第5話 「虹音」
海音の「姉」が登場!
海音の姉は、金髪碧眼美少女だった。
オマケに、魔法使いにとって要というべき「知力」が高く、しかも晴蘭に夢中の真性百合っ娘!
更に! 類稀なる変態きsh・・・げふん!げふん! 癖の強い特異な個性!
未来は「大魔法使い」になると誓う晴蘭にとって、どんな脅威となるのか。
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
晴蘭が魔法使いに覚醒してから1週間。もう完璧に自分のステータスを見れるようになっていた。
ステータスを見る「魔法スキル」とは、自分好みにイメージしたスクリーンを目の前の空間に投影し、そのスクリーン上に自分の現在の身体の状態や、最良時の身体の状態などの任意の項目を数値化し、名前、性別、年齢、資格などを表示させる術である。
・・・というのが一般的な解釈である。
実は、この「ステータス」という「魔法スキル」とは、術者が魔力1を使って、精霊に「魔法を無詠唱で発動させるためのスキル化」を依頼をする、いわゆる「魔法の聖別」を行うことである。
詠唱も魔法陣も必要なく、合言葉ひとつで魔法が発動できるようにと聖別したものが「スキル」や、「魔法スキル」と呼ばれているのだ。
「聖別」とは、何の変哲もないものから、「特別なもの」へ変化させることとして定義されている。また、普通の人を魔法使いへ転生させる事も聖別と呼ばれている。
宗教的な解釈では、普通の物を、聖水などで浄化して、神聖な儀式などに使う「特別な物」にする事を聖別とされているが、それはまた別のお話。
ステータスを表示させる魔法スキルの習得は、結構難しい。
それには、魔法使い派閥によって異なるが、晴蘭が母親から教わった方法がある。
【ステータスの初期設定をする】
①自分のステータスを初期設定するためには、先ず自分の最大魔力量を測った後に行う事を推奨。まだの場合は、先に最大魔力量を測っておく。
②魔力1とはどれくらいの魔力なのかを、視覚的、体感的、心理的な感覚で、完全にマスターしておく。
なぜなら、この、自分のステータスを初期設定する魔法が、魔法使いにとって初めて精霊と一緒に魔法を使う事になるので、1番最初の魔力使用量が、今後の精霊と術者との「対価交換の基準」とされてしまう可能性があるからだ。
スタータスを表示する際に、毎回魔力1以上使うなんて勿体なくて、まったくもって無駄な話だ。必要以上の魔力消費はできるだけ抑えたいだろう。そのために、魔力を最低の1だけ使えるように「魔力制御」をマスターしておくことがベストだ。
③魔力1を使用して、宙にステータス・スクリーンを作成する。大きさやデザインは自由に変更して構わない。また先輩魔法使い達の教えに従い、テンプレを使用するのも良し。
そして消す時は、「消えろ」とイメージするだけで消えるはずだ。
これを、何時でも何処でも、完璧にできるようにマスターしておく。
④体力は完全に回復している状態で行うこと。体力が減っている状態では、正確な数値を測れないからだ。体力は、初期設定時に基準として「100」になる。
自分の魔力と体力が十分に回復していること、健康であること、疲れていないことを認識できていること。もしこのとき体力が十分でない、または健康とは言えないと判断した場合は、体力が完全に回復するのを待つか、回復薬などで体力を完全に回復させておく。
体力を十分に回復できる術が無い場合は日を改め、完璧な健康状態だと確認できる日に行うこと。
⑤体力が十分に回復しているなら、ステータス・スクリーンを表示させ、魔力が回復するのを待つか、魔力回復ボーションなどで魔力を回復しておく。
⑥魔力1を引き換えに、精霊から借りた魔力を身体中に満たすイメージで充填させて、次のように精霊に願う。
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【エコ・エコ・アザラク、エコ・エコ・ザメラク、エコ・エコ・ケルヌンノス、エコ・エコ・アラディア×3回
(テンションを抑えて言う)
夜空に美しく光り輝く神秘的な月
東と、南と、西と、北の精霊達よ
我の声を聞き、我の言葉に耳傾けたまえ
我は、汝を呼び出さん
大地と、海と、風と、火の精霊達よ
我の魔力1と引き換えに、
我が今行うこの術に力を貸し、
我の願いを、速やかに、確実に、絶対に、叶えたまえ
(ここから願い事を言う)
(例)我の身体の状態を把握測定後、我の指定したステータス・スクリーン上に、各能力や状態を項目別に分類して、最大の数値と現在の数値、我の最大魔力値と現在の魔力値とを表示してください。そして我が「消す」と念じたなら、全て消して下さい。次回からは、「ステータス」の合言葉で、我の魔力1を引き換えに、我の示したステータス・スクリーン上に全てのステータスの状態を更新した数値を示してください。
(願い事はここまで)
(テンションを上げる)
さあ、魔法はかけられたり!
大地と海との全ての力をと、
月と太陽の全ての威力で、
我のこの願い、速やかに、確実に、絶対に、叶えたまえ!
呪文を唱えよう! 効き目は絶大!
エコ・エコ・アザラク、エコ・エコ・ザメラク、エコ・エコ・ケルヌンノス、エコ・エコ・アラディア×3回以上】
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(願い事)これは、あくまでも「例」である。要は、「身体の状態を数値化して欲しい、ステータス・スクリーンに表示して欲しい」と、精霊に伝われば良いのだ。
精霊が術者の「体力」、「力」、「素早さ」、「賢さ」などの状態を数値化してくれるので、その数字らが術者の現在の各ステータスの基準(初期設定)となる。
それらが表示されている事を確認すること。そして一旦消して、いよいよ思い通りにステータスが表示されるか試してみよう。
⑦魔力1を使用して、「ステータス」の合言葉で自分のイメージしたステータス・スクリーンを宙(空間)に表示させると、精霊が術者のステータスの数値を、今現在の数値に更新してステータス・スクリーン上に表示してくれる。このとき、MP(魔力)が最大値から1減っているならば、成功だと考えてよいだろう。
次回からは、この基準の数値から少しでも数値を上げようと、魔法使い達は奮闘するのだ。
⑧配列された各ステータスを自分の好みに並び替えると、精霊が各ステータスのレイアウトを記憶してくれるので、次回からは術者の設定した通りに表示してくれる。レイアウトは何時でも変更可能。
また各ステータスの項目名称は、術者の任意に変更できる。
⑨ステータス・スクリーンにを消すようにイメージすると、ステータス・スクリーンと一緒に、ステータス情報も消える。
⑩ ⑦から繰り返し練習し、熟練度を上げる。
晴蘭は、ここまでできるようになるまでは、結構苦労した。何度も何度も繰り返し、自分のイメージした通りになるまで行うことにより、精霊に自分の思う通りにイメージが伝わるようになったのだった。今では難なくできるようになって、INTも1ポイント上がった。
今日も晴蘭と海音は、晴蘭の部屋で「ステータス表示」魔法スキルの練習をしていた。
「ふむふむ MPが2上がって、122になったぞ」
「ええなぁ~ 俺なんか、まだ55やで」
この頃には、自分達のステータス情報を、ゲーム感覚で理解し易いように、「体力」を「HP」に、「魔力」を「MP」に、「魔力の操作と制御」を「INT」に設定していた。
魔法は使えば使うほど熟練されて、イメージが鮮明になってくるのだそうだ。つまり魔力操作と制御が上手になってゆくのだ。それを表す数値が「INT」にも影響するのだという。
「ほほお! INTも28になってる!」
「ふぅん・・・俺は、22やな」
INTが上がると、精霊から借りられる魔力量も増えるし、強い魔法の発動時の魔力から受ける肉体的や精神的の苦痛も減り(脱力感や倦怠感)、身体の中を流れる魔力も滑らかに安定してくるので、より多くの魔力を操作制御できるようになり、相乗効果として、精製する魔法薬の効果や、生成する魔導具の効果や完成度も上がるのだそうだ。
という事は、INTが上がれば、思い通りの魔法も作れるって事? 難しいのはともかく、簡単な魔法なら今ならできるかも?!
俺はこの日の夜、1人で試してみることにした。
サクラ婆ちゃんの使っていた部屋の鏡台の前にて・・・・
ガクッ・・・
「なんてこっちゃ・・・俺は・・・」
俺は、その場に崩れ落ちた。
魔法で、身体の表面的な色に変化を与えてみたのだ。
サクラ婆ちゃんの鏡台の三面鏡を開いて自分の姿を見た。そして鏡に映る自分の顔を見て死にたくなった。魔法で髪の色を金髪にして、瞳の色をブルーにしてみたんだが、まっっっったくと言っていい程似合ってない。なぜだ!! 魔法は成功したのに。
自他共に認める生粋の日本人幼女のルックスに金髪碧眼・・・
まるで金髪碧眼の日本人形のようで我ながら怖かった。(晴蘭評価目線)
俺は、憧れの金髪碧眼を諦めた。
そして次の日・・・・
「ほれ! INT23に上がったぞ!」
「凄いやん! 昨日まで22やったのに、もう1個上がったん?」
「ふふん まあな!」
「それより、種族と職業と称号が増えてたぞ!」
「あー! 見た! 見た! うんうん!」
晴蘭は、少しホッとした。海音は、晴蘭が大魔法使いの素質があると知って、少し劣等感があったようだったので、晴蘭は海音のことを気にしていた。でも海音は、今回とても大きな結果を出す事になる。
そして今日になって、2人のステータスに新たに項目が3つ増えていた事に気付いた。
種族と職業と称号だ。
晴蘭のステータス
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・⋯━☞STATUS☜━⋯・
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名前 白鳥 晴蘭
性別 女
年齢 13
種族 女性魔法使い
職業 転生幼女
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LV 4
HP 104
MP 122
STR 2
ATK 3
DEF 2
INT 28
SPD 4
EXP 189
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称号
【紀州百合っ娘予備軍】
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海音のステータス
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◇:*:♤:*:ஐ={✿}=ஐ:*:♤:*:◇
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◇:*:♤:*:ஐ={✿}=ஐ:*:♤:*:◇
名前 相良 海音
性別 女
年齢 13
種族 女性魔法使い
職業 魔法少女見習い
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 9
HP 109
MP 55
STR 3
ATK 4
DEF 4
INT 23
SPD 5
EXP 879
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【金髪碧眼真性百合っ娘の妹】
◇:*:♤:*:ஐ={✿}=ஐ:*:♤:*:◇
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「なあ、職業の゛転生幼女゛の、゛転生゛って、どーゆー意味?」
「転生幼女? 幼女てか・・・さあ? 一般の人から魔法使いに転生した・・・それか、男から女に転生した・・・とか?」
このとき海音は、晴蘭の「職業」が、「転生幼女」と聞いて、自分の「職業」が、「魔法少女見習い」になっていることは、晴蘭には話さなかった。
なぜなら海音は、晴蘭が以前の晴蘭とは雰囲気が違う事に気付いていたからだ。受け答えもハキハキするようになってるし、一人称が「ボク」から、「俺」になってるし、何よりオドオドしていた筈の晴蘭が、今では食って掛ってくる。
だから、自分の職業が晴蘭とは違うことに、まだ理由はハッキリしないが納得していたし、なんとなく話してはいけない気がしていたのだ。
海音は、晴蘭の職業が自分と違う事実から、晴蘭が以前の晴蘭ではない事を確信した瞬間だった。
晴蘭よりも海音の方がEXP(経験値)が多いのは、海音は元々この世界の者であり、元々魔法使いの子供なのだから当然である。もちろん、自分達が魔法使いだと知ったのは、「蔵での変身事件」の時だったのだが。それ以前から知らず知らずの内に、経験値は上がっていたのだ。
その点晴蘭は、「魔法の存在しないパラレルワールド」からやって来た者であり、魔法使いとしての経験値が低くいのは当然である。
「・・・なるほど んじゃ、転生=転職ってこと?」
「ああーそうかもなあ? それか、就職かもな?」
「なるほど・・・」
「なあ、それより、お前の視点はそこ?」
「ん? 何のこっちゃ?」
「お前、精霊に゛幼女゛呼ばわりされて、何も思わへんの?」
「あ!・・・ああ~~~はいはい」
確かに。言われてみれば、ね。不思議なんだが、まったく気付かなかった。と言うか、気にしていなかった? と言うことは、幼女だと、我ながら認めてるってことか? それって、ヤバくね? 何か急に恥ずかしくなってきた!! いやいや、気にしたらまた眠れなくなるから、とにかく誤魔化すことにした。
「そ、そん、そんなんゆーても、しゃーない、や、やろ?!」
「わかった!わかったぁ! そんな顔真っ赤にせんでも、ええやろがよ?」
「お、おお・・・」
くっっっっそぉおおおおー!! 恥ずかしい気持ちが顔で出てたかぁー! 一生の不覚だっ! いや末代までの恥っ! くっ殺せ! 頼む! 忘れてくれ! いかんいかん! ここは、平常心! へーじょーしん! うん!
「え、えっと、んじゃなんで、女性魔法使いって、種族になるんかな? コッチこそ職業とちゃうん?」
「ん? んー確かにな?」
「中学生=職業 じゃなくて?」
「まあ、精霊のやる事やからなぁ~俺らとは考え方が違うんかも?」
「なるほど・・・人間とは概念が違うって事かな?」
「そんなとこやろな~」
やっぱり、精霊って人間とは考え方も概念も違うようだ。
母親が、精霊には「所有概念が無い」って言っていた。
言葉で表現するならば、「物質的な肉体を持たない自我」なのだから、「物質的な物を必要としない」のだ。
だから、魔法使い達の記憶や能力を奪うのもありか。所有概念が無いから、奪っても精霊の倫理には反しないんだから、良く言えば「悪気が無い」ってことだな。悪く言えば、「タチが悪い」だな。怖っ!
俺達、魔法使いも、「モラル」が問われる事になるので、気を付けなきゃいけないな。ってか、人の物なんて取ったりしないからな!
それはさておき・・・
またその反対に、術者のたった魔力1だけで、時には膨大な魔力を貸してくれるんだから、太っ腹だな。もちろん、魔法使いの魔力には、魔法使い達それぞれに、個々固有の違った「意識や記憶や感情」が含まれるからであり、精霊はしっかり対価は得ている訳だ。
精霊はそれらを取り込んで、「自己の体験、記憶」として、「擬似的体験」をして、「楽しむ」と言う。つまり精霊にとって魔女や魔法使いとの関わりは、「娯楽」なんだな。
ただ、精霊にも「不快な事」があり、具体例を挙げれば、他者を傷付けたり、命を奪うなんてものは、「倫理に反する」ということ。そこは、「人としての倫理」でも当たり前の事なので、理解しやすい。だから魔法で悪い事をするとペナルティを与え戒めるのか。
人には生命や健康な身体や、自由や、家族などの大切な人や物など、失いたくないものがある。
でも精霊には失うものなどない。
だって物質的な肉体が無いから「生命や寿命や所有」という概念が無いから。
だからこそ、ただ「生きるもの」を俯瞰するだけでは飽きてくるから、魔女や魔法使いの魔力を通して、彼らの体験などを取り込み、自己の体験として楽しむんだ。
まるで、「神」のようだな。
いや、神は俺達を生み出して、俺達がどんな生き方をするかを、ただ俯瞰して楽しんでいるだけで何もしない存在だけど、精霊は魔力を貸してくれるから、有難い存在だ。
ただ、人との倫理観や既成概念の違いが、たまに傷か。
なるほどね。精霊はまだまだ人間の事を理解できそうにないようだ。って言うか、別に精霊にとって人間の倫理観なんて、理解する必要なんて無いけどな。逆に精霊の倫理観を、人間に押し付けられても困るしな。
「なあなあ、コレ見てん?」
晴蘭は、自分のステータス・スクリーンを指差して海音に聞く。
「っておい、他人のステータスは見えへんやんがよ」
「あ! そうか・・・確かに」
そう。他人のステータス・スクリーンは見えないのだ。コレも精霊の倫理の一片なのだろうか。だが、ふと思う事があった。
「え? でも、おかんが俺のステータス見れる虫眼鏡みたいな魔導具使ってたぞ? あれは?」
そう。以前母親が、俺のステータスを見れる「虫めがね」みたいな魔導具で見てたのを思い出した。じゃあ、あれは何だったんだ?
「あれは、HPとMPだけが見れるヤツやろ? 俺の母ちゃんも持ってたからな」
「へぇ・・・そうなんや?」
海音の母親も持ってたんだ?
そうか、海音の母親も魔法使いだったもんな?
魔法使いは、13歳で魔法使いとして己を知り、初めて魔法を学ぶ。だからそれまでは、家族が魔法使いだと知らされていなかったのだ。
親父さんも、魔法使いだった。確か、海音の「お姉ちゃん」も魔法使いだったな。めっさ美人の。いやいや、今はあの人の事は考えないでおこう。ってか、もう思い出した時点で、フラグは確実に立った気がするが・・・
「なるほど・・・そーゆーことか」
「せやな」
「なあ・・・」
「なんや?」
「称号の゛紀州百合っ娘予備軍゛って何やろ?」
「さあ・・・? それより、俺の称号の゛金髪碧眼真性百合っ娘の妹゛って何なん?」
「さぁなぁ・・・?」
「「・・・・・・???」」
この「称号」について理解できない2人は、幸か不幸か、悩ましいところだ。
そこで、晴蘭は、「百合」について、スマホでググってみた。
『百合(ゆり)は、女性の同性愛のこと。また、それを題材とした創作物の・・・』
晴蘭は、見なかった事にした。
2人のステータスに表示されている「称号」が明記されている原因について、この後明らかになるのだった。これにて、完全に「金髪碧眼真性百合っ娘フラグ」が完全に立った訳だ。晴蘭は、漠然と「やってもたかな?」と思った。
そして俺達は今回、名付けて「空間拡張キューブ収納型魔導具」の研究開発に成功した!
既存の「空間拡張収納魔導具」は、空間そのものを魔法で広げ、収納物自体には何も施さないので、形によっては隙間ができるので、空間の無駄遣いだ。また、出し入れする時に使用者の魔力1を使用するのて、あまり頻繁には使い難い。それに、一般の人は魔力が少ないので、使用者は「魔女や魔法使い」に片寄る傾向にある。俺達は、それらを何とかしたかった。つまり、「普通の人」にも使える物を開発したかったのだ。
そこで、俺達が考えたのは、「空間拡張キューブ収納型魔導具」だ。似たような物が既出かどうかは、まだ知らないが。
収納魔導具の収納スペースに「亜空間」を設置し、更に収納物も弄るわけだ。特に拘ったのは、収納物の姿形や効果効能を記憶し、収納物を粒子分解してキューブ型に形成して収納するので、ビッシリと隙間無く収納できるため、空間を有効に使えるので、空間に収納物同士の隙間が無くなるので無駄がないのだ。しかも、出し入れする時の魔力は、「魔力自己回復能力」のある「魔晶石」を使用するので、使用者は魔力を一切使用する必要がないので、一般人でも使えるのだ。
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【魔晶石】
「魔晶石」とは、元大晴が居た世界では一般的に「パワーストーン(天然石)」と呼ばれるものだ。
この世界では、とても高価な物なのだ。
様々な属性があり、大きいものや、純度が高いものほど、魔力の保有量が多く、電気製品の「充電式電池」のような役割をする。魔力自己回復能力があり、使用しない時は魔力を自己回復する。
大きさの1mm単位に魔力3~5あるとされる。ブレスレットなどで使われるタイプだと、丸玉4mm、丸玉6mm、丸玉8mm、丸玉10mm、丸玉12mmがある。なかなか高価なモノである。丸玉4mmでも種類にもよるが、1個数万円もする。
またソフトボール程の大きさとなると、土地付き一戸建てが買える程だ。
母親から聞いた、「裏ネット」で一番小さな魔晶石を購入したが、今まで貯めてた「お年玉」がスッカラカンだ。
後になって知ったのだが、蔵にあった大量の石が、まさか魔晶石だったなんて・・・
きっと、サクラ婆ちゃんが、家族のために残してくれたのだろう。
母親も知らなかったのだから、仕方ないのは仕方ないのだが、極めて遺憾である!
もっと早く知っていれば・・・なんて日だ!! お年玉返せー!!
【属性】
「属性」は代表的なもので、【土】オニキス、タイガーアイ、スモーキークォーツなど。【水】アメジスト、アクアマリン、ラピスラズリなど。【火】カーネリアン、インカローズ、ローズクォーツなど。【風】翡翠、ムーンストーンなど。【樹】アンバー、グレイニネスなど。【無】クリスタルなど。【光】ゴールデンクォーツ、シトリンなど。【闇】ブラックオニキスなど。
その他特殊なモノとして、【空間】隕石。【重力】ヘマタイト。などである。
【魔石】
「魔石」とは、一見ビー玉のようなガラス玉で、「裏ネット」や、ショッピングセンターなどで必ず1店舗は専門店があるので、簡単に手に入りやすい。魔法使いや魔術師が大量生産した「魔晶石の形成加工の際に出た混合粉末を混ぜたガラス玉」である。
魔力の自己回復能力は無く、魔力を使い切ったら、自分で魔力を注ぎ込み補充するか、「太陽光や月光に当てる」ことで魔力を充填して使用するタイプだ。
属性は無いものとされている。比較的安価なモノである。丸玉4mmなら、1個=数百円から千円程度だ。
ただ、稀に魔晶石に似た物があり、「魔力自己回復能力」もあり、「複数の属性」を有する、「掘り出し物」があるらしいが、おっそろしく高価なものだとか。それらは、「〇〇ストーン」とそれぞれに名前があるらしい。
有名な石では、風と水の属性で、「ストウム・ストーン」や、「嵐の石」などと呼ばれているのだとか。とはいえ、「嵐を起こせる」わけではなく、あくまで「属性」にちなんだ名称である。
ストウム・ストーンの丸玉4mmなら、数十万円~百万円もするらしい。(高っ!いらねー)
特に、地水火風などの4属性以上の属性を有する石の場合、知識さえあれば一般の人にも使える事から、「賢者の石」と呼ばれているのだとか。つまり、「賢者の石」さえあれば、「精霊が認知しない一般人」でも「魔法使いになれる」のである。人だけでなく魔法使いなら誰でも喉から手が出る程に欲しいものだ。この世界に存在するのか否かは、定かではない。「都市伝説」とされている。
賢者の石は知る人ぞ知る物として、世界中の大富豪が冒険者に依頼して、探させているという噂があるとか。
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俺達の魔導具に施す「空間拡張魔法」とは、ある空間を広げるという概念ではなく、収納空間とはに別に「亜空間」を作るという概念だ。
仮に4リットルサイズの収納バッグなどがあったとして、そのバッグの中の空間とは別に、魔力1で1㎥の「亜空間」を作り、その中に入れる収納物1個に対して魔力1を使用して、収納物の仕組み形状を記憶し粒子状に分解し「キューブ体」に変換させて収納するのだ。そして「キューブ体」には精霊の独自の観念で分析した「名称や機能や効果」なども記憶され、当魔導具用のスクリーンに個々の説明の表示もしてくれるのだ。
例えば、魔法薬なら、「低級回復魔法薬(通称ローポーション)裂傷、虫歯、骨折などの回復、体力の25%回復できる」などだ。
また、「亜空間」から取り出すときは、魔力1を使用して、「キューブ体」に記憶されたデータを復元させて完全に元の収納物へと戻すという魔法である。
そして出し入れする時の魔力は、魔力の自然回復能力のある「魔晶石」を使用している。つまり、使用者の魔力を一切使わずに使えるのだ。
従って、4リットルの空間と、1㎥×4の「亜空間」の収納バッグとなるわけだ。なので、生物は収納できないが。
でも、「亜空間」なので、収納物の体積に関係なく全く重さは変わらない。
追加効果として、収納魔導具に触れた状態で、収納対象物を指差して「収納」と言うか、収納対象物を見ながら「収納」と念じると、あら不思議! 収納できちゃう事が解った!
また、収納時に「収納物の詳細」を口に出して言うか念じながら行うと、略「収納物の詳細を設定できる」事も解った! まだ他に何ができるかな? といろいろ試した結果、スクリーンで収納物を確認中に、任意のフォルダーを作成して収納し、種分けもできる事も解った。まるでPCみたいだ! これは便利だ! 精霊様バンザイ! 良い仕事するねぇ!
「やった! できた! できてしもた!」
「す、凄いな・・・魔法ってか、精霊って何でもできるんやな?」
「ほんまじょな? 俺が想像した通りに「亜空間」を作ってしもたんやからな」
「もう、何でもアリやな・・・」
さすがは精霊! 物質的な肉体を持たない自我の成せる力? 常識、既成概念、物理的な法則や制約を完全に無視してる。晴蘭と海音の2人で考えて悩んで、精霊と何度も繰り返し挑戦して作ったマジック・バッグだ。晴蘭ひとりではできなかっただろう。
でも海音もなかなかなもので、さすがは魔法使い家系の血筋、たった数日でメキメキと頭角を現している。白鳥家と相良家の魔法使いの中では、海音はトップ3だ。
では、トップ2は?
ガラガラガラ・・・ガララララバァーン!
「ひっ!」
「あ! ・・・来た!」
突然、玄関の扉を激しく開け閉めした音が聞こえたと思ったら、晴蘭の部屋へ真っ直ぐに駆けてくる荒々しい足音が!
その時晴蘭には、怪獣ゲジラのテーマソングが聞こえた気がした。
ドタドタドタドタッ!
「わっ、わっ、わっ」
「おっ、おっ、おっ」
豪快に廊下を走る足音が聞こえ、晴蘭の部屋の襖が、ぶっ壊す勢いで開かれた!
スバァーン!
「きゃあ!「うぉわっ!」
「セーラちゃあ━━ん!」
「虹音お姉ちゃん?!」
「げっ・・・怪獣ナナト!」
いきなり部屋に飛び込んで来た金髪碧眼の美少女が、何を思ったか突然晴蘭にタックル!
晴蘭は飛び付いてきた美少女とともに吹っ飛んだ!
海音は、サッ!と飛び退いた!
「誰が怪獣ナナトよ!!」
ポカッ!
「あだっ!」
虹音は、海音にゲンコツを食らわした!
「逢いたかったぁ~ん♡」
虹音は晴蘭に襲いかかる様に突進!
ドカッ!
「ぐへぇっ!」
ドテッ!
「うわ! あぶなっ!」
晴蘭に飛び付いて来たのは、相良虹音。彼女は海音の姉で、高校1年生の女の子。
虹音のステータス
⚫♡️♡♡️♡✿♡♡️♡♡⚫
·͜·️ꕤ︎︎·͜·☆·͜·♡ꕤ︎︎♡·͜·☆·͜·ꕤ︎︎·͜·
✧˖°⌖꙳✧すてぇたす✧꙳⌖°˖✧
·͜·️ꕤ︎︎·͜·☆·͜·♡ꕤ︎︎♡·͜·☆·͜·ꕤ︎︎·͜·
名前 相良 虹音
♂︎♀︎ ♀︎
年齢 16
種族 女性魔法使い
職業 楽観主義JK
+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+
レベル 15
体力 108
魔力 80
力 4
攻撃力 4
防御力 6
知力 48
素早さ 5
EXP 2626
+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+
♡称号️♡
【金髪碧眼真性百合っ娘】
【晴蘭好きっ娘】
【BL 予備軍】
·͜·️ꕤ︎︎·͜·☆·͜·♡ꕤ︎︎♡·͜·☆·͜·ꕤ︎︎·͜·
⚫♡️♡♡️♡✿♡♡️♡♡⚫
実は彼女こそが、我らが魔法使いのトップ2なのである。魔力量は80あり、なんとINTは48もある! 総魔力量は晴蘭に劣るものの、魔力操作や魔力制御では晴蘭を上回り、今では晴蘭が作れない魔導具を作り出せたりするのだ。しかも、「晴蘭大好き娘」だったりする。
虹音のステータスには、「晴蘭大好きっ娘」という「称号」がシッカリと追加されていた。「BL予備軍」とは、おそらく晴蘭と海音がまだ男の子だった頃の、大晴と義斗の頃に培ったものであり、途中で2人共女の子になってしまったので、志半ばで「予備軍止まり」となったと思われる。
とはいえ、やはり予備軍であるため、いつどこで「真性」へと開花するかは解らない時限爆弾のようなものである。(怖っ) もちろん晴蘭達は、そんな事など知る由もない。
虹音は晴蘭の部屋へ駆け込むなり、狂気にも似た笑顔で髪を振り乱し、襲いかかるように晴蘭に抱き付き痛いくらいに頬ずりをする。
「セーラちゃん! あ~ん可愛い~♡ 柔らかぁ~い♡」
「ひゃぶっ! えぶぇぶぇぶぇ・・・なな・・・と・・・お姉ちゃん・・・いだだっ・・・痛い痛い痛い! 顔の皮がめくれるぅ~」
「おいおい、姉ちゃん! 俺ら魔法のベンキョーしてんのやから邪魔すんなよ」
「なんよお! セーラちゃんを独占する気なん? もしかして百合?」
「ちゃうわ! んで、ゆりって何や?」
晴蘭は女の子になる前から、虹音とも実の姉弟のように仲が良かった。
そして実は晴蘭は虹音に、男の頃から密かに憧れていて、「初恋の人」だったりする。男の大晴だった頃から虹音のことを、「虹音お姉ちゃん」とか、「虹音姉ちゃん」と呼んでいた。そして虹音は大晴のことを、「ターセ君」と呼んでいたが、今では女の子になった晴蘭のことを、「セーラちゃん」と呼ぶようになっていた。だが晴蘭は未だ「セーラちゃん」と呼ばれる事に慣れていない。
また、虹音は男だった大晴のことは義斗同様に弟感覚だったが、実の弟の義斗よりも可愛がっていた。
そして、大晴が女の子の晴蘭になってからは、まるで本当の仲の良い姉妹かのように、いやそれ以上にドロドロベタベタで、更に可愛がるようになった。いろんな意味で・・・
と言うか、一方的に虹音が晴蘭を激愛しているというべきか? そう、いろんな意味で・・・ うん、いろんな意味で・・・
しかし、海音が、「百合」を知らないのは仕方がないにしても、ただ、なぜか姉から聞かれると、あまりよろしくない事なんだと思った海音だった。なにせ、あの姉の言う事だ。きっとろくなものでは無い。そう思った海音だった。
晴蘭は、ネット検索して調べていたので、「百合」については知っていたが・・・
虹音は、起き上がった晴蘭をまた押し倒す。
ドテッ!
「きゃふっ!」
「ああ~~~ん! セーラちゃぁ~~~♡」
「んぎぃいぃいぃいぃ~~~」
「姉ちゃん・・・」
虹音は、晴蘭を押し倒すと、両手足を晴蘭の身体に巻き付けながら、肌がめくれるんじゃないかと思うほど頬擦りをする。
「そろそろ、やめちゃれよ姉ちゃん・・・」
「だ・・・だぢげでぇ~~~」
「うぅん! まだまだセーラちゃんエッセンスを補充し足りへん!」
「なんやそれ?! 充電池かよ!」
もうこうなると、晴蘭は捕まった獲物の状態。その光景はまるで、蜘蛛が獲物に足を絡み付けて獲物を捕食しているようだった。晴蘭の顔中にブチュブチュとキスをする虹音。虹音は、大晴が女の子の晴蘭になってからというもの、タガが外れてしまったようだ。
「姉ちゃん、それ引くわぁ~~~」
「んむっ! んむっ! ん~~~むっ!」
ちゅ! ちゅ! ちゅちゅ~~~!
「わっ! わっ! わっわっ!」
「聞けよ人の話・・・」
数ヶ月前、テレビで昆虫のドキュメンタリーを観ていたときの、「蜘蛛が獲物の身体に消化液を注入し、獲物の体内の肉が溶けて液体になったものを吸って飲み込む」まさにそれに見えた。それが人間となると、それはそれは異様でおぞましいものだった。
「これが我が姉とは・・・」
そんな姉の異常さには、呆れるのを通り越して引いてしまう海音だった。虹音はすぐ傍に海音が居るのを忘れたかのように、晴蘭を自分の欲望のままに弄する。
「ん~むっ! ん~むっ! んん~~むっ!」
チュッ! チュッ! チュ~~~ッ!
「んもっ・・・ちょっ・・・ぷぁっ・・・」
「いい加減にせーよ姉ちゃん!」
虹音の後ろ襟首を両手で掴んで力いっぱい引っ張る海音。
「きゃっ!」
ドテッ!
海音に晴蘭から剥ぎ取られる虹音。
「んもぉ!」
「んもう ちゃうわ! 姉ちゃんってば晴蘭の事になったら、ほん~まに、獲物にむさぼりつく飢えた猛獣やな!」
「ひどっ!!」
「ふぇえぇえぇ~・・・」
晴蘭も、相手が憧れの大好きな虹音だから、こんな取って食うようなラブモーションを受けるも満更でもない様子で、デレデレしているのもまた異様だった。
だが、虹音からこんなにも熱愛を受けられるなら、女のまんまでもいいかも?と不覚にも思ってしまった晴蘭だった。
虹音のラブモーションとはいえ恋愛的ではなく、どちらかと言うと可愛いペットを可愛がるという意味なのだと思う。いや、そうであって欲しいと思う海音だった。
さて、今日、虹音が晴蘭に会いにやって来た理由は、晴蘭と一緒にプールへ行きたいんだとか。もちろん晴蘭は断固拒否! 流石に女の子用の水着なんて恥ずかしくて着れない。
でも晴蘭は、大好きな虹音の水着姿を見たい気持ちもあった。
なにせ、虹音はかなり変態きsh・・・げふんげふん! かなり個性的ではあるが、金髪碧眼の絶世の美少女であり、脳天悩殺鼻血ブー的なプロポーション。(晴蘭評価目線Ⅱ)
胸は並より大きめ、ウエストはキュッ! と引き締まり、少し大きめの腰からヒップにかけての美曲線的なラインは、コーラの瓶を連想させる。日本人にしては、ツンと上がった大きめの丸いヒップは、世の男性達を虜にさせるのは必然。
それもそのはず。虹音は、世界で一番美しいと言われるロシア人女性と日本人男性とのハーフの子供のクオーターだったりするのだ。
また、男だった頃の弟の義斗も、茶髪と黒髪のまだら髪に碧眼で、結構イケメンで人気があった。今では、金髪碧眼で、虹音に似た美少女ではあるが、またまだお子ちゃま体型だ。
虹音は、ちょいと街へ出掛ければ、必ず男性から声を掛けられるそうだ。大阪の難波駅前では、某アイドル業界からスカウトされた事もしばしば。
光に照らされて透き通るように輝くサラサラの長い髪は、思わず触りたくなるようなしなやかな金髪。瞳はもちろん碧眼、肌はロシア人譲りの色白プニプニほんのり桃色ほっぺの赤ちゃん美白肌。長いまつ毛に、プロが眉墨で描いたかのような綺麗な「への字」に整った細い眉。スッと通った鼻筋と小さな小鼻。吸い付きたくなるようなピンク色のぷるぷる感溢れる唇。大人の雰囲気と少女のあどけなさを併せ持ち、更にコーラの瓶体型ときたから、もうパーフェクトの完璧の衝撃の完全無欠のウルトラスーパービューティー美少女! (晴蘭評価目線Ⅲ)
晴蘭が虹音を好きになるのは当然! 必然! お約束! しかも、虹音も魔法使いなので実年齢よりも少し若くはなっているが、そこは日本人よりも発育が早い外国人との混血のせいか、ボン!ギュ!ボン!ときた、絵に描いたような超絶美少女だ!
なのに、晴蘭にむちゅー! とにかくむちゅー! 世のイケメン男性達に声を掛けられても、まったくと言っていいほど、ときめかない。ときめく相手は、可愛い少年少女。そんな中、灯台もと暗しの美幼女晴蘭が登場! ときたもんだから、タガが外れて超絶的に超変態的に超激愛! ってなもんだ。
だが、晴蘭にとっては、複雑だ。
男として、虹音に憧れていたのに、今は「女装剤」を飲んでしまって女の子に変身してしまったので、普通の恋愛などは望めない。しかも、虹音は晴蘭に対して「恋愛対象」としてではなく、「可愛い妹的」な感情だ。たぶん・・・
元々男の頃でも、「可愛い弟的」な扱いをされていたのだが、何時かは気持ちを伝えたいとは想ってはいたものの、もうそんな願いも虚しく、永遠に叶わないものとなってしまった。
そんな晴蘭の気持ちも知らずに、虹音は、時代劇の「これが目に入らぬか!」の姿勢で紙袋を突き出し、「刮目せよ!」と言わんばかりに満面の笑顔! いったいその中身とは?
「さあ、プールいこっ! 今すぐプールいこっ!」
「ええ~? プールは嫌やなぁ~ ハードル高いわぁ!」
「ええー! セーラちゃんの水着姿が見たいのにぃ~」
海音は、そんな姉を怪訝な目で見ていた。
虹音は、両手の拳を顎にあてて、腰を引くと腰をクネクネとくねらせる。これが、可愛い人気アイドルだったら良いが、コイツは実の姉だからか、スリパン(スリッパで顔面パーン!)したくなるのだった。(海音評価目線Ⅳ)
「こらこら、腰をクネクネすなっ! 見てる方が恥ずかしいぞ珍獣!」
「んねぇ~ ええやぁ~~~ん?」
「無視かよっ!」
「俺は、見られたくない」
「・・・うむ よな?」
「そんなこと言わんと~ねぇ~~~ん!」
「参ったなぁ・・・」
「すまん 晴蘭・・・」
正直言うと、水着を着ると自分はどう映るのか?って、少し興味はあるのだが、やっぱり羞恥心が先にでる。もちろん、元男だったなんて知る人など自分達以外に居るはずはないのだが。
女の子の服を着ている今だって、女装やコスプレしている気分になる。身体は女の子になっても、今もまだ「心は男のまんま」なのだ。だが、虹音は晴蘭の気持ちなど完全に無視して、晴蘭のために買ってきたという女の子用の水着をなんとしても着て欲しいとせがむ。そして、拒む2人を無視して、水着の説明をする。
「ほぉら見てっ!」
「「わっ!」」
「コッチはセーラちゃんのん! んで、コッチは海音のん!」
「えええー! ほんまに買ってきたん?!」
「えええー! 俺のもあんの?!」
「当たり前やろ? ちゃんと可愛い妹の分も買ってきたよ!」
「誰が妹じゃー!」
「妹やろ? 私、間違ってる?」
「んぐぐ・・・」
「・・・」
確かに、間違いではない。間違いではないが、複雑な気分の晴蘭と海音だった。実の弟が女の子になったというなら、当然「妹」となるのは必然だろう。
だが、晴蘭と海音は、互いの親友が女の子になったと認識してはいても、自分が女の子になったという認識は極めて希薄だ。
いや、「認めたくない」という方が、正解なのかも知れない。皆、晴蘭と海音を女の子らしくしようとするが、女の子用の服を着るのを拒み続けたなら、何時かは皆諦めてくれるかもと期待しているのだが・・・
今でも、鏡で女の子になった自分の凄を見ても酷く実感がなく、夢でも見ているようで、目を覚ませば「やっぱり男だったー!」なんてのが現実じゃないのか?と、何度も思ったものだ。
でも、目が覚めると現実の自分は女の子。
「真実は小説よりも奇なり」
とはよく言ったもので、まさにその通りだった。
現実のこの世界は、小説のようなフィクションの世界なんかよりも、遥かに不可思議で残酷な世界だった。
「どーしたん? 2人とも黙って」
「え? 別に・・・」
「なんもないよ」
「ふぅん・・・じゃあねぇ、プールに行くのが嫌なんやったら、家の中で水着に着替えるってのは無理?」
「「ええええ━━!」」
「んで、プールに行かへん代わりに写真撮るってゆーのは無理?」
「「ええ━━! 写真?! 無理無理無理無理!」」
「ええ~~~ん これも無理ぃ?」
確かに、プールで不特定多数の人に水着姿を見られるよりはマシかも知れないが、最悪この女の子用の水着を着るだけならまだしも、さすがに写真に撮られるのはかなり厳しい! しかも、大好きな人(虹音)に見られるだけならまだいいけど、もし水着姿の写真を他の人に見せられでもしたら、それこそ死の宣告に等しい! たとえ、今の自分は「女の子だ」と自覚していても・・・
虹音が見せてくれた水着が、どんなものかと言うと、ハンガーに吊られ上下2つに別れたタイプで、胸のところにでっかいリボンが付いていて、下は腰の部分にはヒラヒラのスカートみたいなのが付いている。
水色が晴蘭ので、ピンク色が海音のだそうだ。確かに、晴蘭は水色系が好きで、海音はピンク系が好きだ。虹音は、2人の好みをよく見ているようだ。
晴蘭は家の中では、母親からスカートを穿けと命令されているので、スカートは一応穿いている。しかし、その下にはジャージを穿いていた。晴蘭の精一杯の反発である。
「なんでぇ~え~? こんなに可愛くなったのに絶対に似合うよぉ~ 皆に見てもらお~よ~!」
「かわっ・・・」
「似合うって・・・」
「ダメ? ん━━━それじゃあ・・・」
「「ん?」」
虹音は、思い出したかのように、人差し指を立ててこう言った。
「私と、魔法対決せーへん?」
「「魔法対決ぅ?!」」
「そう! もし、魔法対決で私に勝てたら、プールは諦めるし、私も水着に着替えちゃるわ!」
「え? でも、それって・・・」
「あかんあかん! 姉ちゃん、俺らの前で水着に着替えるのも、写真に撮られるのも、別に何とも思ってへんやろ?」
「まーね! ぜーんぜん平気!」
「「いやぁ━━!」」
「ぶぅ~~~! ケチィ~~~」
ほらね! こういう人のなのだよ。
それより、どうせ対決するなら、勝ったときはギャフン! と言わせたい。なのに虹音は、2人の前で水着に着替えるのも、写真に撮られるのも平気だとなると、対決する意味が無い! たとえ勝ったとしても、コチラに旨みがない。
「虹音お姉ちゃんズルい! こんなん、勝負じなぁーい!」
「そーじゃ! そーじゃ! 断固拒否するぅー! むーりーきょーひー!」
「えええ~~~ん?」
魔法対決てかぁ・・・それより、なんか物騒な響きだな。晴蘭と海音には、あるストーリーが頭に浮かんだ。アニメなどでよくあるパターンで、主人公が負ければ苦渋を舐めるような何かを賭けて魔法で戦う~みたいなのを想像した。
「・・・嫌ぁ?」
「やっぱり怖いな・・・」
「やめろよ姉ちゃん! どーせ、姉ちゃんがどっちに転んでも特になるようにしか考えてへんやろ!」
「え? あ、ちゃうちゃう! アンタら、魔法で殺し合いとか考えてへん? そんなこと絶対せーへんからね?」
「「ホッ・・・」」
「私の言う魔法対決とはねぇ~・・・」
虹音の言う魔法対決とは、魔導具を作って、その魔導具の完成度と利便性を競うのだそうだ。
魔導具ぅ? 完成度ぉ? 無理無理! なぜなら、INTが一番高い虹音が有利なのは明らかだ。最初から負けると分かってるのに誰がすると言うのか。
「やっぱ、無理! どう考えても、虹音お姉ちゃんが有利やもん」
「そーそー!」
「わかったわかった! ほなねぇ、魔法対決はなしで、楓さんが納得する魔導具を作れたら、アンタらの勝ちってのはどう?」
「「え・・・」」
「楓さん」って、また俺の母親を引っ張り出すんかぇ? 虹音お姉ちゃんってば、昔から母親とグルになって、俺達はよく泣かされたもんだ。女同士が手を組むと、どう転んだって男は不利なんだ。
学校の女子達もそうだ! なにかと、「男のくせに負けを認めない」とか、「男のくせに女々しい」とか、「男がか弱い女子を虐めた」とか、「男ってサイテー!」とか、他のクラスの女子達も味方に付けて、もう言いたい放題のやりたい放題! ってか、今の俺達も女だけど・・・
でも、今回は別だ! 俺の水着姿の写真を撮られるなんて、無理ったら無理っ! 虹音お姉ちゃんの事だから、俺の水着姿写真をネタに弱みにつけ込んで、何かを企むに違いない。そればかりか、そんな写真が母親の手に渡りでもしたら、それこそ「くっ殺」確定だ! 知り合いや親戚への流刑になるのは確実! 何とか、少しでも有利になる方法はないものか?
「無理やよ! だって虹音お姉ちゃん、俺らの中で一番INT高いゆーてたやん!」
「INT? ああ、知力ね? そーかなあ? それ、関係ある?」
「「あるよおー!」」
「大ありじゃよお! 姉ちゃん、絶対分かっててゆーてるやろ?!」
「そんな事ないってぇ~」
「「そんな事あるってぇ!」」
「うう~~~ん・・・」
虹音は、困った顔をして、人差し指を顎に当てて、頭をクイッ!と傾ける。
あーもー! 虹音姉ちゃんってば、どんな仕草をしても、一々可愛いんだよなぁ。ちくしょー! 心が折れそうだぁー! ってか、だいたい、対決っちゅーもんは、お互いに自信のある事柄でするもんだ。コッチが不利だと分かってるのに、受け入れられる訳がない。
「・・・そう?」
シュン・・・
「「・・・」」
虹音は、2人の水着を持ちながら、シュンと悲しげな表情で俯く。
卑怯だぞ! とびきり可愛い系美少女が、そんな可愛い仕草をするのは、人質殺人予告で脅迫するくらいにズルい! (何のこっちゃ?)断るのが可哀想になってしまう。
虹音は、畳の上に身体を横向きに倒して、両腕で上半身だけを起こした、いわゆる「女豹のポーズ」で、目に涙いっぱいのうるうるした瞳で、しかも上目遣いで首を傾け見つめてくる。これも、わざとだろうか? あざと過ぎるぞ! やばいやばいやばい! 金髪碧眼ナイスバディー悩殺鼻血ブー!ビューティーが、それしちゃいけねぇ! アウトだ!アウト! まぶたの裏に焼き付いて、今夜は絶対に興奮して眠れなくなるからぁ~!(晴蘭評価目線Ⅴ)
「ふぅ~ん・・・ダメぇ?」(うるうる)
ズッキュ━━ン!
「ひでぶっ! ぐっはぁっっっ!」
「は?・・・」
⋯━━☆⋯━━☆⋯━━☆
ビカビカッ!(画面フラッシュ!)
チャ~ラ~ラ~ンチャラ~♪(戦闘曲)
(ドット絵戦闘画面に以降)
きんぱつへきがんしんせいゆりっこ ななと が あらわれた!
ななと の せんせいこうげき!!
リロリロリロリン!(魔法効果音)
ななと は のうさつウインク をはなった!
パチッ!
ななと の つうこんのいちげき!
ズッキューン ドドドドカッ!
せいら は 99ポイントのダメージをうけた!
みおと は ようすをみている
☆━━⋯☆━━⋯☆━━⋯
虹音お姉ちゃんよぉー! 貴女はなんて可愛いんだぁー! あざと過ぎるぜ、こんちきしょー! 心臓を鷲掴みにされた気分だぜ!
虹音に根負けして、とうとう承諾してしまう晴蘭なのだった。
「んんん・・・」
「うるうる・・・」
「んんんんんん~~~~~~」
「うるうる・・・」
「んんん~~~あーもーわかったぁ!」
「ほんま?!」
「ええっ?! ちょっと、おまっ・・・正気か!?」
「しゃ、しゃーないやろ!」
「はぁ・・・お前、昔っから姉ちゃんには弱いわな?」
「そんな事はないぞ?」
「いやいや! お前、姉ちゃん大好きやもんな? チビのとき、姉ちゃんと結婚式する! ってゆーてたし」
「キャイ~ン! 本人を前にして言うな!」(覚えてない)
「ほんま?! 嬉しぃ~~~♡♡♡」
と言い、晴蘭を抱きしめる虹音。
「いや、あはは、えっと~~~」
茹でダコの様に、真っ赤になる晴蘭。
「ダメだこりゃ アカンわコイツ 何ゆーても無駄やわ」
呆れて、クシャミを我慢しているかの様な表情で2人を見る海音。
虹音と晴蘭の気持ちが、まったく理解できない海音だった。確かに虹音は、家族という贔屓目で見たとしても、「世間一般的な美的感覚」でも、まあ、「綺麗」な方だとは思うものの、やはり実の姉弟、いや姉妹としては、「綺麗! 好き!」とは、ならない海音だった。
それより、一方的に虹音の要求だけを受けるのは不公平だ。そこで・・・
「じゃあ、姉ちゃん!」
「なんよ?」
「仮に俺らが負けたとしても、姉ちゃんも水着着ろよ!」
「おっ?!」
「え? 私も?」
「当たり前やろ! 俺らばっかり姉ちゃんの要求をのむのは不公平やろ? もちろん写真も撮るぞ!」
「おおー! そーやね!」(海音グッジョブ!)
「それもそっか・・・うん! ええよ!」
「「ええっ?!」」
なんだどー! そんなバカなぁー! 有り得へぇーん! 2人は、心の中で叫んだ。
絶対に嫌がると思っていたのに、予想外の反応だった。
「嫌なら、俺達も着ない!」
と、持ちかけるはずだったのに、思惑が外れた!
「あれ? 意外やった?」
「「・・・うん」」
「あははっ! 誰が私の水着姿なんか見たがるんよ? アンタらも、私の水着姿になんか、別に興味なんかないやろ?」
「「え・・・」」
晴蘭は思った。
『いえいえいえっ! 興味アリです! 大アリです! 是非欲しいです! 絶対に欲しいです! 死んでも欲しいです! パウチして肌に離さず持ち歩きます! 宝物にします! 大切にします! 抱き枕にします! 何枚もコピーして引き伸ばしてポスターにします! 永久保存版にします!』
海音は思った。
『俺は要らんけどな! 先日も近所の大学生に告られてたのに、男に人気あんの自覚ないんな? でも、晴蘭は絶対に欲しがるやろ? 写真撮ったら晴蘭に売っちゃるわ! 1枚5000円でも買うんとちゃうかぇ? 楓さんに借金してでも買うやろ ごっつあんです!』
どうやら虹音は、世間の男共から「美人、可愛い」と思われている事を知らないようだ。自分が可愛いとは、自覚が無いようです。小学生の頃に見た目でよく虐められていたのが原因だと思われる。
「私は、アンタらが私の水着姿の写真を人に見せたりせーへんって信じてるから!」
「・・・そう? まあね」
『誰が見せるか! 勿体ない! 見せたら減るわ! 虹音姉ちゃんは俺のもんじゃ!』
「へぇ・・・」
『なんでわざわざ恥を晒さにゃならんのじゃ?』
2人の心境には、かなりの温度差があるようだ。
「ほな、どんな魔導具を作るか考えるわな!」
「「・・・はい」」
こうして強引に、晴蘭と海音の2人と、虹音との魔法対決をする事になった。
晴蘭と海音は、「空間拡張キューブ収納型魔法鞄」に決めた。実際の大きさよりも、より多くの物が入る便利なバッグだ。
ゲームや異世界もの漫画アニメでは、定番の、鉄板の、テンプレの、お約束の、いわゆる「マジック・バッグ」である。
だが、魔法対決で出すモノは違う! ただの「空間拡張収納魔法鞄」ではなく、晴蘭と海音が共同開発した、「空間拡張キューブ収納型魔法鞄」である!
自信はあった。なにせ、現実世界でもあると絶対に手に入れたい物ナンバー1だと自負している晴蘭と海音。
「勝ったな!」と、内心ほくそ笑んでいた。
完成後、いよいよ各々の魔導具をプレゼン。
先ずは、晴蘭&海音チーム制作~
「ジャジャーン! 俺らが作ったのは、コレ! なんと、キューブ・マジック・バッグでーす! カバンは海音が作って、空間拡張キューブ収納魔法は、俺がかけましたー!」
「ほほー! なかなかキレイに作ったなぁ! 海音にしては、ええセンスしてんとちゃう?」
「せやろ? ま、ちょっと自信あるんじゃよ♪ 袈裟懸けにしたから、使わんときは後ろへ回したらええんよ!」
「ふむふむ キューブ収納ねえ・・・」
晴蘭と海音が作ったという「空間拡張キューブ収納型魔法鞄」、仮称「キューブ・マジック・バッグ」は、「ボディバッグ」や、「ワンショルダーバッグ」とも呼ばれる、それほど大きくはないもので、肩から反対側の脇の下へ通す袈裟懸けに掛けるタイプのもの。自転車やバイクに乗る人には人気のあるものだ。
そんなバッグに「空間拡張キューブ収納魔法(仮称)」を施してあり、実質収納できる容量は、なんと4㎥にもなるが重さは変わらないというスグレモノ!
晴蘭と海音は自信満々でドヤ顔でプレゼンするも、なぜか虹音と母親のリアクションはイマイチ。
「・・・おかん何なその顔?」
「ん・・・別に?」
「どーした姉ちゃん?」
「え? ああ、そーやね! 普通に凄いんちゃう?」
「「ふつう・・・」」
2人のテンションの低さに、「あ、コレあかんやつ」と、思った。
まだ、虹音の作った魔導具を見てもいないのに、もう既に負けました感に襲われる晴蘭と海音。
そして、虹音の作った魔導具のご紹介!
「私が作ったのはコレ! 着替え玉です!」
「「着替え玉?」」
「ふむ なるほど! それを作ったんかぁ! お義母さんが着物に着替えるときに、それと似た物をよく使ってたわ 直登さんの会社でも作ってたってゆーてたね!」
「へぇ・・・」
「親父が・・・」
「えへへもう、楓さんは知ってるみたいやけど、説明するわな!」
「「おお・・・」」
虹音が作った魔導具とは、「着替え玉」だ。一瞬で着替えられる魔導具だとか。野球のボールを一回り小さくしたような、花柄の可愛らしいデザインがプリントされた球形のもの。
使い方は実に簡単で、身体のどこでもポン!と当てると、着替え玉に予め登録していた服に一瞬で着替えられるという超便利な魔導具だ。
元着ていた服は、着替え玉に入れ替わるように登録され、もう一度身体にポン!と当てると、元着ていたはずの服に、また一瞬で着替えられるという。
原理としては、着替え玉に登録された服は、着替え玉の中に魔力で開けられた「亜空間」に入れられ、異物や汚れを排除し、まるでプロがクリーニングしたかのように綺麗にしてくれるという、洗濯機要らずの有難い代物だ。
それに、魔力の自己回復能力のある「魔晶石」を使用しているので、使用者の魔力は一切使わないという、まるでネコ型ロボットの「秘密道具」みたいな夢のような魔導具だった。
補助として、「所有者設定」も施してある。万が一盗まれたり、置き忘れたりした場合でも、「リターン」の合言葉で、瞬時に手元に戻ってくる設定と、所有者以外の者が使おうとしても、「何の変哲もないただのボール」となる設定だ。
「やられた・・・そんな難しもん作れるかよ」
「収納魔法やのに、着替えができる? オマケに洗濯もしてくれる? 所有者設定? はあ?」
晴蘭と海音は、心の底から思った。
『知力もそうだが、発想が違う 敵う訳が無い・・・』
「「負けました・・・」」
「あれ?! まだ楓さんさんの判定も出てないのに、もう負けを認めんの?」
「そんなん、俺が見ただけでも、もう負けって確信したわ」
「そうですね・・・・虹音お姉ちゃんの方が、凄いって解るもん」
「えへへ そう? ありがとう!」
「では、文句無しで虹音ちゃんの勝利ということで!」
「やったぁ━━!」
「「がーん・・・」」
終わった・・・自他共に認める敗北だった。
その日の夜、晴蘭と海音のファッションショーが夜遅くまで続いたとか。
虹音は、きっとこれからも晴蘭に夢中!
今後、晴蘭にとって、助け人となるのか、それとも・・・