、1年からのただのツレ(友達)やんか!

 それがお前らと、何の関係があるんなよ?」


「関係とか()ってるんとちゃうんよ!

 ただの友達なんやったら、あんまりベタベタしやんときなってゆってんの!」


「!!・・・・・・・・・はあ? 意味わからへんわ!」




『俺がアイツらとベタベタしてた? なんのこっちゃ?

 野郎相手にベタベタするわけないやろ! 気色悪い!』



 と、チヒロは思った。


 まさか、奴らの名前が出てくるとは思わなかった。

 ベタベタしていたと言われても、正直意味が解らない。

 ただ、1年の時に仲が良くなった奴らと、久しぶりにまた話すようになっただけだ。

 そもそもチヒロにとっては、ただ男の頃の以前の男友達とつるんでいただけ。

 まったく、それ以外に他意は無い。

 だが、周囲はそうは見ていない。特に女子達だ。

 なぜなら今のチヒロは、女の子だからだ。

 チヒロは、一応は普段は女の子として自覚はあるものの、時々こうして自分を男として物事を考えてしまう。

 男女別に分けて人数を数えるときも、ついつい自分を男として数えてしまう事も・・・

 なので、この2人の女子達が、シンゴとミノとで恋沙汰で絡んで来ていたなんて思いもしなかったチヒロだった。



「ほいじゃあ、アンタは疑義君とも野々君とも、どっちとも付き合ってへんのやね?」


「へっ?・・・・・・・・・つき・・・あう・・・?

 はあ━━━━━━━━━━━━っっっ?!」


「やっ!?「きゃあ!!」



 思わず、驚きのあまり絶叫気味に叫んでしまった!

 俺が野郎と付き合う? 正気か?! 有り得ない!!



「アホかっ! 大概にせぇよお前らっ!

 なんで俺が野郎相手に付き合わなならんのじゃ!!

 俺にそんな趣味はないぞ!!」


「そんな趣味ってどーゆー事よ!!」


「そんな風に疑義君と野々君を言わんといてよ!!」


「はっ?! いやいやいや! そう言う意味じゃなくて!!」


「ほいじゃあ、どう言う意味よお!!」


「そうよお!! 何とか()ってよお!!」


「だってお前・・・俺は男やぞ!!」


「「・・・・・・・・・はあ?」」



『あれれ? なんや、このリアクション?

 まさか、俺の事を知らへんのか?

 俺が元は男やった事を・・・』

 

 

「お前ら、俺の事知らんのか?」


「知ってるよお! 知ってるから聞いてんのやろ!」


「何よそれ? ちょっと可愛いからって、有名人気取り?」


「ちゃうわあっ!! でも俺は、ある意味有名人やろが!」


「はあ? 何なーてんよの?

 アンタは、五月女(ソウトメ) 千尋(チヒロ)やろ!」


「あ、うん 今はな・・・」


「「今は?」」


「だから、俺は夏休み前までは、男の五月女(ソウトメ) 博信(ヒロノブ)やった事、知らんのか?って聞いてんのよ!」


「はあ?」


「なにを()ってんのよ!」


「だぁかぁらぁっ!!

 俺は元々男子やったって事、知らんのかって聞いてんの!

 2人の3年男子が、女子に変身したって聞いた事ないんか?!

 俺は、その1人っ!!」


「「あっ!・・・・・・・・・」」



 2人の女子達は、口を抑えて目をまん丸にして、今思い出したかのように驚いていた。



「え? え? ウソ?!

 アンタが、魔法の薬を飲んで女の子に変身したって人?」


「そう!」


「えっと確か、難病を治すために、魔法の薬を飲んで女の子に変身したって人?」


「そおっ!!」


「えっ! マジで?!」


「そうじゃよ! 自分で言うんもなんやけど・・・

 そういう意味で俺はこの学校で有名なはずやけど?」


「「!!・・・・・・・・・・・・」」



 やっと、チヒロがシンゴとミノとつるんでいたのを、恋沙汰で絡んでいない事を理解したのか、2人の女子達は黙り込んでしまった。

 なんでもいいが、こんな所でモタモタしていたら、朝のホームルームが始まってしまう!



「おい! もうええやろう!

 なんでもええけど、はやく俺を解放してくれ!」


「あ、うん・・・ごめん」


「ごめんなさい・・・」


「はれぇ?・・・」



 意外にも素直なリアクションに逆に困惑する。

 とにかくチヒロは、2人の女子達をトイレに置き去りにして、教室へと向かった。




••✼••チヒロの教室••✼••




「はぁ~~~・・・・・・・・・エライ目に遭ったわ(汗)」


「チヒロ! 大丈夫やった?」


「ええ? ああ、アイツらか?

 うん 大丈夫やよ! だだちょっと男友達について聞かれただけやから」


「?!・・・男友達?」


「うん・・・」


「もしかして、シンゴ君とミノ君の事?」


「んっ?!・・・なんや分かってたん?」


「だって、チヒロがシンゴ君とミノ君と仲良く話してるのを、他のクラスの女子達が恨めしそうに睨んでたもん!」


「ふぁい!! なんなソレ?! 」


「なんせ、シンゴ君とミノ君って、この中学で人気ナンバー1と2やからね!」


「はえっ?! そーゆー事は、先に()ってくれよ!!」


「私、ちゃんと言うたよお!

 あんまり男子ばっかりに仲良くしてたら、女子達に嫌われる事になるで!

 特に、シンゴ君とミノ君にはねって!」


「!・・・確かに(汗)

 でも、もっと解りやすく()ってよお!!」


「んもお! アッポケぇ!!

 なんでこれで解らへんのよお!!」


「んん?!・・・(汗)」



 ユキナから聞いた話しでは、チヒロがシンゴやミノ、そしてカイセイだけでなく、外の男子達とも馴れ馴れしく接し話してるのを、チヒロの事情を知らない他のクラスの女子達が恨めしそうに見ていたと聞かされた。

 チヒロは、今更ながら自分が女子だったと思い出したかのように再自覚した。

 トイレに連れ込まれた時の女子達の目を思いだし、女子らしい嫉妬の粘っこさと恐ろしさに背筋が凍った。

 その後、クラスメイトの女子からも話しを聞けた。

 普段から自分も女の子だと言うことを忘れて、男子達に馴れ馴れしく接し、またボディータッチが多い事のにも、チヒロの事情を知らない女子達から顰蹙(ひんしゅく)を買ってる事を知らされた。

 チヒロは、『元男子』とはいえ、今は女の子だ。

 誰もチヒロの事を、『元男子』だからと言って、特別には見ていない。

 そして、シンゴとミノと、またカイセイまでもが、女子達に人気があるなんて事も知らなかった。

 確かに奴らはチヒロから見ても、イケメンに属すると思う。

 でもチヒロは、自分が魔法の薬を飲んで女の子に変身した事は、全校生徒が知っているものだと思っていたのだ。

 なので、実は他クラスや下級生達には、チヒロの名前まで知らない(覚えていない)生徒達が多い事も知らなかったのだった。

 自意識過剰だったかも知れない・・・



「マジかよぉ~~~勘弁してくれ!

 ほいじゃあ俺は、男に色目使うような痴女みたいに思われてたって事か?」


「あはは・・・みたい?」


「があぁあぁあぁあぁあぁ~~~~~~ん!!!!」



 チヒロは、これからは、あまり男子達と馴れ馴れしく接しないようにしようと思うのだった。

 そのため、カイセイとも、話す事が減っていった。

 もちろん、カイセイから話しかけて来るときは、無闇に無視したりはしないが。

 一応カイセイには、チヒロの身に起きている事を説明はしてある。

 なのでカイセイは、チヒロとユキナに対して目立つ言動は控えてくれている。




・⋯━☞そんなある日のこと・・・☜━⋯・



••✼••和歌山市野咲小学校校庭••✼••



 ワイワイキャッキャッ


 ここは、サラとサラの妹マリンが通う小学校。

 サラの2時限目の体育は体力測定。

 2人組体操、50メートル走、幅跳び。

 女の子になったサラには苦手なものばかりだ。

 しかも、身体が女の子に変身してから、まだそれほど経ってない事もあり、まだまだ女の子の身体には慣れていないせいか、50メートル走で思うように走れなくて足が絡んでしまい、盛大にすっ転んでしまった!

 体育の教師とクラスメイト達が、一斉に駆け寄って来る!




「あうう~~~痛い(汗)」


 バタバタバタバタッ!

「大丈夫か椿!!」


「サラちゃん大丈夫?「怪我してない?「大丈夫う?」


「指が・・・(汗)」


「え? 指? うわあっ!! 折ったあ!!」


「?!・・・」



 体育の教師がサラの手を見て叫び青ざめる!



「「「「ええええ~~~!!!!」」」」


「ブツブツブツブツ・・・」



 激痛っ! サラは50メートル走で転んだ拍子に両手を地に着いたのだが、右手の薬指が変な方向へひん曲がっていた。

 なんと右手薬指を骨折してしまったのだ。

 みるみる内に、折れた指が赤黒くなりパンパンに腫れてきた。

 体育教師は、少々焦りながらサラをお姫様抱っこで抱え上げて、保健室へと小走りで連れて行こうとしたその時だった。

 サラは、痛さで泣きながらも、チヒロを召喚する呪文を唱え終えていた。




••✼••川北中学校チヒロの組の教室••✼••



 その頃チヒロは、社会の授業中だった。

 そんな時、チヒロの頭の中に・・・!!



《我今、ツバキ・サラの名において願いたまわる!》


「んなんっ?! おいっ!! 今、授業中やぞ?!」


「うるさいぞー! 五月女ぇー!」


「いや、あの・・・ちとヤバいっす!」


「・・・チヒロ」



 この時、ユキナだけがチヒロに起きている事象を理解していた。

 チヒロはまた、『お助け魔法使い』として召喚されたのだ!



「はあ~~~? トイレか?」


「ザワザワザワザワ・・・」



 突然、チヒロが1人で騒ぎ出すものだから、クラスメイト達は『何事っ?!』と、一斉にチヒロを注視する!



《精霊に認められし者よ!

 我の声を聞き、我の言葉に耳傾けよ!》


「いやあ~~~ん! 冗談やろ~~~(汗)」


「こらー五月女ぇ! さっきから何を騒いで・・・」


《いでよ! 魔法使いチヒロよ!

 そして我の願いを叶えたまえ!》


 ポン!

「おわっ?!」


「「「「ええええ~~~!!」」」」



 チヒロの持つ『お助け魔法使い』の『着替え玉』が召喚呪文に反応して起動!

 チヒロの制服は、魔法使いの服装に瞬時にチェンジ!!

 そしてチヒロの身体は、スゥーっと浮き上がる!



「チヒロ?!」


「ユキナぁー! また呼ばれてしもたー!

 後は頼んだぞ━━━っ!!」


「こら━━━っ! 五月女ぇっ!

 授業中やぞお!! そんな格好で何処へ行くんやーっ!」


「俺を呼び出した奴に聞いてくれ~~~!!」


 シュパァン!


「うお!! 消えた?!」


「「「「?!・・・・・・」」」」


「チヒロ!・・・」



 チヒロは、教師とクラスメイトの見ている前で、空中でシュパァン!と姿を消した!!

 みんな何が起きたのか理解できずに呆然としていた。




••✼••北川小学校校庭••✼••



 そして、この時!

 体育教師にお姫様抱っこされるサラの目の前に、チヒロが突然空中に現れ落ちた!!



 シュパァン! ドテッ!!

「あぎゃっ!!」


「うわっ!!「?!・・・」

「「「「?!・・・・・・」」」」


「いっだぁ~~~!!」


「「「「「・・・・・・・・・(汗)」」」」」



 サラをお姫様抱っこで抱える体育教師とクラスメイト達は、校庭のど真ん中に寝転がって腰を抑えて唸っているチヒロを見つめてフリーズ・・・

 突然だったが、大勢が居る場所に召喚された事に気付いたチヒロは、恥ずかしさで顔を赤くしながらも、とりあえずササッと立ち上がり、帽子を拾って被って身体に着いた砂埃を払うと、一応自己紹介をする。

 それは、照れ隠しだった。



 ササッ・・・パンパン!

「我こそは、椿 サラのお助け魔法使いチヒロである!

 我のできる範囲でなら、一つだけ願いを叶え助けてやろう!」


「「「「「・・・・・・・・・(汗)」」」」」



 なぜか自己紹介が、昭和漫画のポンコツヒーローみたいな決めゼリフになってしまったが、今更訂正できないので恥ずかしさで顔を真っ赤にし目に涙を浮かべながらも返事を待つ。

 するとサラは・・・



「ゆ、指を折ってしもたんです!

 痛いので、は、早く治してください!」


「骨折うっ?! うっわ! ホンマや!! 痛そう~(汗)

 分かった! 今魔法で治すからな!」


「うんうん! 痛いから早くぅ!!」


「はあ? お前ら何を言ってのや?

 アホな事言うてやんと!

 大丈夫か椿? 早く病院に行くぞ!」


「ちょっと先生! そのまま動かさんといてください!

 魔法で治すんやから集中させて!!」


「っはあっ?! 何なんじゃお前は!!

 ふざけてる場合とちゃうぞ! 早く病院に・・・

 何なこれ?! 光ってる!!」


「「「「おおおお~~~!!」」」」



 チヒロは既に、回復魔法を発動させていた!

 【欠損した血管の接続】→【骨折した骨の接続と整形】→【腫れ部の鎮静化】→【痛み止め】

 と、イメージした。

 チヒロは医者ではないから、骨折の治療法なんて詳しく解らないので素人考えだけど、なんとかイメージは上手くいったようだ。

 サラの指の骨折は完全に治ったようだ。



「なん・・・なんや・・・コレ?

 ホンマに治った・・・んか? マジか?!」


「すごい! 全然痛くない!!」


「「「「「ええっ?!」」」」」



 体育教師はサラをお姫様抱っこで抱えながら、プルプルと震えていた。

 どうやら魔法使いや魔法など信じないタイプのようだ。

 魔法使いや魔法を目の当たりにして驚いているのだろう。

 でもクラスメイト達は喜びと驚きで大騒ぎ!

 チヒロがサラの指の骨折を魔法で治す様子を一部始終見ていたのもだから、その驚きようと騒ぎようが半端ない!

 体育教師とサラとチヒロを円になるように生徒達が囲んでワイワイと手を挙げたり飛び跳ねたりしているものだから、その光景は怪しい宗教の生贄を捧げる儀式のようで異様だった。

 それに、本物の魔法使いや魔法を見たのが初めての生徒達ばかりで、魔法使いや魔法についてアレコレ聞かれたり持ち上げられたりされるものだから、いたたまれなくて逃げ出したくて堪らないチヒロだった。

 

 でも、珍しくサラは素直に『帰って良し』と言ってくれたので、チヒロはマジック・バッグから箒を取り出して、箒に(またが)り3メートルほど浮かび上がると、母校の1階トイレに転移した。

 念の為に人目を気にして個室に入り、着替え玉でセーラー服に着替えて、教室に戻った。

 だが、もう授業も終わりかけだったので、先生にはしこたま怒れるしで散々だった。



 それからと言うもの、サラは毎日欠かさずチヒロを召喚し続けた。

 でも願い事は、魔法使いに願うような願い事などではなく、まるで貴族令嬢が侍女にさせるような事柄ばかりだった。

 服の着替えだったり、一緒にお風呂に入ったり、親に頼まれたお使いの代わりだったり。




・⋯━☞約1月後☜━⋯・



••✼••サラ宅リビング••✼••



「すん・・・すん・・・」


「あはは なあ? もう泣くなよ!」


「でも・・・でもぉ~~~(泣)」



 サラが、顔を涙でびちゃびちゃにして泣きじゃくる。

 サラの両親も涙をポロポロ流し泣いている。

 サラの妹マリンも、サラにしがみ付いて泣いていた。

 今日で、チヒロのお助け魔法使いが終わりとなるのだ。

 本当に色々あった・・・

 大変だったが、なんとかやり遂げたチヒロは、一回り魔法使いとして成長できたように思う。

 サラの家族全員に、もう少しお助け魔法使いを続けられないかと頼まれたが、チヒロももう3年生だし高校受験も控えている。

 丁重にお断りした。


 そして、最後の願い事が1番困る願い事だった。




「僕を魔法使いにして!」


「んんっ!!・・・やっぱりそうきたか・・・(焦)」


「僕もチヒロ姉ちゃんみたいな魔法使いになりたい!!」


「!・・・ううむ・・・それはぁ~~~(汗)」



 困り果てたチヒロは、心の中で必死に良子に助けを求めた!

 すると、やっぱり期待通りに良子が来てくれた!



 シュパァン!

「うわっ!!」

「きゃ!「わっ「あっ!「リオリオさん?!」


「まったく、また面倒な事を・・・」


「あはは・・・(汗)」



 良子は、どうやらこうなる事を予測していたようだった。

 良子はサラ家族に魔法使いについて説明し、結局は家族全員が魔法使いになる事に決まってしまった。

 それは、この世界でも『冒険者の魔法使い』を増やしたい事もあり、良子にとっては、『成るべきして成った』と言うべきところか。

 これも必然なのだと良子は言う。

 もちろんチヒロには、まったく解らなかったが。

 こうしてまた、魔法使いが増えたのだった。




一回り魔法使いとして成長したチヒロ。

今後は、どうなることやら。

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