第57話 「魔女の呪い」
チヒロとユキナ、そして2人の両親達は魔法使いに!
だが、チヒロとユキナには、ある「呪い」がかけられていた・・・
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
みんな魔法使いへと覚醒し、日本では1週間、ムトランティアではおよそ1ヶ月が過ぎ、みんなレベルも100を超えていた。
••✼••チヒロ宅リビング••✼••
チヒロは、久しぶりに自分のステータスを見てみた。
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・⋯━☞STATUS☜━⋯・
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名前 チヒロ
性別 女
年齢 15
種族 魔法使い
職業 無属性魔法使い
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 120
HP 220
MP 254
STR 16
ATK 34
DEF 29
INT 148
SPD 53
LUK 142
EXP 302751
・⋯━━☆★☆━━⋯・
魔法特性
【全属性魔法】
【創造魔法】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【ヒール】【ハイ・ヒール】【ピュリフィケーション】【クリーン】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【魔力制御】【魔力操作】【鑑定】【隠匿】【魔力量計測】【索敵】【魔導インターネット】【魔法薬精製】【茨縛り】【御用だ!】【1馬力】【錬金術】【空間拡張キューブ型収納魔法】【空間拡張魔法】【異空間収納魔法】【双眼鏡】【空飛ぶ箒】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
装備によるスキル
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号(隠匿中)
【魅了】【人たらし】
【女王様予備軍】【無自覚 艷麗美少女】
【無自覚 妖艶美少女】
【立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
・⋯━━☆★☆━━⋯・
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「うっ・・・・・・なんやコレ?」
「え? なになに?」
「なんや? どうしたチヒロ?」
「えっ?! うぅん! なんもないよ!」
「「うん???」」
チヒロは、自分のステータスの『称号』を見て一瞬フリーズした。
いつの間にか、どえらい事になっていた!
【無自覚 艷麗美少女】【無自覚 妖艶美少女】?!
【立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花】ってなに?!
チヒロはすぐさま、【艷麗】と【妖艶】をスマホで調べてみた。
『【艷麗】とは、つやつやとして美しいさま。特に、姿や容貌がなまめかしく美しいさま。』
『【妖艶】とは、美しさとともに、異彩を放つ魅力や、人を惹きつける力を持つ様子を表す言葉である。特に、女性の美しさや魅力を表現する際に用いられることが多い。妖艶な人物や物は、その存在感や魅力で周囲を引きつけ、心を惑わせる力を持つとされる。』
と、書かれていた。
また、
【立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花】
とは、元々は生薬の効果を表した文句だったとされるが、後に、
『立っても座っても、また歩いても、姿が艶やかで魅力的な美人の形容』
との意味へと変わったとの事。
とにかく慌てて【隠匿】スキルで『称号』を全て隠匿した。
そんな自分の『称号』を見て内容を知り、今まで自分の身に起きた事柄に辻褄が合う事に、流石に疎いチヒロでも気付き納得した。
他、チヒロの両親や、ユキナとユキナの両親の魔法やスキルは全く同じだ。
チヒロ達は『転移者』になるからか理由は解らないが、【限界突破】スキルが無くてもレベルはあっさり100を超えた。
他に称号は、ユキナとトラオにだけあり、ユキナは【お淑やか女子】で、トラオは【的屋の狂犬病】だった。
攻撃魔法は【創造魔法】で思い通りの魔法が使えるようだ。
これも、先の魔女や魔法使い達のお陰である。
先の魔女や魔法使い達が、精霊と何日も何年もかけて完成させた魔法を、精霊を通して術者のイメージするものに最も近い魔法を発動できるのだ。
なので、たとえ『ファイヤー・ボム』とイメージしても、精霊の知識の中に記憶されている『炎系の攻撃魔法』で、最も近いとされる『ファイヤー・ボール』が発動されるのだ。
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ユキナ
LV 125
HP 225
MP 378
STR 16
ATK 27
DEF 27
INT 90
SPD 18
LUK 302
EXP 332554
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【お淑やか女子】
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トラオ
LV 118
HP 1240
MP 77
STR 366
ATK 358
DEF 351
INT 21
SPD 285
LUK 52
EXP 291271
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【的屋の狂犬病】
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カナエ
LV 120
HP 220
MP 291
STR 20
ATK 36
DEF 34
INT 185
SPD 56
LUK 159
EXP 302751
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モエ
LV 121
HP 221
MP 293
STR 19
ATK 35
DEF 35
INT 179
SPD 55
LUK 157
EXP 308586
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「どうじゃ? 魔法使いになった感想は?」
「冒険者になりたい!!」
手を挙げて発表するように言うチヒロ。
「?!・・・そうか まあ、頑張れな?」
「日本の料理を売りたい!!」
力強く片手ガッツポーズで言うトラオ。
「!・・・なるほど、お前らしいな?」
「色んな可愛い服を着てみたい!」
手を顎の前で組み、少女漫画のような瞳で言うカナエ。
「・・・好きにしたら?」
「ムトランティアにスイーツを広めたい!」
「・・・ええんとちゃう?」
「「「「ニコニコニヤニヤ~~~♪」」」」
「お前らは、他に言う事ないんかい?!」
「「「「・・・え?」」」」
「魔法や魔法使いについて聞いてるんじゃ!!」
「やっぱり冒険者やりたい!」
「商人になりたいかな!」
「可愛くなりたい!!」
「甘いもの食べたい!!」
「!!!!・・・・・・好きにしたらええわよ(汗)」
良子は、『この親にしてこの子あり』ということわざが頭に過ぎった。
トドのつまりが、似た者家族という訳だ。
こうしてチヒロ達は、魔法使いとなった。
だが・・・
今年、年が明けた頃、和泉山脈の和歌山寄りの山奥の空間に、縦数十センチほどの小さな時空の歪みが発生していた。
やがてその歪みはファスナーを開くように広がり、その歪みから『異世界の魔物』が出てきたのだ。
その魔物の大きさは、カピパラほどの大きさの『角の生えた大ネズミ』のような姿で、異世界での名前は【ツノキバネズミ】という。
獰猛な肉食の魔物であり、たった1体でもヒグマやイノシシさえも噛み殺してしまう事もあり、人をも襲う厄介な奴だ。
幸い、ツノキバネズミが目撃されてから直ぐに結界を張り、ツノキバネズミが広範囲に活動範囲を広げないように処置したので、今のところは人への被害は報告されていない。
もし、良子が居なければ、今頃は街までツノキバネズミの繁殖域が広がっていたかも知れない。
なにせ繁殖力が異常に高く、生まれてから数ヶ月で子を産み10倍以上に増えるのだ。
そして今現在では、空間の歪みはダンジョンと化している。
ダンジョン内の魔獣は外に出る事はあまり無いが、ダンジョンの外のツノキバネズミは、このまま放置はできない。
急ピッチで、新しく生まれたダンジョン付近に、新しい冒険者ギルドが建設され、ダンジョンの外に生息するツノキバネズミは、冒険者達によって完全に討伐された。
そして今このダンジョンは、『和泉山脈ダンジョン』と名付けられている。
なので今現在和歌山市には、『和泉山脈ダンジョン』と、以前から存在する『岩橋千塚古墳群ダンジョン』と呼ばれているダンジョンの2つとなるのだ。
そして良子は、歪みからダンジョンへ進化するこの現象にはもう気付いていた。
良子が魔法使いを積極的に育てているのは、この世界、地球に現れたダンジョンの完全踏破と封印である。
また世界中の各国にも、良子に匹敵する魔女や魔法使いが居て、地元のダンジョンを沈静化させる事に奮闘している。
なので、チヒロ達も、和泉山脈ダンジョンの踏破を目的とした魔法使いとして、良子に選ばれてしまったのだ。
だがその旨については、良子はチヒロ達にはまだ話してはいない。
【ツノキバネズミ】は、ジェイド級のレベル50~99だが、稀にレベル100を超えるモノも現れる事もある。
所謂、限界突破級だ。
限界突破級は、『女王蜂』の立ち位置となり、主に繁殖重視の限界突破と言える。
つまり、ツノキバネズミが異常発生する場所には、限界突破級のツノキバネズミが存在すると考えて良いだろう。
また、冒険者ギルドの所在地付近には、必ず『ダンジョン 』が存在する。
元々、ダンジョン攻略のために、冒険者ギルドが設置されたのだ。
日本には各都道府県に1ヶ所以上は必ず存在し、和歌山県には、和歌山市、御坊、橋本、中辺路、白浜、そして串本に在る。
和歌山市に元々存在するダンジョンは、『岩橋千塚古墳群ダンジョン』と呼ばれ、岩橋千塚古墳群を取り囲む森の中にあり、当初は新しい古墳が発見されたと思われたが、実はダンジョンだったのだ。
そして、森を切り開いて、岩橋千塚古墳冒険者ギルドが設置されたが、極秘にされているので、知る者は少ない。
また、この世界の冒険者ギルドは皆、『陰の組織や秘密結社』的な存在で、冒険者達の活躍すらテレビ等のメディアなどでは大衆に知らされる事は一切無く、冒険者達もまた自ら冒険者と名乗ることは無い。
冒険者はまるで、『正体を隠す正義のヒーロー』の様な存在である。
この世界の冒険者ギルドの話しは、晴蘭達も聞いた事がある程度で、実際の活動内容などは全く知らない。
それに、ムトランティアの冒険者ギルドほどのレベルではなく、簡易的なモノと思っていた。
実は日本の冒険者ギルドは、ムトランティアの冒険者ギルドとそれほど遜色無く、意外とシッカリとした組織である。
そして驚いた事に、良子は時々日本各地の冒険者ギルドに指名依頼される事があったりする。
そんな話しを良子がら聞いて、チヒロ達は驚きを隠せなかった。
「「「「はぁ~~~・・・(驚)」」」」
「そう言えばユキナは、何かやりたい事を何も言わんかったけど、ユキナは冒険者やって狩りできる?」
「無理無理無理! 私には無理よお!!
だって! もし、この世界で死んじゃったら、本当に死んじゃうんでしょお?」
「そうじょなぁ? 死んでまうもんなぁ?」
「死なへん方法があるぞえ!」
「「「「ええっ?!」」」」
「そっ・・・それって、どんな?」
異世界ムトンランティアへログインすれば、精神だけをムトンランティアへ転移させ、魔力によって作られた身体に精神を同期アクティブ化させて活動するので、その身体がたとえ死んだとしても、本体である日本の身体は生きているので、本当に死ぬ事はない。
壊れた、または活動不可となったムトンランティアでの活動する身体は、また新しいしく魔力で再生するので、何度でも復活できる。
でも、ここ日本での活動は違う。
本体である身体で活動するので、死んだら終わりだ。
だがなんと! この日本で冒険者として活動中に死だとしても、本当に死なない方法があるそうな。
それは・・・
「この、新しく開発した『アバター・ゴーグル』を使うんじゃ!」
「「「「アバター・ゴーグル?!」」」」
「そうじゃ! これはな、この世界に居ながら、この世界に魔力で作ったアバターに精神を同期させて活動する事のできる魔導具じゃ!」
「「「「!!!!・・・・・・」」」」
なんと! 地球に居ながら魔力で自分のアバターを作り、そのアバターに精神を同期、つまり幽体離脱して魂をアバターに乗り移らせて活動するのだとか。
そんな事ができるのか?
いや! この人、『大魔女リオリオ良子』にならできるのかも知れない!
「って事は、もし私がここでその『アバター・ゴーグル 』を使って寝たとすると、アバターのもう1人の私が現れる・・・ってこと?」
「そうじゃな!」
「「「「?!・・・」」」」
「じゃあ、じゃあ、もしアバターの自分で、本物の自分に触れたりしたら?」
「「「「えっ・・・」」」」
チヒロとユキナの両親達も、それに疑問を持っていたようだ。
「何も起こらん!・・・
いや、何も起こらんかったと言うべきかの?」
「「「「ええええ~~~?!」」」」
「良子さん、もしかして試したんですか?!」
「おうよ! 試したぞい! 自分の身体でな!」
「「「「ええええ~~~!!」」」」
「そんな! 何が起こるか解らへんのに?!」
「マジかオバン! エラい勇気あるなぁ?」
「オバンってゆーなて、ゆーてるやろが! この小娘がっ!!
リオリオさんか、良子さんと呼べっ!!」
「ひえぇえぇえぇ~~~(汗)」
良子は、チヒロの頭をガツン!と鷲掴みにし、鼻がチヒロの鼻にくっ付くくらいに近付ける。
いくら美人な良子でも、睨み付け凄んだ顔で近付けられたら、流石に恐ろしい・・・
すごく良い匂いがしたけど。
「ごっ、ごめんなさい(焦)」
「ふんっ! アバター・ゴーグルは、パラレルワールドで活動する魔導具ではない!
この世界にて魔力でアバターを作り、精神体(魂)をアバターに移して活動させるんじゃ!
じゃから、パドラックスなんぞ起こらんわえ!」
「そうなんですか?」
「ああ、起こらん起こらん! 安心せえ!
もしパラレルワールドなら、話しは別じゃ!
パラレルワールドには、そのパラレルワールドに適応した自分が必ず居るもんじゃ!
じゃが、活動するのはこの地球じゃ!
この地球にて、壊れてもまた復元できる身体を作って活動するんじゃからな!
まるったの別世界じゃない!
だからなのか、正直私にも良く解らん
私も自分の身体に触れたりしたら、元の身体に意識が戻るのでは?とか、想像も付かないパラドックスが起こるのでは?と恐れもあったが、実際何も起こらなかったんじゃ!
この現象を、どう説明すれば良いのかさえサッパリじゃわえ!
とにかく、『何も起こらない』・・・のじゃ!」
「「「「うう~~~ん・・・・・・」」」」
チヒロには、全く理解できないお話しだった。
流石にユキナにも、今回の話しは難しかった。
解らないものは、解らない。
これ以上、この話しで躓いていても話しが進まないので、チヒロとユキナは考えるのをやめた。
ユキナの頭からはモジャモジャした変なモノが飛び出たが、チヒロの頭からはプスプスと煙が出ていた。
チヒロの両親トラオとカナエは、目が点になっていて考えるのを既にやめていた。
ユキナの両親のタツヒコとモエは、正座をして良子の話しを聞いていはいたが、理解はできず笑顔が引き攣っていた。
ここに居る全員が、理解などできていなかった。
当人の良子さえ理解できないのだから、仕方ない!
「で、どうなんじゃ?
私は、この世界でもお前達には『冒険者』として活動してほしいと思っている
この世界の者だと、武道を極めた者や自衛隊なら対抗できるじゃろうが、所詮は生身の身体じゃ
もしもの事があったら、取り返しがつかん!
じゃが、お前達なら十分に、『潜り』を倒せる力を持っておるはずじゃからな!
そのためには、魔力による『アバター』での活動を勧めるが、どうするんじゃ?」
『潜り』とは、『他所から来て悪さをする者』の意味なのだが、ここでは、『異世界から来た魔物』を意味する。
もし、このまま放置したとしても、自衛隊が出る事になるのだろうとは思うが、一番良いのはチヒロ達の様に、この世界で万が一の事があっても復元取り返しのできる『アバター』の身体で対戦する方が、絶対に良いに決まっている。
自衛隊なんかが出る事になれば、世界中に存在する魔物やダンジョンや、また冒険者や冒険者ギルドの存在を知らしめる事になる可能性がある。
また逆に、ムトランティアの冒険者達を、ムトランティアから『異世界ゴーグル』を使って呼ぶのも良いかも知れない。
ユキナは、それについて良子に聞いてみた。
ただ問題なのは、異世界のウイルスや病原菌の持ち込みだ。
それについても、良子から問題無しとの話しだった。
「ふむ 面白い事を考えるなあ?
それは、やってみても良いかも知れん」
「でもでも! この地球に無い異世界の病原菌とかを、持ち込んだりする恐れは無いんですか?」
「おおっ! 流石ユキナ!
考える点が違うなあ!」
「そうじゃな じゃが、そこは問題無いわえ
私の開発した『異世界ゴーグル』は、異世界間の行き来で考えられるウイルスや病原菌の持ち込みなんぞできんよ!
なぜなら、異世界間の行き来は、『精神』だけなのじゃからな!」
「「「「おおおお~~~!!」」」」
流石っ!! 大魔女リオリオ!!
確かに精神だけを異世界へ転移させるのだから、物質的な病原菌などが精神と一緒に転移する事など有り得ない。
なるほどなるほど。
ここからは、チヒロの両親も、ユキナの両親も、ただ良子と、チヒロとユキナとの話しを聞くだけだった。
ま、早い話が着いて来れないのだな。
「なるほど、そっか!」
「精神だけ・・・か
ほんなら、日本から異世界へ持ち込みたい物があっても無理なんやね」
「そうじゃな ある1人を覗いてはな」
「「「「えっ?!」」」」
「日本から異世界へ物を持ち込める人・・・魔法使いが居るんですか?!」
「居るぞい! ソイツは魔女じゃがな!」
「「「「魔女?!」」」」
「良子さん! それって誰ですか?」
「大魔女セーラじゃよ」
「「大魔女セーラ?!」」
「それって・・・???」
「お前達も良く知っている娘じゃよ」
「「えっ・・・???」」」
「チヒロ! ユキナ!
お前達が加汰の海で虐めていた女の子じゃよ!」
「「えええええ━━━っ?!」」
チヒロとユキナは、『大魔女セーラ』とは誰なのかすぐに判った!
と、同時に血の気の引く思いをした。
チヒロとユキナが、まだ男のヒロノブとコウキの頃、加汰の海で出会った晴蘭という名の少女があまりにも可愛かったので、つい虐めて気を引こうとした相手だった。
まさか、あの娘が、やがて良子をも超える大魔女になると言われる『大魔女セーラ』だったとは・・・
確かチヒロとユキナの記憶では、自分達よりも一つ年下だったはず。
なので、齢14歳にして魔女となり、今では『大魔女』として良子に認識されているとは!
チヒロとユキナは、今更ながら、どうしようも無いくらいに後悔した。
だが・・・
「まさか・・・そんな・・・マジか」
「私・・・なんて事を・・・」
「気にするな」
「「はあ?!」」
「何を・・・」
「セーラは、お前達を恨んではおらんぞえ」
「「えっ・・・」」
「でも俺らあの娘に、結構むちゃくちゃやってた気がするけど?」
「そうじゃな
確か、お前達はあの娘(晴蘭)に対して『女のくせに』と言って虐めとったわな?」
「「確かに・・・」」
「じゃからお前達は女にされて、あの頃のあの娘のように、男共に追いかけられ悩まされる事になっておる
そうじゃな?」
「「!!・・・そうですね」」
「それこそが、あの娘なりの仕返しだったんじゃな!
それはな、『魔女の呪い』なんじゃよ」
「「魔女の呪い?!」」
『ひぃえええええ~~~?!
魔女の呪い?! 俺は呪われてたんか?
俺って、そんな呪われるほど悪い事したんか?
俺があの娘に一目惚れして虐めたから、今の俺も男共に絡まれるんか?
そう思ったら、いや思いたくないけど辻褄が合う!
今からでも謝ったら、呪い解いてくれるかなぁ?
女は怒らせると怖いってゆーからなぁ~~~
って、俺も今は女の子やけど・・・』
・・・なんて思った。
ユキナは、完全に後悔と恐怖に飲まれていた。
青い顔して、ガクガクブルブル震えていた。
ユキナも男の頃に、晴蘭を虐めていた共犯だ。
「ユキナ? 大丈夫か?」
「・・・・・・lll」
『魔女の呪い』なんて、魔女について何も知らない者が聞けば、それはそれは恐ろしく感じるものだ。
『呪い』などと良子は言ったが、晴蘭にとっては、タダの『嫌がらせ』だった。
それに、晴蘭がチヒロとユキナにかけた『男が寄って来る魔法』は、もう既に1週間も前に解けていた。
なので、今でもチヒロとユキナに男が寄って来る現象は、チヒロとユキナの魅力そのもののせいだ。
そんな事など知る由もないチヒロとユキナだった。
「お、俺っ! 今からでもあの娘に謝りに行く!
んで、呪いを解いてもらう!」
「は?」
「あっ! 待って! 私も行く!」
「おいおい・・・」
「許してくれるんやったら、土下座でも何でもする!」
「私もっ! だからっ! だからあ!
ひぃやあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」
「びえぇえぇえぇえぇ~~~ん!!」
「んなっ?!」
「「「「~~~?!」」」」
チヒロとユキナは、女の子座りでペシャンと座り込むと、とうとう泣き出してしまった!
よほど『魔女の呪い』が怖かったのだろう。
呪い(男が寄ってくる魔法)なんて、もうとっくに解けているのに・・・
流石の良子も、アタフタしていた。
「まあ、待てっ! 落ち着けぇ!!」
「ふぎぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」
「びぃやあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」
ビュオオオオオオ~~~!!
「おわあ━━━っ!! なんじゃこりゃあー?!」
「「「「ひゃあぁあぁあぁあぁ~~~!!」」」」
なんと! チヒロとユキナが泣き出したと思ったら、2人の魔力が暴発して、リビング内が南極の嵐のように吹雪が吹き荒れた!
流石の良子も、パニクった!!
ビォオオオオオオ~~~!!
ゴオオオオオオオ~~~!!
「「「「ぎゃあ~~~~~~!!」」」」
チヒロとユキナの両親達も大パニック!!
ビォオオオオオオ~~~!!
ゴオオオオオオオ~~~!!
「びぃやあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」
「ひぃやあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」
「うをお━━━いっ!! 落ち着けえ━━━ってぇ!!
もう、とっくに呪いは解けてるぞいっ!」
ピタッ!
「「?!・・・」」
吹き荒れた吹雪が嘘のようにピタッ!と止まった!!
「「っ?!・・・」」
「えっぐ⋯えううっ⋯あふっ! ほん⋯ほんまにぃ?」
「ひっく! へあはっ! あゔゔ~~~ん(泣)」
「ホンマじゃ! ホンマじゃあ!
とにかく、その涙と鼻水を拭けっ!」
良子は、マジック・バッグからティッシュを1箱取り出し、チヒロとユキナに手渡した。
カナエが慌ててゴミ箱を持って来る。
「「!!・・・ズビビッ」」
ササッ!・・・
「「ブビビビ~~~!! ぷぷぷぅ~~~ん!!」」
ティッシュで鼻をかむチヒロとユキナ。
「あぁ~あぁ~もぉ~~~見てられんわ(汗)」
「「「「・・・・・・(汗)」」」」
呆れるチヒロとユキナの両親達。
もうチヒロとユキナの顔は、涙と鼻水とヨダレで、ビチャビチャだった。
鼻水とヨダレは、糸を引きシャツにまで達してベトベトに。
チヒロとユキナは、ティッシュを何枚も使って、涙と鼻水とヨダレを拭いていた。
ティッシュ1箱をペロッと使い切り、ゴミ箱がチヒロとユキナの涙と鼻水とヨダレでホカホカのビチャビチャになったティッシュでいっぱいになった。
そして、しばらく経って・・・
「落ち着いたかえ?」
「「・・・はい」」
「あの娘はもう、お前達を恨んでもないし、謝ってほしいとも思っておらん!
もう許してくれてるんじゃから、泣くな! な?
じゃから、そんなに思い詰めるな! な? な?」
「「・・・ふぁい」」
「ふぅ・・・やれやれじゃな!
ホンマに、世話のかかる小娘達じゃわえ
この小娘達が、以前はあの悪餓鬼共やったとは、到底思えんなあ!
こんなに、変わるもんかねぇ?」
「「「「・・・・・・(汗)」」」」
チヒロとユキナは、女の子です。
なんだかんだ言っても、チヒロとユキナは女の子です。




