第60話 「チヒロとサラ」
『お助け魔法使い』初のお仕事です。
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
・⋯━☞翌朝☜━⋯・
••✼••チヒロ宅自室••✼••
朝起きてすぐに、チヒロは考えていた。
もし、シンに、トイレに入っている時に召喚されたら?
もし、お風呂に入ってる時に召喚されたら?
学校が始まり、授業中に召喚されたら?
他にも、食事中、移動中、睡眠中、などなど・・・
考えれば考えるほど不安になってくる。
良子さんも、とんでもない事をしでかしてくれたな。
コレじゃあホントに、自由を願う『アラビンと魔法のランタン』の魔人やわ!
ホンマに自由が無い!!
なんだか、段々腹が立ってきた。
無理難題を願い事にされたら困る。
勿論、『チヒロのできる範囲』でという事だったので、できないなら断れば良いだけの話しなのだが。
相手は小学生の子供だ。(チヒロも中学生の子供である)
倫理観や損得感情なしに、いきなり『結婚』だ。
それは、好きだから結婚したい、つまり欲しいって事だから、『所有概念』になるのだろうか?
子供だから、断れば駄々をこねてしまうだろうか?
チヒロは口下手だし、アッポケだし、相手が小学生だとはいえ、言葉で説得させる自信が無い。
小学生だから、子供だから、欲しいと思ったら何が何でも欲しい。
子供だから、思い立ったら一直線!
ゴールを見付けたら、ゴールしか見ない、見えない、見たくない。
納得なんか、できるはずがない。
(個人の見解です)
面倒な事になったと、ほとほと困ったチヒロだった。
「参ったなもぉ~~~!
なんで俺がお助け魔法使いなんじゃよ!!
俺がお助け魔法使いに助けて欲しいわえっ!!」
シュパァン!
「どわあっ!! なんなっ?!」
「まったく面倒臭い小娘めえっ!!」
「なにがあっ?!」
また、良子が突然転移魔法でチヒロの部屋に現れた!
「お前は、感情の起伏が激し過ぎるんじゃ!
しょっちゅう魔力が不安定になりよって、いつ暴発してもおかしくないぞ!!
ほんーまに、面倒な小娘めじゃなあっ!!」
「面倒やったら、別に来んでもええわいしょ!!」
「そういう訳にはいくかえ!!
小娘! お前は魔法使いになったんじゃ!
お前が自分で選んだ道じゃぞ?
それは人とは違う時間を生きる生き方をすると決めたと言う事じゃ!」
「お、おう・・・」
「じゃがな? 本来、魔法使いになった者達は、この世界を捨てて魔法使いの国へ行くもんじゃ!
じゃから、本来ならこんな面倒臭い事なんぞせんでもいぃじゃが・・・」
「へっ?! そうなん?」
「そうじゃ! ここ最近は、魔法使いになった奴らはみな、この世界に留まるようになったからな!」
「へ、へえ・・・そ、それは、なんで?」
「それは、ようやくこの世界の人々も、魔女や魔法使い達に偏見を持たずに憧れる人達が増えたからじゃな」
「!・・・そうなんや」
「その理由はな・・・」
良子さんの話は、こうだった。
昔は、魔法使いになった人は、必ず魔法使いの国(魔法の国)へ行くのが当たり前だった。
なぜなら、魔女や魔法使いは、人とは深く関わってはいけないという暗黙のルールのようなものがあったからだ。
過去、数千年前・・・
人は災いや災害や疫病を全て魔女や魔法使いのせいにしてきた。
その度に魔女や魔法使い達は、逃げるように魔法使いの国へ。
だがここ数十年は、魔女や魔法使いに偏見を持たない人々が増えたようだと言う。
過去、魔女や魔法使いと言えば、災いや呪いの対象として見られ、人々は排除しようとする傾向にあったが、ここ数十年に渡って魔女や魔法使いに対するイメージが変わってきたとされる。
それは、漫画アニメや映画、そしてゲームなどの影響が大きいと言う。
特に、この国日本では、魔女や魔法使いに扮するコスチュームプレイ、所謂『コスプレ』をしても、人々は誰も嫌な顔一つしないどころか、みんな歓迎ムードなのである。
そればかりか、魔女や魔法使いに憧れる人々が増えたとも言われている。
そのため、魔法使いに聖別された人々は、この世界に留まる者が増えたと言われているのだ。
「へえー! そうなんや!! 納得ぅ!!」
「うむ だからな小娘、お前もこの世界で生きていくには、人と関わる生き方をせにゃならん!
そのためにはな、小娘にも魔法使いとしての生き方の第一歩として、あの少女シン・・・いや、サラの我儘を聞いてやってくれ!
そして、人を相手に魔法を使うには、どこまでが許容範囲かを自分で見出せ!」
「え? サラ?」
「ああ、サラと言うのは、あの娘の女の子としての名前じゃ」
「あっ! そう言えば元々は男の子やったっけ?」
「そうじゃな 結果として自業自得ではあるが、悪戯な魔女か魔法使いの悪ふざけの犠牲者であるのは間違いないわな
じゃから、あの娘が魔女や魔法使いを嫌いにならんように、小娘お前が構ってやってくれ」
「・・・はい」
もう、今更拒否しても無駄なのは解っていた。
魔法使いになる者が、誰でも通る試練なのだと、むりやり思うようにした。
でのこの時チヒロは、『女装剤』を飲んだ者は、『魔法使い』になる可能性が高いことをまだ知らない。
・⋯━☞その日の夜☜━⋯・
••✼••チヒロ宅自室••✼••
「さあ! 今日はムトランティアへ行くぞ!
あんまりユキナに差をつけられたくないからな!」
チヒロはそう言って、『異世界ゴーグル』を着けようとしたその時だった!
《我今、ツバキ・サラの名において願いたまわる!》
「はあっ?! アイツ!! こんな時に?!」
《精霊に認められし者よ!
我の声を聞き、我の言葉に耳傾けよ!》
「えええ~~~ん! 嘘やろ~~~(汗)」
《いでよ! 魔法使いチヒロよ!
そして我の願いを叶えたまえ!》
「勘弁してくれよぉ~~~んもぉ~~~!!」
シュウゥウゥウゥウゥウゥ~~~!
「ああああああああああ~~~!!」
また! サラがチヒロを呼び出したようだ!
チヒロの着替え玉が勝手に発動して、チヒロの着ている服が魔法使いの服に着替えさせられ、身体がフワッと浮いたと思ったら、強い力に引っ張られた!
「ああああ~~~もぉ~~~クソッタレぇ~~~!!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
••✼••サラ宅自室••✼••
シュパァン! ドテッ!
「んぎゃ!!」
例のごとく、チヒロはサラの部屋にむりやり召喚された!
「いてててて・・・ああもぉ!! 今度は何ぃ?!」
「お姉ちゃん! 夏休みの宿題手伝ってぇ!!」
「・・・・・・・・・はあ?」
先日、初めてサラに召喚された時は、願い事は叶える事なく帰ったので、今回が初めてサラの願いを叶える事になる。
そしてその願い事とは、『夏休みの宿題の手伝い』だった。
「夏休みの宿題ぃ? 俺なんかそんなもん、とっくに片付けたぞ!」
「でも僕はまだなんよ! お願いやから手伝って!」
「!!・・・もお・・・
まあ、無理難題言われるよりはマシか・・・
で? どれくらい残ってんよの?」
「・・・全部」
「っはあ━━━━━━━━━━━━いっ?!」
これはまた・・・自分よりも強者が居たとは・・・(汗)
チヒロは、今日1日で解決できない事を悟った。
小学生の宿題とは言え、夏休みの宿題が全部残ってるとなれば、一晩では絶対に片付かない!
夏休みも後5日やぞ!!
全ての宿題を、やりきれるんかえ?
算数、国語のドリル。
算数、国語、社会、理科のプリント合わせて50枚。
日記、自由研究、工作。
ひええええええええ~~~!!
無理ぃ~~~~~~!!
算数はなんとかなるとして、国語と社会は教科書を見ながらじゃなきゃ無理!
理科は適当で良いだろう。
各科目どれも全問正解しなくても良しとして!
日記は? 天気はネットで『過去の天気』で調べるとして、その日その日で何をしたか思い出せるのか?
自由研究は? 工作は? 間に合うか?
魔法でなんとかなる? できる?
まだ魔導具も作った事もないのに、無理っしょ?
勘弁してくださあ~~~い!!
この日チヒロは、本気で泣いた・・・
この日からチヒロは、宿題の手伝いのために、夏休み最終日の31日まで毎日呼び出されるのだった。
・⋯━☞そして夏休み最終日の夜☜━⋯・
••✼••サラ宅自室••✼••
「はぁ~~~終わったあ!!」
「やったあ~~~もうアカンかと思ったあ~~~」
「アカンわ! 夏休みの宿題くらい自分でかんとかせえ!」
↑人のこと言えない・・・
「しゃーないやんか!
でも、チヒロ姉ちゃんは、僕のお助け魔法使いなんやから、手伝ってくれるんは当たり前やろ!」
「宿題を手伝うんは、当たり前ちゃうわあ!
ってか、ぜんぜん魔法使ってへんのに、こんなんでホンマに魔法使いの修行になるんかなコレぇ~~~?」
「ぷぷっ! ホンマにやね!
でも! 手伝ってくれて、ありがとう」
「!!・・・・・・・・・
う、んん、まあ、うん! どういてしまして」
「ふふふ♪」
サラは、そう言ってニッコリ微笑んだ。
ちぇっ! なんなんよコイツ!!
笑ったら、めっちゃ可愛い子やんか!
それになんや・・・ちゃんとお礼も言えるやん?
ま、なんとかなったから良しとしよう。
自由研究や工作をどうしたかって?
いや・・・聞かんといてくれ・・・
物的証拠として存在すれば良いのだよ。うん。
工作で作ったのは、スーパーで肉などの入っていた大きなスチロールの器にマジックで絵を描き、カッターで枠のように余白を残して四角く切り抜き、あとは適当に切り刻んでジグソーパズル風にしたものだった。
30分で完成だった。
できてりゃ、何でも良いのだよ。うん!
各ドリルやプリントは、2人でガムシャラにやった!
日記は、天気はチヒロがネットで調べ、サラが日記を書く。
日によっては、たったの2行の日もあるが、書けておれば良いのだよ!
各プリントは、2人で教科書を見ながらやった。
自由研究は、ヒマワリとアサガオの栽培観察日記とした。
でも途中で枯れてしまい、終わり・・・ってことに。
仕方ないではないか!
放ったらかしかした、サラが悪い!
枯れてしまったと言うのだから今更だ・・・
そんないい加減な事でいいのか? いいのだよ!
重要なのは、やったか、やらなかったか、だ!
やってないがな!!
いやはや、人間頑張ればなんとかなるものだ。
魔法使いだけど・・・
しかし、なんとかできて、『やりきった感』で満たされて気分は悪くなかった。
これで一応は、『お助け魔法使い』の責任は果たした!
一切、魔法は使ってへんけどな!
明日の9月1日(日)は、どうかゆっくり休ませてくれ・・・
ところが・・・
・⋯━☞9月1日(日)昼前☜━⋯・
••✼••チヒロ宅自室••✼••
チヒロは、昼前まで寝ていた。
「はれれ? えっと・・・
今、何時や? えええー?! もう11時半?!
昨日まで大変やったからなぁ~~~
くっ殺的にバタンキューって爆睡してしもたわ!!
アイツも今日は1日ゆっくりするやろ!
ってゆーことで~~~もっかい寝よっ!」
パフッ!
チヒロは、また布団に寝転んだ。
今日は1日ゆっくり寝るつもりだった。
なのに・・・
《我今、ツバキ・サラの名において願いたまわる!》
「はあっ?! アイツ!! 今日も俺を呼ぶんかえ?!」
《精霊に認められし者よ!
我の声を聞き、我の言葉に耳傾けよ!》
「えええ~~~ん! マジかあ~~~(汗)」
《いでよ! 魔法使いチヒロよ!
そして我の願いを叶えたまえ!》
「マジで勘弁してくれよぉ~~~んもぉ~~~!!」
シュウゥウゥウゥウゥウゥ~~~!
「いやああああああああああ~~~ん!!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
結局チヒロは、また呼び出されてしまうのだった。
••✼••サラ宅リビング••✼••
シュパァン! ビターン!
「あだあっ!!」
チヒロは布団に寝転んでいたので、そのままの姿勢で召喚されたので床にビターン!と落ちた!
「うわっ!「きゃあ!」
「・・・え? ここは?」
「こんにちは! チヒロのお姉ちゃん!」
「は? え? え?」
今回、呼び出されてみたら、何時もと場所が違った。
サラの部屋ではなかった。
サラが居るのだから、サラの家には違いなさそうだが、見知らぬ大人の男女が居た。
もしかして、サラの両親?
笑顔で見下ろされると怖いのだが・・・(汗)
「どうも! こんにちは~魔女さん!
私は、サラの母の『椿 蒼依』です!」
「あ、はあ・・・」
「こんにちは! 俺はサラの父、『椿 陽介』です」
「あ、はい どうも・・・俺は、えっと・・・
ああ、俺は魔女ではなく、魔法使いチヒロです」
「とりあえず、ブーツは脱ごか?」
「あ、はいはい・・・(汗)」
ゴソゴソ・・・
チヒロは、サラの両親からの自己紹介の後、自分も自己紹介しようと思ったが、苗字は伏せて名前だけ名乗った。
なんとなく、苗字は知られたくなかったからだ。
「魔法使いかあ! 凄いわなあ!
ホンマに魔法の呪文で出てくるやなんて!!」
「へへ・・・はあ(汗)」
サラの父親ヨウスケは、ガッツポーズで目をキラキラさせていた。
「うんうん! ホンマに魔法使いの格好してるんやね!
ほん~~~まに可愛い魔法使いさんやわぁ~~~♡」
「あはは・・・どうも(汗)」
サラの母親アオイは、胸の前て手を組み、父親同様に目をキラキラさせて言う。
「なあ? ゆーたやろお?
魔女リオリオさんの弟子の魔法使いチヒロお姉ちゃんやで!」
「弟子っ?! いやいや! 俺は・・・
ああまあ、弟子みたいなもんかなぁ?
んで、今日はどんな願いを・・・」
「ああ、うんうん 昨日まではサラの宿題を手伝ってくれたんやって?
大変やったやろう? ホンマにありがとうな!」
「あはは いえいえ・・・」
「可愛いねぇ~~~♡ 柔らかい手やねぇ~~~♡」
「~~~(引)」
チヒロは、男のヒロノブの頃から手を酷使するようなスポーツなどはしなかったので、手は柔らかかった。
でも女の子になってから、もっと柔らかくなった。
サラの母親アオイは、チヒロの手を取りコネコネワシャワシャと揉みほぐす。
バッ!と手を引き離すのも失礼だし、顔に出しても気の毒だし、必死に苦笑いしていた。
サラの母親アオイはニシャニシャとニヤケて、チヒロの目を凝視しながらチヒロの手を揉み回す。
相手が女性とは言え、流石に苦笑しながらチョン引きしたチヒロだった。
「あ・・・あの、お母さん?」
「いやあ~~~ん! お母さんやなんて呼んでくれんの?」
ガバッ!
「ひやぶっ!! ふうぅうぅうぅ~~~むぅ~~~(汗)」
いきなり抱きしめっ!
チヒロは、『サラのお母さん』という意味で、そう呼んだのに、アオイはチヒロに『お母さん』と呼ばれて大歓喜!
アオイはチヒロを自分の胸に顔を埋めるようにチヒロを頭から抱きしめ頭をワシャワシャ撫で回す!
チヒロは息ができない・・・
でも、なんだか良い香りがした。
「おかーさん!!」
母親アオイの裾を引っ張るサラ。
「おいおい それよりお礼するんやろ?」
「あっ! そーやったね!」
パッ!
やっとチヒロを放すアオイ。
「ぴゃあはっ! はあー! はぁ~はぁ~はぁ~~~
あああ~~~苦しかったあ~~~(汗)」
チヒロは、小さい頃に母親カナエにしか女性に抱きしめられた経験が無いので、悪い気はしなかった。
ヘロヘロになりながら、なんとか正気を保つチヒロ。
どうせなら、この人の『お助け魔法使い』だったら良かったのに・・・
って、何を考えてんじゃ俺━━━っ?!
まさか俺って、『オバ専』ちゃうやろな?
ってか、サラのお母さんって、まだまだ20代に見える若見えママさん!
むふふふふ・・・って、いかん!いかん!!
人様の母親に恋心を抱いたら死刑になってまう!(なりません)
ここは気持ちを引き締めて、サラの『お助け魔法使い』に集中せなアカン!!
この時チヒロは、自分が女の子だと言うことを忘れていた。
「チヒロちゃんには、ホンマにお世話になったから、お礼として今夜一緒にご飯でも食べへん?」
「へ?・・・・・・」
「ほら! コッチコッチ! 食堂に行こう!」
チヒロの手を取り引っ張るサラ。
「お・・・おう 食堂?!」
••✼••椿家食堂••✼••
ででぇ~~~ん!!
チヒロの目の前に広がるのは、まるで上級貴族家のパーティー会場のような空間だった。
「な・・・なん・・・なんなんこれ?」
「これは、チヒロちゃんの歓迎会やで!」
「はあい?! なんで???」
「そらまあ、うちのむす⋯娘に良くしてくれてるからやん!」
「ああ、それは俺がサラの『お助け魔法使い』やからで、1ヶ月間お助け魔法使いする事で俺の魔法使いとしての修行になるからやけどね!
ってゆーても、あんまり魔法使ってないから、ホンマにこれでええんか分からへんけどね(汗)」
「うん それでも、突然女の子になってしもて、この先も一生女として生きていかなあかんようになったサラにとって、チヒロちゃんはホンマに心の支えになってくれてると思うんよ!」
「心の支えって・・・重いわ(汗)」
「そうそう! だから、チヒロちゃんにはホンマに感謝してるんよ!
そう言う訳で、私ら家族でお礼させてな!
これからも、よろしく!って意味の歓迎会も兼ねてな!」
「・・・まあ、そう言う事やったら はい」
「「ありがとう!」」
チヒロは、この家族の歓迎を素直に受け入れた。
すると、ドアが開き、小さな女の子が自分の身体ほどもある大きなウサギのぬいぐるみの耳を掴んで引きずりながら歩いて来た。
妹・・・か?
ズルズルズルズル・・・
ペタペタペタペタ・・・
「おかあ~~~さあ~~~ん」
「あ! 真鈴、起きたん?」
「まりん?」
「そう この子はサラの妹の真鈴
小学2年生なんよ!」
「お腹空いた~~~」
「へえ・・・こんばんは! マリンちゃん」
「!!・・・お姉ちゃん、誰え?」
「あ、うん 俺は・・・おっと!
私は、サラお姉ちゃんのお助け魔法使いのチヒロやよ!」
「え? サラちゃんの?」
『サラちゃん』?!
この子(妹)、ある日突然、兄のシンが、姉のサラになったのに、まったく動じてないと言うか、あっさり受け入れてる様子。
やっぱりまだ子供だからだろうか?
しかも、姉になったサラを、『サラちゃん』と呼ぶなんて、子供らしくて可愛い♡
それに、上の前歯が2本も抜けてて、笑うと滑稽だけど子供らしくてなんだかこれまた可愛らしい。
それ以前に、両親も女の子になったサラを受け入れてるのには驚いていた。
自分の両親は、女の子に変身してしまうけど病気が完全に治ることもあって、『女装役剤』を飲むことをあっさり受け入れてくれたが、ユキナの両親なんか大騒ぎした後、この世の終わりみたいにズーンと沈んでいたのに。
こんな家族もあるもんやな・・・
と、思っていた。
そして、チヒロの歓迎会も終わり、そろそろ帰してくれないかな・・・
と思っていたら、そう言えばまだサラの願い事を叶えていない事に気付いた。
「どうも、ご馳走様でした!
とても美味しかったし、とても楽しかったです!」
「いえいえ~ 楽しんで貰えて嬉しいよ!」
「あはは・・・それより、今日はまだサラちゃんの願い事を叶えてませんでしたよね?」
「あっ ホンマや!」
「「「あっ・・・」」」
みんな、思い出して目を丸くしていた。
するとなぜだか関係の無いマリンちゃんが手を挙げて・・・
「はぁーい! はぁーい! はいはいはい!!」
「「「「え?・・・」」」」
「私は、魔法使いになりたいです!」
「「「「?!・・・・・・(汗)」」」」
また、難儀な願い事を・・・
ってか、なんでマリンちゃんが願い事を?
もしかして、ここに居るみんなの願い事を叶えてくれると思ってるのでは?
違うからねぇ!!
「えっと・・・あの・・・あのね? マリンちゃん?」
「ねえねえ! 魔法使いになったら、お姉ちゃんみたいになれる?」
「いやいや、ちょっと待ってくれる?
その話しよりも、先に話さなアカン事があるんやけど?」
「ねえねえねえ! お空飛べる?
魔法の呪文って、どんなの?」
「俺の話し聞いてる?」
「ねえねえねえねえねえ~~~!!」
「ダメだこりゃ 何ゆっても無駄やな・・・(困)」
この後、両親がチヒロはサラのお助け魔法使いであって、マリンの願いを叶えるために来たのではないと話したが、子供だけに理解できないのか、納得できないのか、床に寝転がって殺虫剤をぶっかけたコックローチみたいにドタバタと大暴れでギャン泣きされてしまう。
だが、時間も時間だけに寝室へ連行されてった。
「ごめんなぁ~チヒロちゃん(焦)」
「いえ・・・(汗)」
「チヒロちゃんも明日から学校やんなぁ?」
「そうですね」
「ほんならサラ? 今日はもうチヒロちゃんには帰ってもらおか?」
「えええ~~~!! まだ何も願い叶えてもらってないのに!」
「しゃーないやろ? もう夜の8時回ってるんやで?
チヒロちゃんも明日から学校が始まるんやから!
あんまり無理はさせられへんやろ?」
「んんん・・・・・・・・・わかった」
「・・・ホッ」
サラは、ガックリと肩を落として渋々了承した。
チヒロは、心底ホッとした。
結局今日までチヒロは、サラに魔法で何一つ願いを叶えてあげられなかった。
それでもチヒロは椿家に歓迎されていたので、それはそれで良かったと思った。
そしてチヒロは、ようやく『帰って良し』と言ってもらえた。
お助け魔法使いなのに、魔法を使わずして初のお仕事完遂!?
でもまだお助け魔法使いの期間は残ってる。
まだまだ、振り回されそうなチヒロでした。