第55話 「精霊と魔法と魔法使い」
行くとこ行くとこで、ナンパされるチヒロ。
そんな時、もし魔法が使えたなら・・・
そう思った事で、フラグが立った!
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
シャワシャワシャワシャワ~~~!!
「ああ~もぉ~うっさいなぁ! セミぃっ!!」
「あははっ そら、しゃーないわよ!
セミは鳴くもんやから!」
「でもセミって、何年も土ん中で寝てて、地上に出たら1週間で死ぬんよな?
うるさいけど、なんか可哀想やな・・・」
「まぁ~ねぇ~~~
でもそんなセミを可哀想と思うかどうかは、人間の勝手なエゴやと思うけどなぁ?」
「エゴって?」
「うう~~~ん 何て言うたらええんやろ?
セミらは別に自分らを可哀想な生き物やなんて思ってないと思う
人間って、何でも真実を追求したがるから、『セミはどう思うか?』とか考えがちやけど、でもセミにとってはそれが人生?セミ生?で当たり前なんやし、すぐに死ぬからって自分を不幸やとも思ってへんと思う。
人間って人間を基準に考えるから『自分とは違うから』ってセミに『なぜか?』とか、『可哀想』とか思うんやろね?
そんな事考えるのは人間だけなんやろね? 知らんけどー」
「・・・・・・ですよねぇ(汗)
哲学的なお話しで御座いますわね・・・」
ユキナの言う意味がまったく理解できないチヒロ。
「あははっ! 何それ~~~」
チヒロは、頭がショートして、煙が出た気がした・・・
「セミも凄いけど、人も凄いねえ!」
「うぅむ 確かに・・・
ひょうたんブールにも、こんなに人が多いとは・・・」
「ここ、安いからねぇ~私ら中学生やったら、200円でおつりくるから」
チヒロとユキナは、ひょうたんプールに居た。
ユキナが、たまにはプールにも行きたいと言うので仕方なくだ。
『ひょうたんプール』とは、和歌山にある巨大な製鉄工場からの、住宅街への騒音などの公害を緩和するために設置された川西緩衝緑地にある川西プールの事で、プールの形が『ひょうたんの形』をしているから、市民からはそう呼ばれていたのだ。
川西プールには、海南電車・加汰線の二里の浜駅から少し歩けば行けるのだが、この加汰線の電車のカラーリングがとてもユニークだ。
お魚さんの模様になっていて、前と後ろにはちゃんとお魚の目も描かれていた。
色も、赤、青、黒、虹色があり、『赤出目金電車』、『青出目金電車』、『黒出目金電車』、『虹色出目金電車』と呼ばれている。
虹色出目金ってなに?!
ユキナも最初は、『可愛いね~』なんて言って喜んでいたが、すぐにその笑顔も沈む事になる。
二里の浜駅に着くまでに、ずっとジロジロ見てくる野郎達がいた。
隙あらば、飛びかかって来そうな雰囲気をビリビリと感じる!
護衛にカイセイを連れて来れば良かったと後悔した。
なんか、嫌な予感がする・・・なんて警戒はしていたが。
そして駅を降りてからプールに着くまでにも、案の定声を掛けられ、もうウンザリだった。
そしてプールに着いた今も・・・
「おね~~~ちゃん!」
「「?!・・・」」
サッ!と振り向き歩き出すチヒロとユキナ。
「ちょちょ! 無視せんといてよ!」
「「~~~(汗)」」
ピタピタピタピタッ! ドボーン!
やっぱり来たっ! ニヤニヤして気色悪っ!!
チヒロとユキナは、野郎共から逃げるように足早にプールの中へドボン!
それでも追い掛けて来る!
あ~も~シツコイ!!
「ちょおーっと待って! なあーて!」
「「~~~(汗)」」
「なぁーて! なあああ━━━てぇ!」
「ああ~~~もぉうるさい! 付いて来んな!!」
「そんな事言わんとよぉ~~~!」
「なんなんよ、あの人ら?!」
「知らんわよ! 電車の中からずっと見てた気色悪いヤツじゃよ!」
「いやあぁあぁあぁ~~~!!」
ああもう! シツコイ!
もしこんな時、魔法が使えたら、魔法でチョチョイと懲らしめてやるのに!
などと思っていた。
しかし、これでは埒が明かん!
チヒロは思い切って、奴らと対峙することにした。
「おいっ! いい加減にせーよ!」
「おっ?! なになに?」
「おっと! やっと話聞いてくれる気になったか!」
「誰が聞くか! 俺らを追い掛け回すのはやめろ!
迷惑なんじゃよ!!」
「そんなん言うなよ~~~」
「そうじゃよ、俺っ娘ちゃん!」
「あああああもぉ!!」
奴らは、まるでゾンビの様に手を伸ばして、チヒロとユキナに触れようとする。
ゾッとした! 気色悪い!! 嫌やっ!!
だがその時! チヒロは立ち止まり振り返ると、奴らに向かって叫んだのだが、不思議な事が起きた!
ピタピタピタピタピタッビタッ!!
「「おっ?!」」
「おんしゃあ━━━!!」
シパァ━━━ッ!
「きゃあ!! なに?!」
「なんや?!「うわ!眩しい!」
チヒロが叫んだと同時に、チヒロの目の前に光の玉が現れ、眩しく光り輝いた!
すると・・・
「ひっ! いやぁあぁあぁあぁ~~~!!」
「ぶっ! ほんげえぇえぇえぇ~~~!!」
「「「「ザワザワザワザワ・・・」」」」
野郎共を見て悲鳴をあげるチヒロとユキナ。
チヒロとユキナは、いったい何を見たのか?
周囲の人達も、一斉に視線を向ける!
「なっ?! なんや?」
「なんなよ?! はあ?」
奴らは、何が起きたのか理解できない!
だか、奴らの水泳パンツが・・・
「やめろ! 変態! つまらんもん見せるなあっ!」
「は? 何が・・・おわっ!!」
「うわ! やばっ!!」
「「「「ワイワイガヤガヤ~~~!!」」」」
ユキナは悲鳴をあげ、両手で目を伏せて後ろに振り返り、チヒロは奴らに向かって『つまらんもん見せるな』と言って指を差す!
なんと! 奴らの水泳パンツがストーン!と完全に脱げ落ちてしまっていた!
奴らの見たくも無い、邪悪で気味が悪くてグロテスクでエレファントなオブジェがモロ出しだったのだ!
1人のものは、怪獣ガメランだったが、もう1人のは、ミドリガメだった。
・・・って、そんな情報要らないよね(汗)失礼!
奴らは、すっ転びながら慌てて逃げてった!
「・・・なんやったんやろ? 今の・・・」
「さあ・・・???
余程自信があったんか、見せたかったんかな?」
「・・・え?」
「片方はデカかったけど、もう片方のんは・・・」
「なんの話ししてんのよ! アッポケ━━━っ!」
バチィ~~~ン!
「あいだあっ!!」
「ペニ・・・その話しじゃないよお! 光の事よ!」
ユキナは、真っ赤な顔して、チヒロの背中を思い切り引っ叩いた!
だが、何かユキナらしからぬ単語を言いかけたようにも聞こえたが、ここはあえて突っ込まない方が無難だろう。
絶対に、藪蛇なのは間違いない・・・(汗)
「あいだぃだぃだぃって!! ごめんごめん!
ああ~~~はいはい! 光ね! なんやろ?」
「んもぉ~~~(照)」
チヒロが怒りに任せて怒鳴った時に、チヒロの目の前で何かが光った!
その次の瞬間に、奴らの海水パンツがストーン!と落ちたのだ。
そう。 まるで魔法のように。
突然の不思議な出来事に、チヒロとユキナは、ポカーンとしてしまった。
他の人達も、何事も無かったかのように、アソビ始めた。
なんだかチヒロとユキナは、興が醒めた感じになり、自分達も居づらくなってしまい、プールから帰ることにした。
••✼••チヒロ宅••✼••
「ただいま~」
「おかえり! 今日はプールに行ってたんとちゃうの?
帰って来んの、エラい早かったなぁ?」
「ふぅん・・・ちょっとね」
「・・・うん?」
チヒロは、それだけ言って水着を洗濯機に放り込むと、自分の部屋に引き込んでしまった。
チヒロの母親は、チヒロの様子が何時もと違うのにすぐに気付いた。
••✼••チヒロ自室••✼••
「今日の、プールでのあの現象って、いったい・・・」
チヒロは、自分の手の平を見て、思い悩む。
「もしかして・・・」
チヒロは、思った。
もしかして、プールでのあの力って、『魔法』なのでは?と・・・
チヒロが飲んだのも、『魔法薬』だと聞いていた。
魔法薬を飲んで自分は女に変身したのだから、もしかしたら今の自分の身体は、魔法属性があるのかも知れない?
だとしたなら、もしかしたら魔法が使えるかも知れない?!
そう思ったチヒロは、手の平を前に伸ばして、『吹雪』と念じてみた。
「この部屋暑いから、火は使えない
火事にでもなったら大変やし・・・
涼しくなるように、ほんなら、雪・・・か?
んんんんん~~~~~~吹雪!」
シュパァン!
ビョオオオオオオオオオオオオ━━━っ!!
「ひぃやあぁあぁあぁあぁ~~~(汗)」
なんと!!
チヒロが『吹雪』と念じて言葉にした瞬間に、手の平の前に、プールの時と同じ光が一瞬光り輝き、部屋中に吹雪が吹き荒れた!!
もう、寒いのなんのって!
勉強机の上の筆記用具や本などは吹っ飛び、畳んであった布団は飛び回り、ポスターやカレンダーなどは剥がれてビリビリに引き裂かれて、そこらじゅうが雪まみれの、とんでもない事になってしまった!
そして、ようやく治まったかと思えば・・・
「ぐっ! かはっ! なんや・・・コレ???」
突然、全身が強烈な筋肉痛のような痛みに襲われる!
少し動かそうと力を入れるだけで、鈍痛が走る!
バタッ!
「かっ・・・身体が・・・う、動かん(汗)」
チヒロは、急に苦しくなって、身体の自由が効かなくなり、その場に糸の切れたマリオネットの様にヘニャヘニャと倒れてしまった。
所謂、魔力切れだった・・・
すると、チヒロの部屋から大きな音がしたので、チヒロの母親が慌てて駆け付けた!
バタバタバタバタバタッ・・・
カチャ! バァン!
「チヒロ! いったい何を・・・はえっ?!」
チヒロの部屋の無惨な有様に、母親は絶句・・・
まるで、氷室の中に居るような有様だった。
そして部屋の中心で、倒れているチヒロを発見。
「チヒロ! どーしたん?! コレぇ!! さむっ!」
「お・・・おかーちゃん?」
「何なんコレ?! 何があったぁん?!」
「わ・・・わからへん・・・あうあうあうあう・・・」
チヒロは、あまりに寒さに口を震わせガチガチと歯を鳴らしていた。
すると突然!
チヒロの部屋に、良子が現れたのだ!
シュパァン!
「わっ!「きゃあ!」
「おお・・・これはまた、大暴れしよったな?」
「あっ! 貴女は、リオリオさん?!」
「えっ? 魔法使いの・・・オバン・・・」
「オバンとはなんじゃ! この小娘めっ!
ところで、これはどうしたんじゃ?
チヒロの魔力がいきなり解放された反応があったから、心配して来てみたんじゃが・・・」
「「魔力?!」」
「魔力って、魔法使いが魔法を使う時に必要な力・・・ですよね?」
「うむ そうじゃ! その、魔力じゃ!」
「ええっ?! 魔法使い?! 魔力?!」
「ちょっと待って! なんで俺に?」
「チヒロ、なんか思い当たる事は無いの?」
「いや・・・別に思い当たることなんて」
「ふむ どうやらお前は、知らず知らずの内に、精霊の力を借りてしまったようじゃな!」
「「精霊の力?」」
「おぅよ チヒロ、お前のそのシャツを見てみぃ!」
そう言って、チヒロの着ているシャツを指差す良子。
チヒロが着ているシャツとは、薄い紺色の生地に黄色の五芒星が描かれたもの。
それは、チヒロの父親の従兄弟である人が、シャツのシルクスクリーン印刷事業を始めたらしく、その失敗作をタダで貰ったものだった。
なので、若干色が滲んでいるが、チヒロは気に入っていたものだ。
「そのシャツに描かれた五芒星が、たまたま精霊に魔法陣として認識されたんじゃろうな!」
「へ? いやいやいや!
こんなシャツの星が、魔法陣って?
こんなもん・・・・・・あっ!」
「チヒロ! やっぱり思い当たる事があるんやね?」
「ああ、うん・・・
今日、川西プールに行ったとき、変な野郎共に追い回されたんやけど、その時にいきなり光がピカー!って光って・・・」
「・・・光?」
「ふぅむ・・・光りが輝く・・・か」
「「・・・・・・」」
「ソレは、たぶん・・・」
「な、なに?」
「なんですか! リオリオさん!」
「うぅむ・・・それは・・・!
魔女や魔法使いが、身の危険を感じた時に発する、自己防衛反応かも知れんのお?」
「「自己防衛反応?!」」
「そうじゃ! つまりお前は、精霊と契約してしまったのかも知れん!
いや、まだ契約の途中の段階のままのようじゃのう?」
「「ええっ?!」」
「精霊って、マジかよ・・・」
「信じられんかも知れんが、精霊は本当に居るぞ
姿も見えんし、声も聞こえんがな・・・
じゃが、意思疎通はできるんじゃ!
魔女や魔法使いにはな・・・」
「へぇ~~~凄い」
「・・・精霊か
精霊って、どんな姿をしてんの?」
「精霊に、姿形など、ありゃせんわ
人間で言う『魂』みたいな存在じゃからな!
科学的に言うと、『精神体や意識体やエネルギー体』または、『物質的な肉体を持たない自我』と呼ばれる存在じゃな!」
「何言うてるか解らへん・・・」
やっぱり、アッポケなチヒロには理解は難しいのだった。
「・・・まあええ、とにかく聞け!
今回、チヒロに干渉した精霊がどう思ったのか、それとも勘違いしたのかは私には分からんが、本来魔女や魔法使いは、魔法で悪さをしたり、人を傷付ける行為は、『精霊の倫理に反する行為』として、精霊の力によってできんもんなのじゃ!
じゃが例外があってな?
魔女や魔法使いに危害を加えようとする者が居たなら、その相手を必要最低限の力で反撃することができるんじゃ!」
「そんな事が・・・」
「つまりはじゃ!
お前は、無意識に精霊を呼び出した!
その時は契約途中という段階じゃが、お前に危害を加えようとする者が現れ、無意識に精霊の力によって反撃したのでは?と思うんじゃな
その後にそのシャツを着たもんじゃから、おそらく精霊はそのシャツの五芒星を契約の魔法陣として認識したんじゃろな!
んでじゃ! 精霊との契約のはずが、お前は何も行おうともいない。
じゃが精霊は、今もお前との契約を待っている状態って訳じゃ!」
「なん、なんで!!
そんな事が分かるんですか!!」
「なにせ、お前の事をずっと見ていたからな!」
「ひあっ?! お、俺をずっと見てた?!
なん、なんで?!
そんなん覗きやんかオバン!!」
「じゃかあーしわっ! オバンゆーな! 小娘がっ!
今一番気になるのは、お前なんじゃ!
また悪さでもせんかと、見ていたんじゃ!」
「悪さなんか、するかよオバン!!
いい加減失礼やなホンマに━━━!!
なんでいちいち俺が・・・」
「チヒロ! やめなさい!!」
パチン!
見るに見兼ねて、母親がチヒロの頭を張り倒す!
「あだっ!! せやかて、このオバンがよお!!」
「こるるあっ!! 何度も何度もオバンオバンって言いくさって!!
お前を魔法で猫耳に変えてやろーか!!」
「ひゃあっ!! ご、ごめんなさい!!」
「まったく、こんなに反抗的で聞き分けな無い小娘は初めてじゃわい!」
「ごめんなさいって・・・(汗)」
「とにかく! 精霊をなんとかせにゃならん」
「そ、それって、何もせんかったら、ど、どうなるんや?・・・どうなるんすか?」
「うむ このまま何もせんかったら、精霊はチヒロが精霊を蔑ろにしたとして、チヒロには必要ではなかったものと判断して、二度と力を貸してくれんようになる・・・かも知れんな」
「「ええっ?!」」
「それって、あの・・・その・・・大変なこと?」
「まあな! このまま黙って放置とはいかんぞえ!
『今回はありがとうございました またよろしくお願いします』と、お礼を言って一旦お帰りいただくか、それとも、『これから魔法使いへの聖別をお願いします』と、魔法使いになるか・・・じゃな!」
「「魔法使いになる?!」」
チヒロには、考えもしなかった事だった。
魔法使いに憧れはあったが、なろうとも考えなかったし、なれるとも思ってなかった。
なのに、今の良子の話しからすると、チヒロにも魔法使いになれる可能性があるということか。
「まあ、取り敢えずは精霊が今もお前を待ってるみたいじゃから、今回は一旦帰ってもらうとするかえ?」
「え? そんな事して精霊が・・・」
「大丈夫じゃ! 心配は要らん!
もし、お前がまた魔法使いになりたいと願うなら、魔法使いになるための儀式魔法を行えば良い話しじゃ!」
「「儀式魔法?!」」
「そ、それって、俺にもできるもんなんですか?」
「うむ! できるぞえ!
女装剤や女装役剤を飲んだお前ならばな!
なので、お前の身体は魔法使いに近い身体になっておる
何もしない人間が魔法使いになるには、私の様な立派な魔法使いの施しが必要じゃがな!
はっはっは!」
「そ、そうなんや? わかりました・・・」
実はよく解ってないチヒロ。
「では、精霊には一旦帰ってもらうぞえ?」
「はい・・・」
良子は、チヒロの胸に手をかざすと、何やらブツブツと小声で話している。
そして、フワッと淡く水色に光ると、その光はすぐに消えてしまった。
「ふむ これで、いいじゃろう」
「あ、あり、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「コレを、お前に渡しておく」
小さなバッグをチヒロに渡す良子。
「コレは?」
「魔法使いになるための、儀式魔法を行う方法と所作を書いたものと、他必要な儀式用具が入ったマジック・バッグじゃ!」
「「マジック・バッグ?!」」
「・・・ソレに書かれた通りにすると?」
「お前一人でも、数人でも、魔法使いになれる・・・
と、言う事じゃ」
「「おおっ!」」
「数人・・・とは?」
「つまり、お前達家族3人でも一緒に魔法使いになれるぞえ!」
「おおおおっ!」
「やったやん! チヒロ!
お母さんも、魔法使いになれるんやねえ!」
「え、うん・・・そう言う事やね」
「「ありがとうございます!」」
「うむ ついでに、この部屋を元に戻してやろう!
では、私は帰るぞ?」
「「はい・・・ありがとうございます」」
「うむ・・・」
パチン!
良子は、パチン!の指を弾いた!
「うわっ! 一瞬で部屋が元に戻った!」
「す、凄い! これが魔法?!」
「ではな!」
「「ありがとうございました!」」
「うむ」
シュン!
「「おおおっ!」」
良子は、転移魔法で消え去った!
「ふう・・・ビックリしたなぁ~」
「チヒロが魔法使いに! 凄いやん!」
「いやいや、俺はまだ魔法使いになるとは言うてへんで!」
「えっ?! なんでぇよお?!
せっかく魔法使いになれるチャンスやのに!」
「いやいやいや、待ってくれって、おかーちゃん!
魔法使いになったら、人よりもずっと長生きするんやで?」
「そうよお! ええやーん!
魔法使いやで! 魔法が使えるんやで!
それに、いつまでも若々しく長生きできるやなんて、めっちゃ素敵やん!」
「おかーちゃん! 簡単に考えすぎ!
魔法使いになったら、今の知り合いも、これからできる知り合いとか友達とかも、先にどんどん死んでいくのに、自分だけ生き続けるやなんて、それこそ生き地獄やで!」
「う~ん そんな考え方もあるんか・・・」
『この人、ホンマに何でも安直に考えすぎやな?』
チヒロの母親は、チヒロが魔法使いになる事を望んでいるようだ。
それに、自分も魔法使いになりたいようだった。
でもチヒロは、悩んでいた。
魔法使いになって魔法を使えるなんて、どんなに素敵で素晴らしい事だろうか。
チヒロは、この世界に魔法や魔法使いが存在する事を知った時から、魔法使いにずっと憧れていた。
それが叶うかも知れない?!
でもそれは、人として生きる事をやめて、魔法使いとして1000年近く生きるということ。
もし自分だけが魔法使いになったなら、それは孤独に耐えながら生きる生き方を選ぶということ。
自分に、そんな生き方ができるのか?
これは魔法使いなら、誰でも抱える事柄である。
でも、家族全員で魔法使いになるのなら、少しはそんな寂しさも軽減されるのだろうか・・・?
「おかーちゃん! ちょっと考えさせてくれ!」
「!・・・うん わかった!
好きなだけ、悩み考えなぁよ?」
「うん・・・」
チヒロは自室に戻り、ユキナに話してみる事にした。
••✼••チヒロ宅自室••✼••
チヒロは、スマホのレインを起動した。
「ユキナに、相談してみよ!」
スポッ!
■━━━━━━━━━━━━━━━■
(おーい! )>
(起きてるか? )
■━━━━━━━━━━━━━━━■
ピロリン!
■━━━━━━━━━━━━━━━■
(おーい! )>
(起きてるか? )
<(起きてるよー)
(どーしたん?)
■━━━━━━━━━━━━━━━■
スポッ!
■━━━━━━━━━━━━━━━■
(おーい! )>
(起きてるか? )
<(起きてるよー)
(どーしたん?)
(実は相談したいこ)>
(とがあってね! )
■━━━━━━━━━━━━━━━■
ピロリン!
■━━━━━━━━━━━━━━━■
<(起きてるよー)
(どーしたん?)
(実は相談したいこ)>
(とがあってね! )
<(相談? また何か)
(やらかした? )
■━━━━━━━━━━━━━━━■
「ううう~~~む・・・ユキナのヤツ(怒)」
ユキナは、またチヒロが何かやらかしたと思ったらしい。
まあ、いつものチヒロからすれば、そう思われても仕方ないのだが・・・
チヒロは、今日プールから帰った後に家で起きた出来事をユキナに話した。
結局、文章だと面倒なので、通話にする事になった。
『魔法使い?! チヒロが?』
「そうなんよ・・・ビックリしたわ!」
『で、チヒロはどうすんの?』
「まだ、決めてない・・・」
『そっか・・・』
「ユキナやったら、どうする?
もし、魔法使いになれるって言われたら・・・」
『え? 私? うぅ~~~ん・・・
そりゃあ、魔法使いには憧れるけど、私1人じゃ決められへんかなぁ?
やっぱり両親と相談するかな?』
「そうじょなぁ?
でも、おかーちゃんは俺が魔法使いになる事、なんか賛成みたい!
ってか、すんごい喜んでたわ」
『ええっ?! オバチャン、チヒロが魔法使いになる事賛成? 喜んでたん?!』
「ってゆーか、魔法使いになって欲しいみたい
俺は悩んでるんやけどね?」
『そ、そうなんや・・・へぇ・・・』
「・・・・・・」
なんだろうか?
ユキナのリアクションが、残念そうに聞こえる。
ユキナもチヒロに魔法使いになって欲しいのだろうか?
それとも、ユキナも魔法使いになりたいのだろうか?
女の子って、魔法使いに憧れるような気がする。
特に小さな女の子は、『魔法少女』に憧れ、将来は魔法少女になる事が夢だと言う。
ユキナも、そんな類か?
ってか、ユキナは元は男なのだが・・・
そう言えば忘れていた。
ユキナって、元々女の子だったような気がしていた。
チヒロが無理やりユキナを男から女の子にしたようなものなのに。
「あぁ、それでね?
良子さんに、魔法使いになる方法教えて貰ったんよ!」
『ええっ?! ソレ、ホンマに?』
「う、うん 案外簡単そうやったで?」
『へ、へぇ~~~そうなんや!
ソレ、私でも魔法使いになれるんかな?』
「へっ?! ユキナ、魔法使いになりたいん?」
『そりゃーそうよ! 魔法使いになりたいよ!
やっぱり、魔法と魔法少女とかに憧れるやん?』
「そうか・・・」
あいた━━━!! マジか!!
やっぱり! そう来たか! と、思った。
ユキナは、魔法使いになりたいようだった。
チヒロは、めちゃくちゃ迷っていた。
勿論、魔法や魔法使いに憧れはある。
魔法使いの映画の主人公のマネーボッターみたいに、ワンドを振り回し呪文を唱えて魔法を使ったり、箒に乗って空を飛びたいと思っていた。
迷う理由は、やっぱり寿命だ。
魔法使いは普通の人の10倍以上生きる訳だ。
魔法使いになれば、知り合いも好きになった人でも、みんな自分よりもドンドンと年老いていき先に死に別れになる。
しかも、その先もずっとである。
たとえ、母親が望んだとしても、迷いは消えない。
それを考えると、とても踏ん切りが付かない、
するとユキナが、こんな事を言う。
『でも、魔法使いって、精霊の倫理に反する事をすると、精霊に魔法使いとして相応しくないと判断されて、人に戻されてしまうんよねぇ?』
「ん? ああ、確かそんな事聞くなぁ?」
『せやったら、魔法使いが嫌になった時、わざと精霊の倫理に反する事をしたらええんとちゃうん?』
「ええっ?! でも、そんな事したら・・・
あっ! そうか・・・そう言う事か!」
『うん! そう言うことよ!
流石にアッポケなチヒロにも理解できたみたいやね!』
「うっさいわ! ほっとけ!」
『でも、そうやって魔法使いとして長く生きるのが辛くなった魔法使いは、わざと精霊の倫理に反する事をして、人に戻るって聞くよ?』
「うぅむ・・・なるほど」
そっか! なるほど!
魔法使いとして長く生きてて、もう魔法使いが嫌になったら、わざと精霊の倫理に反する事をすれば人に戻れるんだ!
なら極端な話し、魔法使いになっても、何時でも人に戻れるって事!
とは言え、『精霊の倫理に反する』って、どんな事なのかよく分からないので、ちょっと怖い気もするが。
でも、魔法使いになりたいという気持ちが、一気に膨らんだチヒロだった。
「俺、魔法使いになろうかな?」
『そ、そうなん? やっぱり、そうよな・・・』
「うん?」
なんだかユキナも魔法使いになりたそうだった。
でも、ユキナも条件としては、チヒロと変わらないはず。
チヒロと同じように、魔法薬で女の子に変身したのだから、大いに魔法に関わっているのだから、ユキナにも魔法使いになれる可能性は大のはずだ。
「ほいじゃあよ! ユキナも俺と一緒に魔法使いにならへんか?」
『えっ?! 私も? ええの?』
「構わへんやろぉ! それに、良子さんがくれた魔法使いになる儀式魔法のやり方には、ご丁寧にも2人以上で魔法使いになる方法も書いてたし!」
『そうんや!? 私も魔法使いになりたい!』
「そうか! ほんなら、20日の夜にウチに来る?」
『20日? なんで?』
「うん! 説明にはねぇ、満月の夜が1番精霊の力が強くなる日なんやって!
だから、儀式魔法を行うんやったら、20日の日にしよ?」
『うん! わかった!』
こうしてチヒロとユキナは、8月の20日に魔法使いになるための儀式魔法を行うと約束した。
果たしてチヒロとユキナは、本当に魔法使いになれるのだろうか?
そして、水中ゴーグルのようなのが幾つも入っていたが、これは何なんだろうか?
取説をまともに読まないタチのチヒロは、後でそのゴーグルがとても重要な物だったと気付くのだった。
魔法使いじゃないのに、魔法が暴発?!
チヒロは、魔法使いの素質があるようだ。
だが、魔法使いになるには・・・
最初は、その他大勢のチヒロとユキナだったけど、なんだか主要人物になりそう・・・




