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女装剤  作者: 嬉々ゆう
55/91

第54話 「ユキナ企画! チヒロとカイセイくっ付け大作戦!」

チヒロが好きで堪らないカイセイ。

朝早くから、チヒロを遊びに誘いに家まで来るが、チヒロは親の仕事の手伝いで、遊びには行けない。

だがカイセイは、ユキナという助っ人に応援を頼む。


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。




「な、なあ! チヒロちゃん!」


「ふぅん?」


「レイン! レイン交換せーへんか?」


「レイン? ああ、ええよう?」


「そ、そうか! やった・・・(嬉)」

 小さくガッツポーズするカイセイ。


「・・・???」


「ふふふ・・・」



 カイセイは、チヒロに一目惚れしてしまい、今ずくにでも抱きしめて唇を奪いたいくらいに、好きで好きで、もお~~~好きでたまらない!

 カイセイは、コメカミにも脈打つほどに心臓がバックバクなのに対して、チヒロは、まったくもってケロッとしている。

 ユキナとカイセイの2人と、チヒロとのこの温度差は、絶望的なほどに差があった。


 カイセイの気持ちがチヒロに伝わるのは、果たして何時になるのやら・・・

 いや、そもそも伝わるのだろうか?


 この後、チヒロ達は別れ、それぞれが、それぞれの家と帰って行った。




・⋯━☞その日の夜☜━⋯・


••✼••チヒロ宅の自室••✼••



 ピロリン!

「お! レインか ユキナかな?」



 チヒロのスマホにレインが入った。

 カイセイからだった。




■━━━━━━━━━━━━━━━■

 <(こんばんは )

  (カイセイです)


■━━━━━━━━━━━━━━━■




「なんなよ カイセイかよ

 なんなんじゃよ こんな時間に・・・」



 とりあえず、返事をしてみる。


 スポッ!




■━━━━━━━━━━━━━━━■

 <(こんばんは )

  (カイセイです)


        (こんばんは)>

■━━━━━━━━━━━━━━━■




「うう~~~ん・・・」



 チヒロは、カイセイとは特に話す事がなく、だからと言って(だんま)りは良くない。

 スマホをまんじりと見詰めながら、どう何を話せば良いのか考えていた。

 とりあえず、今日のお礼を言う事にするチヒロ。


 スポッ!



■━━━━━━━━━━━━━━━■

 <(こんばんは )

  (カイセイです)


        (こんばんは)>

   (今日は、ありがとう!)>

   (とても楽しかったです)

■━━━━━━━━━━━━━━━■




 すると、すぐさま返事が来る!


 ピロリン!



■━━━━━━━━━━━━━━━■

 <(こんばんは )

  (カイセイです)


        (こんばんは)>

   (今日は、ありがとう!)>

   (とても楽しかったです)


 <(うん!楽しかったね!)

  (また一緒に遊びに行き)

  (ましょうね!    )

■━━━━━━━━━━━━━━━■




「また一緒に遊びに行きましょうね?

 マジか・・・面倒やな・・・

 それより、なんでレインやと、標準語っぽくなるんやろ?」



 確かにそうである。

 不思議とメールやレインで話すと、不思議と標準語っぽくなるものだ。



「これも、『親しい仲にも礼儀あり』ってヤツ?

 ってか、コイツとは別に親しくないんやけどな?

 今日、知り合ったばっかしやし、特に話す事もないし・・・」



 今のチヒロの発言をカイセイが聞いたら、きっと絶壁から突き落とされるほどのショックを受けるだろう。

 チヒロはカイセイの気持ちになと、コレっぽっちも気付かないし、興味無いし、面倒だし、早く寝たい。

 なので返事をするのは、お約束の社交辞令。


 スポッ!




■━━━━━━━━━━━━━━━■

 <(うん!楽しかったね!)

  (また一緒に遊びに行き)

  (ましょうね!    )


   (そうですね。    )>

   (また行きましょうね!)

■━━━━━━━━━━━━━━━■




 この時カイセイは、飛び上がるほどに喜んだ。

 だが・・・


 スポッ!




■━━━━━━━━━━━━━━━■

 <(うん!楽しかったね!)

  (また一緒に遊びに行き)

  (ましょうね!    )


   (そうですね。    )>

   (また行きましょうね!)

   (ユキナも一緒にね! )>

■━━━━━━━━━━━━━━━■




「・・・・・・・・・うん?」



 チヒロは、しばらく待つ。

 だが、待てども待てどもカイセイから返事が来ない。

 どうしたのか? と心配になってくる。

 寝たのかな?

 などと思い、チヒロはレインを閉じた。


 チヒロは知らなかった。


 カイセイは、チヒロと2人っきりで遊びに行こうと誘っていたのだが、チヒロはカイセイの気持ちなど、コレっぽっちも気付いていないので、ユキナも一緒にと発言したのだ。

 それがカイセイにとっては、途轍(とてつ)も無くショックだった。

 カイセイの気持ちがチヒロに伝わるのは、きっと遠い日となるだろう・・・




・⋯━☞翌日☜━⋯・


••✼••チヒロ宅の自室••✼••



「おーい! チヒロー! 起きてるかー!」


「はあーん? 起きてるよー!」


「瀬田って子が来てるぞー!」


「セタ? 誰やソレ・・・」



 チヒロは、もうカイセイの苗字を忘れていた。

 いや、忘れたと言うより、興味が無いから、覚えていないだけである。



「セタ・・・セタ・・・セタ・・・誰?」


「おーい! チヒロー! 待ってるぞー!


「わかってるー! 今行くからー!」


「あ、せや! お前今日、店手伝ってくれへんかー?」


「店? ああ、別にええよー!」


「そうか! ほな、頼むぞー!」


「ああーい! よしっ! 5000円ゲットだぜ!」



 チヒロは、海の店の手伝いをすると、父親から5000円貰えるのだ。

 バイトを雇うと、5000円では収まらない。

 金の無いチヒロにとって、5000円は魅力だ!

 オマケに(まかな)いで、メニューの中から好きなものを食べられるし。

 長く暇な夏休み、断る理由など無い。


 チヒロは、玄関へと向かう。



 パタパタパタパタッ!  カチャ!

「おっ?! カイセイ?

 どした? こんな朝早くに?」


「おう! チヒロちゃん・・・って!

 うわあっ! ちょっと! うわわっ!」


「なに? どーしたん?」



 今のチヒロの格好は、タンクトップにショーツ姿。

 カイセイが慌てるのも無理は無い。

 カイセイは、手で目を覆って見てないですアピールで、チヒロと話す。



「お・・・おはよう」


「おはよう・・・今日は、どーした?」


「あ、うん 一緒に何処か遊びに行かへんかな?って思って!」


「俺と?」


「う・・・うん」


「ごめん! 今日は、親の仕事の手伝いせんとアカンのよ!」


「?!・・・そ、そうか・・・そうか・・・

 ほな、しゃーないな・・・」


「うん ごめんな? せっかく来てくれたのに」


「え、うぅん! ほな、またね!」


「おう! またな!」



 カイセイは、ガックリと肩を落として帰ってった。

 すると父親が来て・・・



「あれ? 今の子は、チヒロのボーイフレンドとちゃうんか?」


「はあっ?! 何を寝言こいてんじゃオッサン!?

 ボーイフレンドって変な言い方すんなよ!

 ただの知り合いじゃよ! 知り合い!!」


「うん? そーか?」



 もし、今のチヒロの言葉をカイセイが聞いたら、きっと立ち直れないほどに叩きのめされただろう。

 おお・・・可哀想なカイセイ。

 ドンマイ・・・



「それよりチヒロ・・・」


「あん?」


「お前・・・その格好で人前に出たんか?」


「うん? アカンか?」


「アカンか?って、そりゃあ~お前~

 水着姿やったらいざ知らず、それ下着姿やろ?」


「ん・・・そーやな?」


「そーやなってお前なぁ?

 そんな姿を人に見られて恥ずかしくないんかえ?」


「別に! 減るもんじゃないし?」


「ソレ、おかーちゃんには、でったい言うなよ?」


「なんで?」


「でったい! めちゃくちゃ怒られると思うぞ!」


「ふうん???」

 首を傾げるチヒロ。


「ユキナちゃんが、お前を心配してガチャガチャ言うのが解るわ」


「ああ、アイツなんかこの頃、小姑みたいにうるさいんじゃよお!

 なにかと、『チヒロはもう女の子なんやから~女の子らしくしなさーい!』ってな!

 女の子なんは、身体だけやっちゅーねん!」


「そーゆーところが、アカンのやと思うぞ?」


「だから、どーゆーところよ?」


「はぁ・・・ま、何時か解る日がくるやろ」


「・・・???」



 首を左右にコロコロ傾け考え込むチヒロ。

 チヒロに、女の子を自覚する日はくるのだろうか?




••✼••加汰海水浴場海の家••✼••



 今日は、『山の日の振替休日』なだけに、なかなか海水浴客が多い。

 ユキナにも来てもらうべきだったと、今更ながら後悔した。

 でも、ユキナに来てもらうと、チヒロの貰える報酬が3000円になっちゃう。

 父親に言わせると、仕事を分担するのだから、報酬が減るのは当たり前との事。

 なんか・・・納得いかない。

 だから、ユキナにはわざと声をかけなかったのだった。

 仕事は辛いけど、報酬独り占めって訳だ!


 ところが・・・



「チヒロー!」


「え? あれれ? ユキナ? なんで?

 って、カイセイも?! なんで???」


「よ、よお・・・チヒロちゃん(焦)」


「お・・・おう・・・???」



 なんと!

 ユキナがカイセイを連れて、海の家にやって来たのだ。

 なんで? ユキナには言ってないぞ!

 遊びに来た・・・訳ではないよね(汗)



「カイセイから聞いたんやけど、1人だけやったら大変やろ?

 だから、手伝いに来たで!」


「ええっ?!」



 なんてよ?! 待て待て!

 そんな事されたら、俺の貰える小遣いが減ってしまう!!

 冗談やないぞ!!



「オッチャーン! 手伝いに来たでー!」


「なっ?! ちょっ・・・(焦)」


「おおー! ユキナちゃあん!

 来てくれたんかー! ありがとな!」


「くあー! もお~~~やられた!」



 ウンコ座りで、頭を抱え込むチヒロ。

 だが! それだけではなかった!!



「あんね! 今日はこの子も一緒に手伝ってくれるんやてー!」


「なにっ?!」


「ど、どうも・・・」

 照れくさそうに頭を掻くカイセイ。


「は?! そーなんか? それは助かるわぁー!

 で、名前は?」


瀬田(せた) 快星(かいせい)といいます」


「カイセイ君か! ほな、よろしくな!」


「はい! 頑張ります!」


「いやぁ~ん! 頑張らんでもええよお~~~(泣)」



 なんで?!

 なんで、こうなったあ!!

 カイセイのヤツ、俺が父親の仕事の手伝いするって言うたのをユキナにバラしたな?

 おのれ、カイセイ~~~(怒)


 チヒロは、カイセイにめちゃくちゃ腹が立った!



「あ、チヒロー!

 2人来てくれたから、みんな1人2000円ずつなー!」


「ええええええ━━━っ!! 嘘や━━━んっ!

 そんな殺生なあ━━━っっっ!!」


「当たり前やろ!」


「があぁあぁあぁあぁ~~~ん・・・」



 余計な事をしくさってからに!!

 チヒロは、ギロリとカイセイを睨んだ。



「むっ!・・・」


「へっ?!・・・な、なにかな・・・チヒロちゃん?」


「うっさいわ! チクリめ!」


「∑( ̄□ ̄ΙΙΙ)がぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」



 カイセイは、ヘロヘロヘロ・・・と、胸を抑えながら、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。

 まったく容赦の無いチヒロだった。

 実は、一緒に海の家の手伝いに行こうと誘ったのはユキナである。

 カイセイには、とんだトバッチリだった。

 カイセイは、手と膝を付き、絵に描いたように落ち込んでいた。

 



「あれ? カイセイ? どうしたん?」


「グスン!・・・俺は・・・俺は・・・

 取り返しのつかへん過ちを犯したんか?」


「はえっ?! な、なんで泣いてんの?!

 チヒロ! カイセイどないしたん?!」


「さあ? 知っら━━━ん!

 調子悪いんやったら、もう帰ったらあ~~~?」


「∑( ̄□ ̄Ⅲ)ぐをわはあ!!」

 カイセイは、亀のようにひっくり返った。


「え? ええ━━━━━━?!

 カイセイ!! どないしたんよお?!」



 カイセイは、ひっくり返ったまんま、天井の一点だけを見詰めて涙を流しながらピクピクと痙攣していた。

 チヒロの態度と言葉が、痛恨の一撃だったようだ。

 今のチヒロにとってカイセイは見る目が変わり、憎っくき『余計なお世話野郎』でしかなかった。

 カイセイにとって、チヒロの冷たい態度と言葉が、どれほどのダメージだったのかは、計り知れない。


 この時チヒロの称号に、【女王様予備軍】が追加されたのは、言うまでもない。


 海の家の仕事は滞る事無くすすみ、昼休憩となった。



「おーい! みんな一人ずつ30分休憩とってくれなー!

 賄いは、『焼きそば』でええなー?」


「「「はあ━━━い!」」」


「じゃ、俺行ってくるわな!」


「はーい!」


「・・・」



 先にチヒロが休憩をとる事になった。

 が・・・



「ほな! カイセイも休憩してくる?」


「え? ああ、うん わかった」


「なんやったら、今チヒロと一緒に休憩してきてもええよお?(笑)」


「えっ? ええんか?

 オジサン、一人ずつって言わへんかったあ?」


「ええんよ!ええんよ!

 私がカイセイの分も頑張るから、カイセイも頑張ってな!」


「!・・・わかった! ユキナちゃん、ありがとう!」


「うん!」



 カイセイは、焼きそばとお茶を持って、ウキウキとチヒロが休憩している店の裏へと向かった。

 果たして、ユキナのお膳立ては、上手くいくのか?


 だがしかし! カイセイは、見たものは・・・



••✼••海の家の裏••✼••



「チヒロちゃん?」


「なぁん?」

 パタパタパタパタ・・・


「ぶはっ?!」



 カイセイが見たのは、上着を脱いで上半身裸になったチヒロが、あぐらをかいて座り、濡れタオルを肩にかけ、団扇(うちわ)であおいでいる姿だった!

 女の子が人前でする事では無い!



「うわわっ! チヒロちゃん!?

 なん、なんちゅー格好してんの!!」


「へえ? だって暑いんやもんよぉ~~~」

 パタパタパタパタ・・・


「と、とにかく、上衣着て!!

 隠して! はやく、胸隠して!!」


「はぁ~~~? 別に見られても減るもんじゃないし?

 今は俺とお前しか居らんやぃてよお?」


「あっ!でもっ!ちょっ!ああ~~~もお!!」

 バタバタバタバタ!!


「あれ?! おーい! 休憩せんのかー?

 ・・・なんなんじゃ? アイツ・・・???」



 カイセイは、チヒロを直視できずに、堪らず逃げるように店の中へ走ってった!



「変なヤツ? はっ!」

 パタパタパタパタ・・・



 チヒロは、身体は女の子でも、心は男の子。

 女子としての『恥じらい』の『は』の字も無いのだった。



••✼••海の店の中••✼••



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


「あれ? もう戻って来たん?

 あれれ? 焼きそば まだ食べてへんやん!」


「う、うん・・・食べられへんかった・・・」


「はあ? なんで?」


「だってチヒロちゃん・・・

 上半身裸になってたから・・・」


「え?・・・・・・・・・

 はぁ━━━━━━━━━っっっ?!」



 慌ててユキナが、チヒロの居る店の裏へと急ぐ!



••✼••海の店の裏••✼••



「チヒロ!!」


「ん? おおーユキナ! どした?」


「どした? と、ちゃうわよ!!

 何してんのよ、そんな格好して━━━!!(怒)」


「あははっ いや、暑いから・・・」

 パタパタパタパタ・・・


「女の子は人前で、そんな格好はしませーん!!」


「あははっ ま、普通の女の子はせんわなあ?」


「アッポケ━━━━━━ッ!!」


「わっ! うっさっ!!」



 耳を塞いで縮こまるチヒロ。

 ユキナのお膳立て、失敗・・・



 そして、チヒロが店に戻って来た。



「ほーい! 終わったぞー 次の人、どーぞー!」


「アッポケ!」

 パシッ!


「あだ! なんなよ?」



 ユキナは、チヒロの頭を叩く!



「ほん~~~まに! いい加減にしなあよ?!」


「はあ!? なんやっちゅーねん?

 俺、なんか悪いことしたかぁ?」


「チヒロって、ホンマにアッポケなんやから!」


「はあ? だから、なんなんよ?」


「自分の胸に聞きなあ!!」


「おどどっ!・・・自分の胸に聞けって・・・

 どーせ俺のチチは、ユキナほど無いよ!」

 チヒロは、自分の胸をさすって言う。


「むっきぃ━━━っ!! アッポケ━━━っ!!」

 バシッ!ビシッ!バチッ!バシッ!



 ユキナは、みるみる顔を真っ赤にして怒り、チヒロの頭を何度も叩く!



「あだ!あだ!あだ!あだ! 痛いって!」


「ふんっ!」


「・・・・・・・・・なんなアレ?」



 チヒロには、なぜユキナがこんなにも怒ってるのかが理解できなかった。

 ユキナは、焼きそばとお茶を持って、店に裏へと向かう。

 プンスコ怒りながら・・・



「なあ、カイセイ?」


「え? な、なに?」


「ユキナのヤツ、なんであんなに怒ってんのな?」


「?!・・・はぁ~~~

 それは、チヒロちゃんが、女の子らしくせーへんからとちゃうかなあ?」


「女の子らしくぅ?

 今日はちゃんと、女の子の服着てるやんか!」


「そういう事じゃなくて・・・」


「他に何があるんなよ?」


「だからそれは・・・

 俺が言うより、ユキナちゃんから聞いた方がええかも知れへん」


「はあん?」


「・・・・・・(照)」



 まったく理解できず、頬をポリポリ掻きながら首を傾げるチヒロ。

 そんなチヒロでも、男から見ると時々ドキッ!とするような、女の子らしく可愛らしい仕草を見せる。

 なのに当の本人は、女の子としての自覚がまったく無し!

 このままでは、何時かチヒロ本人が困る事になる。

 そう思ったカイセイだった。



 昼の忙しい時間も過ぎ、そろそろシャワー室が混み合う頃。

 チヒロは、汗でシャツがビチョビチョになっていた。

 しかも! 濡れて透けたシャツには、チヒロのピンクの突起が2つハッキリと見えていた。

 それに気付いたユキナは・・・



「チヒロ! チヒロー!」


「はぁん? なにー?」


「はら! もお~~~!

 女の子になっても、汗っかきは変わらんな?

 これ、肩に掛けて前を隠しなあ!」


「え? 前?」



 チヒロは、慌てて股間を両手で隠す!



「ソコ、ちゃうわあ!!」

 バチン!

 チヒロの額をひっ(ぱた)くユキナ。


「あだっ! ええー? どこよぉ?」


「ココよ! ココー!!」


「きゃああっ!!」



 ユキナは、両手の人差し指で、チヒロの胸の2つの突起物を突っつく!



「なん! なんすんのよお?!」



 両手で胸を抑えて身体を捻り、真っ赤な顔して怒るチヒロは可愛かった。



「だから! ココを隠すんよお!!」


「バスタオル・・・なんで?」


「透けて見えてるから!」


「透けて見えてる? 何が?」


「胸よ! 胸っ!」


「ん?・・・あっ! ほんま!」



 チヒロは、視線を下げ自分の胸に向けると、確かに三角に膨らんだピンクの突起が2つ、ハッキリと浮き出ていた。



「あははっ! これは確かにヤバいな(汗)」


「そう! ヤバいんよ!

 なんで、私が買ってあげた、『スポブラ』着けて来んかったんよ?」


「すまん! すまん! 忘れてたわ!」



 流石にチヒロにも、胸が透けて見えているのはマズイと思ったようだ。

 チヒロはユキナから受け取ったバスタオルを首から肩に掛け、胸が隠れるように垂らした。

 確かにスポブラ?なるものを、ユキナに買って貰ったが、普段は着けない物だから、完全に忘れていた。

 しかし、当の本人のチヒロはケロッとしているのに、周囲の他の人達が、チヒロを見て目のやり場に困っていた。



・⋯━☞仕舞いの時刻☜━⋯・



「よおーし! そろそろ、おくかー!」


「「「はぁーい!」」」



 『おく』とは、紀州弁で、『仕舞う、終わる』という意味である。

 この時ユキナは、またカイセイにチヒロと一緒にさせようとする。



「チヒロー! カイセイに片付け方を教えてあげて!」


「え? あ~ね あいよー! ほら、カイセイ!」

 カイセイの手を取り歩くチヒロ。


「~~~♡」

 チヒロに手を握られて、ドキドキのカイセイ。



 チヒロは、壁の一部が内側から固定して侵入者を防ぐ仕組みとなっているのを説明しようとする。

 それの設置方法をカイセイに教えるチヒロ。



「ほら、ココをこうして、コッチに引っ掛けるようにして~」


「ふんふん」

 ドキドキ・・・♡


「・・・おい」


「え? なに?」


「近すぎ」


「あっ! ごめん(汗)」



 カイセイは、頬をチヒロの頬にくっ付くくらいに、顔を近付けていた。

 チヒロは、カイセイを暑苦しいヤツだと思った



「・・・・・・んで、これは・・・」


「ふんふん・・・」

 ドキドキ・・・♡


「・・・お前ねえ?」


「うん? な、なに?」


「なんでそんなに近付くんなよ?」


「あ、え、えっと・・・

 チヒロちゃんの手元をよく見ようと思って・・・」


「・・・ふん そうか

 でもなんでそんなに、鼻息荒いんなよ?

 しんどいんか? どっか調子悪いんとちゃうか?

 しんどいんやったら、先に上がってもええで?」


「え? あ、いや、だ! 大丈夫やから!」

 ドキドキドキドキ・・・♡♡♡


「・・・・・・???」

 


 カイセイは、チヒロが片付け方や防犯処置の仕方を教えてくれているのに、チヒロの手もとには全然視線を向けず、すぐ横で股を開いてしゃがみ込むチヒロだけを凝視していた。

 チヒロは身長162cmと、女子としては決して背の低い方ではないが、身長184cmあるカイセイから見るチヒロは、とても小さく見えた。

 頭のてっぺんから足の爪先まで舐め回すように見る。

 うるうるな瞳、長く多めの睫毛、吸い付きたくなるようなピンクの唇、汗ばんだ首筋、肩、腕、可愛らしく小さな手と先の細い指、背中から腰そしてヒップにかけてのS字に反った形の良いライン、突き出すような大きめのヒップ、ムチムチな太もも、小っちゃな可愛い足と指!

 


 カイセイは思った。


『チヒロちゃん、近くで見てもめっちゃ可愛い!

 柔らかそうなプニプニ頬っぺ! ピンクの唇!

 夏なのに白い肌! 汗ばんで濡れた(うなじ)と髪!

 なのに、汗の独特のツンとした匂いは一切なく、

 甘いココナッツのような桃のような香り!

 どれをとっても、もう最っっっ高に可愛い!!

 あああ~~~堪らん! 押し倒したい!!

 力いっぱい抱きしめたい!! 食べたい!!』



「・・・・・・い・・・おい! おーい!!」


「はっ?! あ、な、なに?!」

 ドキッ!!


「聞いてるか? お前・・・」


「え? あ、うん! なんやったっけ?」


「っかあ━━━もお!!

 お前、やる気あんの? ちゃんと聞けよ?

 ココ、ちゃんとせな泥棒される重要なとこ!」


「は、はい!

 も、もっかい教えてくれるかな?」


「?!・・・はぁ~~~もお~~~

 ホンマに、ちゃんと見て聞いとけよ?」


「お、おう わかった」



 チヒロは、カイセイの首の後ろに左手をグイッ!と押し付ける!

 だがカイセイは、天に昇る想いだった。


『チヒロちゃんが、俺を触ってくれた!

 わあぁあぁあぁあぁ~~~しゃーわせー!♡』



「ほぉら! ちゃんと見ろ!」


「お! おう!・・・♡♡♡」


「クスクスクスクス・・・♪」



 カイセイは、間近で見るチヒロの可愛らしさに見惚れて、ぜんっぜんチヒロの説明する言葉が頭に入らない。

 チヒロは、そんなカイセイに、何度も説明する。

 そんな事を繰り返しながらも、カイセイは天に昇るほどに幸せだった。


 この時が永遠に続けばいいのに・・・


 ユキナは、カイセイがチヒロに一歩近付けたかな?と、ニヤニヤと2人を見ていた。



 そして、海の店から出る前に、父親、ユキナ、カイセイ、そして最後にチヒロの順でシャワーを浴びた。



「ふう~~~スッキリやな!」


「「・・・・・・(照)」」


「ん? どした?」



 チヒロのシャワーを浴びた後の濡れ姿は、カイセイだけでなく、ユキナさえもドキッ!とさせた。

 そんなチヒロは、とても可愛らしく、そして美しく、女の子のユキナさえも、性的に興奮させるような妖艶な美を放っていた。


 チヒロは、肩にタオルを掛け、濡れた髪をかき上げながら、カイセイを見上げるように見る。

 濡れた髪、濡れた睫毛、濡れた身体。

 完全に拭き取っていない水滴が、チヒロの顔から身体全体にまでポツポツとまだ付いている。

 そんなチヒロの肌を流れ落ちる水滴さえも、思わず手で(すく)って飲みたくなるほどに、ユキナとカイセイを魅了させる。

 

 チヒロは、カイセイが何かを我慢しているかのような表情に、ただ不思議に思い『?』な気持ちで首を傾げる。

 そんなチヒロが可愛くて色っぽくて堪らないカイセイ。

 すると、チヒロの甘い香りが、カイセイの鼻をくすぐる。

 カイセイは、思わずチヒロを抱きしめ押し倒したくなる衝動を必死に抑え、チヒロの顔を凝視しながら生唾をゴクリと飲み込んだ。

 


「どした? 俺の顔に砂でも付いてるか?」


「あ、いや・・・なんもないよ(汗)」


「ま、作戦成功ってことで」


「はあ? 何が?」


「うんーにゃ! なんでもないよ!」


「ふうん?」

 首を傾げるチヒロ。


「ほん~~~まに、チヒロは可愛いよ!」


「は? ユキナ頭打った?

 ユキナの方が、でったい可愛いやろ!」


「そう? ありがと!」


「・・・ふうん???」


「・・・・・・♡♡♡」

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・♡♡♡



 カイセイの胸も心も、熱ボウボウだった。

 今夜も暑い夜になりそうだ。



どんなに突き放されても、どんなに塩対応でも、カイセイのチヒロへの想いは益々沸騰!!

でも、当の本人チヒロは、まったくカイセイの気持ちには気付かない。

それでもカイセイは、間近でチヒロを見るだけで幸せいっぱいなのだった。

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