第59話 「夏の終わり(チヒロ編)」
お助け魔法使い。
それは、良子が新しく考案した、『魔法使い育成プログラム』。
精霊の倫理観の範囲内で、自分でやりとげ解決する力を養う。
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••シン宅自室••✼••
チヒロは、椿 新という名の小学生の女の子に、『魔導書』に書かれていたと言う、『お助け魔法使いの召喚呪文』によって召喚された!
つまりは、チヒロは召喚したシンの『召使い』的な魔法使い?という事になる。
まるで『アラビンと魔法のランタン』の『魔人』的な立ち位置だろうか?
シンの使った『魔導書』には、
『お助け魔法使いは、召喚者(主人)のどんな願いでも1つだけ叶えてくれる。』
と、書かれており、チヒロは主人となるシンの願いを1つ叶えなければならない事になってしまった!
『くっそお! オバン!!
そんな事聞いてないぞー!!』
するとシンは、叶えて欲しい願いを、
『チヒロと結婚したい』
だと言うのだ!
は? バカじゃね? お前女の子やろ?
日本では、同性婚は認められていないはず。
たとえできたとしても、チヒロはまだ中学生で、シンはまだ小学生だ。
結婚なんて、まだ早い・・・
貴族の政略結婚じゃあるまいし。
って、いやいや、そんな事を言いたいのではない。
それでチヒロは、結婚はしたくないと言ったら、シンはいきなり泣き出してしまったのだ。
これにはチヒロも参ってしまった。
「うわあ~~~ん!! うええ~~~ん!!」
「な、泣くなっ! ちょちょちょっ! 頼むから!」
チヒロが、泣き叫ぶシンを前にアタフタしていたら、シンの母親が部屋にやって来た。
ま、部屋で子供が泣いていたら、そうなるわな(汗)
パタパタパタパタ・・・カチャ!
「シン! 何泣いてんの? 今何時やと思って・・・」
「あ、お母さん・・・ひっく!」
「あはは・・・どうも(汗)」
「誰っ?!」
「えっと~~~~~~・・・・・・」
さて! 困ったぞ!!
この場を何て言って切り抜けようか・・・
とにかく転移魔法で逃げるか、それとも本当の事を言うか・・・
どっちにしても、後々面倒な事になりそうだし。
などと考えあぐねていたら・・・
「もしかして、リオリオさんが言ってた、シンを助けてくれる、『お助け魔法使いさん』?」
「へっ?!・・・」
あれれ? もう良子さんの事を知ってる?!
ああそうか! 良子さんの事だから、既にシンの今後について色々と手回しをしているに違いない。
シンの母親は、チヒロが『お助け魔法使い』だとすぐに認識したようだった。
話が早いのは良いが、シンが泣いている理由を聞いたら、母親はなんて言うんやろか?
「ああ、ええ~~~と・・・まあ・・・
一応、そう言う事になってますけど(汗)」
「それより、土足のまんまやね?」
「えっ?! あっ! す、すみません(汗)」
パタパタ・・・
確かにそうだった。
シンの母親に指摘されて、慌ててブーツを脱ぐチヒロ。
そして、脱いだブーツをマジック・バッグに仕舞い込んだ。
すると、そんなチヒロの行動を見たシンの母親は・・・
「あっ! ソレってもしかして、マジック・バッグ?!」
「えっ? ああ、はい そうですね」
「どれくらい入るん?」
「どれくらい? ええと・・・確か~
1番大きいコンテナー数個分は入るとか?」
「凄おい! 私もマジック・バッグが欲しい!!」
「へあっ?! そ、そうなんですね?」
「ねえ、魔法使いさん!」
「ひゃあ!! は、はい!」
いきなりチヒロの肩をガツッ!と掴み、鼻がくっ付くくらいに顔を寄せるシンの母親!
思わず後ろへ仰け反るチヒロ。
「ひゃあぁあぁあぁ~~~近い!近い!」
「あっ! ごめんね!」
「ホッ・・・」
「ねえねえ、教えて!!
マジック・バッグを手に入れるには、どうしたらええのん?
やっぱり買うの? もし買うとしたら幾らくらい?」
「えっと、コレは・・・
俺が魔法使いになった時に、大魔女リオリオさんから貰った物なので、買った場合は幾らになるかは分かりません(汗)」
「そうなん?! そうなんや?!
んじゃあ、んじゃあ、私も魔法使いになったら、リオリオさんからマジック・バッグを貰えるって事?」
「え︎︎︎︎゛っ?!・・・それはぁ~~~どうなんやろ?」
「あれえ? 魔法使いやのに、そんな事も分からへんのん?」
また顔をグイッ!とチヒロの顔に近付けるシンの母親。
「ひあっ?! あっ、あの! 俺は・・・
俺は魔法使いになったばっかりなんで、色々と分からない事だらけで・・・」
『もぉ~いやあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!
良子さん助けて~~~!!』
チヒロは、心の中で叫ぶように良子に助けを求めた。
すると期待通りに、良子が現れた!!
シュパァン!
「きゃあ!「うわあっ!」
「おおおお━━━っ!! 良子さぁあ━━━ん!!」
チヒロは、溺れる子猫のように、良子の足にしがみ付いた!
「なんじゃい! やかましい小娘じゃな!
んで? どないしたんじゃ?」
「ふぅうぅうぅうぅうぅ~~~ん(泣)」
「あぁん???」
まったく状況が掴めない良子。
チヒロは、召喚されてからの事を良子に話した。
「ああん? 召喚されてすぐに求婚されて?
拒否したらギャン泣きされて?
んで、マジック・バッグについてネホリハホリ聞かれて?
それで、答えられず困ってたと?」
「えゔえゔえゔ~~~(泣)」
「なんじゃ、それぐらいの事でぇ?!」
「あゔゔゔ~~~ん(泣)」
「「・・・・・・(汗)」」
シンの母親は、チヒロが良子にすがり泣いている様子を見て、
『お助け魔法使い・・・この娘で、大丈夫かな?』
と、心底思った。
・⋯━☞数分後☜━⋯・
「な? そう言う訳でじゃ、お前がこの小娘を気に入ったのは判るが、結婚はダメじゃ!」
「こんなに愛してるのに?」
「愛してるっ?!」
「いやぁだぁ! この子ってば!!」
頬に手を当て、なぜか舞い上がる母親。
「いやいや、たとえお前がこの小娘をどんなに愛してもじゃ!
この小娘がお前の事を結婚したいぐらいに好きにならにゃ、小娘をお前には、やれんぞえ?」
「ふぅん・・・」
「ちょっ! 良子さん!
俺のおかーちゃんでもないのに、変な言い方せんといてぇ!!」
「なんじゃ? もしかして、シンが好きじゃったんかえ?」
「ちゃうわえ!! なんで、そーなんのっ?!」
「クックックッ・・・まったく
小娘よ、お前はホンマに弄りがいがあるなぁ?」
「勘弁してくれ!!」
「わっはっはっ!」
「「・・・・・・・・・」」
この後、良子から『お助け魔法使い』のルールについて聞いた。
そのルールの内容とは・・・
①お助け魔法使いは、主人が、『帰って良し』と許可するまでは帰れない。
②お助け魔法使いは、主人の願いを1日に1つ叶えること。
③お助け魔法使いは、精霊の倫理に反する事以外、または、お助け魔法使いの可能な限り許容範囲までの主人の願いは必ず叶えること。
と言う設定らしい。
・・・おい それは、やり過ぎやろ?
どんなに嫌がっても、『お助け魔法使い召喚呪文』を主人に唱えられたら、如何なる場合も強引に召喚されてしまうらしい。
『何ソレ?! やだ怖いっ(汗)
トイレやお風呂中に召喚されたら、どーすんの?!
お助け魔法使いの身分設定が低すぎやせんかえ?
それやったらまるで、『奴隷』やいてよ!』
「なんじゃいそれぇ~~~!!」
「とにかく今日はもう遅い!
だからもう、明日にせんかえ?」
「あ、はい わかりました」
「ふぅ・・・やれやれ」
「ほな、私らは帰るからな!」
「「はい・・・」」
シュパァン!
良子は、チヒロを連れて転移魔法でチヒロの家に転移した。
やれやれとはなったが、明日?
『また明日も、明後日も、明明後日もあるんかえ?!
これが1ヶ月も続くんかえ?!
嫌やぁあぁあぁあぁあぁ~~~!!!!』
チヒロは、また心の中で絶叫した。
その時チヒロは、下っ腹に違和感を感じていた。
・⋯━☞チヒロ宅リビング☜━⋯・
シュパァン!
「おおっ!「あっ!」
「戻ったぞ!」
「ただいま・・・」
「「お帰り!」」
「・・・なんや? 落ち込んでんのか?
帰るのが、そんなに嫌やったんかえ?」
「・・・違う! 腹痛い・・・(汗)」
「腹痛い? なんじゃ小娘
何か拾い食いでもしたんかえ?」
「するか!! あゔゔゔ~~~
おっかしぃなぁ~?
腹壊すような事してへんのになぁ?」
そう言えば、数十分ほど前から、下っ腹に違和感があった。
んで、家に着いた途端に、急に強烈に痛くなってきたのだ。
これは、またトイレとお友達になる事になるなぁ~~~なんて考えていたら、何か自分の意思とは裏腹に勝手に出てくる不快感に襲われた。
コレは、オシッコ? いや、違う!!
「アカン! トイレっ!!」
バタバタバタバタッ!
「あっ! おいっ?!」
「チヒロ?!」
「ふぅん?・・・・・・はっ! そうか・・・
ちょうど、それくらいの時期か なるほど・・・」
「「何がですか?」」
「アレじゃよ」
「「あれ?」」
「初潮じゃよ!」
「しょっ・・・ぬわあっ?!」
「あっ! そっかあ!
うんうんうんうんうん!
チヒロも本物の・・・大人の女になったって訳やねぇ!」
「そう言う事じゃな」
そうなのだ。
チヒロが女の子になって、ちょうど一月近くになる。
ようやくチヒロの肉体は、立派な女性へと成長したという事だ。
・⋯━☞しばらく経って・・・☜━⋯・
••✼••チヒロ宅トイレ前••✼••
コンコン!
「おーい! 小娘や! 大丈夫かえ?」
「えうっふ! すん・・・すん・・・」
トレイの中から、チヒロのすすり泣く声が聞こえた。
良子は、あえていつも通りに話し掛ける。
「なんじゃ、泣いてんのかえ!
お月さん くらいで泣くやなんて、何時もの小娘らしくないのう?」
「うっさいわオバン!
血ぃっ! 血ぃいっぱい出たんやぞ!!
俺、しっ・・・死ぬかも知れへん!!
こんな・・・こんなぁ・・・あゔゔゔ~~~(泣)」
「はぁ・・・開けるぞ?」
カチャ・・・
「ひゃあっ?! なん!なんで入ってくんのよ!」
「じゃかいしいわっ!」
「やっ⋯やっ⋯やっ⋯やぁあぁあぁあぁ~~~!
入るなあああああ~~~!!
見るなあぁあぁあぁあぁ~~~!!」
「ああ~もお~うるさいっ! 黙れっ!
ちゃんと処理の仕方を教えてちゃるから!」
バタン!
「ひぃいぃん・・・(泣)」
良子は、チヒロが拒むのも構わず、小さな包み袋を持ってトイレに入って来た。
そして、生理用ナプキンの使い方を丁寧に教えてくれた。
それからと言うもの、チヒロは自分で何をしたのか、良子とどんな話しをしたのか、まったく覚えていなかった。
・⋯━☞翌朝☜━⋯・
••✼••チヒロ宅自室••✼••
「!・・・あれ?
俺・・・いつの間にか自分の部屋で寝た?」
マジで、まったく覚えていない。
酔ってもないのに。
って、またお酒なんて飲んだ事がないので、酔った経験も事もないが。
どうやって自分の部屋へ来たのか?
どうやって布団を敷いて、どうやってパジャマに着替えて、どうやって寝たのか?
でも、下っ腹の不快感と痛みは、まだ相変わらずある。
しかも、なんだかパンツがゴワゴワして少し重いような気がする。
なんじゃコレ?
とにかく、トイレに行こう!
そう思って、のそのそと起き上がり、トイレに向かう。
••✼••チヒロ宅トイレ••✼••
便座に座る前にパンツを下げて見て飛び上がりそうになるほど驚いた!
足をガニ股にして、膝まで下ろしてビヨ~ンと伸びたパンツにくっ付けてあるナプキンがとんでもない事に・・・
チヒロは、そんな情けない姿勢で、しばらくの間フリーズしていた。
そして、なんとか気持ちを落ち着かせて便座に座ると、今まで無かったはずの小さな棚が設置されている事に気付き、中を確認すると、新しいナプキンと、濡れティッシュが入っており、棚の上には新しいパンツと厚めのパンツが畳んで置かれていた。
「コレを穿け・・・って事なんやね」
チヒロは、珍しく察した。
ナプキンの使い方は良子に教えられ覚えだが、なんとか1人で処理できた。
こんなのが毎月何日間も続くのかと思うと、はやく男に戻りたいと改めて思った。
「あと、11ヶ月か・・・」
単純に考えても、11回くることになる。
「こりゃあ、試練やなあ。
普通の女の人なら、人生の半分は毎月くることになるんか」
チヒロは、処理が終わった後もしばらく便座に座ったまんまで、ぼぉーっとしていた。
「女の人って、大変やな・・・」
などと呟きなが、リビングへ。
••✼••チヒロ宅リビング••✼••
「ん? チヒロ、顔赤いで? 大丈夫?」
「うん・・・だいじょぶ」
お腹の痛みに耐えているので顔が赤いチヒロ。
「そう? それより、宿題もう終わってんの?」
「うん ユキナにも手伝ってもらったから」
「そっか! でもユキナちゃん、シッカリしてきたなぁ?
最近は、ホンマに女の子らしくなってもて!
チヒロもユキナちゃんを見習わんと!」
「ふぅ・・・」
また、その事か・・・と思いながらため息をつく。
でも、ココで下手に反発しても何も良い事などないので、一応素直に返事をする。
「へ━━━━━━━━━い・・・」
「はぁ・・・ホンマにシッカリしてよお?」
「はぁ~~~~~~~~~~~~い」
「んもお! この娘はまったく・・・」
なんかこの頃、ユキナとよく比べられる。
それは勿論、ユキナはチヒロと一緒に『女装役剤』を飲んで女の子になったからである。
そんなユキナはどんどん女の子らしくなっていくのに、チヒロはまったく女の子らしくしないだとか、何をするにも計画性が無いだとか、口が悪いだとか、それはもう嫌になるくらい色々とグチグチ言われる。
世の他の女の子達も、こんな事を言われたりするのだろうか?
でもチヒロは、約11ヶ月後には男に戻るのに、『女の子らしくするのは無意味だ』と思っている。
だけど、そんな気持ちとは裏腹に、自分の身体がどんどん女の子らしく女性らしくなっていく自覚はある。
またそれと同時に、男に戻った後のビジョンがまったく思い描けない・・・
と言うより、想像ができないのだ。
それほど女の子の身体に心が馴染んでしまったのか・・・
今では、男だった頃の名前『ヒロノブ』よりも、今の女の子の名前の『チヒロ』の方がしっくりくる。
こんな事で、もし男に戻ったとき、ちゃんと男として生きていけるのだろうか?
そんな不安に苛まれる毎日だった。
・⋯━☞夏休み最終月曜日☜━⋯・
••✼••加汰海水浴場海の家••✼••
チヒロとユキナは、海の家に設置してあった冷蔵庫やコンロやシャワー設備、他テーブルや椅子などを片付ける。
建築業の親戚からクレーン付きトラック(ユニック車)を借りてきて、父親トラオがクレーンを操作する。
トラオは、『小型移動式クレーン運転技能講習修了者』と、『玉掛け』の資格を持っているので、クレーンの運転は可能だ。
そんな父親を見てチヒロは、自分もクレーンを動かしてみたくてウズウズする。
だがトラオは、ガンとして許してくれない。
当たり前だが・・・
『無資格者』は、触ってはいけないのだ。
トラックのクレーンで冷蔵庫を釣り上げ、トラックの荷台にのせて、ロープで倒れないように縛る。
毎年この光景を見ると、
『いよいよ夏も終わりか・・・』
と、寂しい気持ちになるものだ。
チヒロ達は、倉庫へと移動した。
••✼••的屋道具倉庫••✼••
荷降ろしが終わると、倉庫まで運んで徹底的に洗って片付ける。
これがまた大変な重労働なのだ。
だが今年のチヒロ達は違う。
手に触れて創造魔法で、『浮け』と言うだけでフワッと冷蔵庫のような思い物でも浮き上がらせられるので、スイスイ移動できる。
『魔法! 魔法使い! 超便利!!』
これなら、海の家でも備品の積み込みにクレーン付きトラックなんて、必要無かったのでは?
とは思うのだが、人目の手前、自分達が魔法使いだとバレたらいけないので、毎度のようにクレーンで積み込みをしたのだった。
海の家の小屋は、知り合いの鳶職の人達が解体片付けをしてくれる。
あとは、なーんにも残らず、まるで海の家など最初から無かったかのように、普段の静かな砂浜へと戻るのだ。
「終わったな・・・」
父親トラオが、倉庫の鍵を掛けた後で扉を見つめながら言う。
「うん・・・なんか、あっという間やったな?」
「そりゃあ魔法が使えるんやからな!」
「ちゃうよお! 今年の夏がよ!」
「ああ・・・色々あったからなあ」
「ホンマに色々ありすぎたわ」
「・・・」
ユキナは、なんだか感傷に浸るように黙り込む。
そんなユキナに、トラオは茶封筒を手渡す。
「コレ、ユキナちゃんに!」
「えっ?! コレは?」
「御祝儀やよ!」
「えええっ?! なんで?」
「今年はユキナちゃんのお陰で、ホンマに儲かったからな!」
「!!・・・ありがとう!」
ゴソゴソ・・・
ユキナは、御祝儀袋を開けてみる。
中には、3万円も入っていた!
「えっ!!・・・こんなに?! ええのう?」
「うん! よお頑張ってくれたからな!」
「はあ! ありがとう!! おっちゃん!」
「えへへ・・・(照)」
「むぅ・・・・・・」
ユキナにお礼を言われて照れている父親。
そんな父親を見てチヒロはムスッとするのだった。
なぜなら、チヒロとユキナとでは父親の態度がまるで違うのだ。
ユキナには、妙に優しい。
ムカつく・・・
それだけではない。
「おとーちゃん! 俺には?」
「はあ? 的屋の娘なんやから、仕事を手伝って当たり前やろ?
御祝儀なんか、ある訳ないやろが!」
「がぁあぁあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」
チヒロは、ショックで糸の切れたマリオネットの様に、その場に崩れ落ちた。
「酷いわ・・・そんなんないわ・・・
あんなに頑張ったのに・・・
おとーちゃんの人でなし━━━!!」
「やかましわ! お前は玉無しやんか!」
「んなっ?! 酷い! 酷すぎるう!
玉は無くても、豆はあるわ━━━!!」
「「?!」」
パチィ━━━ン!
「きゃん!!」
おっと! 失言・・・
ユキナはチヒロの背中を思い切りひっ叩いた!
「なんて事言うんよ アッポケ━━━ッ!!」
「いだい~いだい~いだい~~~すんすん・・・(泣)」
「お前な? 女の子なんやから、そーゆーところは直せよ?
おとーちゃん、お前の将来が心配になるわ」
「うっさいわぁ! 俺は男に戻るんじゃー!!
男に戻ったら、『玉無し』なんか言わせんからなあ!!」
パチィ━━━ン!!
「んぎゃん!!」
「いい加減にしてえ!!」
「ゔええ~~~ん! なんで俺ばっかし~~~!」
「「・・・・・・(汗)」」
本気でチヒロの将来を心配するトラオとユキナだった。
チヒロの泣く声が、女の子としての始まりを告げ、
ツクツクボウシの鳴く声が、夏の終わりを告げていた。
とうとう、本物の女の子になったチヒロです。




